人間は緊張している時、普段は気にとめやしない感覚にすら敏感になる。  
 耳の付け根辺りから脈を打つ音がやけに煩いし、全身の皮膚に触れる全てが自身を刺激する。そんな感じだ。  
 
どうしよう―――  
 
うたかた荘の管理人・明神は混乱していた。  
彼が取り乱すのも無理はない。日付が替わろうとしている深夜、狭い押し入れの中に寝巻姿の彼はいた。  
 
問題は、明神に覆われるように下敷きになっている少女の存在だ。  
体が密着しないように、ついこないだ地下水路で負傷したばかりの腕を立ててはいる。が、それはそれで体勢としては変な事を意識してしまう。  
 
事の起こりは半時前に遡る。  
 
 
遠慮がちなノックで、ふと目が覚めた。  
 
どうやらテレビを点けたまま転寝してしまったらしい  
。寝起きのせいか無意識にハイ、と妙に礼儀正しい声  
で明神は答える。ドアが申し訳なさそうに音を立てた  
。姿を見なくてもそれが誰か見当がついていた。ここ  
の住人で、ノックをできる者は自分の他に一人しかい  
ない。  
「みょーじんさん…」  
細い、少し擦れた声がした。姫乃だ。  
「どーした。子供はもう寝る時間だぞ。」上半身だけ  
仰け反らせて、ぞんざいに明神は答えた。  
コドモと言うキーワードに姫乃は些かかちんと来たが  
、用件を話し始めた。  
 
姫乃の話は、やはりと言うかガクの事だった。  
 
最近は勝手に部屋に侵入する事はさすがに無くな  
ったものの、昼夜問わず姫乃の部屋から物音がす  
ると駆け付けて来るらしい。  
今日なんて、消しゴムを落としただけで飛んでき  
たと言うのだから凄まじい。  
「愛されてるねぇ、ひめのんは。」  
「茶化さないでください。」低く笑う明神に、姫  
乃は頬を膨らませた。「最近ちょっと明神さん意  
地悪だよね。前ならガクリンから庇ってくれたのに。」  
 そんな事ないよ、と軽く言うと明神はテレビの  
リモコンを床から拾った。  
 
姫乃の指摘は間違いではないだろう。自覚はある。  
ガクから追い掛け回されている彼女を見て、以前  
であれば助けなければいけないという義務感があった。  
なのに。  
どうしてだろう。今は彼女の口からガクの名前が  
出るだけで、言いようのない感情が生まれる。深くて暗い、熱くて重い負の  
感情が。  
 
「物音立てないようにするしかないんじゃねーの?」  
無下にもなく、明神は言い放った。「大体さ――」  
明神が言い掛けた瞬間、唇に白い手が乱暴にあてがわれた。  
『なっ…』姫乃が真剣な顔をして、しいっと人差し指を差している。  
『ガクリン帰ってきた』  
それだけ口パクで告げるやいなや、明神を強引に押し入れへと自分ごと押し込んだ。  
 
 
 
何で自分まで隠れなきゃいけないんだ、という文句も今や明神の頭にはない。  
 
鼻腔をくすぐる華やかな香りと、必然的に絡み合  
っている彼女の太ももの感触やらが彼の理性をす  
り減らす。  
一方、他人から見れば明らかに「押し倒された」格好の少女は全く何も考えていないような顔をしている。  
「姫乃さん、何か面白い?」先程からクスクス声を漏らしている姫乃に明神は皮肉を込めて尋ねる。  
「かくれんぼ、久しぶりだから。」  
かくれんぼ。  
かくれんぼですか。じゃあアレですか、俺はたかがかくれんぼに興奮してる変態マニアですか。  
「最近明神さん、冷たいし。」  
「かくれんぼにすら付き合ってるのに、んな事言われても。」  
明神が半笑いで答えると、姫乃は真剣な眼差しをこちらに向けた。茶化さないで、そう告げている。  
「…私、何かしたかな…」少し、思い詰めたような吐息を漏らしながら彼女は呟いた。「ねえ明神さん、私何か気に触るような事しちゃったかな?それだったら謝りたい。前みたいに戻りたいの。」  
押し入れの穴から漏れる光が、姫乃の瞳を反射している。  
くらりと、何かが明神の中で傾いた。  
 
