鷹乃は並みの男よりも喧嘩に強かった。それは彼女が類稀なる運動能力を  
有するからである。しかし目の前にいる女はパワー、スピード、跳躍力や瞬発力  
などにおいて鷹乃を上回る能力を有していた。そして鷹乃の乳房への連打や  
バットを粉砕した蹴りの威力などから何らかの格闘技を学んでいることも容易に  
想像できた。つまり喧嘩において鷹乃と女の間には圧倒的な力の隔たりが存在  
しているのである。  
 しかし、そんな状況でありながら鷹乃は屈することなく、逆に立ち向かおうと  
していた。鷹乃が屈しない理由、それは自分が何をすべきかを理解していた  
からである。鷹乃がすべきこと、それは逃げ出すことに成功した少女と自分の  
安全の確保の二つであった。  
 ほんの少し前、鷹乃の尽力で少女はこの場から逃げ出すことに成功していた。  
そして幸いにも女も囃し立てる男たちは鷹乃との争いに熱中し、そのことに  
気づいてはいなかった。だが逃げたことがバレたら男たちは少女を追いかける  
だろう。そうなると少女の自転車ではスクーターによってすぐに追いつかれる。  
だから少女が安全なところに逃げ切れるまでの時間を鷹乃は稼ごうとしていた。  
 むしろ問題は鷹乃自身の安全の確保の方であった。鷹乃が目の前の女相手に  
勝つ可能性など皆無に等しく、このままでは倒されるのは目に見えていた。  
そうなれば、あの囃し立てている連中は自分が獲った獲物でもないのにその欲望を  
鷹乃に対して向けてくる・・・男はそんな生き物である。鷹乃はそんな境遇に自分を  
置くつもりなど毛頭なかった。  
 
 少女が逃げ延びて、警察を呼んでくれることはあまり期待できなかった。鷹乃は  
電波の届く場所でかけるつもりで少女の携帯を持ち出して、自分のポケットに  
入れていた。そのため少女が警察に連絡できるのはかなり先のことになり、  
それからすぐに駆けつけも、この女相手に持久している自信など鷹乃には  
なかった。  
 鷹乃の安全はこの場から逃げ出すことにより確保される。優れた水泳選手で  
ある鷹乃はその心肺能力と持久力−おそらくは目の前の女に対しての  
アドバンテージを確保できる能力を生かすことである。男たちのスクーターは  
脅威であったが、工場の周りには雑木林が多数存在しており、そこに入れば  
何とか逃げ切ることができる。唯一警戒すべきは女の瞬発力だけであり、それに  
よって捕まってしまうことである。失敗すれば逃げ出せないような攻撃をされて  
しまうだろう。チャンスはおそらく一回しかない。  
 水泳の選手として幾たびかの大舞台に立った経験のある鷹乃は目的が  
定まれば自然、落ち着いて冷静になることができた。そして冷静になれば  
元々頭の回転の速い彼女は自分の置かれた状況を的確に分析把握し、  
どのように行動すればよいか判断できた。鷹乃のなすべきことは"少女が  
逃げ切るだけの時間を稼いで、タイミングを見て自分も逃げる"一点に絞られ、  
そのためには"勝とうとはせずに負けないことに徹する"ことが求められた。  
 
 女のほうも鷹乃と同じように呼吸が整えていた。しかし、それは鷹乃とは対照的に  
襲い掛かるタイミングを見計らうためのものであり、さながら獲物を目の前にした  
ライオンと逃げようとするシマウマのようであった。  
「手伝いますぜ」  
 そんな空気を読めずに獲物である鷹乃にありつこうと男どもは声をかける。が、  
女は氷のような視線を返して、その目論見を制した。こいつらは足手まといに  
しかならない、女はそう判断した。それは鷹乃も同じように思っていた。三人揃って  
かかってきてくれたほうが隙ができて逃げやすくなる、むしろ鷹乃にとっては逃げた  
少女を追いかけられる方が怖いくらいであった。  
 鷹乃の呼吸が完全に整ったことを確認した女はその場でステップを始めた。  
トントントントン、倉庫に女の足の音だけ響く。  
「行くよ」  
 女はそういうと一気に鷹乃の方に跳躍した。  
「(速い!)」  
 あわよくばカウンターを考えていたが、予測を超えた速度に行動することが  
できなかった。鷹乃は咄嗟に身体を丸め、顔とボディの前を腕でブロックした。  
しかし、女の狙ったのはそこではなかった。  
ビリリリリリリィ  
 布を引き裂く音がした。女はナイフで入れたスカートの切り込みに手を入れて、  
下に引き裂いたのである。  
 
