グチャ・・・と地下水道に淫靡な音が響く。
「・・・ぃ・・・ぅあっ」
姫乃は込み上げる苦痛とも快感とも分からぬ感情を必死に嚥下した。
「フン、生け捕りとはよく言ったものだなコモン。
コレが望みか」
苦々しく嘴を動かしてホルトが呻く。
ホルトが例の少女を拉致してきたのは小一時間前のこと。
それからずっと、この華奢な少女はコモンの玩具と化していた。
「なぁに怒ってんだよホルト。いいだろ?リーダーはお前に任せるつってんだ。
退職手当、退職手当。」
無垢な笑顔とは対照的に、行っている行為は手酷いものだった。
「や・・・ぁっうあぁ!」
真新しいセーラー服は鋭い爪でずたずたに切り裂かれ、もはや衣服の意味を為していない。
以前、下水道に流れてきたロープや鎖で姫乃の四肢は固定され、抗うことも許されない。
両手をまとめ、頭上に引きあげようとする力とは別に、その下半身・・・両足はそれぞれ30度の方向に開かれ、中心にはコモンの指が突き刺さっていた。
流石にあの長い爪は形状変化で短くされてはいたが、それでも乱暴で気まぐれな動きをする指を二本も飲まされた姫乃はたまらない。
すでにコモンがごく軽く指先を動かすだけで、姫乃の膣は限界に達してしまいそうだった。
「ところでさぁホルトォ。この身体でも出ると思う?」
「・・・何がだ」
グプンと水音を立てながらコモンの指が鉤方に曲げられ、姫乃の悲鳴が空気を裂く。
「種。」
顔色を変えずに自分の方を振り向いたコモンに、ホルトは苛立ちながら吐き捨てた。
「知るか。実態は無いのだから無理だと考えるのが順当だろう?」
「あ〜、だよな、やっぱ。」
コモンは姫乃の体内から多量の蜜と共に指を引き抜くと、ぐったりとロープに体重を預けた姫乃の胸を緩急をつけた動きで撫で回し始める。
「・・・っく・・・ひっやあっ」
「でもさでもさ。陰魄って自分実体無いくせに擬似実態みたいなの出す時あんじゃん。
お前がノシてきたって奴のカナヅチとか火の玉とかさ。
俺らもガンバれば白墨くらい出んじゃねぇ?」
「・・・」
まるで子供が親に知らないことを尋ねるかのように純粋で素朴なさまで疑問を口にするコモンに、ホルトは肌が粟立つのを感じた。
「・・・勝手にしろ。俺はバオとキヌマを探しに行ってくる。・・・いくらなんでも遅すぎる」
言うが早いかホルトは風を切り、闇の中に溶けていった。
残されたコモンはつまらなそうに姫乃を振り返り、ぽつりと言う。
「所詮鳥か。」
「あな・・た・・・何が目的なの・・・?」
悲鳴と嬌声で擦れた喉を震わせ、姫乃はコモンを睨み付けた。
「こんな・・・これが目当てじゃないでしょう!?