「前みたい、か。」  
彼女の言う「前」とはコモンの事が起きる以前の事を指しているんだろう。  
 
「多分、無理。」  
そう言い放つと、明神は腕の力を抜いてどさりと姫乃に体重を預けた。  
 
姫乃の体温がダイレクトに伝わる。細い細いと思っていたが、腕を回してみるとさすがに柔らかさを感じた。「好きだ」  
込み上げてきたものを吐き出すように呟いた。  
姫乃の反応を見るのが恐くて、逃げる様に頬を擦り寄せる。  
明神さん、姫乃が耳元で呼び掛けた。「両想いだね」  
驚いて彼女の顔を見ると、涙の跡が残った笑顔があった。思わず彼女の名前が口から漏れる。  
「好きだよ、明神さん。多分随分前から。ずっと私、明神さんが好きだった。」  
自分の中の負の感情が煙のように消えていくのが分かった。  
「あー……」  
「どうしたの?」  
「いや、何か。あったかい。」  
姫乃ははにかんで、愛のせいだよと少し笑った。  
成る程、と明神はつられて笑いながらついばむようなキスをした。  
 
ヒメノさん、明神がいやに礼儀正しく声を掛ける。「ちゅーしてもいいですか。」  
「今したじゃん。」  
姫乃がどうぞ、と答えるのを待たずに明神は唇を塞いだ。  
人の唇ってこんなに柔らかいんだ、と妙に冷めた事が浮かんだ。  
いや、唇だけじゃない。  
キスで、舌が入ってくるとまるでお湯みたい。  
明神さんのごつごつした手も、厚い胸板も私にとって全て新鮮なモノだ。  
   
長いキスが終わり、名残惜しそうに銀の糸が切れた。  
私が明神さん、と呼ぶと擦れた声で「ん?」と答えてくれた。  
「触りたいな。」  
「…は?」  
「みょーじんさんに、触りたい。」  
「……いや、あの。それは、えっと。」  
つまりこう言う事してもいいのね、と明神は姫乃の腰にある手をゆっくり上げて行く。「ストップって言うように。」  
 
「ストップって?」ブラジャーのワイヤーをなぞられ  
、僅かに体を強ばらせながら姫乃はのしかかる男に尋  
ねた。パジャマのボタンは全て外され、二人の体の間の空気が染みる。  
「…んー」何されてるのかこの娘はわかってるのか?  
やがて明神の右手がホックに辿り着く。「だからさ、」  
ぷん、と小切味のいい音が布団に吸収された。  
だから、と言ったのは自分であるのに続く言葉が見つからない。  
 男の手が行き場を失ったように、姫乃の背中の素肌  
を行ったり来たりしてる。  
「恐くなんかないもん」  
「え?」  
「そりゃさ、いきなりこんな風になってるのは…その  
、びっくりしてるけどさ。」でも、と姫乃は少しだけ  
視線を泳がせた。「仕方ないじゃん、愛の所為。愛の所為だよ。」  
 
 よっぽどそのフレーズが気に入ったのか、それともこの言葉が本当なのか。やけに落ち着いた眼差しが明神を突き刺す。  
 
「そっかぁ」と明神は軽く笑って頷いた。いつもそうだ。  
この娘の言霊は自分を解放してくれる。  
 
みょーじんさん、甘えた声が小さな唇から吐息と共に漏れた。「寒い。早く来て。」  
 
自分の中の「女性」を特に意識したことはなかった。  
女の子と言う自覚はそりゃあっても、生物学的に雌である事実をはっきりと確認するってどんな時だろう。  
そんな中学に入学したあたりから密かに、確実に自分の中に存在していた疑問が氷のように消えていったのを姫乃は感じた。  
 
