今年も残り少なくなっていた。
二学期の終業式があったので、学校は今日まで。
明日から冬休みが始まると思うと、周囲からぽつりと取り残されたように感じて嬉し
いような寂しいような複雑な気持ちだ。けれど、今年からは寂しくない。姫乃には何
よりも大切な家族が出来たのだから。
年も違うし、趣味なんて全然分からないし、一体何をすれば喜んでくれるのだろうと
ここ数日ずっと思い悩んでいた。それほどに、明神はあっけらかんと笑いながらも自
分の心の内を決して見せてくれない。
その理由はもう分かっているけれど、せめてもう少し近付きたいなー。そう思いなが
ら一生懸命考えて用意したプレゼントが学生カバンの中で所在なげにかさかさと鳴
っている。すっかり乾ききって道路を這っている枯葉が小さな竜巻に巻き上げられ、
姫乃の足元で子猫のようにじゃれていた。
「あ、ひめのん。おかえりー」
うたかた荘の玄関を掃除していた明神が、姫乃を見つけてからりと笑う。過去の影
など微塵も感じさせないのが、少し哀しい。
「ただいまー」
寒さで鼻の頭を真っ赤にしながら、姫乃はちらりと明神を盗み見た。今夜はクリスマ
ス・イブ。出来れば一緒にいたいと思いながら言葉をかける。
「あのう、明神さん」
「あん?」
「私ね、プレゼントがあるんです。受け取って貰えますか?」
一週間というもの、色々考えて選んだプレゼントがカバンの中にある。
「へー、人から何か貰うなんて初めてだよ」
明神は頭を掻きながら無邪気に喜んでいた。その姿に何故か罪悪感に似たものを
憶えて、姫乃は少しだけ慌てる。
「じゃあ、今夜テレビ見せて下さいね。ケーキも買ってきます、から。今日はクリス
マス・イブだし」
「あ、そっか。じゃあおいで。待ってるからさ」
いつものように反応を返してくる明神に心の中がざわめいていた。
もしかしたら、今夜この人ともっと近付けるかも知れない。
そんな予感があった。
オワリ