※冬悟×澪前提・非合意
※一部に白金2人×澪の3P的描写を含みます
緊急事態発生だ。
電話じゃまずい。
……の、1030号室に来てくれ。
顔を見たいという衝動に駆られてそんなメッセージを残したものの、さてどんな緊急事態を装おうかと頭を悩ませるのがオチだった。
相手は湟神澪、まさか「顔が見たかっただけだ」なんて言おうものなら命も危ないかもしれない。
二度と起き上がれないほどボコボコにぶちのめされている自分の姿が簡単に想像できた。
「さて…どうしようか…」
そうして頭を悩ませるも良い案は浮かばず、考え飽きてしばらくベッドに転がっていると、入り口の扉がノックされた。
「湟神だ。居るか」
「はいはい。開いてるからどうぞ」
軽く服を整え、扉の側へ足を進める。
ごろごろしているうちにぼんやりと浮かびかけていた名案は、一歩一歩足を進めるうちにすっかり消えてしまった。
「ハァーイ、ミーオーちゃん♪」
扉が開かれるが早いか両手を広げて迎えると、冷たい視線を注がれるよりも先に回し蹴りが飛んできた。
本当なら避けられたそれをあえて受け入れ、脇腹に鈍痛が響く。
「…いい加減にしろ、うざったい」
「相変わらずこわいなぁ…」
蹴りつけられたのをいいことに、その足を脇腹の真横でがっちりと掴み捕らえる。
共に修行していた頃には、組み手の途中で同じように掴んでしまったその足を軸に、もう片方の足で二発目を食らわされたこともあった。
気の強くない簡単に使い走りに成り下がるような男相手でも手加減されなかったのだ、もし本当に気の弱い性格だったなら、澪の存在はトラウマになっていたかもしれない。
「お前が逆撫でするからだ」
澪のそんな応答に、それなら素をさらけ出した今のこれならともかく、過去の自分の一体何が気に食わなかったのかと問いたくなった。
「いい加減はなせ。また蹴られたいか」
むしろ昔と同じようにそうさせて、今度はバランスの崩れた体を床に組み敷いてやろうか。
そんな良からぬ思いが脳裏をかすめる。
「いやいやそれは、いくら何でも…」
咄嗟に口から出たその言葉は、澪の言葉への受け答えというよりも、自分の中に起こった邪な思いに対してのものだった。
足を掴んでいた手を離し、よれたシャツを直す。
澪はとりあえず扉を閉め、部屋の中へ入ってきてくれた。
「ったく…緊急と言うからわざわざ来てやったのに。大した用でないなら電話で済ませろ」
「どうしても顔が見たかったんだから、仕方ないじゃないか」
うっかり漏らしてしまった本音に頬を赤らめてくれるほど、澪は甘くない。こちらを睨みつけてくるその眉間に刻まれたシワは更に深く溝を作り、頬がぴくりと引きつれる、嫌悪感丸出しの反応が返された。
せめて、脱力して呆れるくらいしてくれてもいいだろうに。
「用がないなら帰るぞ。私は忙し、…ーッ…!?」
何の躊躇いもなく踵を返した澪の腕を掴み、力任せに引き戻して唇を重ねた。
「っん、何…を…っ!」
頬へ叩きつけるように掌が当てられ、力一杯に突っぱねられる。何かとんでもなく汚いものに触れてしまったように、手の甲でごしごしと唇を拭われた。
軽蔑するように表情を歪めながらも、それはこちらには向けられずに俯けられてしまった。よくは見えないが、瞳に薄く涙が浮かべられているようにも見えた。
手はまだ唇から離されず、弱々しくではあるものの、その場所に与えられた感触を拭い続けている。
「………」
まさか澪ほど気の強い女が、突然キスされた程度で泣いてしまうとは思えない。
…けれどもし、本当に泣いていたら。
そう考えた瞬間、胸の奥でくすぶっていた良からぬ感情に火がついた。
「用なら今できた、……大事件だ」
どれだけ気性が荒くとも澪も女、それに彼女が実はかなりの奥手だということにもとうに感づいている。
