西野は自分の勝手な妄想に、しばらくその身を打ち震わせていたが、かおるが会計を済ませにレジに並んだのを見て気を取り直した。  
(あの売女め、絶対に尻尾をつかんでやるぞ。なんとしてでも動かぬ証拠を!)  
結局かおるが何を買ったのか確認できず、一段と逆恨みの度合いを深めた西野は、買い物を終えて帰路についた彼女の後をつけて音羽家の前までたどり着いた。  
まるで自分の家のように慣れた様子で裏門から敷地内にずんずん入っていく。  
(毎度のことですが無用心ですねえ。簡単に賊の侵入を許すとは危機意識がまるでない。周りの住人の監視の目もないし、忍び込み甲斐ってモンに欠けますよ)  
居間の窓付近に身を潜め、ジーとうなりながら回転する電気メーターを眺めていた西野は、家のから聞こえてきた声に耳を傾けた。  
「もう、お父さんも夏休みくらい出張から戻ってくればいいのにね」  
かおるの声だ。  
「−−−」  
キッチンで洗い物をしているらしい母親の声も聞こえるが水音にまぎれて内容はわからない。  
「じゃあお母さんもゆっくりすればいいじゃない」  
(ふむふむ、親父殿は御不在ですか)  
好都合だ。  
「町内会の旅行って?」  
「−−−」  
「ふーん、旅行好きの会長さんだね、でも夏休みだからって3泊4日は長すぎるんじゃないの?」  
(町内会の旅行??)  
「8月の11日から?私はいいよ、その日は友達と遊ぶことになってるから。お母さんもたまにはのんびり楽しんできてよ。」  
「−−−」  
(これはこれは・・・)  
西野はこみあがる嬉しさを抑えながら思った。  
(音羽さんが一人になる期間が判明しましたね。ボスにいい報告ができそうだ)  
父親が不在であり、かおるの母親が旅行に出る事実をつかんだことに気を良くし、慎重に音羽家を脱出した西野は大急ぎで報告に戻っていった。  
 
唯笑は西山と相川の二人に連れられ、藤川方面行きのシカ電に乗った。切符代は西山が払った。  
列車内では二人の男はむっつりと黙りこくっている。その様子に不安を感じた唯笑はすがるような目で西山を見た。  
すると西山は凄みのある顔に似合わない微笑を浮かべ、唯笑を見返した。  
「唯笑様よ、安心しな。取って食おうっていう話じゃないんだ。ちょっとばかり遠いところに移動するけど、手間は取らせないからな。」  
それからおもむろに腕時計をのぞいては「そろそろ皆が集まってくる頃だ」などとつぶやく。  
相川も「話し合いを済ませたら、皆で食事でもしていきましょうよ、実はあまり知られていない美味い料理屋があるんです」  
と紳士的(?)に話を振ってきた。唯笑も徐々に打ち解けて会話が成立し始めた頃、電車は目的地に着いた。  
駅名は『柳ヶ浦』藤川から三つ目に所在しており、海水浴場の最寄駅で夏場は混雑する時間限定の有人駅だ。  
今は夏休み直前であり海開きはしているものの、まだ海水浴のピークではないらしく、三人が改札を通るときは既に駅員は帰宅しており、駅は無人になっていた。  
「こっちだ」西山の先導で坂道を登っていく。20分ばかり歩いて唯笑が疲れを訴え始めたとき、西山が後ろを向きながら前方を示した。  
「アレが見えるか?」少し離れた高台に大きな看板を掲げた白い建物が見えてきた。  
「あそこに皆がきているはずだ、行こう」  
やがて建物の全貌が現れた。それは地上七階で横長の大きな建物で、少し薄汚れていたがなかなかに立派なホテルのように見えた。  
時間帯のせいか、1階部分からは明かりが漏れている。ところがその光を見た西山が歩みを止めた。  
「嘘だろ・・・」ありえないといった様子でつぶやいた。  
「なんで明かりが点いてるんだよ、誰か入ってるのか?」  
 
「え?」  
唯笑は怪訝に思った。詩音をはじめとした人達とこれから話をするのに、この人はどうして明かりが点いていることを怪しむんだろう?  
 
