ぽつり、ぽつりと降ってくる冷たい雨が顔に当たる。  
少しだけ吹いている風に身体が冷やされるのを感じた。  
空はどんより曇っているものの雨は降りそうで降ってこない、そんな何とも微妙なある休みの日。  
外をしばらくぶらぶらしていたら急に天気が悪くなった。  
突然降ってきた雨の中、家路を急ぐ。雨も風も強いと言うほどではないが、  
それでも濡れることは免れない。  
家のひさしの下まで来てようやく人心地ついて、ポケットから鍵を取り出す。  
ドアにはしっかり鍵がかかっていた。  
 
 
After Iris  
     〜written by 黄泉〜  
 
 
「智ちゃん、おかえりなさ〜い」  
一人暮らしのハズの家の中から、帰ってきた俺を出迎える声がする。  
別にそれは不法侵入者でもなんでもなく  
「何だ、唯笑。来てたのか」  
「だってぇ、ニンニンネコピョンと遊びたかったんだもん」  
「残念だったな。ニンネコだったら、朝、俺を起こしたらすぐどっかに出かけて行ったぞ」  
「みたいだねぇ…。残念だったよ…」  
さぞここにいるのが当然といった様子の幼馴染みがいた。  
例によってニンネコ目当てで来てはみたものの、  
そのお目当ての相手がいなくて少しがっかりした様子だった。  
「この雨だしな。きっと今頃は、どっかで雨宿りでもしてるんじゃないか」  
「うん…。あぁっ、智ちゃんも濡れてるじゃない。着替えないと風邪引いちゃうよ?」  
「このくらい大丈夫だって。酷く濡れた訳じゃないし、放っておけば乾くだろ」  
「もう、智ちゃんはすぐそういうこと言うんだから…。ほら、頭拭くからちょっと待ってて」  
つい言われるがままに従ってしまう。自分でやればいいことに気が付いた時には、  
既にタオルを手にした唯笑が目の前まで来ていた。  
ここまでされては断ることも出来ない。唯笑が拭きやすいように少し腰を落とし、唯笑に任せる。  
唯笑も心得た物で、ゴシゴシと絶妙の力加減で髪に付いた水滴を拭っていく。  
その間、二人とも口を開くことはない。聞こえるのは、タオルと髪が擦れる音と、窓を打つ雨の音だけ。  
 
「ねぇ、智ちゃん…」  
そんな中、唯笑はふと言った。  
頭を拭く手はそのままに。穏やかな口調で。  
「今でも、雨…嫌い?」  
「……」  
「あの時も…今日よりもっと強い、雨だったよね…」  
雨。  
あの時。  
それが何を指すのかは言うまでもなかった。  
俺にとっての、最も鮮烈な雨の日の想い出…  
それはやはり彩花を、永遠に失ってしまった日のこと。  
「そうだな…。正直、前は嫌いだった。雨が降ると、どうしてもあのことを忘れたい気持ちと、  
 忘れたくない気持ちがぶつかり合って…それで辛くなってた。だから嫌だった」  
「今は?」  
「今でも…雨の日は、たまにあの日を思い出すし、それで辛くならないって言ったら嘘になる。  
 でも、前みたいに忘れたいとは思わなくなった。  
 思い出すこと自体は当たり前にできるようになった。  
 それに…」  
「それに?」  
「今は他にも思い出すことはあるしな。平安神宮で唯笑が待ってたこととか。  
 グラウンドで抱きしめたこととか」  
俺が言うと、みるみるうちに唯笑の顔が赤くなった。  
…そして多分、言った俺の方も赤くなってるんじゃないかと思う。  
「……」  
「……」  
お互い、何も声に出せないまま見つめ合う。持っていたタオルがはらりと床に落ちた。  
既に俺の体を一通り拭き終えていた唯笑が両手を俺の肩に掛け、  
俺もそれに合わせて手を腰に回し、力を込める。  
(温かい…)  
考えてみれば、こうして唯笑の温もりを感じるのは告白の日以来かもしれない。  
さらに記憶を辿れば、彩花を失って閉じこもっていたのを立ち直らせてくれた時の事にも繋がってくる。  
 
