「ガクさん!」  
平和なある日、姫乃が怒った様子でガクに言った。  
たわいもない会話をしている時に、いつもの調子でガクが「好きだよひめのん」と言った後の怒鳴り声。  
いつもはこんなガクの言葉を気にしない姫乃がいきなり怒鳴った為、明神はじめ、いつものように大騒ぎをしていた皆は一気に静まり姫乃の次に出る言葉を待った。  
「ちょっときてもらえませんか?」  
少し不機嫌な調子で言うと、ガクの反応も見ずに踵を返し自分の部屋に行く姫乃。  
「こんな昼間から堂々とデートなんて、大胆になったなぁひめのん」  
喜々として姫乃を追うガク。  
『ガク…ひめのんの部屋を出て来る時は今と逆なテンションで帰ってくるんだな…』  
明神達はそんなガクを哀れむような目で見送った。  
 
 
「どうしたんだいひめ…」  
「どうしたじゃないです!いつも思ってたんですが…なんでそう好きとか簡単に言えるんですか?!」  
ガクが言い終わる前に姫乃の怒鳴り声が響いた。  
「そんな風に言われても嬉しくないです!!」  
実際、姫乃は何で自分が怒っているのかよく分からなかった。  
でも何故か、簡単に、軽々しく好きと言うガクが許せなかった。  
他人もいる前でそんな事を言うガクに、もやもやする怒りを感じていた。  
 
「ひめのん…嫌なのか?」  
ガクが落ち込んでいる声を出した。  
「ええ、嫌ですよ!!」  
そういいぷぃっと顔を背ける姫乃。  
そんな仕草も可愛い、と思っている場合ではない。  
ガクは悩んだ。が、自分の想いが自分の愛する人を苦しめているなら…伝わらないのはとても苦しいが、仕方ない。  
「分かったよ、ひめのん」  
そういい、ドアの方に歩を進めるガク。  
「ただ」  
ガクは足を止めた。「俺は本当にひめのんが好きなだけだから、ひめのんが困った時は俺が守る。」  
何故か、姫乃の胸は苦しくなった。  
なんで怒ってるんだろう…  
ガクさんは、いつも私を守ってくれてる…  
私はただ…  
ガクさんが、本気で私の事を好きなのか、まだ子供な私をからかってるだけなのか分からなくて…  
からかってるんだったら、もうこれ以上言わないでもらいたいって思ったから。  
これ以上好きになる前に、私がガクさんと両思いだなんて勘違いする前に…  
 
自分の思いが苦しくて、もどかしくて、姫乃から涙が溢れた。  
「ガクさん…」  
絞り出すような声。  
壁を半分まですり抜けた所でガクは姫乃を振り返った。  
 
「私…ガクさんの事が好きみたいなんです…」  
ガクは驚いた表情を見せた。  
「だから…冗談なら、私にもう好きって言わないでください…」  
そこまで言うと、姫乃は俯いて静かに涙を流した。  
ガクはゆっくりと近付いた。  
「ひめのん…俺、こんな調子でしか伝えられないが…俺は本気でひめのんが好きだ」  
そう言い頭を撫でる。  
触れられないはずのガクの温かい手を感じ、姫乃は顔を上げた。  
「最低だな俺は。愛する人を泣かせるなんて。」  
姫乃はガクに抱き付く。  
触れられないはずのガク。  
それが何故か今日は、細いが姫乃がすっぽり治まってしまう肩の広さや、体温まで感じられた。  
姫乃もガクも混乱した。  
今日はお互いの感触が分かる。  
驚きながらお互いの頬に触れる。  
「ひめのん、俺に触ってる?」  
「ガクさんこそ…」  
驚いた顔で目を合わせる。  
ふと、ガクの顔が近くなった。  
ガクの髪が姫乃の顔に触れる。  
睫毛同士までが触れそうな距離。  
唇には温かい感触。  
しゃべれない、息ができない。  
すっと、ガクが離れた。  
「ごめんひめのん、触れられるって思ったら我慢できなくなってしまって」  
正直にガクは言った。  
 
