ここ数日、目覚まし時計を付け忘れていていつも明神さんに  
起こして貰っていた。でも流石に悪いかな、と思って  
ダンボールの奥から目覚まし時計を引っ張り出したは良いが、  
乾電池が無い  
「・・・うそ。」  
あたりに乱雑におかれたダンボールを開き乾電池を  
探したが見つからない。  
「仕方ない、かあ・・・。買いに行かなきゃ。」  
パジャマに上を羽織って3号室の扉を開き廊下へと出る  
廊下は暗く、見通しも悪い  
壁を頼りに真っ直ぐ歩くのが良いかな、と考えて  
壁に両手をつけて恐る恐る歩いた  
床が抜けたりしないことを祈りながら  
「怖い・・・。」  
何かが住んでいる、うたかた壮  
人間じゃないホカの何か  
「そうだ、エージ君に一緒に行って貰おう」  
廊下を半分ほど来てから3号室に引き返しエージ君を  
私は呼びに言った  
でも、3号室にエージ君の姿は無く、ダンボールと敷かれた  
布団だけの寂しげな部屋のまま  
 
居ないなら仕方が無い、私は一人でうたかた壮を出た  
上を見上げると星が見当たらない  
ただ街灯が道路を照らしているだけ  
流石、東京!? って奴なのかなぁ!!  
「あ、そういえば電池売ってるところってどこ?」  
落ち着いて考えてみれば私はこのあたりの地理を全く知らない  
「み・・・明神さん、起きてると良いんだけど。」  
くるり、とうたかた壮の方に向きなおして管理人室へ急いだ  
 
管理人室の前に来て見ると管理人室の扉の隙間から光が漏れている  
 
「起きてるんだ・・・良かったあ。」  
扉を2回ノックをすると返事が返ってきた  
「んー? ひめのん?」   
これ以上真っ暗な廊下に居たくない  
後ろにおばけとか出てきたらどうしよう、とか  
さっきからそればかりしか考えている  
いや、他のことを考える余裕なんてなかった  
「入っても、良いですか?」  
「ああ、良いよ。」  
その声に胸を撫で下ろして管理人室の扉を開いた  
 
明神さんは布団の上に寝転がりながら本を読んでいた  
でもサングラスを外している目は眠そうにして  
「どうした?」  
本から顔をあげて優しい目で此方を見てきた  
思わず、本来の目的を忘れそうになる  
「乾電池ってどこに売ってますか?」  
「電池ならココにもあるけど。それで良い?」  
「あっ、はい! 勿論。」  
整頓された、というかあまり物の置かれていない部屋  
男の人の部屋って始めて入ったなあ、と自分がココに居ること  
を不思議に思いながら部屋を見回す  
「単3で良いの?」  
「はい。」  
受け取って本来の目的を果たしたのだが  
あの暗い廊下をまた一人で歩くのは怖い  
「なんか、ひめのん壊れそーな顔してるけど。」  
「はっ!?」  
急に目の前に明神さんの顔(グラサン無し)が現れて  
反射的に2,3歩後ろにさがった  
その時、思わず滑って廊下へと倒れてしまった  
頭を廊下で思いっきりガコンといってしまった・・・痛い・・・  
 
「だ、大丈夫か?! ひめのん! 驚かして御免な!」  
明神さんはこけた私を見て少し焦った様子で  
近付いてくる  
よく見たら綺麗な顔だなあ・・・と冷静に考えると  
微妙に恥ずかしい事を考えていた  
顔を近付け 明神さんの唇に私の唇を重ねた  
すぐに離したけど  
「・・・あれ?」  
自分でも何してるのかわからなくなった  
「え、何?」  
明神さんも状況が理解できない様子で  
 
はっとして、思いっきり後ろにさがった  
 
怒られてデコピンされる(明神さんのデコピンは結構痛いのだ)と思って  
謝ろうとすると、それは遮られた  
「ひめのん・・・・、欲求不満か何かですか。」  
「ちっ違いますっ!!」  
手を前に出して、思いっきり否定するけれど顔は赤くなっていく  
指の隙間から、見える明神さんの顔  
明神さんは頭を抱えていた。それがやけに可愛く見えて、少し笑ってしまう  
手を下ろして笑っている自分の顔を必死に隠した  
 
・・・。  
「明神さん。」  
なんとなく、その名前を呼ぶ  
ゆっくりと顔を上げる彼が見える  
 
 
 