「先生、急ぐぞ。唯笑様もだ」西山は相川を促すと血相を変えて走り出した。右手はがっちりと唯笑の腕を握り締めて離さない。  
「ひああ・・・!」唯笑は腕を引っ張られ、転びそうになりながらもなんとかついていった。  
そして建物の入り口に着いた三人は西山が先頭に立って扉を開け、用心深く中に入っていった。  
最初の空間は大きなロビーらしき場所だった。辺りには散乱した椅子やダンボール箱の類が転がっている。  
フロアの形状等からどうやらこの建物はホテルとして使用されていたようだ。バブル期のリゾートホテルが今は廃墟として残っているのだろう。  
こんなところで話し合いを?と考える暇は唯笑には与えられなかった。ドアの向こうからは品のないバカ笑いとともに猫の鳴き声らいきものも聞こえてきたからだ。  
様子を伺うのももどかしい感じで西山がおもむろにドアを開け放った。すると・・・  
 
その部屋は縦長で多数のテーブルや椅子があり、もともと食堂であった部屋のようだ。奥に行ったところに見知らぬ男三人が車座になって座り、酒を食らって盛り上がっていた。  
傍らにはさっき鳴いたと思しき猫がぼろ雑巾のように無造作に捨てられている。手足が小刻みに動いているがどうも様子がおかしい。騒いでいる男の一人が持っている缶の中身を猫にぶちまけた。  
猫はニャアと弱弱しい鳴き声をあげてそれっきり動かなくなった。  
「猫ぴょん!猫ぴょんが!」唯笑の叫び声に先客の男どもはこちらを振り向いた。  
(まただ・・・)  
西山は深い疲労感に襲われた。  
(なんでいつもいつも・・・、俺がロケハンした場所にはこの手の糞ガキが寄り付くんだ?本当によお)  
三人の男は典型的な不良の人相をしており、見た目もDQNそのままの格好だった。  
頭髪は金、赤、茶色にそまっている。頭の中身も推して知るべき、だろう。  
「なんだぁ?おめえらは」  
赤い奴が口火を切った。こいつは頭の色とお揃いの赤いジャージを着ている。胸には某ドッグフードメーカーのロゴと骨をくわえた犬の絵がプリントしてある。  
 
「ジャマすんなや!」「とっとときえろよオラァ!!」金と茶が怒鳴り散らす。茶は空になった缶を放り投げて動かない猫をこちらに蹴り飛ばした。  
ころころころ・・・と猫はものも言わずに転がって唯笑の前で止まった。  
「だ、大丈夫?しっかり!」  
猫を抱いて必死に呼びかけたが猫はぐったりして何の反応も見せない。  
「猫ぴょんに何をしたの!?」  
「おれのツマミをくいやがったから、ボッコボコにしたんだ、くそネコのぶんざいでよう」  
 