まさかキス程度のことで泣くとは思えないが、きっと心中は動揺しきって、もう何をされてもろくに抵抗できないに違いない。
ずっと押し殺してきた「澪に触れたい」という思いが、堰を切って溢れ出した。
「…身剄融合、……」
ぶわ、と体から霧がわき起こり、辺りに立ちこめる。
高濃度に仕立て上げたそれを澪の視界へ集中的に集め、ほんの目と鼻の先の距離もろくに見えないほどに覆い隠した。
「な…っ!?」
「あんまり手荒なことはしたくないけど…仕方ない、こうしないとうっかり殺されそうだ」
見えないながらも気配を追って攻撃しようと試みる澪のその手を掴み上げ、後ろへ回り込む。そのまま部屋の奥の壁に背がぶつかるまで引きずって退り、霧で作ったもう一人の自分に役目を代わらせた。
澪の表情が見える程度に霧を薄め、胸を覆い隠している服を乱暴に上へずらす。ぷるん、と姿を現した乳房は、服越しに見た記憶にあるものよりも大きくなっているように思えた。
「…ん?まだ成長してんの?」
「それか…誰かイイ人できちゃった?」
白い大きな膨らみを眺めながら呟くと、後ろで手を掴み上げているもう一人が澪の耳元へ息を吹きかけるように二言目を囁いた。
耳にかけられた吐息に反応したのか、それともその言葉が図星だったのか、細い肩がぴくりと振れた。
「っ、はな…せ…」
「それ以外のお願いなら聞いてあげる」
正面から顔を見つめながら、片側の乳房にやんわりと手を這わせると、噛み付かれそうなほど鋭い視線が向けられる。
「…はなせ」
「だから、それは聞かないって」
芯を持ちかけている乳頭を摘み、先端を指先でくりくりと捏ね回す。
「あっ、…ーッ…」
刺激を受けて固く尖ったそれを爪で軽く引っ掻くと、厳しげに寄せられていた眉の力が弱まり、半開きの唇から甘い吐息が漏らされた。
その反応に、つい無意識に口の端が吊り上がってしまう。
癇に障ったのか、表情は一瞬でまた元に戻され、睨みつけられた。けれど頬はほんのり色付き、まだ乳頭を捏ね回し止めないその刺激に耐えようと必死に歯を食いしばっているのがわかる。
「フゥ…そういう顔されちゃ、逆に燃えるって」
きゅ、と摘む指先に力を込めると、奥歯の擦れ合う音が聞こえた。
羞恥の色を含ませながらも目つきは鋭いまま、こちらを真っ直ぐに睨みつけてくる。
「全然わかってないとこも可愛い」
そっと両足の間へ膝を割り込ませ、その付け根を目指して上へとずらす。
何をしようとしているのか察せずに泳がされている瞳へ笑顔を映し込み、無理矢理開かせたその場所の中心に擦り付けるように膝を前後させる。
「ひ!?…っい……ぁ…」
骨ばった膝の先で服越しに秘部を刺激された瞬間、澪は目を見開き、食いしばる歯への力を緩めた。
その歯列の隙間から喘ぎは吐き出され、もう一度噛み締め直すこともできずに声を漏らし続ける。
「うぁ、あぁ…ぁっ…」
爪先立っていた澪の足が床から離れ、押し付けた膝を股に挟み込んだまま宙に浮いてしまった。
澪自身の体重で、膝の骨の丁度真上に秘部が強く押し付けられる。布越しでもわかるほどにそこはやわらかく、熱を帯びていた。
「ふ…あぁぁ、あ…ぁ……やめ…ろ、シロ…ガネ…」
息荒く喘ぎ混じりに制止をかけられたところで、逆に煽られるだけだ。
顔を俯けられないよう頬に手を添え、膝で秘部を暴きながら片側の乳房を弄くり回す。
澪の体を挟んで向かい側に居る分身は壁に背を凭せかけ、澪を抱き込むように回した手でもう片側の乳房を揉みしだきながら、首筋やら耳元へ舌を這わせた。
ぴったり密着した体の前後から二人分の愛撫を受け、澪の息はみるみるうちに上がってゆく。
「いや…だ、やめ……あ、あぁ…っあぁぁあ!!」
