双海詩音と寿々奈鷹乃は、とても仲が良い。  
鷹乃の叔父たちがやっている本屋に詩音は度々訪れ、幾多のハードカバーを買っていくのだ。  
 
 
ただし、余りに量が多い場合は詩音の彼氏−三上智也−が荷物持ちにされるのだが。  
 
 
「よぅ寿々奈」  
「あら。貴方だけなんて珍しいわね?詩音は?」  
 
ある日のことだった。  
鷹乃がいつものように店番をしていると、いつもは詩音と一緒のはずの智也が、一人で来たのだ。  
 
「詩音は風邪でダウン。見舞いに行く序でに、何か本でも持っていこうかなと」  
「へぇ、気がきくのね」  
 
なるほど、優しさは人一倍あるらしい。  
鷹乃は、全日本の高校生の中でなら劣等生に分類されるこの青年への評価を書き換えた。  
 
 
「・・・・・なぁ」  
「どうしたの?」  
「寿々奈。詩音と・・・詩音とずっと仲良しでいてやってくれな?」  
「また突然ね?」  
 
 
不意に、智也の声色が変わる。  
優しげな、この場にいない恋人への愛に満ちた声色。  
 
「詩音の心の傷は深い。まだ時折悲しげな顔になるしな」  
「詩音の心の傷?」  
「そう。詳しくは言えないが・・・あいつはあんたに心を開いてる」  
 
「あんたさえよけりゃあ・・・出来れば、親友でいてやって欲しい」  
「バカね?当たり前でしょう・・・」  
 
 
余りに下らない頼みとも言えない頼みに、鷹乃は笑った。  
そして・・・この青年に、初めてと言ってもいいぐらいに心を開きだしていた。  
 
 
「じゃあな。また何かあったら寄るから」  
「貴方も本を読んでみたらいいのに」  
「まだあるからな。・・・大きな大きな本がな」「そう。まぁ詩音に宜しく言っておいてね」  
 
 
これほどまで親しみを感じた青年は、少なくとも今までにはいない。  
女と見れば性欲と結びつけようとする輩が多い中、真剣な想いを持つ彼が、新鮮な感情を鷹乃に与えた。  
 
 
兎にも角にも、二人は取り合えず別れた。  
 
 
「鷹乃さんは恋人が欲しいとは思わないのですか?」  
「ぶっ!?」  
「うわ、吹き出すなよ」  
 
この場にいるのは、智也・鷹乃・詩音。  
見舞いや本などの礼と言う名目の茶会をすると詩音が言いだし、二人がそれに同意した形になるのだが・・・。  
 
 
「私がいい男と想うのは、この男だけよ」  
 
 
刹那、場が凍り付く。  
 
 
「一途で優しくて、強い。バカなのは玉に瑕だけど、愛嬌の範疇だしね」「智也さん・・・浮気ですか?」  
「ノーコメントだ」  
 
何処か強気な鷹乃。  
わなわなと手を震わせる詩音。  
状況を把握しきれていない智也。  
 
 
ある意味での、修羅場がここにあった。  
 
「あら、浮気じゃあないわよ?」  
 
 
カチャ、とカップを置いた音がする。  
鷹乃は、微笑んでいた。  
 
「私が彼を想うのは、別段悪い事じゃあないでしょう?」  
「う」  
「冗談も程々にしとけ」  
 
もう一度、カチャ。  
今度は詩音が置いた。  
中の琥珀色の液体から、ゆっくりと湯気が立ち上っている。  
 
 
「冗談じゃないわよ。私は貴方程素敵な男を見たことがないし、まさか詩音の為にあんな場末の本屋に来るなんて」  
「いいじゃねぇか」  
「・・・解りました」  
 
 
音は鳴らない。  
智也は、詩音謹製のレモンティーを飲み干す手前だ。  
 
 
「智也さんに、二人で愛してもらいましょうか?」  
「それいいわね」  
「ぶっ!?」  
 
 
「勘弁してくれよ」  
「ダメよ。ねぇ詩音?」「そうですよ。智也さんは私たちの恋人なんですからっ」  
 
 
彼女にしては珍しいイタズラ気な表情。  
鷹乃と詩音のふた等に両脇を固められた智也は、複雑そうな顔をした。  
 
羨ましいとかムカつく、憎しみで人が殺せれば・・・などという思いの隠った視線を一身に浴びつつ、歩いていく智也。  
可愛いとか、クールだとか、あまつさえ萌えー!と思われつつ歩く鷹乃と詩音。  
日曜の真っ昼間に、やはりというかこの三人は目立ち過ぎていた。  
 
ぴったりとひっついたままの三人がたどり着いたのは、三上家だった。  
無人の我が家の鍵を智也が開け、やっぱり三人で中に入る。  
 
 
「俺はシャワー浴びてくるから、好きにしててくれていいぜ」  
「・・・分かりました」  
 
詩音が少しむくれたような顔をするが、智也は気にせず風呂場へと直行する。  
 
・・・鷹乃の瞳が、妖しい光を写していたのに気付かずに。  
 
 
「何だってんだよなぁ・・・・あいつら・・・」  
 
はぁ、と溜息を洩らす智也。  
詩音も鷹乃も豹変したかのようにベタベタとし始めたのが不気味でならない。  
信に相談したら、黙れ果報者、と言って一喝されたのが昨日だ。  
 
