案内屋達との戦いの末に少し、ほんの少しだけでも分かり合えた様に思えた、
その日からもうすぐ一月。
キヨイはうたかた荘の一室でくつろいでいた。窓からは月明かりが差している
生きた住民のいない殺風景な他の部屋より、彼はその部屋に居心地の良さを感じていた
そこの主である少女に、清潔感を保ちつつ彩られた空間。
室内にはベッドで眠る黒髪の少女。
そしてその少し上空に浮いたままで眠る少女の姿をした彼女。
「コクテン」
そっと彼女の名前を呼んでみる。
「…ん……キヨイ…?」
コクテンは半覚醒状態で半分だけまぶたを開いてこちらを見た。
『僕がここを気に入ったから』それだけの理由でコクテンはずっと共にここにいるのだ。
キヨイはふいにそのことを思い、愛しさが込み上げた。
「こっちにおいで。」
そう言って出来る限り優しく、華奢な肩を抱き寄せた。
そのまま軽く口付け、小柄な体を抱きしめる。
コクテンは一瞬驚いたように大きな瞳を見開いた。
「だめだよキヨイ、ヒメノが起きちゃう…」
コクテンは困ったように笑みを浮かべながら、しかし本気で拒絶するそぶりは無い。
ほんのりと赤く上気した頬を撫でながら穏やかに微笑みかけ、
今度はさっきよりも長く口付けた。
「…んっ…」
唇の隙間から進入させた舌で口内を隅々まで、しかしけして激しくなく穏やかに愛撫する。
コクテンは次第に脱力するようにキヨイに体を寄せ、応えるように舌を絡めてきた。
キヨイもそれを受け止める。
この時点で、もう二人はお互いを愛しく想う気持ち以外のいかなる感情も麻痺し
二人は姫乃が眠っているのと同じその部屋で
暫くお互いの唾液を絡めあった。