秘部に押し付けた膝をガクガクと揺らすと、澪の下肢が大きく痙攣を起こした。
「…ひぅ、あ……ぁ…」
力なく俯き込んでしまった澪の体をまだ撫で回している分身の手を視界の端に捉えながら、押し付けていた膝を下ろし、かっちりと絞められているベルトの金具を緩める。
前のファスナーを開くと、軽い生地のズボンはベルトの重みであっさりと下へ落ちてしまった。
やっと地についた澪の足は力をなくし、ズボンと同じように下へ崩れ落ちかける。
「おっ…と」
分身は反射的に澪の腕を掴み上げていた手を離し、下に垂れてしまった腕ごと澪の体を抱きしめて支えた。
ずり下げたショーツにべっとりと付着した愛液が、秘部との間に細い糸を引く。
「ありゃ、あれだけでイッちゃった?」
「いれなくてもイけるんだ、澪ちゃんヤラシー…」
「っ、…」
臍の横に浮き出ている“水”の字を指でなぞると、腹の皮膚をひくつかせながらも強い視線で睨みつけられた。
普段の澪なら、こんな卑猥な言葉を投げかければ間違いなく蹴りの一発や二発は軽く食らわしてくる。けれどもうそんな力は残っていないらしく、分身が支えてやっと立てているようだった。
「…その目、ゾクゾクする」
淡い茂みに隠された割れ目を伝わせ、秘められた場所を目指して躊躇いなく中指を侵入させる。
分身は後ろから片手を腿の内側に回り込ませ、閉ざされて見えなかったそこを開かせた。
潤いを纏いぽってりと膨らんだ花弁は控えめに口を開き、這わし込ませた指を招き入れるように口をヒクつかせる。
「ひ…っ!」
愛液まみれの膣口はすんなりと指の侵入を受け入れ、熱い肉壁を絡みつかせてきた。
ぬめりを帯びたそこに指の腹を押し付け、中を探るように抜き差しをはじめた途端、それまでよりも更に甘い声が上がった。
「ひぁ、あ…っやめ、あ…あぁっ…」
こちらに向けられるときにはいつも強気だったはずの澪の表情が、今は快楽に呑まれた女のものに変わっている。
そのギャップに、たまらなく欲望を掻き立てられた。
「はぁっ、あ……っこんな、こと…して、ただで…ーッ…済むと…!」
「それくらいの覚悟なしで、こんなことするわけないでしょ」
指を増やせば中の締めつけも増し、強い収縮を繰り返す。
その肉壁の動きに逆らって抜き差しすると、澪の腰はガクガクと震えを起こした。
「いや…だ、いや……っあ、あ…あぁぁああ!!」
大きな引きつけと同時に背が弓なりにしなり、喉まで仰け反らせて喘ぎが起こった。
ごぽごぽと愛液を溢れさせながらも、中は痙攣を繰り返して指を締めつけてくる。
ついに力を失いきった足は崩れ、後ろで支えている分身ごと床の上に落ちた。
「……もう、はな…せぇ…」
今度こそ本当に泣いてしまいそうな表情を浮かべながらも、ひくり、ひくりと収縮する中の動きに合わせて腰が緩やかに痙攣を起こしている。
犯されていながらこれだけ敏感な澪の体は、想いを寄せる者を相手にすればどれだけ淫猥なものに変わるのだろうか。その立場になれなかったことに、悔しさが込み上げてくる。
そうして沸き起こった悔しさも、今はもう澪に対する残酷な行為の種にしかならない。
「…ずーっと黙ってたオレの気持ち、受け止めて」
外したベルトをベッドの上へ投げ捨て、半端に下ろしたズボンの中から肉棒を取り出した。
猛るそれを見た瞬間、澪の顔が恐怖に歪められた。
「いや…だ、やめろ、シロガ…ーッやぁぁああ!!!」
抵抗の悲鳴とは裏腹に、二度も達して解れきった澪の中は、容赦なく一気に突き込んだそれをすんなりと受け入れた。
難なく入りはしたものの肉壁の抵抗はひどく、どうにかしてそれを追い出そうと強い収縮を繰り返す。その締めつけに逆に煽られ、突き込んだ肉棒は脈打ちながら硬度を増した。
「…あ、ぁ……あ…」
