「うん、これで綺麗になったろう?」  
 
 
二つ並んだ墓を前に、智也は笑う。  
空は突き抜けるような蒼。  
雲一つない空に、太陽が笑う。  
 
 
「お前達には散々心配かけてきたからな。・・・・もう、大丈夫だ」  
 
 
智也は、泣かなかった。みなもの葬式の時も、こみ上げる熱いモノを必死で堪えた。  
揶揄され、睨まれ、侮蔑されて、それでも一滴の涙さえこぼしはしなかった。  
 
 
それが、みなもの最後の願いだったから。  
 
真っ白なチューリップ・・・墓には似合わないだろうが、彼女が好きだった純白の花を供えて。  
少し手を合わせて。  
 
「智也ぁ、そろそろ行かないー?」  
「・・・あぁ、そうだな!腹も減ったしなぁ」  
「じゃあうどん食べに行こうよ。久しぶりにさ」「それもいいなぁ」  
 
わざわざ墓参りをデートルートに組み込んだ彼女が、智也を急かす。  
 
(俺、頑張るから。もう迷ったりしないから。ゆっくり眠ってくれな?)  
心の中でそう、静かに思いを馳せる。  
立ち上がった智也の瞳に、迷いはなかった・・。  
 

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