二月。吐く息も白くなる寒い朝、うたかた荘の玄関ではいつもとは違い姫乃が冬悟を  
見送る形になった。  
「明神さんいってらっしゃい。気をつけてね」  
「ひめのんは休みだからゆっくり休んでな。いってきます」  
朝から仕事が入った冬悟を送り出すと姫乃はいそいそと台所に向かう。  
「明神さんお出かけした?」  
雪乃は朝食を片付けている。  
「うん」  
「帰ってくるまでに作れるといいわね」  
「うん。みんなの分もあるし今年はたくさん作れるからがんばる」  
こっそりと隠していた材料を取り出すとエプロンを着て支度を始める。  
「澪さんが来る前に準備しなきゃ」  
チョコに勁伝導をしてもらえばみんなに渡せると澪には事前に来てもらうよう頼んでおいたのだ。  
大量のチョコをざくざくと刻んでいくと台所もにぎやかになっていく。  
「朝っぱらからそーぞーしー!うるさい!」  
コクテンが音で目が覚めたのか怒鳴りこんでくる。  
「あら、おはよう。そうだ、コクテンもやってみる?」  
雪乃がににこにこと言う。  
「やるって何を?」  
「チョコレートを作って男性にあげるのよ。二月十四日のバレンタインって日に」  
「チョコってお菓子?そんなのいつだって食べられるじゃない。またイベント〜〜?」  
「人間はそういうの好きなものなのよ。コクテンからキヨイにあげたら喜ぶんじゃないかしら」  
「う…じゃあやってみる」  
「そう。まずこのチョコの板を細かくしてくれる?」  
かくしてコクテンも戦力に加わることとなった。  
 
「こんにちは。姫乃ー?」  
玄関を開け、澪が入ってくると真っ先に嗅ぎ付けてアズミが来た。  
「澪〜!!」  
「元気にしてたか?姫乃はどこだ?」  
「あっちー」  
アズミを抱えると澪は台所に向かう。  
澪が台所を開けると同時に威勢の良い掛け声と共に何かが振り下ろされチョコとおぼしきものが  
粉砕された。かけらが澪の脇を飛んでいく。  
カナズチか何かで粉砕している主はコクテンだ。  
雪乃が澪に気付いて中に招き入れる。  
「いらっしゃい。わざわざごめんなさいね」  
「いえ、それよりなんでコクテンが?」  
「私が誘ってみたの、楽しいみたいよ、ふふ」  
(雪乃さん…)  
澪はしばらく固まって混沌とした台所を眺めているしかなかった。  
周りの騒ぎをよそに姫乃は一生懸命、材料の下ごしらえをしている。  
「頑張ってるな」  
声をかけるとびっくりする。  
「わっ。澪さんもう来てたんですか?!気付かなくてごめんない」  
「気にするな、何て言ったって今日は女の子が頑張る日だからな」  
澪の言葉に姫乃は満面の笑みを浮かべる。  
「さて、私は勁伝導するだけでいいのか?」  
「はい。あと…」  
姫乃が口ごもる。  
「ん?どうした?相談なら乗るよ」  
「あの…今年、量が多くてみんな同じになっちゃいそうなんです」  
「それで冬悟だけ特別にしたいんだな」  
「っ!澪さん何でわかるんですか?」  
「見ていればわかるよ」  
澪は笑って姫乃の頭をぽんぽんと撫でる。  
「さて、どうするか。あいつ酒が好きだしチョコボンボンなんかどうだ?  
 子供たちは食べられないやつだしな」  
「いいかもしんない!それにします!」  
うきうきと作業に戻る姫乃を横目に澪はピンと悪戯を思いつきニヤリとする。  
 
その後、勁伝導済みのチョコなら触れるとアズミもチョコ作りに参加することになった。  
夕方になるころにやっと作業が終わる。半分は菓子作りと言えるのか微妙なものであったが。  
「じゃあ、帰るよ。冬悟によろしくな」  
「はい。おかげで助かりました」  
「いいバレンタインになるといいな」  
「へへ」  
姫乃は照れ笑いしつつ澪を見送った。  
 
「ただいまー。ってなんの騒ぎだ!?」  
夜中、帰宅した冬悟を待っていたのはチョコの山だった。各自、持ち寄ってあーでもないこーでもないと  
言い合っている最中だった。  
エージがやってきて得意げに包みを見せる。  
「悪いけど先にもらったぜ」  
「ああ、今日はバレンタインだったのか。んで、そっちのでかいボールみたいのは何だ?」  
「アズミだよ。トリュフってものを作ったらしいけどトリュフってこんなでかくないよな…」  
「そうだな…」  
ゴウメイには一番大きいアズミ製トリュフがいったらしい。  
台所へ行くとアズミが待ち構えていたように野球ボールくらいのチョコを差し出す。  
「明神ーチョコー!!!」  
「おーサンキュ。よく作れたな。すごいすごい」  
冬悟の夕飯の支度をしていた姫乃が声をかける。  
「明神さん、おかえりなさい。アズミちゃんのチョコ、大きいけどおいしいから」  
「ひめのんが手伝ったんだ?」  
「うん。楽しかったよ」  
ねー、とアズミと目を合わせて笑う。  
 