…思い起こしてみれば、この感覚は久しく忘れていたものだった。  
恋人同士だった頃の彩花は人前では平然としていたけど、  
二人きりになるとやっぱり身体を寄せてきたものだった。  
俺は口先では嫌がっていたけれども内心ではそうでもなく、  
むしろどこか安らぎをおぼえていたのかもしれない。  
彩花を失ってからはそんな機会も失われ…唯笑とは、付き合うようになっても  
結局はそれまでと変わらない距離感で落ち着いてしまったから、  
今まではあまりそういうことはしてこなかった。  
それが今、こうして抱きしめて唯笑の温もりを全身に感じている。  
そうすると、高鳴っている鼓動とは裏腹に、気持ちは落ち着くのだった。  
理由など無く、ただそうしていたい。いつまでもこのままでいたい。そんなことを思う。  
世のカップル達がどうしてあんなにもベタベタくっつきたがるのか、理由の一端を知った気がした。  
「唯笑…」  
互いの顔が僅かずつ接近していく。唯笑の目はいつの間にか閉じられていた。  
あと5センチ…3センチ…  
じりじりと距離を詰めていく。一気に越えてしまっても良いはずなのに、  
壁なんて無いはずなのに、それが出来ないもどかしさを感じる。  
それでももう止まることなどできはしない。長くはない、  
でも実際はその何倍にも感じられた時間をかけて、残りわずかな隙間を狭めていく。そして、  
「んんっ…」  
そっと、キスをした。  
唇を合わせるだけの、穏やかなキス。  
たったそれだけのことなのに、心の奥底から相手に惹かれていくのを感じる。  
唇からダイレクトに伝わってくる体温が、間近にある相手の体の匂いが、俺を離さない。  
唯笑も同じ事を思っているのか、背中に回された手の力が心なしか強くなった。  
最初のうちはこのままずっとこうしているのも悪くないと思っていたのが、  
やがてすぐにもっと唯笑のことを知りたいという考えに押し流されていく。  
重ねていた唇をゆっくり離し、視線を合わせると、唯笑は少し上気したような目をしていた。  
向こうから見ると、俺の目もそんな風に見えるのだろうか。  
「俺の部屋に行くか…?」  
「え…」  
「お前が、欲しい…」  
俺の言葉に、唯笑は黙って頷いた。  
 
「本当に、いいんだな?」  
「智ちゃんだから…」  
昼とは言え雨のせいで薄暗い部屋の中。  
確かめるように言った俺に、まだ恥じらいが残っているのか、唯笑は小声で答えた。  
それを確認してから、ベッドに腰掛けた唯笑と再び唇を重ねる。  
閉じかけた唇をこじ開けて舌を進入させ、少し歯をなぞってみる。  
最初は戸惑っていた唯笑だったが、やがておずおずと舌を差し出して絡めるようにしてきた。  
「はむっ…んんんっ…」  
互いの舌が攻めぎあい、唾液が混ざる、濃厚なキス。徐々に息づかいが荒くなっていく。  
抱きしめた唯笑の体から力が抜けていく。  
密着していた体を少しだけ離して隙間に手を潜らせ、一瞬だけ胸の部分に触れると唯笑は少し後ずさりした。  
「ダメか?」  
「ダメじゃないけど…智ちゃん、唯笑の胸なんて触って楽しいの?」  
真っ直ぐ視線を合わせて問いかけると、返ってきたのは、かなり意外と思える反応。  
こいつはあまりそう言うことは気にしないタチだと思っていたが、  
俺の前で見せていなかっただけなのか。一応、気にはしていたらしい。  
確かに、同級生たちに比べたら小振りなのかもしれないが…。  
いや、具体的に知っているわけではないのだが。  
「お前の身体だからな」  
服の上からでも、触れてみれば柔らかいのが分かる。俺の言葉に安堵したような表情を浮かべ、  
今度は身体を退かせることはない。それをいいことに、そのまま軽く胸を揉んでみる。  
「あぁっ…」  
思わず漏れた声からは、驚きだけでなく快感も混ざっていたように思われた。  
手に収まる柔らかいふくらみをそのまま揉み続けていると、  
どこかで安心する一方で気持ちの昂ぶりも感じる。  
「上、脱がすぞ…」  
返事を待つことベストを脱がし、シャツのボタンを外していく。  
露わになった薄青のブラジャーをたくし上げ、控えめな双丘を揉みしだくと  
手に吸い付くようなと言うのだろうか、心地の良い感触がした。  
「あっ、あぁんっ…」  
小さい胸は感度が良いというのは本当なのか。俺が少し力加減を変えるたび、  
甲高い声が上がる。それが楽しくてなおかつ嬉しい。  
表情に苦痛の色はない。あるのは快感だけ。  
 
