うたかた壮にはどの部屋にもクーラーは無い
「はあ・・・頭がほにゃらぱぱーになっちゃうよー。」
唯一、扇風機のある管理人室の畳にへばり付いてそんな声をあげる
ひんやりとしている筈の畳もあたしの体温で生暖かい
「すっかり夏バテ状態だな、ひめのん。」
「東京の夏がこんなに暑いなんて知らないもん。」
田舎はあんなに涼しくて快適な夏だったのに
「まあ、これが都会だ。覚えておくと良いさ。」
「なに、それっぽく言い包め様としても駄目ですよう。」
仰向けのまま、あたしの頭の近くに座っている明神さんを指差す
「アイス買ってこようかな。」
冷たくて美味しいアイス・・・食べたい・・・
「あれ、ひめのんってコンビニの場所わかるんだ?」
いじわるな感じで明神さんにそう言われた
よく考えればあたしはこの近くでアイスの売っている場所なんて知らない
方向音痴だし、一人で行っても迷うだけなのは目に見えている
「そんなこと言うなら、一緒に買いに行ってください。」
「そう来たか・・・。」
明神さんが少しイヤそうな顔をした、様に見えた
「じゃあコンビニ行くか。」
思わず上半身を起こした
まさか、まさか行ってくれるなんて思ってもいなかった
ぼや〜っとしていたら、明神さんはいつのまにか管理人室に居ない
「ちょ、ちょっと待って下さい!!」
置いてくなんてひどいよー
暑いけど、小走りで管理人室を出たら
「わっ!!」
「きゃぁっ!」
思わず尻餅をついて
「そ、そんなに驚いたか?」
少し明神さんは焦ったのか尻餅をついたあたしに近寄ってきた
その顔を見てたら面白くなってきて、笑ってしまった
「じゃあ、バニラバー奢って下さいね。」
「むう・・・。」
そう言った顔もまた面白くて
「むう!」
「真似すんな、そこッ!!」
「あはははははっ! 明神さんの顔、へん〜!!」
何度も笑ったよ
〜おまけ〜
「バニラバーって雪印の?」
「違います、あれ四角くて食べにくいから。丸いのが良いな。」
「・・・ひめのんってアイス食べるとき噛む? 舐める?」
「舐めます。」
「へ・・・へえ・・・。」
「でも暑くて溶けそう。垂れるかも。
って、明神さん!? 鼻血でてますよ!?」
「いや、御免。それ食べてる所俺に見せるなよ・・・?」
「へ?」