「きゃっ!」  
 予期せぬ女の攻撃に悲鳴をあげた鷹乃はスカートを引き裂かれるのを抑えようと  
女の手をつかもうとした。だが既に女はその場所にいなかった。  
女はスカートを引き裂きながら、鷹乃の右を通って彼女の背後に回ると今度は  
後ろのスカートの切り込みに手を入れると同じように引き裂いた。背後に回られた  
鷹乃は裏拳で女の顔を撃とうとする。しかし、今回も狙ったところに女はいなかった。  
 次に女のいた場所は鷹乃の正面の位置であった。女は鷹乃のがら空きになった  
胸を狙う。反動のついた鷹乃の腕はそれに対応できなかった。  
「ああっ!」  
 ビリビリと引き裂かれる制服、その下の鷹乃お気に入りの白いブラは破壊されて  
引き千切られる。剥き出しにされた豊満な乳房を隠そうとする鷹乃の腕は、しかし  
女の腕によりはじかれる。鷹乃の乳房は女の更なる激しく強い攻撃が晒された。  
「うぁっ!・・・うくっ、ひあっぅ!」  
 鷹乃の乳房に再び加えられるジャブの嵐、前後左右巧みに打ち込まれるために  
逃げる方向を定められず棒立ち状態の鷹乃がようやく腕で薙ぎ払った時にはやはり  
女の姿はそこになかった。  
ビリリリリリリリリィ  
 女はスカートの前にある別の切り込みに手を入れて、今度は鷹乃の左側から  
その背後に回った。スカートの前方は二つの切り込みの間でかろうじて繋がっては  
いたが、その丈は股上10センチ、鷹乃の白いパンツを隠すことはもはや不可能で  
あり、その役割を果たせなくなっていた。  
 そして、まだかろうじてその役割を果たしている鷹乃の制服とパンツも彼女の背後に  
回った女によってボロキレと化したスカート、破壊されたブラと同じよう運命を辿ろうと  
していた。  
 
「ひぃあ!ひぃあ!ひぃあ!」  
 鷹乃の尻に女の平手が襲い掛かる。そのしなる手は鞭のように打ち、鷹乃の  
パンツはこの威力に耐えることができなかった。スカートの後ろの部分は丈では  
なく、ウエスト周り下何センチとしか表現できず、パンツのお尻の部分は裂かれて  
剥き出しにされた鷹乃の尻はスパンキングにより赤く腫れてきていた。  
 尻の痛みに耐えかねて崩れ落ちそうになる鷹乃、しかし女は鷹乃の制服を  
つかんで引き上げる。切り込みの入った制服はこれに耐えられず引き裂かれる。  
そして露出された背中にも加えられる張り手の乱打。鷹乃が身体を丸めて  
沈み込もうとするとお尻を蹴り上げられる。  
「(当たらないっ!当たらないっ!!)」  
 パンチ、撫で切り、払いのけ、キック、足払い、鷹乃は何度も反撃を仕掛ける。  
しかし、その悉くが避けられるか払いのけられて、手痛い逆撃を喰らう。服が  
引き裂かれ、胸を弄ばれ、尻を叩かれ、しかし自分の攻撃がまったく当たらない。  
鷹乃は女が自分を遥かに上回る運動能力に恐怖し、絶望感と敗北感が彼女の心を  
蝕み始めた。  
 実際には鷹乃と女の運動能力にさほどの大きな差はない。あるのは喧嘩の  
場数である。鷹乃の喧嘩の強さはその運動能力に起因するものであり、技量に  
勝るものではなかった。実のところ、鷹乃の攻撃には動作や運動に無駄な部分が  
多いのである。今までは相手との運動能力が懸隔していたためにそれで押し切る  
ことができた。しかし、今回の相手は自分と同等レベルであり、鷹乃はそんな相手と  
喧嘩をしたことはなかった。一方、女のほうは明らかに手慣れており、そのため  
鷹乃の動きを見て予測することなど造作もないことであった。畢竟、ほぼ互角の  
スピードであっても運動する距離の差は大きく異なっていた。  
 