 
「全く・・・・」  
 
 
詩音は自分を動物に例えれば犬だと言っていたが、間違いなく猫だ。  
鷹乃も然り。  
鷹乃なのに猫、というのは少し変だが。  
 
 
「んじゃ、頭洗って上がるか」  
「私達が洗うわ」  
「智也さんは座ってて下さいねー・・・」  
 
「何でお前等がいるんだよ・・・・」  
「気にしないの。男でしょうが」  
「そうですよ?私達に任せて、楽にしてて下さい・・・・」  
 
 
どうも言いくるめられている感があるが、取り合えず気にしないで座る。シャワーが再度頭に浴びせられ、詩音の細い指と鷹乃の長い指がシャンプーの液体を一気にかき混ぜる。  
目に液体や泡が入らぬように智也は目を閉じた。  
 
ムニュ。  
 
背中に柔らかなものがあてがわれる。  
疑いようもない、鷹乃の豊乳だ。  
同時に、詩音の美乳も脇腹に当たる。  
 
「オイ、胸が当たって」「どう?気持ち良い?」「鷹乃さん・・・綺麗な胸ですね・・・はぁ」  
 
 
どうやら確信犯らしい。身動きをとるわけにもいかないこの状態で、智也は檻の中の小鳥の気分を味わっている。  
 
 
「あ・・智也さんの、大きくなってます・・♪」「・・・いやらしいわねぇ?シャンプーしてるだけでこんなに勃起させて・・・・」  
「しゃあねぇだろうが。・・・この状況で興奮しないほうが男失格だ」  
 
 
ぶっきらぼうにそう言ってのける智也。  
智也の頬が赤いのは、風呂場の熱気だけではあるまい。  
 
右腕に鷹乃、左腕に詩音の柔肌が触れる。  
彩花もそうだったが、女と言うのは何故にこれほど柔らかいのか。  
智也は、混乱する頭の中でふとそう思った。  
 
 
「智也さんは、私達のご主人様になったんですから♪」  
「私達が貴方に奉仕、身も心も捧げるのは当然のことでしょう?」  
「いつ決まったんだ?」「私が詩音に打ち明けてから。絶対に、負けないからってね」  
 
 
・・・・事後承諾かよ。智也は頭の泡を洗い流しながら、そう呟く。  
不意に両腕の感触がなくなった。  
 
 
「私たちが体をキレイにしてあげますね♪」  
「へぇ、なかなかいい体じゃない?」  
 
 
背中に、柔らかな膨らみ−胸と気付くまでに若干かかった−が触れた。  
 
二人のアンバランスな胸が智也の背、胸元を這いずりまわる。  
いつものタオルで洗う時とは比べ物にならない気持ちよさと温もりが、智也に与えられる。  
しかし、二人に異変が訪れるにそう時間はかからなかった。  
 
 
「くふゥ・・・」  
「胸が擦れて変な気分になるのォ・・・」  
 
 
二人の声に、艶が混じり始める。  
小悪魔然とした笑顔も、今は快楽によって歪められており、頬の赤みが風呂の熱気と相俟って一層濃くなる。  
 
「智也さぁん・・・」  
「変な気分になって・・・」  
「お前等なぁ・・・」  
 
 
呆れたような声を出す智也に、哀願するような眼の鷹乃と詩音。  
しかし体で体を洗うのは止めない辺り、一途と思えなくもない。  
もう一度溜息をついた智也は、優しく二人の頭を撫で上げる。  
 
 
「ご奉仕するのは俺みたいだな・・・?」  
「智也さん・・・」  
「私も、私もお願い・・・・」  
 
 
切なげに身をくねらせる少女二人。  
前々から感度が良かった詩音は兎も角、クールという印象しか無かった鷹乃がこれほどまでに乱れるとは、想像してなかった。  
 
 
(まぁいいか)  
 
 
智也は、意地悪気な笑みを浮かべながら二人への対応を考えていた。  
 
「詩音のココは・・・びしょびしょじゃないか」「ひぅっ!!」  
 
 
当然と言うか、智也は恋人の秘裂を指でイジる。クチュ、ヌプ、とくぐもったような水音がして、彼女のそこから愛液がトロトロとこぼれる。  
元来詩音の感度は常人以上である為、それだけで激しい快楽になるのだ。  
 
「詩音は指だけでイケるな?」  
「はぃぃ・・詩音は、詩音はイヤラシい娘です・・・いやぁ・・・」  
 
 
智也が指を鉤型に曲げ、詩音のGスポットを摘み、激しく抜き差しするだけで詩音は絶頂へと追いやられる。  
 
「詩音、イっちゃうの?指でイかされちゃうの?」  
「やぁ・・言わないで下さいぃ・・うひっ!?」「もうイっちまえよ」  
 
 
智也の顔が悪戯気に歪み、刹那詩音の身体に余る程の快楽が襲う。  
 
智也が、Gスポットを力一杯にひねりあげた。  
 
 
「ひゃあぁっ!!?いっひゃうぅ、指で、智也さんの指でイっちゃうろぅっ!!!!」  
 
 
詩音が絶叫する。  
ヌプ、と水音がして智也の指が引き抜かれる。  
愛液が、小水のような勢いで吹き出す。  
眼は既に虚ろだ。  
 
 
親友の余りの激しい絶頂に、鷹乃は絶句した。  
 

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