(頭の悪いしゃべり方だ。薬をキメているのかもしれない。)  
相川は冷静に分析していた。  
そして猫から生気が感じられないことを悟った唯笑が大声で泣き出すと、三色の男たちはヒステリックにわめきながらこちらに向かってきた。  
しかもナイフや警棒といったおまけつきだ。  
(この餓鬼ども、そんなに俺を困らせたいか。血しぶきをあげて喜んでいるのか!!)  
我慢の限界に達した西山は向かってきた赤のナイフをよけると後ろ髪を掴んで顔面を床に叩きつけた。  
鈍い音を発して赤が床に伸びると同時に茶が警棒を振りかざしてきたが、相川がおもむろに立ち上がり、茶の顎に頭突きを決めた。鍛えぬいた自慢の石頭だ。  
茶はその反動で後頭部から床にひっくり返り、そのまま動かなくなった。  
最も酔っ払っていた金は仲間二人が瞬時に倒された現実についていけず、西山が拾い上げたワインの空き瓶の直撃を脳天に喰らい、直下に崩れ落ちた。  
「先生よ、こいつらを縛り上げるぞ」  
荒い息をつきながらも西山と相川は床に転がった三人組を縄で拘束していった。  
作業が一段落し、一息ついた二人は泣きつづけている唯笑に気がついた。  
「どうしたんだ」  
「うっうっ、猫ぴょんが・・・」  
唯笑が抱いている猫は薄汚れているが可愛らしい三毛猫だがぴくりとも動かず、死んでいることは明らかだった。  
「チッ、ふざけた真似をしやがって・・・」  
西山の怒りは餓鬼どもが撮影現場を荒らしたことか、理不尽に猫を殺したことのどちらに向いているか自分でも分からなかった。  
恐らく両方に対して、だろう。  
相川はまた別の見方をしていた。  
(そもそも、こいつらは人間なのか?理解の範疇を大きく超えている)  
容貌、言葉、装束、全てが相川の価値観から遠くかけ離れていた。自称『真人間』を目指す相川にとって理解不能な存在は人間ではない、という結論に達するのだ。  
この連中がどんな生物なのか興味を持った相川は調べてみることにした。  
自分の鞄から金属製の棒状の物体を取り出し、おもむろに赤の口中に突っんで口を開けさせた。  
そのまま中を覗いた相川は赤が途中で目を覚まし、耳障りなうめきを発したのにもかまわず観察を続け、『何か』を発見し、興奮して叫んだ。  
 
「原因が分かったぞ!!!」  
 
「何が分かったんだ?」  
金棒をいじくりまわす相川の後ろから西山が顔をのぞかせた。  
赤の口中を観察していた相川は作業を中断すると、後ろを振り向いた。  
「こいつの口中に金属体がはまっていました」  
スイッチが押され金棒がV字型に展開すると、赤の口は限界まで開かれた。  
「あぐあがががが」  
中を覗き込んだ西山は思わずオッと声を上げていた。  
赤は自分の舌に穴を開けピアスを通していた。先端部分、両側に一つずつ合計三つの金属の輪が涎に濡れ光っている。  
(気色悪いことしやがって、まったくDQNの典型だぜ)嫌な物を見せられた西山は気分を害した様子でぼやく。  
「おい先生、いったい何がやりたいんだ?」  
「肝心なことです」相川は強く断言した。  
「そもそも古の教えでは、先祖より受け継いだ肉体を傷つけることは固く禁じられております。  
一生涯肉体−魄といいますが−を保全することで、死後分離した魂と魄が後世で合一し、再生する望みをもてますが」  
そう言って再び赤に目を転じた。  
「しかるに、こいつらは体内に異物を埋め込んだり、頭髪を変色させたり、皮膚に野蛮な文様を刻むなど、古の教えに反しています。  
他にも人間の言葉と思えないうなり声や奇妙な装束等を勘案した結果」  
ずいと威儀を正して告げた。  
 
「この三体は人間ではありません」  
 
(おいおい、この先生正気かよ。いったい何を言い出すんだよ)  
エンジンがかかってきたらしい相川に聞かずにはいられなかった。  
「人間でなけりゃ何になるんだ?」  
「禽獣です」  
「キンジュウだと?なんだそりゃ」  
「まあ、早い話けだものの事です。見た目は人間に近いようですが、よーく観察すると違いは明らかです。例えば・・・」  
話がまた長くなるのを恐れた西山は慌てて遮った。  
「待て待て、つまり奴らを人間として扱う必要はないって事なんだな?」  
相川は自信たっぷりに頷き、今度は茶と金のわき腹に体重の乗った蹴りを入れた。  
蹴られた二体は噛まされた猿轡の奥からくぐもったうめき声をあげて悶えている。  
「なるほど・・・これは予想外の収穫かもな」  
西山は目を細めて縄で拘束された三体の生物を見やった。  
 