 どこを攻撃しても切り返されてしまう、パニックに陥った鷹乃は女の挑発に  
対しても身体を丸めて護りに入るしかできなかった。  
「うほっ!いい女!!」  
「こいつか〜女のクセに男殴るヤツって」  
「ゴツいのかと思ってたら、スゲェ美人じゃねえか!」  
 2人の男の後ろから別の男が3〜4人の男が現れた。この後に我が身に  
加えられる凌辱に恐怖を覚えた鷹乃であるが、かといって彼女になすすべ  
などない。どうすればいいの?襲い来る絶望の波に沈みかけた鷹乃だが、  
女の顔に不快感がありありと浮かんでいるのに気がついた。  
「下衆が・・・」  
 女の視線が鷹乃から離れていた。何かの不具合があったのだろうか、女は  
現れた男どもを横目で睨みつけていた。鷹乃は女の脇を通ろうとした。  
「ふんっ!」  
 女は逃げられるものかと鷹乃の進行方向に立ち塞がるように動いた。だが、それは  
鷹乃のフェイントだった。鷹乃は動いてくる女に対して膝蹴りを入れようとした。  
「!」  
 女は鷹乃の膝蹴りに対して反応、合気道なのか蹴り上げる鷹乃の膝の裏を手で  
はねる。鷹乃は空中で回転させられた。しかし、鷹乃は地面に転ばされなかった。  
鷹乃はその優れた運動能力を発揮させた。  
 鷹乃は転びそうになる直前、地面に手をついて反動をつけて下から女にキックを  
仕掛けた。  
「な、何!?」  
 女は鷹乃の予期せぬ反抗に驚愕した。下からのドロップキックが女の顔に  
当たろうとしていた。  
 
「ええぇぇぇ!?」  
 男たちの間からどよめきの声があがった。そう、追い詰められていた鷹乃が  
反撃をしたからだ。顔に蹴りを喰らった女の顔は大きく仰け反った。  
「(チャンス!)」  
 蹴りを放った鷹乃は次に逃げるための行動に移ろうとした。鷹乃には今の一撃で  
女をダウンさせることができたのかまではわからなかった、しかし相当なダメージを  
与えた確信があった。ならばそのダメージがあるうちに逃げるのが賢明な判断、  
そう彼女はこの瞬間に考えた。だが・・・  
「(えっ!?)」  
 女は蹴りを放った鷹乃の足の間に手を入れると大きく開き、向こう脛の辺りを脇に  
抱えた。そして反動を利用して鷹乃を抱え上げた。  
「(な、なんで!?なんで倒れないの?この人は化け物??)」  
 足を掴まれた鷹乃は女の耐久力に驚愕した。しかし鷹乃が驚くべきは女のスピードと  
動体視力の方であろう。女は鷹乃の反撃を察知すると頭を後方にのけぞらせるように  
動いていた。そのため、見た目には鷹乃の蹴りによって弾かれたようであっても本当の  
ところは女が自分でそう動いただけに過ぎなかった。一方、蹴りを放った鷹乃の方も  
相手の顔を蹴れたことに眩惑されただけであった。格闘の経験があったならば蹴りの  
感触で相手にさほどのダメージも与えることができていないことに気づいただろうが、  
鷹乃がしているのは水泳であって格闘技でなかった。  
 だが鷹乃にはそのことで動揺しているヒマなどなかった。鷹乃は自分を抱え上げた  
女が次に何をしようとしているのか理解できたからである。彼女は子供の頃に  
従兄弟が見ていたプロレス番組のことを思い出した。そして従兄弟が幼い鷹乃に  
仕掛けた技−パワーボムが今、彼女が掛けられようとしているものであることも  
思い出した。あの時は柔らかい布団の上に落された。そして、その後に怒った鷹乃が  
その従兄弟を泣かしたのである。しかし、鷹乃が身体を落されようとしているのは  
柔らかい布団の上でもなく、衝撃を吸収するように設計されたリングの上でもない、  
剥き出しのコンクリートの上である。  
「(こ、殺される!!)」  
 窮鼠が猫を噛むときは一撃で倒さないと、怒り狂った猫に反撃されるのである。  
 