自分の欲求を押さえられなかった事に落ち込むガク。  
姫乃はおかしくなり笑った。姫乃は少し背伸びをして、よしよしとガクの頭を撫でた。  
さらさらな髪が姫乃の指に絡んだ。  
「ひめのん、今日は、ひめのんの感触を覚えても良いかい?」  
次はいつ触れられる事ができるか分からないから…と言うのをガクは押さえた。  
言葉に出してしまったら、本当にもう触れられなくなってしまいそうな気がしたから。  
姫乃も、ガクが思っている事を感じ取り、微笑んで頷いた。  
ガクは、腫物に触れるように姫乃に手を伸ばした。  
艶のある髪、長い睫毛、雪のように白い頬、柔らかな唇。  
ガクの手が下に下りていく。  
が、途中で動きが止まる。  
目を閉じながら、ガクの手を感じていた姫乃はゆっくりと目を開けた。  
ガクの手は、姫乃の胸の前で止まっていた。  
触って変態扱いされたら、嫌われたらと思うと安易に手は出せない。  
でも触れたい。  
躊躇しながら、姫乃の顔を見ると、目が合った。  
姫乃は顔を赤くし、照れ笑いをして言った。  
「触っていいよ、だって、次は―」  
姫乃の口の動きが止まる。  
代わりに涙が零れた。  
 
―ああ、ひめのんも俺と同じ事が不安なのか―  
そんな姫乃が愛しくなり、ガクは無理矢理キスをした。  
そして涙を舌で拭った。  
「泣いてばっかりだね、私…」  
無理に笑って見せる姫乃が可愛くて、愛しくて、ガクは優しく胸に触れた。  
ビクっと体を反応させる姫乃に、ガクは一瞬手を離したが、すぐにまた触る。  
「ひめのん、嫌だったら言ってくれ。」  
耳元でガクは姫乃に囁いた。  
「大丈夫、だけど…私胸ないからなぁ…」  
「気にしてるのか、そんな事。俺はひめのんの胸に触れて凄く嬉しい。」  
少し照れながら姫乃はガクの手に体を任せた。  
ガクが服の中に手を入れる。  
ひゃ、と声を出し、姫乃はガクの手がこれ以上進入できないように押さえた。  
「ゴメン、でも俺ひめのんを抱きたい。嫌か?」  
姫乃は顔を真っ赤にさせながらも首を振った。  
「で、でも、恥ずかしいです…」  
ガクと目を合わせるのも躊躇しつつ姫乃は言った。  
すると、何を思ったか、ガクは上半身に着ていたものを脱ぎだした。  
「ななななな何してるんですかぁ?!」  
うろたえる姫乃にガクは、  
「これで恥ずかしくないだろう?」  
と聞いた。  
方向が間違っているようなガクの優しさに姫乃は吹き出した。  
 
「はい、大丈夫です」  
姫乃が笑いながら言うと、ガクは良かった、と言い姫乃の洋服を脱がしにかかった。  
上半身がブラジャー一枚になると、恥ずかしそうに姫乃は俯いた。  
「いいよひめのん、ひめのんが嫌なら俺はしないから」  
優しくいうガク。  
「恥ずかしいだけですから、大丈夫です。」  
顔を真っ赤にしながら上目遣いにガクを見る姫乃。  
そんな仕草がとても可愛く、ガクは姫乃をきつく抱き締める。  
姫乃がガクの首に手をかけると、ガクは姫乃のブラジャーのホックを外した。  
「ひゃぁあっ」  
姫乃は叫び、胸が見えるのを避けるためにガクにぴったりとくっついた。  
「…あんまり…見ないでくださいよ…」  
ガクに気を使わせないために、姫乃はくっついた体を離した。  
「…綺麗だなひめのん」  
大きくはないが、形の良い胸に、綺麗なピンクの実が突起している。  
「もう…」  
あんまり見るなって言ったのに、と続けるつもりだった言葉が、ガクが胸に直接触れてきた事で止まった。  
そのまま、ガクは胸を舐めた。  
「やぁ…だ…恥ずかしいぃ…」  
ガクは舌を止めなかった。  
 
