「んあっ……くぅ……あ、あぁ……え? ふぁああああ」  
 
最奥から、一気に引き抜かれた感覚に、結乃はなんともつかない声を漏らす。  
 
昇りつめかけていたのを中断されたことに、無意識に不満を訴える身体と……。  
 
助かったという気持ち。さらには、どうして行為を中断したのか不思議に思う気持ち。  
 
一気に自分に与えられた情報を、処理できずに結乃は俺が離れた後も裸身を隠すこともなく呆然とした表情を浮かべていた。  
 
「来い! 場所を移すぞ!」  
「え? え? あ! きゃああああああああああ!!}  
 
乱暴に髪を掴んで机の上から結乃を引き摺り下ろしてやる。  
 
「痛い! 痛い…………!!、やぁああ! な、なに……?」  
 
ふらつく足取りで俺に手を引かれて、久しぶりに地面を足につけて結乃は歩く。  
髪を引っ張られる痛みが、自分が陵辱されている事実を思い出させ、快楽に溶けつつあった表情が怯えの色を濃くしていく。  
 
「乱暴にしないで……いたい……お願い……」  
 
筋弛緩の効果が薄れていることは、ふらつきながらも歩けることが証明している。  
少し前の結乃ならば、状況をレイシに判断して地面を蹴って俺に飛び掛って来たはずだ。  
それなのに、数多くの絶望を味あわせられた影響か、今となってはただのか弱い女の反応しか示さない。  
 
「お前がちゃんとついてくればいいだけの話だろ」  
「で、でも……」  
 
久しぶりに生徒会室のドアが俺の手によって開かれる。  
 
「嫌なら、無理やりにでも連れて行くだけだけどな」  
「分かった……分かったから!!!」  
 
髪を引っ張る俺に怯えたのか……。  
結乃は少しの呻吟の後、結局俺に従って廊下に出た。  
 
その最大の理由としては、自分を映していたビデオが生徒会室に置いたままなことがあるだろう。  
どこで何をされるにしても、これ以上自分のあられもない姿を記録されることがない。  
 
そして、終電もとうに終わった深夜の学校に、俺たち以外の人間がいるはずもない。  
場所がどこであろうが、生徒会室で犯されているのと状況に変わりはない。  
それどころか、逃げたり助けを求められる可能性が広がるかもしれない。  
 
「おら! さっさと歩けよ」  
「きゃ! や、やだ……せめて服を……」  
「んなの知るかよ!」  
 
会長室のドアが無情に閉じられると、結乃は観念したように廊下を歩き出す。  
ズボンを上げてすでに普段と変わらない制服姿の俺とは対照的に、結乃は上半身にまとわりつく制服の切れ端以外は何も纏っていない状況だった。  
太股には、破瓜の血が伝った後が残り今まで結乃の身に起こっていたことを告げていた。  
 
「ど、どこに行くの?」  
「さあね。ついてからのお楽しみだ」  
 
できる限り、身体を手で隠しながら結乃は俺の後をついて歩く。  
無理やり引き裂かれた痛みが残っているのか、内股で少しずつしか進まないので歩みは遅い。  
 
(無様なもんだな……)  
 
本来なら逃げ出したり、反撃に使うべき手足を『女』の部分を守ることにしか使わない。  
疾風の結乃とまで呼ばれたあの面影は、もうどこにも残っていなかった。  
 
(まだ……もう少し楽しませてくれるよな?)  
 
そのために……俺は一日かけて仕込んだ場所へと結乃を伴って向かっていく。  
 
「ついたぜ」  
「え? こ、ここって……」  
 
いくつか階段を登り、無人の廊下を歩いた末にたどり着いたのは放送室。  
生徒会と、もう一つ……結乃が所属している放課後を過ごしている場所だ。  
完全に、俺は結乃が今日まで築き上げてきたものをぶち壊してやるつもりだった。  
 
「や、やだ! ここだけは……」  
「うるえせーなぁ。お前にもう拒否権はないんだよ」  
 
逃げようとする結乃の手を掴んで引き止める。  
筋弛緩の効果が薄れてきているとはいえ、陵辱の恐怖を刻み付けられ疲弊した身ではまだ俺を振り切るにはとても足りなかった。  
 