「胸、感じてるのか?」  
「え?」  
「ほら、ここ、こんなになってる」  
そう言って、今まで敢えて手を付けずにきた胸の先端の突起に指を伸ばす。  
ひっそりと自己主張する薄桃色のそれを指で転がすようにすると、  
その度に唯笑は体をピクリと振るわせた。  
「ああっ、あぁんっ」  
鼓動の音が大きくなっているのが聞こえる。  
それは唯笑の物なのかそれとも俺のか。既に判然としない。  
掌にすっぽり収まるふくらみが揉み込まれて形を変える。  
柔らかい中に指を沈め、頂点をこね回すたびに快感の反応が返ってくる。  
「智ちゃぁん…」  
甘い声で俺の名が呼ばれる。それだけで、唯笑を欲しいという気持ちがさらに強くなる。  
半開きになっている唇に唇を押しつけ、そのままベッドに押し倒す。  
体がベッドに弾んだ拍子におでこが軽くぶつかり合った。  
「下も取って良いな…?」  
腰に手をかけてそう言うと、戸惑いながらも唯笑は軽く腰を浮かせて  
脱がせやすいように協力してくれた。そのままスカートを抜き取り、  
ブラとお揃いと思われる薄青のショーツがむき出しになる。  
されるがままになっていた唯笑だが、手を伸ばして俺の上着のボタンに手をかけてきた。  
「智ちゃんだけ服着てるの、ズルい…」  
そういうものなのだろうかと思いつつ、唯笑の好きなようにさせる。  
唯笑がボタンを外し終わるのと、俺がショーツを唯笑の足の間から抜き去ったのはほぼ同時だった。  
「あっ…」  
幼い頃におぼろげに見たそれとはあまりにも違う、すっかり『女』の物に成長した秘所が曝け出された。  
陰毛はごく薄く、唯笑のその場所を隠すには至らない。  
秘唇は小振りでほぼ閉じられているが、僅かに綻び欠けていてピンク色の肉が覗いている。  
「そんなに見ないでよぉ…」  
こうして女の子の秘められた部分をはっきりと見るのは初めてで、  
上着を脱いでいる間にもついまじまじと観察してしまう。  
「じゃ、見ないけど、その代わりに触るぞ」  
唯笑は何か言いたそうな顔をしたが、ここまできたらもう止められない。  
初めて触れる処女地に手を伸ばす。  
見たときには気が付かなかったがほんのりと湿っているようだった。  
そのまま陰唇の回りを中心に揉むようにして愛撫する  
「気持ちいいか?」  
「う、うん…。あぁっっ」  
人差し指と薬指で花弁を開き、中指を先端だけ差し込む。おそらく初めてだからか、  
それだけでも中はかなりきつく締め付けてきた。  
それをゆっくりほぐしていき、そして入り口あたりを掻き回すようにすると、  
奥の方から愛液が沁み出してくる。  
ふと手を休めて表情を見ると、明らかに感じているのが分かる。  
唯笑のイメージからは遠い物だと思っていた、俗に”女の顔”というらしいものになっていた。  
その額に軽く口づける。  
そうしておいて再び入れた指に意識を戻す。もう少し奥まで入れた指を中で回転させると  
恥液が溢れてきて、襞が指に絡みついてきた。唯笑も積極的に快感を求める気になったのか、  
少しながら腰を動かして自分がより感じる位置に持っていこうとしている。  
俺もそれに応えて中への刺激を少し強める。  
もう頃合いだろうか。  
 
「んっ…」  
「むっ…」  
再び唇を重ね、どちらからでもなく舌を絡める。口内を舐め合い、唾液をすする。  
そんなことを2,3回繰り返してから唇を離す。  
同時に、唯笑の中に進入していた指も引き抜いた。  
「唯笑の中に…入れたい」  
ベルトを外してズボンを下ろし、次いでトランクスも脱ぐ。  
その下に潜んでいた男の欲棒は、さっきまでの行為のせいで大きく反り返り、  
中に入る時を今か今かと待ちわびているようだった。  
「……」  
唯笑が息をのむのが聞こえた。  
こんなにもなった男性のシンボルを見るのもおそらく初めてだろう。  
しかもそれをこれから自らの中に受け入れるのだ。そのことで不安に思っているのかもしれない。  
かく言う俺も万全の自信などあるはずもない。初めて同士だと失敗しやすいという話をよく聞く。  
今日はできるところまでにしておいた方が良いかもしれない。  
「入るぞ…」  
分身の先端を唯笑の入り口にあてがい、そのままゆっくり腰を進めた。  
だが、意に反して肉茎は奥へ進むことなく、つるりと滑って明後日の方に行ってしまう。  
「…あれ?」  
「もうちょっと下、だよ…」  
一瞬訳が分からなくなりそうだったのを唯笑の言葉を聞いて気を取り直す。  
アドバイスに従って再度実行すると、今度は上手く中に入ったようだった。  
亀頭部分が完全に埋まったあたりで一旦止まる。さっきまでほぐしておいたハズなのに、  
入っている部分にはまるで握りしめられているかのような締め付けを感じる。  
このまま先に進んでも良い物なのか…。  
「智ちゃん、来てっ…。唯笑は、大丈夫、だか、ら…」  
途切れ途切れの言葉で言われても安心は出来ない。  
だが、かといって言われていることを無視するのも気が引けるし、もったいない気がする。  
俺だって、できるなら最後までしたい。  
「じゃ、力を抜いて…。続けるけど、痛かったら痛いって言えよ…」  
再び腰を進めていく。俺の先走りの汁と唯笑の愛液が潤滑剤になってはいるが、  
それでも相変わらずキツいのに変わりはない。それでも俺の言葉に従ってくれているのか、  
余計な力は多少抜けた気もする。  
さらにそのまま進めたところで、行く手を遮る物があった。  
「唯笑…」  
「来て、智ちゃん…。唯笑、智ちゃんと、最後までしたい…」  
その言葉を聞いて迷いは消えた。さらに自身を侵入させ、唯笑の純潔の証を貫く。  
愛液とはまた違ったものがまとわりつく感触が追加される。  
「あっ、ああぁっ…。智ちゃん、が、入って、くる…」  
とうとう男根が根本まで唯笑の中に入る。  
「痛いか?」  
「うん、ちょっと…」  
少々顔をしかめさせながらも唯笑はそう答えた。  
目にうっすらと涙を浮かべながらも、結合部を見つめてどこか嬉しそうにしている。  
 