突然西山の携帯電話に着信が入った。  
「もしもし・・・おう、ガリか。そっちの首尾はどうだ?」  
西野からの通話の様だ。  
「そうか、よし。予定変更だが前段の撮影にかかろう。電車に乗って柳ヶ浦で降りてくれ。その後は・・・」  
西野に目的地までの道順等を説明して電話を切った。  
「先生、今から前段の撮影の準備に入るろう。西野には道中必要な物を買ってくるよう言ってある。さて、俺たちの役目だが・・・」  
西山は三体の縄付きを顎で示しながら言った  
「奴らを撮影のオブジェクトにしよう。何かいいアイデアはあるか?」  
「もちろんです。私は彼らを『救済』しようと思っています。なるべく人間に近づけるか、害のない獣になるように『改良』しましょう。  
何かこう、彫刻刀の様なものがあればいいんですが」  
相川の脳内では既にイメージが固まっている模様だ。  
「いいだろう。それと前段の、まだかおるが出てこないシーンでは唯笑様に女優として出演してもらう」  
西山は泣きつかれて放心状態の唯笑を見つめた。  
(年の割には少々幼さが目立つが・・・いい素材だ。守ってやらないと壊れちまいそうな危うい感じがするな。  
男の支配欲をくすぐるタイプかもしれん。かおるとはまた違った魅力を持っている)  
西山の頭には自分の元彼女と仲良くしている男の姿が浮かび、思わず敵愾心をかきたてられた。  
(三上智也め、俺の女にちょっかい出しやがって。奴には制裁を加えてやろう。まず第一段階としてお前の幼馴染をもらうぞ)  
唯笑を見た西山の表情に嘲るような微笑が浮かんだ。  
(こんなに可愛い娘を放置するとは目の腐った野郎だぜ。フフ、唯笑をもう俺から離れられない女にしてやるからな)  
そしてうつろな表情で床にぺたりと座る唯笑に近づいて肩に手を置き、穏やかな調子で話しかけた。  
「大丈夫か?少しは落ち着いたか」  
その言葉に唯笑はゆっくりと後ろを振り返った。  
 
唯笑の瞳はどんよりと濁り、生気を失っていた。生まれて初めて暴力を目の当たりにして、  
しかも大好きな猫を無惨に殺されてしまったことに深いショックを受けていた。  
そして元々疑うことを知らない純真な性格が災いし、唯笑自身の他人に対する常識が変わろうとしていた。  
(ううっ、ひどいよ・・・痛かったでしょう。かわいそうな猫ぴょん・・・)  
縄に繋がれた三体の珍妙な生物を見て唯笑の心中に黒い炎が燃え始めた。  
(こんなにひどいことして!猫ぴょんはなんにも悪いことしてないのに!!)  
黒い気持ちと悲しみがいっぱいになって心が破れそうになったその時、後ろから声がかかった。  
「大丈夫か?少しは落ち着いたか」  
長身で少し怖い雰囲気の男−智也の先輩の西山と名乗った男−が唯笑の肩に手を添えてきた。  
男は唯笑の顔をじっと見ていたが、目をそらすと三毛猫の亡骸に両手を合わせて拝み、しばらく何も言わなかった。  
「こいつの墓を作ろう。このままじゃ可哀想だ。手伝ってくれるか?」  
西山の言葉に唯笑は無言で頷きよろよろと立ち上がった。  
 
ホテルの中庭。  
西山はその一角に穴を掘り、唯笑を促した。  
「さあ、楽にしてやってくれ」  
唯笑は言葉もなく三毛猫をそっと横たえた。  
「つらかったろうが…、この次生まれてくる時はもう少し楽しく生きてくれよ!」  
西山は腹の底から湧き上がる怒りを押さえつけながら叫んで両手を合わせて、猫のために祈った。  
唯笑は、西山が猫のために涙を流して祈っているのを見て一旦おさまった涙がまた溢れ出てきた。  
「ううっ、グス…、猫ぴょん、かわいそう…」  
そして歩み寄ってきた西山に肩を抱かれると唯笑のくすぶっていた感情が一気に破裂した。  
「ぐううっ!うあああああああぁぁぁぁ!!!」  
全身を震わせて泣きじゃくる唯笑を西山は半ば抱くようにして包み込んでいたが、唯笑の慟哭がひと段落したのを見てその腰を抱いて立ち上がらせた。  
「ここにいたら風邪を引いちまう。中に戻ろう」  
唯笑は西山に身を任せるようにして、建物の中に戻っていった。  
 