姫乃の胸の突起が自分の舌を求める様に立っていた事もあったが、ガク自信が欲求をもう押さえられなかった。  
片方の乳首を舐め、もう片方は指でまさぐる。  
「あ…やん、ガクさん…っ」  
姫乃から零れる甘い嬌声を聞き、胸をまさぐっていた手をガクは下に伸ばした。  
「あっ…」  
下着の上から姫乃の股間に触れると、姫乃は一際甘い声を出し、体を震わせた。  
 
「ガクさん…そこは…」  
目をそらしながら姫乃は言った。  
しかしそこは下着の上からでも分かるくらい湿り気を帯びていた。  
「ひめのん、ここを触るのは俺が初めてか?」  
言ってからガクは後悔した。  
こういう無粋な質問が姫乃を怒らせてしまうんだ、と恐る恐る姫乃を見る。  
しかし姫乃の反応はガクの予想外だった。  
「………はい…」  
今まで以上に顔を赤らめながらこくこくと頷く姫乃。  
ガクはそんな姫乃の緊張を解くため優しくキスをし、股の間に入れた手を下着の中に滑り込ませ動かす。  
「ひゃぁぁあんっ!!」  
感じた事のない感じに姫乃は喘いだ。  
初めての姫乃をいたわる様に、優しく指を動かすガクの指に姫乃から溢れる液が絡み付いた。  
「あん…や…やだぁ…」  
こんな声、恥ずかしくて聞かせたくない…  
自分から出る声を押さえる様に、姫乃は口を手で押さえた。  
ガクはその手を避ける様にキスをした。  
「は…んっやぁ…」  
姫乃がガクの口の中で喘ぐ。  
その仕草が、表情が、ガクにとっては物凄く愛しく、まさぐる手を早めた。  
「あんっ…ガクさん…あ…そこ…ダメですっ」  
 
ガクの手が触れる事によって大きくなった芽を優しく弾くと、姫乃は一層体をビクビクと反応させた。  
しかし、もう止められない。  
顔を赤くし、目を合わせない仕草や、言葉や、反応が、ガクにとって姫乃を愛しく思わせる要因であり、興奮を押さえられなくする原因だった。  
「ひめのんはここが弱いんだな」  
わざと姫乃の耳元でガクは囁いた。  
姫乃が顔を赤くする仕草が可愛く、恥ずかしそうに自分を見る目が余計にガクの欲求を押さえられなくした。  
体をビクつかせる姫乃をいたわり、ベッドへ寝かせ、姫乃の反応を見つつ穴へ指を入れると、姫乃は辛そうな表情をした。  
「痛いかい?」  
ガクが聞くと、姫乃は返事をする代わりにガクをぎゅっと抱き締めた。  
もう押さえられない。  
…スイッチ入った…  
「入れるよ、ひめのん」  
自分の服を脱いでから姫乃が着ているものを脱がす。  
確認していくようにゆっくり脱がしていくガクに、姫乃は恥ずかしそうに頷いた。  
「ひめのん、痛いと思うが良いかい?耐えられなかったら止めるから…」  
ガクは自分のものを姫乃にあてがい、姫乃を撫でながら言った。  
 
