押し殺された女性の喘ぎ声と、肉が奏でるクチャクチャという卑猥な旋律が、研究所のとある一室に響く。息も絶え絶えな
その声は、聞いているだけで苦しくなりそうなくらいだった。自慰。その行為に酔う女、ナエは快楽と悲しみが入り混じったような
鳴き声を上げていた。
「ん・・・・・ぁん・・・・あっ・・・・・・・。」
何が辛いのか、何が悲しいのかそんなことはどうでも良い。ただ快楽を得て、嫌な現実を忘れればそれで良い。純粋に愛する
気持ちから始めたその行為は、いつの日からか逃避行為になっていた。しかしナエは感じられずにはいられなかった。心の奥底で
感じる寂しさと虚しさを。
「はぁ・・・ふぁ・・・んん・・・。」
片手に無垢だった日の思い出を握り締め、もう片方は自らが出した半透明の弦をかき乱す。まるで規則性の無い、卑猥な旋律を生んだ。
そして、紡がれる途切れ途切れの苦しそうな声。
『ナエさん・・・・ここ、気持ち良い?』
「あぁ・・・んっ・・・・カ・・ル・・さんっ。」
『ふふ・・・気持ち良いんだね・・・。ナエさんも女の子だもんね?いつもの大人しいナエさんも可愛いけど、こうやってさ、
甘えるナエさんはもっと可愛いと思うよ。』
「あぁ!・・・ヒカル・・・さん・・・はぅ・・・ヒカルさんっ!!」
『ナエさん、好きだよ・・・・独り占めしたいくらいに・・・。』
「ヒカルさん!・・あっ・・ぅん・・・す、好き・・・です・・・・ん・・・大好きっ・・・!!・・・あぁぁ・・・ん・・・大好きぃぃ!!!」
夢想は現実と異なり、いつも優しく迎えてくれる。だからこそ嫌な事からそこへ逃避してしまう。ナエは華奢な肢体を淫らにくねらせると、
多量の潮が吹いたのを最後に今日何度目かになる絶頂を迎えた。朦朧とする甘美な余韻を感じる最中、ナエの僅かに痙攣する手から何かが床に落ちた。
それは色あせ、皺だらけの写真。愛しい人が写された写真。それを再び手にすると、丁寧にしわを取って白衣のポケットに大事そうに仕舞った。
「あれ?おっかしいなぁ・・・・またどっかに行っちゃったのかな?」
ヒカルは副業(?)で怪盗をしている。今も昨晩手に入れたばかりのレアメダルをメダロット博士に届けるつもりだった。しかし当の博士は出払っている
らしく、部屋には無造作に書類があるのみ。こうしていても仕方ない。ヒカルはそう思い、博士の居所を聞くためにナエの研究室へと歩を進めた。
その頃ナエは何をするでもなく、ただパソコンに向かっていた。何か考え事をしているのか、その瞳はどこか遠い所を見つめている。最もこれは
今に始まった訳ではない。以前から頻繁にあったことだ。
そんな抜け殻状態のナエを覚ますかのように、何も知らないヒカルが部屋に入ってきた。
「あの・・・ちょっと、いいかな?」
「!」
ナエは聞き覚えのある声に余程驚いたのか身体全体がビクンと反応した。
「あ・・・・・・・ヒカルさん・・・どうかなさったんですか?」
ナエはヒカルに会いたくなかった。嫌いだからではなくヒカルのことを想うだけでも潰れてしまいそうな切なさを感じるからだ。顔を伏せヒカルを
見ないようにし、小声で話すも想いを隠し切れるかどうかとても不安だった。
「博士はどこにいるのか知ってる?」
「え・・・・・祖父・・・ですか?」
「うん。」
「確かメダロット社の方に行っていたと思います・・・。」
「そっか・・・・・ありがとう。じゃあ、また今度来るね。」
そう言ってヒカルは部屋を出ようとした。ナエにとってはヒカルが早く出て行ってくれた方が辛い思いをしなくても済むはずだ。しかし頭では
分かっていても気づいた頃には身体がすでに反応していた。
「今度っていつですか・・・?」
心の奥底ではずっとこのまま一緒に居たいと思っていたのかも知れない。出て行こうとするヒカルの腕を掴みナエは言った。
「え・・・?」
ヒカルは驚いたように目を広げ、聞き返した。
「あ・・・・・・・。やっぱり、何でもないです・・・。」
「どうしたの?何だか調子悪そうだけど?」
顔を覗き込み、心配そうにしているヒカルの姿がナエの心を掻き乱し、狂わせる。このまま帰って欲しいという願いと、ずっと居て欲しい
という相反する願いが入り混じり、ナエを苦悩させた。
「まぁ、大丈夫なら良いんだけど・・・・身体には気をつけてね?これから博士のところに用があるから僕はそろそろ行くよ。」
このままヒカルを帰せば何事もなく終わる。でも、もしこのままずっと一緒に居られたら?都合の良いことに今は二人きり。躊躇いはあった。
理性だってこのまま帰せと言っている。しかし、一瞬キララの存在が脳裏を過ぎった。たったそれだけのことで今まで抑えていた欲望がナエの