「お前は何も悪くない、そうだろ?」  
西山は建物の中に戻り、ロビーのソファで放心状態の唯笑を慰めていた。  
「俺がもう少し早くここに着いていればよかったんだ。そうすればあんな連中…」  
「もう、いいの…」  
唯笑が言葉を遮った。  
「大丈夫なのか?」  
西山の言葉に唯笑は弱弱しく首を振った  
「もう、猫ぴょんは帰ってこないんだから…」  
力なくうつむいてしまった唯笑に西山は自分の上着をかけてくるみこみ、自分の胸にグッと抱き寄せた。  
唯笑が何も反応せず、されるがままになっているのをいいことにさらさらのセミロングの髪に顔を寄せて胸いっぱい唯笑の匂いを吸い込んだ。  
(お子様っぽい割にはいいシャンプーを使ってるな、たまらねえぜ)  
抱きしめたまま頭髪越しに頬にチュッと口付けし、そのまま舌で横顔をなぞった。  
「ひゃあっ、な、なにするんですか」  
ようやく自分を取り戻した唯笑は西山の腕から抜け出そうとしたが、体力の違いを思い知らせるかのように強く抱きしめられてしまった。  
 
可愛らしい悲鳴を聞いた西山は普段の落ち着きようをかなぐり捨てて唯笑に覆いかぶさっていく。  
「何するの、やめてえ!うふうっ、んぐぐ」  
いきなり唇を奪われた。男は興奮した面持ちで少女の口を吸い、歯をこじ開けて舌を中に入れようとしてくる。  
唯笑はあまりにも長く、しつこいキスに息苦しさを覚え口を振りもぎって空気を吸った。そこへ男の口が重なり、今度は完全に舌を差し込まれてしまった。  
幼さを残した少女の口中は裏腹に甘い唾液や柔らかい舌を隠し持っており、西山は更に興奮の度合いを深めた。  
唯笑の前歯の裏側から舌の裏、更には口蓋をくすぐってやると、強烈な刺激を受けたのか、体をぶるっと震わせた。  
もう一度舌の裏を舐めて顔を斜めに交差させると、更に深い口付けに移った。ひきこもりがちな生温かい舌を捕らえて絡めてやる。  
一方突然口を吸い取られた唯笑は混乱し、ろくに動けなかった。  
(何で?どうして唯笑はキス、されてるの??)  
だが進入してきた男の舌が舌に絡みつき、口中の天井部分をなぞってくると、未知の感覚に揺さぶられた。  
(は、あうっ!)  
脳髄から背骨にかけて電気が走ったような感覚がして、そのあとゆっくりと腰骨から下腹にかけて甘い痺れが伝わってきた。  
(あ、ああうんっ、な、なにこれ…なんか変だよお)  
唯笑の17年の人生で初めて感じる性の疼きである。  
 
西山は唯笑がキスされて脱力したのを見て一旦口を離し、ゆっくりと観察した。  
(今時キスだけでこんなにめろめろになっちまうなんて、…なんて可愛いんだ!こんな娘はめったにいねえ。本当にたまらねえよ)  
解放された唯笑は目元と頬ををピンクに染め、恥じらうようにうつむいた。  
(ああ唯笑、智ちゃんじゃない人にキス、されちゃった…)  
いきなりファーストキスを奪われたショック、そして口の中を舐められた時にお腹に感じたいけない感じ、初めての刺激に唯笑はどうしていいかわからず体を丸めてますますうつむいてしまった。  
西山は唯笑の予想を超えた純粋さに感動し、さらなる接触を試みた。  
そっと手を伸ばし、制服の上から胸のふくらみに触れた。少し控えめな、しかし確かな手ごたえが感じられた。両手でふくらみを下から包み、徐々に力を入れて感触を確かめる。  
大きくはないが、柔らかく中に芯が入っていそうな揉みごたえが伝わってくる。人差し指と親指を頂点にずらすと、可愛らしい乳頭は硬くしこり始めていた。  
「や、やだあ、やめてえ…」  
胸から与えられる刺激に喘ぎながらも弱弱しく抵抗する唯笑をがっちり抱きすくめ、その肩をつかむと反転させて後ろから抱え込む体制に  
させた。  
もちろん唯笑の乳房をじっくり揉んで味わい、気持ちよくさせるためだ。  
 