冬悟が夕食を済ませ着替えている間に姫乃はコーヒーを持って管理人室の扉をノックした。  
「お疲れ様。コーヒー飲む?」  
「ありがと。今日はみんな喜んでたな。ひめのんの御蔭だな」  
姫乃は生返事をしつつもじもじする。付き合っているとはいえ、改めて渡すとなると照れる。  
思い切ってチョコを入れた箱を冬悟の前に差し出す。  
「はい。遅くなってごめんなさい。口に合うといいんだけど…」  
「ひめのんから貰えるだけで嬉しいよ。しかも手づくりだろ?コーヒーもあるし、いま食べていい?」  
姫乃はこくこくとうなずく。  
箱を開けるとハート型のチョコがきれいに並べられていた。姫乃は冬悟に少し近付くと小声で言う。  
「あのね。みんなにも同じ形のやつあげたけど…明神さんのだけは…特別だからね」  
へへ、と頬を染めて姫乃は照れ笑いをする。  
可愛く愛おしい彼女にこんな事を言われては冬悟まで赤くなりそうだった。  
(イベントとか今までどうでもよかったけどいいもんだな)  
感慨もひとしおにいただくことにする。  
「それじゃ、いただきます」  
丁重におじぎをしてから口に入れるとチョコの甘みとほんのりとした苦みが広がる。噛むと中からは  
洋酒が染み出しチョコの香りと口に交わる。  
「酒入りなんだなー!俺こんなうまいチョコ食べたの初めて。甘すぎないし、俺こういうの好きだ。  
 ありがと、ひめのん」  
冬悟の嬉しそうな顔を見て姫乃もほっとする。  
「よかった〜。たくさん食べてね」  
「いやいや、とっておいて大事に食べるよ。仕事の後に食べたら疲れが一気にとびそうだ」  
「おおげさだよ」  
くすくすと姫乃が笑う。  
和やかな空気が流れる中、冬悟はコーヒーをすする。  
少しして冬悟は自分の身体の異変にギクリとした。下の方がやたらと元気になってきている。  
(今日は疲れてたのになんだ?確かにチョコで元気が出たけども、姫乃は今日は一段と可愛いけども…  
特別だとか殺し文句を言ってたけども…)  
そんな異変に気付いているのかいないのか、姫乃のは冬悟の横に移動して寄り添う。  
思わず冬悟の心臓がはねる。  
 