ずっと辺りをぼかしていた霧を晴らし、澪の体を押さえつけていた分身を消し去る。
後ろの支えを失った澪の体は床に落ち、力をなくした腕がだらりとその横に垂れた。
「…澪ちゃん、」
閉じられた瞳の端から零れ落ちた涙を拭っても、澪はしばらく目を開けてくれなかった。
「………」
下肢を動かさないようにそっと体を起こし、首回りを絞めてくるネクタイを解く。
シャツのボタンを外し終えた頃、やっと澪が瞼を開いてくれた。
…後は早く行為を終えて、肉棒が抜き去られるのを待つしかないと覚悟したのか、それからの澪は全く抵抗を見せなくなった。
突き上げられるままに喘ぎ、あまつさえ腰まで揺らめかせながら、中を荒らす肉棒が強く締めつけられる。
「ふ、あっあぁ!んぁ、あ…あっ…」
「…ッ…澪ちゃん、すごくイイ…」
仰け反って浮かせられた背の下に腕を回し、抱きしめるようにぴったりと上体を密着させて体を揺さぶる。
豊かな乳房が互いの体の間で押し潰され、固く尖った乳頭が揺さぶりに合わせて胸板に擦り付けられる。その刺激が良すぎるのか、澪の顔は悩ましく歪められた。
「いや、あ…あ…ーっあぁぁ…」
焦点の定まっていない虚ろな瞳に姿を映し込むと、弱々しく手が伸ばされ、こめかみから梳き上げるように髪に触れられる。
ふいに頭が両腕に抱きしめて引き寄せられ、黒い髪の垂れる首筋に顔をうずめたまま上半身が身動き取れなくなった。
抵抗する気の全く見られない、逆にもっとしろとせがんでいるようなその行動に、体の熱が一気に上がる。
沸き起こった欲望のままに激しく突き上げると、喘ぎは更に艶を増した。
「あぁっ、ん、あぁあ…っ!!」
すぐ耳元で聞かされる喘ぎ声に、体の芯がゾクゾクと奮い立たされる。
外側へ広げられていた脚が閉じられ、腰を抱き込むように絡み付かされた。
「やぁあっ、あっ、あ…ーあぁぁああっ!!」
ぎりぎりまで引き抜いたものを奥へめがけて一気に突き込んだ瞬間、悲鳴に近い喘ぎと同時に、腕の中に抱き込んだ体がビクンと大きく引き攣れた。
急に力をなくした腕や弱々しい喘ぎとは逆に、肉棒を包み込む熱い壁は中のそれをぎゅうぎゅうに締めつけてくる。
ゆったりと抜き差しすると、達しきってろくに喘ぎも漏らせないまま、下肢だけが途切れ途切れに痙攣を起こした。
「…っ、澪…ーッ…」
張りつめていた肉棒はビクビクとその身を震わせながら、澪の中に熱を吐き出した。
ゆっくりと腰を揺らめかせ、ずっと溜め込んでいたものを吐き残しなくそこへ注ぎながら、徐々に引き抜いてゆく。
「…あ、あ…あぁぁ……」
ゆっくりと抜かれてるそれを逃すまいと強く痙攣する肉壁の動きは、溢れ出た愛液の滑りに阻まれる。
何かを懇願するように頬へ手を伸ばしてくる澪の切なげに寄せられた眉根に唇を落とし、ずるりと肉棒を引き抜いた。
「…ぁ……───とう…ご……」
意識を手放すように目を閉じてゆく澪の唇が最後に紡いだその音に、頭の中がサァッと冷たくなった。
「っ、…」
昂っていた体の余韻も、荒かったはずの息も、一瞬で落ち着きを取り戻してしまう。
澪の体は力を失い、それきり全く反応を示さなかった。
「…澪ちゃん……それ、キツイ…」
名前を呼んだその声は、助けを求めている風ではなかった。
分身からの束縛を解いた頃からもう、澪の目に“白金”は映っていなかったのかもしれない。
行為に従順だったあの態度も、真っ白な髪を撫でて抱きしめてきたことも、恐らくは目の前の相手が別人に見えていたからこそだったのだろう。
「あぁ、なんか…本当……キツイなぁ…」
──こんなことをして、ただで済むと思うな。
この行為の相手をまだ“白金”として見られる意識があった頃の澪の言葉が、耳の底に蘇った。
「罪悪感以外のモンまでしょいこめって?……相変わらず、手厳しいなぁ」
(終)