大きな掌がすっぽりと姫乃の右胸を覆い、やがて優しくその手が動く。  
その動きはゆっくりと、しかし確実に姫乃の呼吸を荒げさせる。  
耳まで熱を持っているのが分かる。羞恥心で目を開ける事すらままならない。  
「こっち見て、ヒメノ。」掌の主が擦れた声で呼び掛ける。  
空いた左手で真っ赤に染まった顔を撫でる。  
恐々と目蓋を上げると、少し怯えたような明神の顔が数センチ先にあった。  
「恐い?」  
「違…」違う、と言う短い声すらあげる事ができない。代わりに、姫乃はかすかに首を横に振った。  
 
こういうことだったんだ。  
下腹のあたりがもう一つ心臓が生まれた様に、脈を打っている。  
ああ私ってやっぱり女だったんだな。  
明神の人差し指が小高い丘の突起を刺激すると、姫乃は甘美な呻きを初めて漏らした。  
 
俗に言う「喘ぎ声」が明神に余裕をくれた。調子に乗  
る、と言っても過言ではないだろう。  
 
「きもちーんだ。」いけないと分かっていても、ど  
うしても口元が緩む。  
明神の答えを求めない質問には応えず、悪戯が見つか  
った子供のように姫乃は俯いた。  
「気持ちいいでしょ?」  
「………」  
無言の姫乃を追い詰めるように、明神は再び姫乃の乳  
房に両手を伸ばす。  
「ここ、すっごい固いよ。」明神はピンク色の突起を  
きゅっと摘んだ。  
「みょー…じんさんっ」  
 
「知ってる、姫乃。これが気持ちいいってサインの一つなんだよ。」  
少し、指に力を入れると姫乃は短く鳴いた。  
 
「どうしたい?」  
耳元で囁くように尋ねられ、またもや下の心臓が大きく跳ねる。  
ふと、姫乃は先程から自分が無意識に下半身布団に押  
しつけている事に気付いた。どうしようもなく、刺激を求めているのだ。  
「し……した…」  
「んー?」  
「下の…方…」  
恥ずかしくて、もどかしくて、涙すら込み上げて来た  
。早く、早く、と祈る様に明神を見つめる。  
そんな姫乃の欲求を、知ってか知らずか明神はただ口元を緩ませている。  
ねえ、ひめのん。姫乃の耳を撫でながら静かに呟いた  
。「言ってる事よく分かんないから、ひめのん自分で触って見せてよ?」  
 
そう言うやいなや、明神はするりと姫乃のパジャマの下を足で下げる。「ハイ、どーぞ。」  
自分でって言われても、と姫乃は抗議の声を上げる。「恥ずかしいよぉ……」  
涙すら浮かべている姫乃の表情が、明神のいじめたい気持ちと優しくしたい気持ちを同時に高める。  
「大丈夫だよ。少しだけでいいから。」  
その言葉を受けて、姫乃はおずおずと右手を太股の方に寄せる。  
 
もうちょい、いじった方がいいかな。快感より羞恥心で満たされている姫乃に、明神は自身の唇を重ねる。んん、と姫乃がうなった。  
唇から耳たぶ、首筋へと舌を這わせて行く。      
自分で、と言われた時にはどうしようかと思ったが諦めたのだろうか。  
人差し指でいじられっぱなしの両胸の天辺がちりちりする程だ。私の体が明神さんの愛撫を渇望すらしているのが分かる。  
ふっ、ふっと耐えるように息を漏らす自分は何だか別人のようだ。  
鎖骨辺りに明神さんの髪の毛が降りてきた。  
 