 
「気持ち良いことして下さい。」  
 
今日は分からない事ばっかりでもうイヤになってしまう。  
自分で自分の言っている事の意味が分からない  
断られるに決まってるじゃん・・・ねえ。  
 
「・・・良いんだな?」  
 
え?  
予想外の返事に私は戸惑った  
 
よく自分でも今の状況が判っていない。  
明神さんの「良いんだな?」の後の瞬間が私の  
中で空白になっている。  
 
きっと今の私の顔はすごく赤い  
一番最初に明神さんから走って逃げた時よりも。  
なかなか顔があげられなかったら、顎を手で行き成り  
上げられてキスされた。考えたらさっきしたのが  
初めてなんだなあ、とやけに冷静な事を考えている  
唇の間から明神さんの舌が入ってきた  
こんなキスもあるんだあ・・・と考えてしまう  
「ふぁ・・・。」  
気持ち良い。  
言葉で表せないけれど、とても優しくしてくれる  
ゆっくりと離れる唇 唾液が細い糸を引く  
「怖いか?」  
「・・・ううん。」  
「じゃあ、イヤ?」  
私は思いっきり首を横に振った  
違う違う、私はただ明神さんが好きなんだよ、  
と伝えたいのかもしれない  
 
「続けてください。」  
やっぱり恥ずかしくて顔を下に向けてしまう  
「・・・そうか。じゃあ。」  
「へあ!?」  
下を見るとパジャマのボタンを一つ一つ丁寧に外していく手  
やっぱり男の人なんだなあ、とその大きな手を見て  
思う。そしてこれからする事を考えてまた実感するのだ  
 
大して大きくない胸を覆う物は無い  
パジャマのシャツ1枚無くなれば、上半身は完全な裸  
になる。全部のボタンを外し終わって、あらわになる  
その小さな胸。  
「ち、小さいとか・・・言わないで下さいよ。」  
言われる前にソレを止めておく  
「ははは、言わない言わない・・・。」  
陽気に笑う明神さんを見ると少し不安になる  
「ろりこんさん・・・?」  
「いや、なんで。」  
こんな格好で、状況でいつもみたいに話している私に  
自分でも正直驚いている私・・・。  
 
「まあ、この話は置いとこう。  
 正直この状態で話してると俺もキツいから。」  
キツい、の意味が判らなかったけれど私も  
上半身裸のままは恥ずかしいのでとりあえず頷いた  
 
明神さんは手を胸に当ててさっきのキスみたいに  
優しい感じで揉み始めた  
ぴくん、と体が反応して一瞬だけ鳥肌が立ったような気がする  
「ゃう・・あ・・っ・・。」  
声にならない声を出しながら快感へと落ちてゆく  
胸を触る事がこんなに気持ちよかったんだなあ・・・。  
すると、急に胸の先端部分を摘まれ、私は思い切り大きな  
喘ぎ声を出してしまった  
「んん・・あっ!!」  
「初々しいね。可愛いよ。」  
余裕たっぷりで笑う明神さんを見ていると何だか  
悔しくなってくる  
 
するり、とパジャマのズボンを脱いだ  
「・・・パンツも、ですよね。」  
「今更か。」  
その言葉に決心を決めてパンツを脱いだ  
生まれたままの姿になる  
恥ずかしさで顔が高潮して行く  
「!」  
明神さんの手が私の秘所に触れた  
指を動かす度にぴちゃぴちゃ、といやらしい音をたてる  
「ゃっ、あぅっ・・!」  
さっきよりも大きくなる声  
その声と同時に意識が朦朧と仕出した  
「ね、挿れるよ?」  
縦に首を振った  
 
「痛あ・・・ぁっ!」  
今までに味わったことの無い痛み、そして快感  
「ひめ、の・・・大丈夫?」  
「ひゃあっ・・!  
 そん、なに、う、動かないで下さい・・・。」  
明神さんが動く度に意識が飛んでしまいそうな  
必死に明神さんにしがみ付いた  
「ふあ・・・。」  
「って、オイ!! ひめのん!? ひめのーん!?」  
 
明神さんの声が聞こえて、静かに消えた  
 
 
「・・ん。」  
目を覚ましたら、朝だった  
昨晩の事を思い出して、布団から飛び起きる  
そこは自分の部屋で、私は下着を着ていた  
(昨日の夜私は途中で気を失ったんだ)  
ははは、と自分で自分に笑いかける  
 
「ひめのん、起きた?」  
ゆっくりと扉を開いて、明神さんが此方を覗き込んだ  
「ははははははははい!」  
恥ずかしくて布団で顔を隠す  
「キモチヨカッタ?」  
何で片言なんですか  
「ていうかさ、結局俺御預けだったんだけど」  
はい、そうですね  
「てことで今晩もよろしく。」  
「うぇええええ!?」  
布団から顔を出すとサングラスをかけて笑っている明神さんが居た  
そんな笑ってる明神さんに、私は苦笑いでこたえた  
 
終わり  
 
 

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