「今日はね、朝から大変だったんだよー。コクテンも一緒になって作り始めて…」  
冬悟の緊張をよそに楽しそうに一日の話を始める。  
(落ち着け、気のせいだ。だいたいひめのんは明日は学校あるし、だいたいひめのんから誘ってくる  
 なんてありえるか?…でもバレンタインだからいいのか?)  
悶々と考えているうちにも理性が今にも飛びそうになっていた。  
「明神さん?聞いてる?」  
はっと気付くと姫乃が下から見上げていた。  
「ああ、いや、うん…」  
「もしかしてチョコが良くなかった?」  
「そんなことない!ただ、あ〜」  
後ずさりをするが姫乃は心配になって冬悟に近付く。  
「本当にどうしたの?」  
不安げに覗き込む目を見て冬悟の理性が吹っ飛んだ。  
「ひめのん、ごめん」  
「え?」  
きょとんとした姫乃を抱きすくめるとどさりと押し倒す。  
「我慢できない」  
「え、明神さん…っ」  
言葉を紡ごうとした口を荒々しく塞ぐと舌を差し入れ小さな姫乃の舌をからめとり、口内を愛撫する。  
驚いて固まっていた姫乃の身体から自然と力が抜けてゆく。唇を離すと長い口づけのせいか姫乃の  
息が荒くなっている。冬悟は頬を撫でると首すじに舌を這わせつつ急いて姫乃の衣服をはいでいった。  
「っ。明神さんっ待ってっ…」  
「嫌?」  
「いやじゃない…けど、いつもの明神さんじゃないみたい」  
「ひめのんが元気になるチョコくれたからだよ」  
そう言って優しくキスをするが、またすぐに身体をまさぐりはじめる。早急な愛撫は荒々しく少し  
強引ではあったが激しく求められるようで姫乃の身体を熱くしていった。冬悟はなめらかな白い肌に  
吸いつくと次々に赤い痕を残していく。形のいい乳房を揉みあげると先端を含み舌で転がす。  
弄びつつ空いた手で陰部に触れると姫乃が身体を反らす。入り口を上下になぞり、濡れているのを  
確認すると冬悟はにっと笑う。  
「ひめのんのエッチ」  
「意地悪…」  
姫乃は恥ずかしくなり手で顔を隠すが冬悟はその手を押さえ、陰部に顔をうずめる。  
「ひゃ…いや」  
いきなり陰核を含まれ抵抗しようとするが押さえ付けられた力が強く抗えない。  
冬悟は陰核を強く吸い、舌で刺激を与える。花弁からしたたる蜜を舐めとると入り口を割って入る。  
「…っ。明神さん…待って、やっ」  
いつもとは違う強引さに身体は感じつつも姫乃は少し不安になる。冬悟は姫乃の制止を無視して  
陰部を蹂躙すると姫乃の声が少しずつ甘くなっていく。冬悟は限界を感じ、手を解き離れる。  
姫乃の顔を見ると目が潤んでいるのに気付いて動きを止めた。  
「ごめんな、嫌だった?」  
「そうじゃないの、ただ急で…びっくりした」  
姫乃は余裕のない冬悟に求められるのは初めてで戸惑っていた。冬悟は優しく笑うと安心させるように頭を撫でる。  
「姫乃が欲しくてたまらないんだ」  
優しく見つめられて姫乃も安心を取り戻す。  
「わかった。…明神さんの好きにしていいよ」  
健気に言う姫乃に冬悟は愛おしくなりキスをする。  
「いい?」  
「うん」  
姫乃は微笑んでうなずく。冬悟は入り口にあてがうとゆっくりと腰を進める。まだ十分にならされていない中は  
きついがかえって快感を煽るようだった。  
「痛くない?」  
「うん、大丈夫」  
しばらくなれるまでと徐々に動かすが、冬悟はいつにも増して響いてくる快感に酔いそうになる。  
(何かがおかしい)  
自分の身にいつもと違うものを感じるが、襲ってくる快感に疑惑はすぐにかきけされ、本能のまましだいに  
強く姫乃の中をかきまぜ突いていた。  
姫乃も身体がなれ冬悟のものを深く受け入れ、こすれるたびに甘い声をあげる。  
 
「あぁっ明神さんっ」  
乱れる息と共に名を呼び姫乃が背中に手を回す。冬悟は腰を引き寄せると一段と激しく打ち付けた。  
唇を重ね、舌を割り入れると姫乃は応えるように舌に絡み、甘く吸う。中も冬悟のものに吸い付くように  
締め上げてくる。  
冬悟は快感を極めるように絶え間無く奥まで打ち付けると達するのを感じて慌てて引き抜くと姫乃の  
腹に白濁した液を放った。  
「ごめんな、早かったろ、ひめのん」  
「そんなことないよ…気持ち良かった…です」  
まだととのっていない息遣いで照れて言われると冬悟はもう一度したくなってしまう。  
(さすがに今日は無理だな)  
愛おしい姫乃の髪や頬を撫で、名残惜し気にキスをして軽く舌を絡ませる。くちゅっと音を立てて  
口づけをしていると冬悟のモノが再び張りつめていた。  
(おいおい)  
ここまできて冬悟もさすがに異変に気付く。  
(原因は何だ?やっぱりあのチョコか?そういやガクやエージ達ももらってたよな…アズミまで  
作ってたし。そんなことできるのは…)  
自分のものを悟らせないようにして姫乃に確認する。  
「姫乃さん、今日湟神が来たりしましたか?」  
姫乃はきょとんとして答える。  
「そうだよ?勁伝導してもらってみんなにも渡せるようにしてもらったの。みんな喜んでくれて  
 よかった」  
「俺だけ特別ってのは?」  
「澪さんにアドバイスしてもらったの。大人の男性が好きなチョコはこういうのがいいって」  
「…それで?」  
「それだけだよ?」  
(湟神が媚薬まがいな勁伝導を仕込んだのは間違いが姫乃は知ってるのか?)  
あまり追求してしてせっかくの姫乃のチョコを台なしにするのは避けたい。  
知らなかったのに媚薬入りチョコでしたなんて言ったら姫乃が取り上げてしまうだろうことは予測できる。  
(しかしだ、知っててくれたんだとしたら…)  
あらぬ考えが浮かぶと呼応するように下がますます元気になる。  
(ま、いいか)  
冬悟は欲望に素直に身を任せることにする。今度はじっくり姫乃を味わうことに決めた。  
快感の余韻が残る姫乃の身体を悪戯するように刺激を与えていくとまだ達していなかった姫乃は  
少し照れつつも冬悟に身を任せた。  
「もう一回いい?」  
わざと聞くと身体が疼いていた姫乃は少し怒ったように目を反らしてうなずいた。  
 
二人のバレンタインの夜が過ぎていった。  
 
後日、チョコを前に再び悶々とする冬悟の姿があった。  
 

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