「んぁ…」突然、明神が胸で一番敏感になっているところを口に含んだ。「ゃ…みょーじんさっ…強く吸わなぃでぇ…」  
どっと寄せてきた姫乃は腰を捩る。  
そんな姫乃を余所に、明神は突起を吸ったり舌でころがしたりしている。  
「ゃーあぁ…なんかへんだよお…」  
姫乃自身の茂みからとろりと何かが溢れた。  
 
指をするりと姫乃のショーツに滑り込ませると、そこはすでに蜜が溢れていた。  
本当なら、姫乃に自分で触って貰いたかったが明神にも我慢の限界かある。  
白く、柔らかい肌。大きさはないが形がよい乳房、戯れを知らない小さめの乳首。何よりも感度が素晴らしくいい。  
 正直な事を言えば、今すぐにでも挿入たいところである。  
「あーあー、ひめのん。」ずりゅ、と中指を第二関節まで入れてみる。ぁん、と姫乃が喘ぐ。「こーんな濡らしちゃって。とろっとろだねぇ」加速して中指を出し入れしていると、姫乃の両足がぱかりと開いた。  
「みょーじんさあ…ん…もっと…」  
ショーツを脱いだのは他ならぬ、姫乃自身であった。「止めなぃでよぉ…もっとおっ………」  
 
「…やーめた」  
「え?」  
「だってさぁ、ひめのんパンツも自分で脱いじゃうしさ。」だから、と明神は不敵な笑みを漏らす。「セルフサービス。」  
 
やだ、と口では言うものの右手が無意識に秘所へと向かう。やがて先程明神がいじったツボを見付け、姫乃は執拗に右手でそこを慰め左手は乳首をこねくり回す。「ゃあんん…みょー…じん…さっ」  
 
明神は、扇状的な姫乃の姿と艶めかしい鳴きを楽しんだ。だが、自分自身を参加させたいのもまた事実。  
ようし、とおもむろに姫乃の両足をこじ開けた。  
 
「ひめのんはエッチだねぇ」  
呼吸が整っていない姫乃は反論すらまともにできない。  
「ちょっとだけ、掃除。」それだけいうと、明神はぐぐっと姫乃の茂みに顔を寄せた。  
 
姫乃は思わずだめ、と短く叫んだ。抵抗と呼ぶ事すらできない非力な抗議は明神の舌によって打ち消された。熱い粘膜に音をたてて侵入する。  
「ぁはっ…んんっ」  
 あまりの姫乃の声のボリュームに明神が小さな口を手で覆った。  
 
やばいぞ、さすがにやばい。  
姫乃のこの感度の良さは男として非常に魅力的である。しかしこのシチュエーションに置いては、いやうたかた荘では――――  
こっから先の営みを行なうのは―――  
そこまで考えて、明神はああっと小さく叫んだ。  
 
 
「みょーじんさん……?」突然手を止めた明神を不審に思い、姫乃は男に声を掛ける。  
「いや〜…ひめのん…世の中甘くないね。」溜め息をつきながら、明神は上体を倒して姫乃に抱きついた。「ないもんはないもんなー…」  
「何が」  
「ゴム。」  
姫乃の頭には、茶色とも橙ともつかぬ輪状のゴム製品が浮かんだ。そんなモノがないから何だと言うのだろう。  
「一応言っとくけど、輪ゴムではないですよ。桶川サン。」思案顔でこちらを見ている姫乃に明神は軽く笑いながら諭す様に言った。「コンドームだよ、コンドーム。」  
ああっと姫乃は無邪気に声をあげた。そういうことかぁ、なるほどね。  
 
 こんなことに、やけに関心している純粋な姫乃を愛しく思う。だが明神は同時にそんな少女に色々やらかしてしまった自分に、じゅくじゅくした罪悪感を覚えた。  
 破裂寸前で痛い位の自分自身はこの際、自分で処理するか―――  
 