「大丈夫です…頑張ります」  
撫でていた手を繋ぎ、姫乃は微笑んだ。  
ゆっくりと、ガクが姫乃の中へと入る。  
「あ…うっ…」  
繋いだ手を握り締め、姫乃は苦痛に耐えた。  
「痛いかい?…ごめんよひめのん…」  
おろおろとしながら謝るガク。  
姫乃の苦痛に歪む表情は見たくなかった。  
それを感じ取ってか、姫乃は笑顔で、  
「ちょっと…痛いですけど、嬉しいです」  
と返し、ガクの頭を撫でた。  
ゆっくりとガクは突き進み、奥まで入ると、よしよしと姫乃を撫でた。  
「ひめのん」  
ガクは姫乃の耳元へ唇を近付け、  
「愛してるよ…」  
と呟いた。  
「私も…ガクさんが好きです…」  
ガクの目をしっかり見つめ姫乃は返した。  
それを合図に、ガクは律動を始める。  
姫乃から溢れる甘い蜜に混ざった血を見た為か、いたわる様なゆっくりとした動き。  
―痛かったのに…なんか変な感じ…気持ち良くなってきちゃった…―  
姫乃の意識が痛みから快感に変わった時、姫乃からは甘い嬌声が漏れていた。  
女の顔、まだ誰にも見せた事のない艶っぽい顔を見ることができた…  
初めて香る姫乃の色香、女の匂いに、ガクは動きを徐々に早めた。  
「やっ…あぁっん…」  
嬌声と体の触れ合う音が室内に響く。  
 
―もっとひめのんの奥に入りたい―  
ガクは姫乃の足を持ち上げ、激しく奥まで突いた。  
「ああぁぁっ!あ…ダメ…ガクさ…ん…恥ずっかしいっです…」  
ガクが突くせいでしゃべりづらそうに喘ぎながら姫乃は訴えた。  
「…嫌かい…?」  
止めたくない動きを止め、ガクは聞いた。  
姫乃はゆっくりと目を開け、  
「気持ち…良いです…」  
と言った。  
「でも…おかしくなっちゃいます…」  
姫乃自身、快感に飲まれそうな自分が、そしてそれをガクに見られる事が怖かった。  
「…俺はそんなひめのんも見たい」  
ガクは言うと同時に姫乃を激しく突いた。  
同時に胸をまさぐると、姫乃は、  
「いやぁあぁっ!だ…め、はん…」  
と声を強くした。  
―ひめのん…可愛い…―  
ガクはそこへ舌を這わせた。  
ピンク色の乳首を舐め、口に含み、甘噛みすると、姫乃の中が一際じゅわっと濡れるのが伝わった。  
―変…私の中で何かが爆発しそう…―  
ガクも我慢の限界が近かった。  
姫乃の足を自分の肩に乗せ、動きを早める。  
「ああぁっ!ガクさん…も…ダメぇぇ…!!」  
甘い声。  
それが余計にガクを刺激する。  
 
姫乃の快楽に悶える顔や声もガクの限界を早める。  
「や…はぁあっ!ダメ、ダメ、ダメぇっ!!」  
姫乃の快感が爆発しそうになる。  
「ひめのん、俺…もう限界だ…」  
ガクは律動を早める。  
「あぁっ!私、もう…だめぇ!いやっああぁぁあぁぁああっ!!」  
姫乃の快感が弾けると同時にガクも精を姫乃の中へ吐き出した。  
 
 
「ひめの〜ん、あんまり怒るなよぉ?ガクなんて気にしなくてもさぁ」  
明神の声と足音に、二人は抱き合いながらビクッとし目を見合わせた。  
―ヤバい、こんな真っ裸なトコ見られたら何言われるか…―  
明神が扉に手を掛けると同時にガクは扉から顔だけを出し、  
「開けるな」  
とだけ言いすぐに部屋に消えた。  
「あぁ〜…」  
『ガク、あんな真剣な顔で…ひめのん相当キレてて慰めてんのかな』  
明神はガクの切羽詰まった表情に、姫乃の部屋の扉を開ける事なく踵を返した。  
遠ざかる明神の足音に、息までも止めていた二人は笑い合った。  
『―あれ?ガクってあんなに血行良かったか…?』  
ガクの顔色を思い出し、少し疑問は残ったが気にせずに明神は歩を進めた。  
 

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