・・・やっぱり、明神さんを・・・」
衣服を裂かれ、自由を奪われながらも、姫乃は気丈な態度を崩さなかった。
今朝うたかた荘を出た時の光景を、何年も前のアルバムでも見返す気持ちで反芻する。
気難しい顔で将棋を指してた明神さん。
ガクリンがとぼけたフリをしながら必死で笑いを堪えていたのを知っている。
アズミちゃんはまだ寝てたっけ。風邪・・・ひかなきゃいいな。
エージくん・・・明神さんと行き違いになったって言ってたけど・・・あの三人・・・大丈夫かな・・・。
「さあね」
一瞬、思考を読まれたのかと全身の毛穴が引き締まる心地がした。が、すぐに自分の問いかけへの返答だと思い至る。
「まあ、でも・・・」
「ひっ・・・!」
先程までの乱暴な扱いとは打って変わって、ひどく甘く柔らかに、戒められた手首からわき腹までをスルスルと撫でられて、姫乃は引きつった声を出す。
コモンは愛撫を止めると、ぐいっと姫乃の頤を掴み、自分の瞳を覗かせた。
「だけど、もしあんたが俺の分身を孕んだら?俺は人間になったことになるんじゃないのか?」
地下だというのに一陣の風が通り過ぎていった。姫乃は色を無くした眼と唇で、生者ならぬ男を見つめた。予想だにせぬ展開に、彼女はただ震えることしか出来なかった。
「さて、もういいよな。本題本題っと」
呆然とする姫乃を無視し、コモンは姫乃の太ももの間に手を伸ばす。
「っ・・・!」
あまりに突然の指の進入に、少女は悲鳴すらあげることが出来なかった。
「なんだかんだ言って、さっきからかなり感じてたみたいだし。
いい加減大丈夫でしょ?」
指を二本に増やし、クチュクチュと水音を立てながら、コモンは微笑んだ。
「あっ・・はぅっ・・・ん・・やあぁぁ」
「まぁどーなるかわかんないけど。実験させてもらうよ。お姫様」
指が引き抜かれる喪失感が姫乃を襲ったが、それ以上の恐怖に、彼女は固く瞳を閉じた。
わずかな衣擦れの音の後、姫乃の身体は破瓜の痛みに仰け反った。
「ぅああぁぁっ・・・ぃやっ!抜ぃっ・・・やめてぇっ!」
姫乃の哀願はもちろん聞き届けられるはずも無く、コモンは捕らえた少女の狭すぎる膣道に、己の欲望の竿を打ちつけた。
彼女がこれほど深く死者の領界へ踏み込む力さえなければ、こんな仕打ちにあわずに済んだであろうに。
もちろん、並みの生者の女では、これほど深くアニマと交われるはずが無い。
そして、実体を持たぬコモンに、死後、ここまで強い快感を味わわせたのも姫乃が初めてだった。
「・・・っいい締まりしてんなァ・・・。てっきりあの案内屋とデキてると思ってたのに。
・・・あんな顔して野郎以外に奥手なのか?」
「ちがっ・・明神さんはそんな人じゃっ・・・あぁっ!」
四肢を固定された姫乃を揺さぶり、コモンは小ぶりながらも形の良い乳房に自身の証を残しつつ、尋
問を続ける。
「じゃあアレだ。男色か不能だろ。当たり?」
途端、コモンは整った顔に生暖かい衝撃を受けた。
空気が止まり、時間が進むことさえ躊躇させる。
そんな一瞬が辱めを受ける少女と侵略者の間に流れる。
「・・・あァ?」
顔についた唾をゆっくりとぬぐい、姫乃をにらみつけると、
「・・・あんたさぁ。自分の状況分かってる?ん?」
言葉と共に、今までずっと触れなかった肉核をいじる。
電気が流れるように襲ってくる快感に、少女は歯を食いしばった。
「あっ・・んぁっ・・・っっ・・・ぅ」
引き結んだ唇から飲み込みきれず洩れる嬌声を聞きながら、コモンは冷たい眼のまま何度も突き上げる。
女核を嬲られ、まだ誰のものでもなかった腔内をコモンの肉棒で犯され、確かに官能を感じてはいたが、それよりも姫乃には怒りと悲しみの感情の方が遥かに大きかった。
「勝手に・・・すればいいわ。っあ・・あなたみたい・・な
哀れな霊に・・・っ・・み・・明神さんは負けたりしないし・・・わっわたしもっ!
・・・ぜっ・・絶対・・降伏したりしないもの!!」
姫乃は気丈に言い放ったが、コモンは素知らぬ風に行為を続ける。
「はいはい。人間の女は強いね〜。
・・・よくもまぁ、こんなに激しく交尾して落ちないこと。
・・・ああ、そっか。生娘だったんだもんな」
ひときわ強く腰を打ち付けると、姫乃の体内でコモンの欲望がはじけた。
「あ。ホントに出た。」
「あっ・・・ああ・・・」
まだあどけなさの残る少女の膣から自身を引き抜き、まだひくつく姫乃の陰唇から流れる白濁を
満足そうに眺めると、コモンは軽く衣服を整え、少女に言った。
「ホルトの気配がさっきからしない。かわりにずっと遠くにいた奴が
結構な速さで近づいてるよ。お姫様」
脱力する姫乃の耳にも微かだが、靴がコンクリートを蹴る音が聞こえた。
「そこで見てな。降服じゃない、敗北する案内屋の雄姿をね」
ひときわ強く、靴音が坑道内にこだました。
END