「やめちゃうの…?」明神の物思いを敏感に察知したのか、姫乃は恐々と彼の顔を覗き込む。  
「ん、だってほら。避妊具ないとかはね、マズイよ。やっぱさ。」正直、今までまともに避妊した事ないけどな。  
 
でも、とまた姫乃は腰を捩る。明神の火照った体が、姫乃の熱を逃がしてくれない。  
求める様な視線が明神に絡み付く。  
「そりゃー俺だって、このままやっちゃいたいよ。」  
紛れもない本音だった。  
できるならば、住人への配慮も妊娠の危惧もなぐり捨て快楽を貪りたい。  
だが、「自分が守る」とすら豪語したくなる女――それが姫乃だ。そんな彼女を傷付ける様な真似も、恥をかかせる事もできない。  
 
 
断固たる決意を固め、明神はごめんと軽いキスを姫乃に贈った。  
 
正直、腹が立った。  
キスで誤魔化そうとしてる所も、自分を素裸にしておいて一枚も脱いでない彼も。いや、一番腹が立つのは―――  
 
「みょーじんさんっ…ヒドイよぉ〜……」  
こんな場面で泣きだすなんて、馬鹿げているのはわかっている。だが、自分をこんなにまで火照らせたのは他ならぬ明神だ。  
「私の事、ホントは好きじゃないんだ。」  
「何を今更…」ここまでされといて、それはないだろうと明神は眉を潜める。  
だって、と姫乃は俯いてきゅっと明神の服を掴む。「私の事ホントに好きだったら、妊娠とか恐くないでしょっ…」  
そう呟いくやいなや、姫乃は自分の中のダムが崩壊したのを感じた。  
次から次へと大粒の雫がこぼれ落ちる。  
 
 
そんなんじゃない、と陳腐な男の言い訳が明神の頭に霞んだが声にならない。  
 
姫乃を想う気持ちは本物だ。自分自身を信用するのは苦手ではあるが、この気持ちだけには自信があった。  
ただ、やっぱり恐い。  
もし彼女が普通ではない自分のコドモを身籠ったら?  
痛みを与えて、それを嫌って離れていったら?  
 
 
 
「逃げないでよ、明神さん。」明神の弱気な物思いを遮る様に、姫乃は言った。「私だって、恐いよ。だから一人にしないで。逃げないで、一緒にいよ…」  
ふわりと甘い香りが明神の鼻をくすぐった。細い腕が頭をすっぽり覆う。  
 
明神を抱き締めたまま、姫乃は優しく彼の白髪を撫でた。  
 
ごめんな、小さくそう呟いて明神は軽く目元を擦った。  
 
左手で姫乃の黒髪を梳きながら、ゆっくりと唇を重ねた。深く、重く、男が口内に入ってくる。  
 
 
声がでかいなら、自分が受けとめるまでだ。  
姫乃の首筋にあった右手がゆっくり下降して行く。  
大切なモノを撫で回すような、そんか手つきだ。  
「んぁあっ」明神の与える刺激に耐えかね、姫乃は天を仰ぐ。キスを受ける余裕なんてない。  
「だめだめ。ちょっとこっち向いてな。」そう言って明神は少し強引に姫乃を左手でぐい、と寄せる。  
無理だよ、と言わんばかりに姫乃の太股に蜜が滴り落ちた。  
 
ずぷ、と音を立てて明神の二本指が姫乃の中に侵入する。  
「っはあぁ……」求めていたモノをようやく得た姫乃は歓喜の吐息を漏らす。  
「気持ち良さそーな声だしちゃって。」軽口をたたきながら、更に姫乃をかき回す。  
「だってぇ……」  
恍惚とした姫乃の指先から明神の襟元に触れた。「みょーじんさ…お願ぃ………」早く、と姫乃は絶え絶えに訴える。  
「何が?」意地悪く微笑んで明神は姫乃を攻める。「何が欲しいの、ひめのんは。」  
「ぃじ…ゎるぅ……」  
快感に涙すら流し、姫乃は明神にすがりついた。  
明神の耳元で蚊の泣くような声で呟く。  
「……を…に……れて……」  
 