「お願い! 他の場所にして!」  
「やだね」  
 
大事な場所が、また陵辱の舞台に変えられることに結乃は怯える。  
夜が明ける頃には、この学園に結乃の楽しい思い出など存在しなくなっていることだろう。  
 
「さて、と」  
「なんで? なんであなたが鍵を?」  
 
当たり前のようにポケットから鍵を取り出して、放送室のドアの鍵穴に差し込む俺に結乃が混乱した声をあげる。  
 
「ああ。結乃に忘れ物を取ってきてって頼まれたって言ったら、あっさりと渡してくれたぜ?」  
「だから……遅刻してきたの?」  
「まあな。ま、他にも野暮用があったんだけど、それは後で教えてやるよ」  
 
俺が生徒会の活動に現れたのは、本来の業務の終了直前だった。  
一番遅くまで残っているのは生徒会なので、俺が来たときにはすでに校内に他の生徒は誰もいなかった。  
『遅刻してきたから、残って手伝う』  
そんな理由付けにもなり、陵辱の舞台を整えることができたのだ。  
 
「鍵は結乃に渡しておいて、だってさ。なんていったかな、上級生の……箱崎智紗だっけ?」  
 
会長、結乃どちらの口からも何度か名前が出たことがあるので、鍵を渡してくれた相手の名前も分かった。  
 
「……!!」  
 
だが、俺の口からその名を聞いた瞬間に結乃の顔がみるみる青ざめていく。  
 
(そういえば、可愛がられてるって話だったな)  
 
会長から、冗談交じりに嫉妬するような言葉が出るくらい……結乃と智紗は仲はいいと聞いている。  
これは利用しない手はない。  
 
「綺麗っていうか、可愛い先輩だったな。ああいうのも悪くないな……」  
「やめて!! 智紗先輩まで巻き込まないで!」  
「だったら、おとなしく言うことを聞くんだな」  
「う〜〜〜〜」  
 
観念したかのように、結乃は俯いて俺から逃げることを放棄した。  
 
俺は鍵を開けると、放送室のドアを目一杯に開いていく。  
 
「おら! 先に入れよ!」  
「きゃあああああ!!」  
 
俺に背中を押されて、結乃はよろめきながら放送室に足を踏み入れていく。  
 
「え、わ、きゃああああああああ!!」  
 
俺の狙い通り、足元に転がったものに躓いて結乃が転ぶのが暗がりでも見えた。  
 
「あぶねーなぁ。気をつけろよ」  
 
躓いたものが何であるかを知っている俺は……それを見せるために、放送室の電気をつけてやる。  
それこそが、結乃をここまで連れてきた最大の理由だった。  
 
「え……う、嘘……」  
「……ゆう……の?」  
 
結乃が躓いた、その正体は……。  
 
「しお……先輩?」  
 
結乃の恋人であり……この澄空高校の生徒会長である、塚本志雄その人だった。  
 
「いやぁああああああああああああああああああああああ!!!」  
 
防音設備がしっかりしている放送室でなければ、近所の人が駆けつけたかもしれない。  
それ程の結乃の、信じられないほどの絶叫だった。  
だが、俺は耳を塞ぐことなく、その声を全て聞き取っていた。  
 
「はっはははは! どうだい! 愛しい人と再会できた気分は?」  
「いや、いやぁ……」  
 
叫んだ反動か、力なく倒れこんでしまった結乃は一切の動きを止めてしまう。  
色を失った瞳からは、枯れたと思った涙が溢れ出し拭われることもなく床に落ちていく。  
 
「ゆ……の……」  
「無理すんなよ、会長さん。口が切れてまともに喋れないだろ?」  
 
崩れ落ちた結乃に、どうにか声をかけようと会長は口を動かすが、うまく言葉にならない。  
 
俺が生徒会室で、残務処理をし、結乃を陵辱している間だった。  
俺の手足となる、この学校の不良達が会長の家を襲撃。  
学校まで運びこませ、手渡しておいた合鍵で、放送室に放り込んだのだった。  
 
「派手にやられたなぁ」  
 
生徒会長という役割柄、はみ出しものには恨みを買っている面も多いので、襲撃の参加希望者には事欠かなかった。  
日ごろの恨みを晴らすべく、会長の顔は形が変わるほどに殴られて腫れていた。  
手足は縛られ、無様に転がされ、助けを呼ぼうにも防音の放送室からではそれも叶わない。  
今頃、夜のコンビニの前にたむろして、連中は祝杯をあげているはずだ。  
 
