「智ちゃんのバカ・・。・・・でも、大好き」
雨の中、猫たちに傘を与えた唯笑は小さく呟く。雨の中でも涙と分かる熱いモノを流しながら、俺と唯笑はキスをした。
小さいカラダ。
幼いとばかり思っていたこの幼なじみが、酷く愛おしく思えて、俺の全ての想いを込めて−唯笑をキツくキツく抱きしめた。
「あったかいよ智ちゃん・・・・」
「あぁ、俺もだ・・・」
唯笑の体温が、直に伝わる。
俺の体温も唯笑に伝わっているのが、分かる。
いくらかして、唯笑が口を開いた。
「ねぇ、智ちゃん・・。一緒に帰ろうよ・・・」
二人、手をつないで帰る。
この小さな手のひらが、こんなに暖かいなんて。唯笑の笑顔が、こんなに愛しいなんて。
−もう、耐えられない。
「じゃあ、お別れだね」
唯笑と俺がいつも別れる場所に来たとき、唯笑が寂しそうに言った。
手には猫たちの入ったダンボール。
いつもなら、じゃあな、の一言で終わらせるのに・・・・。
「俺の家に来てくれ」
俺は、そう言ったのだ。
「・・・うんっ!」
答えた唯笑の笑顔が、愛しくて・・・恋しくて。俺は、唯笑にキスをした。
「唯笑、風呂沸いたから先に入れよ」
「・・・いいの?」
ーあの後ー。
唯笑と二人で家に帰った俺は、まずタオルで身体を拭き風呂に湯をはった。
風邪を引いたらバカみたいだよな、と思いつつ猫たちと戯れる唯笑を見ていると、心が温もった。
無邪気に唯笑にじゃれる子猫と、くりくりした瞳をせわしなく動かしながらも猫たちを愛でる唯笑。
やっぱり、と俺は思う。
唯笑は、確かにドジでおっちょこちょいではあるが、純粋なのだなと。
「んー・・・・」
風呂に入るべく立ち上がった唯笑だが、その場で腕組みをして悩んでいる。
唯笑は悩むときに唸り声をあげるのが何よりの証だ。
だいたい三分経った時、不意に唯笑が「そうだよ!」と声をあげる。
静かさに慣れかけていた子猫たちが驚きからか、びくりと震えた。
「・・・何がそうかだ」「唯笑が先に入ったら、智ちゃんが風邪ひいちゃうでしょ?でも智ちゃんが先に入ったら唯笑が風邪ひいちゃうから」
・・・嫌な予感がした。唯笑の満面の笑みに、俺は覚えがある。
そう、これは間違いなく・・・・!
「ねぇ智ちゃん、一緒にお風呂入ろうよぉ♪」
やはり、思った通りだ。そしてこの状態になった唯笑を止めることは、俺には出来ず・・・・。
「わぁ、いいお湯だよ」「おまえさ、ちっとは恥じらえよ・・・」
「恋人同士なんだし、それに唯笑はうれしいよ?」
普通ならば背中合わせに湯船に浸かるのだろうが、俺たちは違った。
湯船に悠々と浸かる俺の上に、唯笑が乗り、俺は唯笑を抱きしめる、といった感じだ。
ちょっと底が深い使用の風呂でなければ出来ない芸当に、唯笑は満足そうで。
「智ちゃん・・何か当たるよ?」
前言撤回。
どうやら唯笑の柔らかい肌に触れるせいか、俺のムスコは元気一杯になったようだ。
ほんの一時間ちょっと前にあんなシリアスな出来事があったというのに。
「・・・あ、それはだな・・・」
まさか唯笑の身体に欲情したとも言えないし、万一言えば唯笑に愛想を尽かされる可能性もある。
まさに、非常事態。
緊急事態の方がいいか。
などと俺が現実逃避をしていると。
「もしかして智ちゃん、唯笑の身体に欲情しちゃったの?」
「・・・はへ?」
「智ちゃん、えっちだなぁ?」
ニンマリとした、およそ唯笑特有の「可愛い小動物的な笑顔」とかけ離れた艶っぽい笑み。
今度はわざと自分の太股を俺のムスコにすりつけ、時折熱くいやらしいため息をつく唯笑。
「智ちゃあん・・・・」
唯笑が、切なげな声をあげて身体を揺する。
「唯笑ね、とってもいやらしい変態なんだよぉ・・・・?」
俺の片手をとり、まだ発展途上の幼い胸にあてる。
「唯笑が変態だって?」「唯笑はね、たまぁにいやらしいエッチな本を買って、自分のお股を弄ったりしてる変態なんだよ・・・はぁ・・・」