「よくできました。」  
姫乃の呟きに満足した明神は愛液で少しふやけた指を抜いた。  
 
 
明神はゆっくりと膝の上の姫乃を布団に横たわせる。  
衣擦れの音を立てながら、明神の上身が露になる。「いい、姫乃?」  
その質問に答えずに姫乃は両足をぱかりと開いた。  
 
「力むなよ、ますます痛いから。」  
明神の言葉に姫乃は素直に頷く。  
 
ずぷぷ……と明神自身がゆっくりと潜りこんで行く。  
姫乃はと言うと、明らかに何かに耐えるように顔を歪ませている。「ヒメノ、息止めちゃダメだって…」  
 
「う……んんっ」  
ゆっくり、確実に明神自身は進みとうとう根元まで到達した。  
 
「…全、部入ったよ…ヒメノ…」息を少し上げながら、明神は姫乃の頬を撫でる。  
「…へへ」  
姫乃は痛い、と口にすら出さないものの明らかにきつそうに眉間に皺を寄せる。  
 
――やばい。  
姫乃にさんざ、止めたきゃ止めたるだのゴムが無いからここまでだの言っていたのに。  
姫乃の中は想像以上のモノであった。  
愛液と肉壁がねっとり絡み付き、きゅっと明神を締め付ける。  
 
 
―――動きたい……  
 
 
「動いていいよ、明神さん。」そんなに痛くないし、と姫乃は健気に笑って見せた。  
どうしようもなく愛しさを覚え、明神は姫乃の額にそっと口付ける。「…行くよ?」  
うん、と脂汗が浮かんだ笑顔で姫乃は頷いた。  
 
 
時間をかけて、腰をスライドさせる。ピストン運動と呼ぶ事が憚れる程、慎重にゆっくりと姫乃を慣らしてゆく。  
姫乃の足に触れると、さっきよりはかなり力が抜けて来たようだ。表情からも痛みの色がかなり薄らいでいる。  
 
「はっ……ぅんんっ」  
「きもちよくなって来た…?」  
「んっみょ…ぉ…じん…さんっ」  
「俺もすんごい気持ちいーよ…」  
姫乃が喘ぎを上げるたび、明神を締め付ける。  
二つの肉体がぶつかり合う音が、狭い室内に響いた。  
 
いよいよ明神にも限界が近づいて来た。  
「ごめ…ヒメ、ノ…俺もー…っいきそ…っ…」  
「ゃあっ…みょー、じん…さぁ…んっ」離れないで、と姫乃はがしりと明神の身体にしがみ付く。  
 
ヒメノ、と明神は短く叫び華奢な身体を加減も忘れて抱き締めた。  
 
姫乃の中で、明神は果てた。  
 
 
右腕がひどく痺れていて、それで目が覚めた。  
 
なんで押し入れにいんだ?  
 
「おはよー…」  
「うおぅ!?」  
 
しばし二人の間に沈黙が流れる。  
先に沈黙を破ったのは姫乃だ。「…そんなに驚く事ないじゃん。まさか、覚えてないとか言わないでよ?」  
言葉がきつい割に、不安そうにこちらを見る様子が可愛らしい。  
「さぁー?なんだったら覚えてるかどうか、再現してみよっか?」  
 
ばか、と姫乃が胸元に忍び寄ってきた明神の手をつねる。  
「バカなのはねぇ、仕方ないんだよ。桶川サン。」  
今度は足を絡ませながら、明神はぐっと姫乃を抱き寄せる。  
「愛の所為だよ、愛の所為。」  
 
 
襖の隙間や、穴から眩しい光が漏れている。  
それらの光や風の匂いだけでも、今の姫乃には今日は絶対良い天気だろうと想わせた。  
 
 
 

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