「ランララ〜ンラ〜ラララララ〜」  
機嫌の良い鼻歌が、シャワーの音にまぎれて耳に心地よく響く。  
ガクは風呂場の入り口周辺を行ったり来たりしながら、自分の世界に浸っていた。  
「ああ、マイスウィート・・・いいなぁ・・・」  
うたかた荘の風呂は共同だ。この後にはあの阿呆野朗・・・明神が入るのだろう。  
俺のスウィートの残り湯・・・つまりは聖水にあの男が浸るのか・・・。  
考えただけで背筋が寒い。(死んでいるので当然といえば当然だ)  
少しネガティブな妄想に耽っているところに、バチャン!という激しい水音ときゃっという軽い悲鳴が聞こえた。  
「!?」  
鋭い眼光で浴室を振り返るが、聞こえてきたのは予想に反した楽しそうな声だった。  
「やだっ!アズミちゃん脅かさないでよ、もう!」  
どうやらアズミがいたずらで姫乃をからかったようだ。  
あははと笑いながら、姫乃はアズミに水鉄砲をして見せているらしい。  
 
そんな二人の声を聞きながら、ガクは壁を無視し、浴室をぐるぐる回るように歩き出した。  
女性の無衣の姿など縁遠かったガクは、姫乃の裸体などもちろん見たことなどない。  
・・・だが知識はそれなりに豊富なつもりだ。  
「はぁ・・・ひめのん・・・マイスウィート・・・」  
風呂場の窓が面する高目の塀との狭い暗闇の中、ガクは一人姫乃の入浴する媚態を想像する。  
自分とはちがう、服の上からでもわかる華奢な体つき。  
濡れそぼった黒髪はどれだけ美しいのだろう。  
(や・・・ガクさん・・・)  
ああ、あの小ぶりな胸に顔をうずめて眠れたら・・・  
「っきやああああああぁぁああっ!!?」  
ガクの妄想を、他の誰でもない、当の姫乃がぶち破った。  
先ほど、アズミに驚いた声とは違う、明らかに切羽詰った、危機迫る悲鳴だった。  
バタン!!ドタンッ!  
うたかた荘の中から激しい物音がする。  
一瞬で悟った。  
(婚約者が貞操の危機だ・・・!)  
頭よりも空気の身体が動くほうが早かったかもしれない。  
バァン!更に音が響く。  
それを聞くより早く、一瞬の間さえ置かず、ガクは浴室の壁をすり抜け叫んだ。  
「「ひめのんっ!!?」」  
 
「・・・・・っひ・・・!?」  
 
―――時間が凍った。ガクが想像していたより一段と儚い骨格の、一糸纏わぬ姫乃は  
浴槽に突っ立ち、片手で小さな両乳房を押さえ、もう片方の手で秘部の茂みを隠し、色をなくしていた。  
正直、初めて見た発展途上の少女特有の神秘的な美しさに思わず見とれたが、  
そんなガクの思考を吹っ飛ばす大音声で、姫乃は絶叫した。  
「いぃやああぁぁっ!!なんなの二人ともきゃあああああぁぁ!!ちょっ・・出てってよぉぉっ!!」  
顔を真っ赤にし、石鹸やらタオルやら、手当たり次第に自分ともう一人・・・  
明神に向かって全力で投げつける姫乃に全力で萌えながら、ガクはそそくさ浴室を飛び出す。  
丁度その時、がつんという鈍い音と、どしゃぁっという、  
まるで一丁前の男が風呂場で転倒したような音がうたかた荘にこだまを伴って響き渡った。  
 
「・・・で?」  
禍々しい怒りのオーラを纏い、姫乃が口を割った。  
ガクと明神はうなだれて、ソファで足を組み、頬杖をついた少女を見返した。  
「あー・・・ひめのんつまりだねぇ・・・」  
たんこぶを作った明神が、弁解をしようを口を開くが、その先を取ったのは眼の据わりきった姫乃だった。  
「ガクさんが私がお風呂入ってる外を散歩してて?  
 ソレを私がちかんだと勘違いして?  
 私の悲鳴に驚いた明神さんとガクさんがお風呂になだれ込んできた・・・ってわけよね?」  
どこか棘のある物言いに、大の男二人はそれでも反論出来ず、うなだれて声をそろえる他無かった。  
「「仰るとおりです・・・」」  
 
それからこってり30分も油を絞られ、ガクはしょぼくれて部屋に戻ったが、  
その日はさすがに一睡も出来ず朝を迎えたという。  
 
 
END  
 

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