「今、智ちゃんと繋がってるんだ…」  
「…そうだな」  
そんなことが嬉しいのか。  
でも改めてそう言われると、俺の方まで何とも言えない不思議な気分になってくる。  
しばらくそのまま唯笑の膣内の感触を楽しむ。  
相変わらずきついが、単に締め付けてくるのではなく俺のモノに絡みついてくるようだった。  
「動くぞ…」  
唯笑の息が落ち着くのを待って、静かに動き出す。  
中はとにかく気持ちよかった。すぐにでもイってしまいそうになるのを懸命にこらえる。  
「あっ、あぁんっ…。んふっ…」  
あまりの気持ちよさに、情動を押さえられない。  
律動を速くすると、その分だけ唯笑の声が高くなった。  
それでも健気にも、唯笑は俺の動きに合わせようとして腰を動かしてくれる。  
最初はぎこちなくてバラバラだった動きが徐々にタイミングが合ってくる。  
「っ…。唯笑っっ…」  
「中に、出してっ…。智ちゃん…」  
「え…」  
「今日、大丈夫な日、だから…」  
その言葉が俺の思考にとどめを刺した。  
胸に触れた手の力の加減が効かず、柔らかなふくらみを鷲掴むようにしてしまう。  
唯笑が顔をしかめてあわてて力を緩める。でも止まらない。というより、止まれない。  
腰を動かすスピードが速くなる。  
「唯笑…出るっっ」  
「智ちゃん…唯笑も、唯笑もっ」  
お互い、絶頂が近いらしい。  
早めていたピッチを徐々に落としていき、そして腰を一気に引く。  
唯笑は一瞬何か言いたげな顔をしたが、すぐにこの後どうなるか悟ったのか。元に戻る。  
そして、一気に腰を突き上げた。剛直が内襞を巻き込みながら進んでいく。  
勢いよく先端が子宮口に当たった、それがとどめとなった。  
「あああああぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ…」  
唯笑がひときわ高い声を上げ、同時に膣内が激しく収縮する。  
それに導かれるままに、俺も情欲を唯笑の中に放った。  
頭の中が真っ白になる。  
「はぁ、はぁ…」  
二人とも力が抜けたようになって、しばしそのまま余韻にひたる。  
秘裂からは、破瓜の血と白濁液の混じった、どろっとした桜色の液体が流れ出てきていた。  
 
 
「唯笑…」  
「なぁに、智ちゃん?」  
「…いや、なんでもない」  
「えー、どうしたのー。教えてよ智ちゃんー」  
「好きだ、唯笑」  
「…え?」  
「そう言いたかっただけだ」  
耳元にそれだけ囁くと、唯笑の頬にキスをした。  
『愛してる』  
本当はそう言うつもりだった。  
でも止めた。  
俺が最初にその言葉を言いたいと思った相手は、もう直接言うことの叶わないところにいる。  
でも、直接でなくとも、過去形になってしまっても、  
やはり最初にこの言葉を言う相手はアイツにしてやりたかった。  
(墓参り、行かないとな…)  
いまだ生まれたままの姿で、俺の腕を枕に横になる幼なじみを横目に見ながらそんなことを考える。  
彩花を失ったあの日からもうすぐ4年になろうとしていた。  
 
 

PC用眼鏡【管理人も使ってますがマジで疲れません】 解約手数料0円【あしたでんき】 Yahoo 楽天 NTT-X Store

無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 ふるさと納税 海外旅行保険が無料! 海外ホテル