「どうよ? 愛しい彼女の裸をやっと見られた気分は?」  
「ざ……けんな!!」  
 
黒幕と……自分を拉致した真の目的を知った会長は、俺を睨みつけてくる。  
ボロボロの身体をひきずるようにして、俺と結乃の間に身体を入れてくる。  
 
「なるほど。結乃が惚れただけあって、いい根性してるよ」  
 
体調不良のせいか、それとも暴力でどこかの骨でも折れたか……。  
発熱していることが傍目にも分かる状況でも、結乃を守ろうとする姿は雄雄しいものだった。  
 
「だが……それもこれまでだ!」  
「ぐあっ!!」  
 
容赦なく鳩尾に蹴りを叩き込んでやる。  
 
「命乞いするか? 結乃はやるから、助けてくれってな!」  
「だ、誰が……ぐぁ!」  
 
立て続けに入れられる俺の蹴りにも、会長は屈しない。  
こういうタイプは、自分の痛みには異常に強いことを経験上分かっているが、俺は会長をボコにするのをやめない。  
 
「げほ……」  
 
とどめ、と入れた蹴りで、会長の口から血が吐き出される。  
 
「や、やめてぇええええええええええええ!!」  
「う……の……へい……き……だから……」  
 
会長がボコられる様子に正気を取り戻した結乃が、俺の前に両手を広げて立ちはだかる。  
胸も、秘書も一切隠すことなく、まっすぐに俺を睨みつけていた。  
 
「志雄先輩には手を出さないで! これ以上は……本当にまずいの、分かるでしょ!」  
「そうだな。お前と同じによく分かるぜ?」  
 
陵辱に失われかけていた結乃の本来の強さが戻ってきたことに俺はほくそ笑む。  
結乃も、他人の痛みの方が自分の痛みより耐えられない人種だった。  
 
「会長のために、どうすればいいのかは分かるな?」  
「分かってる。でも……あなたには絶対に屈しない」  
 
未だ残る薬の効果に加えて、人質をとられている絶望的な状況。  
それでも結乃は、一番大事なものを守るために……今までで一番強い意志の力をその瞳に宿していた。  
 
「いいぜ? 試してやるよ。でも、その前に、ビデオの準備からだな」  
「……っ!!」  
 
解放されていた恥辱の源の存在に、結乃は唇を噛み締める。  
 
「取ってくればいいじゃない。どうするの? わたしも連れてく? それともここに閉じ込める?」  
「んなことしねーよ。なんでわざわざお前にチャンスをやらなきゃいけねーんだ?」  
 
連れて行けば、途中で声を限りに叫んで助けを呼ぶだろう。  
ここに置いていけば、校内放送のボリュームをマックスにして外に助けを求めるだろう。  
 
「なら、諦めなさいよ」  
「バーカ。知ってるんだぜ? 放送部は各種行事の記録係も兼ねてるんだよな?」  
「……っ!!」  
「確か生徒会に予算を掛け合ってたよな? 最新式のビデオを……買ったばかりだろ?」  
 
結乃の顔色が変わる。  
生徒会室の俺の私物とは比べ物にならない、超高性能のビデオがこの部屋にはある。  
自分の身に起こる事がより鮮明に記録される未来に、身体を震わせている。  
 
「俺は場所を知らないからな。自分でセットするんだぜ? そうだな。舞台はあの放送ブースがいいな」  
 
DJが喋るようにマイクが天井から下がっている、ガラス越しに見える特別室。  
ラジオ好きな結乃や会長にしてみればある意味では聖域といっていいだろう。  
そこで……徹底的に会長の前で結乃を犯しぬいてやるつもりだった。  
 
「会長は、ディレクターを頼むぜ? ブースの中をここからしっかり見ていてくれよ?」  
「っ……結乃! そんなの聞く必要……ぐがぁああああ!」  
 
皆まで言わせずに、会長の腹を靴の底でかき回してやる。  
 
「やめてって言ってるでしょ! セットするから!」  
「そうそう。最高の画質で頼むぜ?」  
 
悔しげに俺をにらみつけると、結乃は白い尻を揺らしながら、機材のしまってある棚に向けて歩いていく。  
俺は会長を足蹴にしているだけで、何もしない。  
結乃陵辱の最終ステージは……あくまで結乃自身の手によって、整えられていくのだった。  
 

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