 急速に落ちていく頭、そして次の瞬間に鷹乃の頭には強烈な衝撃・・・は  
来なかった。鷹乃の頭は地面のほんの少し上の位置で止まっていた。女は  
鷹乃を地面に叩きつけずに、その僅か手前で彼女の身体を留めたのである。  
 鷹乃には女のこの行動の真意が判らなかった。鷹乃のポニーテールの  
根元は地面に接していなかったから実際には意外と高い位置であったのだが、  
しかしそれでもワザワザ力を込めてこんな中途半端に位置で止めたのか。  
そのまま地面に叩きつけてしまえば、その時点で終わっていたはずなのに。  
「あっ!?」  
 女は鷹乃の頭を地面に下ろし、そのまま押さえつけた。そして動かそうとした  
鷹乃の腕を足で踏みつけにした。ほぼパワーボムの後の形に持っていかれた  
のである。  
 女は鷹乃の両方の足を脇に挟み、巧みにホールドしていた。そのために鷹乃が  
幾らもがいてもせいぜい身体を前後左右に揺らすだけで女を除けるはできなかった。  
 プロレスならば、この時点でカウント3で終了しているはずである。普通の喧嘩  
ならばさきほど地面に叩きつけられて終了していたはずである。しかし女と鷹乃の  
戦いはまだ終わってはいなかった、そしてその戦いの継続を図ったのは優勢で  
ある女のほうであった。  
「くぅぅぅぅ・・・」  
 必死になってもがく鷹乃、しかし状況はまったく変わらなかった。女はそんな  
鷹乃を尻目に余裕綽々という感じでジャケットの内ポケットから何やら取り出した。  
「(ルージュ?)」  
 それはルージュのような筒であった。ただ下の方にはキーホルダーみたいな  
リングがついており、なぜかビニールによって覆われていた。女は空いている  
両方の手でそのビニール袋を開け、ルージュのような筒を引き抜いた。中からは  
ルージュならぬ弾丸のような形のものが現れた。  
 
「これ、何か分かるかしら?」  
 鷹乃はそう囁く女から顔を逸らした。女と話などしたくなかったのが最大の理由  
ではあるが、そうでなかったとしてもそれが何か分からない鷹乃には返答のしよう  
などなかった。  
「ひっ・・・!」  
 女はそのルージュのようなものを鷹乃のパンツの上に滑らせた。その動きに  
鷹乃は不快さと怖気を感じたが、やがて女は鷹乃のあるポイントで動きを止めた。  
「そっ、そこは・・・はぅっ!」  
 女はそのルージュのようなものの先端を鷹乃の肛門にパンツごと押し込んだ。  
「やっ・・・やだっ、な、なにをっ」  
 いきなりの侵入者に鷹乃の肛門はヒクツき、それ以上の侵入防がんと頑強に  
抵抗した。女はそんな様を楽しむかのように無理に押し込もうとはせず、先端を  
回しながらゆっくりと肛門を虐待していた。  
「くぅっ・・・ふぅあっ!ううぅぅぅ・・・・・・」  
 鷹乃は力を込めて肛門を引き締めた。その甲斐あってか、ちりちりとねじ込んで  
くるものに対して押し返すことに成功した。  
「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ」  
 押し返すことに成功したとはいえ、鷹乃の肛門括約筋は激しく消耗していた。  
一方の押し返された女の方は、単に楽しむためにそれを引き抜いたに過ぎなかった。  
「答えは、坐薬」  
 女は獲物を弄ぶ獣の目で鷹乃を眺めた。その瞳に鷹乃は得体の知れない恐怖に  
包まれた。鷹乃はこの女に感じた恐怖は自分よりも圧倒的に強いことであったが、  
いまや別の恐怖をこの女から感じ始めてきた。この女は自分を破壊しようとしている  
のではないだろうか・・・  
「じゃ、今度は入れるね」  
 女はそんな鷹乃の恐怖感を知ってか知らずか、次なる行動に移り始めた。  
 
 

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