唯笑のうなじに顔を埋め、深く匂いを吸い込みながら乳房に指を食い込ませてゆっくりと愛撫する。  
下乳に指を4本食い込ませ、上に絞り上げて人差し指で乳頭を転がしたり、親指と他4本指で胸を根元から左右から挟み前に突き出させたり・・・。  
唯笑は胸を触られながら、ああっ、ううっと苦しげに悶えているが西山は少女が心からこの行為を心から嫌がっていないことを見抜いていた。  
そして胸だけでは飽き足らず、脇の下、脇腹や下腹など微妙な部分に手を這わせて隠された性感帯を探そうと試みるのだ。  
「んんっ!」  
左の脇腹を撫で上げられたとき唯笑は体をぴくんと震わせ、悲鳴を上げた。  
男の手は休むことなく動き続け今度はスカートからむきだしの太股に移っていく。  
可愛らしい膝から股間に向かい、手のひらを肌になじませるようにじっくりと手のひらを這わせていく。  
「ひっ、だ、だめぇっ!」  
右ひざから内腿を撫で指先をねとねと動かしていくと、唯笑は声と全身を震わせていやいやをした。  
西山は可愛らしい抵抗をがっちりと抱きすくめ、手をスカートの中に入れていった。  
 
左腕を唯笑の首に巻き、右手をスカートの中に入れて股間に近い部分を撫で回すと少女は腰を揺すり、男の手を振り切ろうとした。  
男は後頭部に回した手で少女をこちらに向かせると再び唇を重ねた。そのまま舌を入れ生暖かい口中を堪能する。  
顔を交差させ互いの舌を深く絡めさせて甘い唾液を飲み込むとお返しとばかり自分の唾を流し入れた。  
「んんふっ」  
苦しげにしながらも唯笑はこくりと喉を鳴らして男の唾を飲み下していく。  
西山は口を離して唯笑の顔を見つめて言った。  
「どんな気分だ?気持ちよくなってきただろ?」  
「・・・・・・ぃゃ」  
恥ずかしそうにうつむく唯笑に更に畳み掛ける。  
「体が疼いてきただろ?オナニーするのとどっちが気持ちいいんだ?」  
「・・・何?オナニーって・・・」  
(おいおい、この年で知らないなんてこんなの、ありかよ)  
嬉しくなった西山は唯笑の両手をつかんだ。  
「オナニーってのはな自分の手でここのな、恥ずかしいところを、触って気持ちよくすることだよ、本当にしたことないのか?」  
「う、うん・・・」  
「そうか、じゃ試してみよう」  
 
「唯笑様よ、相手を楽しませずに、自分だけよがってちゃ不平等ってモンだろう」  
西山は唯笑をもみくちゃにしながらわめいて見せた。  
「そうだ、やわらかい肉の谷間をターゲットにしてな、そうそう、芯を狙ってこねたてるんだよ。いい筋してるな。  
もともと素質があるのか?  
 
