「とゆー訳で、現代にお侍さんはいないんだ」
「そんな・・・っ!?」
恋人である智也からの言葉に、詩音は絶望した。あれほど、あれほど憧れ会うことを待ち望んだ侍が、今は全くいないということに。
「ってゆーか詩音の知識って偏り過ぎな気がするんだけど・・・・」
「・・智也さん・・・」
小さく詩音は呟いた。
そして智也を見つめた詩音の顔は、涙に濡れていた。
「・・お侍さんがいないなんて、絶対に嘘です」「・・・・は?」
自分でも間抜けな声だな、なんて思いつつ、智也は詩音の次の言葉を待ってみる。
「これには、お侍さんがいると書いています!」「なっ・・・・!?」
詩音がごそごそと鞄から取り出した本を見て、今度は智也が絶句した。
・・・・エロ本だった。しかも智也一番のお気に入りで、少し前に無くして探していた一冊だ。
「この本には、確かに『お侍さん』だと女性が男性に言っていました!」「あー、んなことも書いてた気がするな・・・」
秘蔵のエロ本を恋人が持ち帰っていた事実を知り、現実逃避している智也に詩音が迫る。
「・・・・あの、詩音さん?」
「つまり智也さんもお侍さんということです♪」
ニコリと微笑んだ詩音の顔は、かつて二人が文字通りセックスに夢中になっていた日々のそれに戻っていた。
そんな艶っぽい顔を見せられて、耐えられる智也ではなく。
結局、その日一晩は眠ることもせずに愛し合い続けていた。
「やっぱり、智也さんはお侍さんです♪」
「・・・急にどうした」
結局十数回行ったセックス。
その後始末をすべく詩音の秘裂をティッシュで拭いている智也に、詩音がまた微笑みかける。
ただし今回は、まるで慈母のような穏やかで柔らかな微笑み。
「私の仮面をばっさりと切り裂いて、弱い私の心を守ってくれていますから」
そうでしょう?とでもいいたげな詩音の顔から目を背け、智也は頬を叩いた。
再び発情しそうになった心を押さえ、智也は詩音の秘裂を拭き続ける。
詩音が自分の優位に気付き、智也に色々とおねだりをし始めるのは、時間の問題だった。