「服が邪魔だな、脱がすぞ」  
セーラー服の上着の前をはだけさせ、黒のハイネックと一緒にたくし上げた。  
白いハーフカップのブラに包まれたふくらみがあらわになる。ブラからはみ出した部分は西山の愛撫で赤く充血していた。  
唯笑は心身とも強い力で拘束され抵抗できないまま、肌を露出させられていく。  
「これも取っちまおう」  
片手で器用にブラを外しついに唯笑の乳房はむきだしにされてしまった。そのまま両手で握り締める。  
唯笑の乳房はすべすべしててとても柔らかかった。大きさはとてもかおるには及ばないものの、昨年の計測時の73を大きく超えていることは間違いなさそうだ。左手ををつかんで乳房に触れさせた。  
「指に力を入れておっぱいをつかむようにするんだ。そうそう、いいぞ」  
 
西山は唯笑の体の支配にのりだした。  
(処女の体を乗っ取って思うがままに支配する。やがてかおるもな)  
「なあ、唯笑様よ、俺たちこんなに体の相性がいいんじゃねえのか?」  
西山は唯笑の体を愛撫しつつ、決して絶頂に導こうとはしなかった。  
唯笑が物足りなさを訴えて腰を振りたてても、  
「ふふ、たいしたいやらしさだな、唯笑様よ、とても処女とは思えませんぞ」  
とまるで嶋村三成のように皮肉に満ち満ちた言葉をなげかけると、  
とたんに全身を赤らめて、身を萎縮させるのだが・・・  
唯笑が気をやりそうになると、動きを止めて、処女の性感を焦らしに焦らしぬくのだ。  
「唯笑、まだいくなよ、勝手にいくことは俺が許さないからな、おまえら女は俺の奴隷になる前に自分の意思を自由にできると思うなよ」  
倣岸不遜な西山の台詞が炸裂した。  
かおるが西山から逃げ出した原因もここのあるわけだが、西山本人はまるでチャールズ・マンソンのごとく世界を支配した気分になり、自分勝手な言葉を撒き散らしている。  
 
「いや、もうやだぁ・・・」  
体内に渦巻く未経験の快感に耐えかね、唯笑が泣き言を漏らした。  
すると  
「お願い、命だけは助けて、あたしは赤ちゃんを生みたいの!」  
なぜか西山が女の声をまねて気色悪い調子で叫ぶのだ。  
西山の脳内ではかおると智也はすでに出来上がっていて、  
かおるはすぐにでも妊娠し、妊婦のかおるを誘拐して拷問するというシナリオが  
出来上がっているのだった。  
先ほどの叫びはマンソンに殺されたアメリカの女優、シャロン・テートの最後の言葉であり、  
内容があまりにも陳腐であったため、マンソンの部下の怒りを買い、その場で処刑されてしまった。  
西山は自分とかおるをカルトの教祖と有名女優に置き換えて一人で快感に酔っているのだった。  
この先かおるを拉致できた場合、赤ちゃん云々の台詞をかおるの強制的に言わせることは、  
西山にとっては既定事項であった。・・・かおるは妊婦どころかまだ処女であるのに。  
 
(かおるかおる、俺の可愛いかおる!おまえが手に入らないのなら、俺はこの国をぶっ潰してもいい。)  
幼少からよく発達した身体、太もも、お尻・・・そしておっぱい。  
自分の元から逃げ出すまでは背中まで伸ばしていた髪。  
先日目撃してショートヘアになったかおるを見て、新しい魅力を発見し、はげしく勃起したこと。  
積極的なかおるのことだから、早とちりして性体験を早く済ませてしまうのではないかとハラハラしたこの数年。  
(もう駄目だ、俺はな、かおるを捕らえて妊娠させなくては気が狂ってしまうようだ!)  
絶望的な嗜好下で西山はそう悟っていた。  
 
(唯笑様は魅力に溢れているが・・かおるを陥れるための捨て駒よ!!)  
唯笑を包み込みながらも西山の脳内はかおるのことでいっぱいだった。  
(まさか三上のようなフニャチン野郎に女にされていないだろうなァ。もうそれだけが心配で)  
もしも犯行に及んでいた場合、智也の男根を切り取って博覧会に展示するつもりの西山であった。  
(こうして別の女と戯れていても浮かぶぜ、かおるの匂いがよ…。俺の生命の原点が!!)  
(でもな…人間の欲望には切りがないなぁ、かおるを崩壊させたら、俺はどんな行動に出るのやら)  
ようやく目の前の哀れな少女の相手をする気になった西山は、指先に力を込めていった。  
 
 
 

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