全てを支配し、動かした。
「あの・・・そんなに時間は取らせませんから、少し私に付き合っていただけませんか・・・?」
「うん?別に良いけど・・・何をするの?」
ナエの唐突な誘いにヒカルは怪訝そうに尋ねた。
「・・えっと・・・・新しいパーツのテストに付き合って欲しいんです・・・。」
「分かった。僕でよければ付き合うよ。」
ナエの卑しい考えなど、当然ヒカルは知る由もない。
ヒカルはそんなに時間は掛からないだろうと安請け合いをしてしまった。全ての過ちはここから始った。
「・・・でしたら、ここで少し待っていただけますか?準備がありますから。」
「うん。分かった。」
いつもと違う空気が漂う中、一人取り残されたヒカルはただその時が来るのを待つしかない。
「お待たせしました。あの・・・よろしければ、どうぞ。」
ナエは手に持った飲み物を少し躊躇しながらヒカルに渡した。
「え?あぁ・・・ゴメン。わざわざ持ってきてくれてありがとう。」
何の疑いもなく渡されたものを飲むヒカルをナエはどんな風に見ていたのかヒカルは知らない。何故なら、気づいた時には極度の睡魔が
ヒカルを襲ったからだ。
「ごめんなさい・・・でも、ヒカルさんがいけないんですよ・・・・・・?」
聞き取れないほどの小声でナエは囁いた。それからしばらくしてヒカルは体の異変を感じ、目を覚ました。身体が動かない。身体は布切れ
でできた即席の拘束具で手足を縛られていた。
「うぅ・・・・なんだ・・・?」
「目が覚めたみたいですね。」
「ナエさん?・・・・何これ・・・。」
自分の置かれた状況がいまいち把握できず、困惑した様子でヒカルはナエに尋ねた。しかし
「ヒカルさんは・・・私とキララさん、どっちが好きですか?」
質問を無視し、ナエは単刀直入に質問し返した。
「どっちって言われても・・・二人とも僕にとっては大切な幼馴染だから、何とも言えないよ・・・。」
「ヒカルさんらしいですね・・・・そう言うところ素敵だと思います。ですけど・・・そんなの許せません。」
ナエの言葉は明らかに怒気を孕んでいた。今までの物腰柔らかく、誰に対しても優しいナエはどこにもなく、突き放すような冷たさを感じさせる。
鈍感なヒカルでもこの変貌には流石に気づいたのか、何かを探るようにナエを見ながら言った。
「悪いけど、僕には何のことだか良く分からないよ・・・。それになんでこんな格好をしてるのかも説明してくれるかな?」
「ヒカルさんを誰にも渡したくないんです。」
「え?どういうこと?」
いまだに自分の目的を理解できていないヒカルにナエは淡々と自らの思いの丈をぶつけた。
「私は独りぼっちです。キララさんとは違って・・・。キララさんはいつでもヒカルさんと一緒。でも私は違います・・・。
私が本当に辛い時、本当に会いたいときにヒカルさんは居てくれないのに・・・キララさんとはいつも一緒。
そんなの耐えられません・・・!」
「そんなことはない・・・・言ってくれれば僕は・・・。」
きっと何か誤解し勘違いしているのだろうと思い、ヒカルはなだめようとしたが間髪入れずにナエが捲くし立てた。
「ヒカルさんはキララさんのことが好きなんです!!今度っていつですか!?キララさんとは毎日楽しそうなのに、
私とはたまにしか会ってくれないなんて・・・そんなの嫌です!私だって・・・・私だってキララさんみたいに・・・キララさん
以上にヒカルさんの傍に居たいのに・・・・。」
嫉妬。ナエはキララに嫉妬している。一度は諦めようとした恋だが、ナエは未だ諦め切れずにいた。恋らしい恋など
殆どしたことがないナエはこう言う不器用な方法でしかヒカルと言う存在を繋ぎとめておくことが出来なかったのかも
知れない。
「私はずっと独りでした・・・・昨日も、おとといも、その前も、何年も前からずっと・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・ヒカルさんを毎日想いながら、かりそめの快楽で満足していたんです。」
ナエはポケットから皺の寄った写真を取り出しヒカルに見せた。
「これは・・・・・?」
「見ての通りヒカルさんの写真です。」
「・・・それは分かるけど・・・これがどうしたの?」
全く解せないと言った様子で写真を見つめるヒカルに、ナエは僅かな苛立ちを覚えた。
「分かりませんか?・・・そこに居るヒカルさんだけが私を慰めてくれたんですよ・・・・?」
「僕はここにしか居ない・・・。僕はここに居る一人だけだよ。」
ヒカルは普段では考えられないほど冷たく言い放った。別にナエが嫌いな訳ではない。ただナエを正気に戻したかった
だけなのだ。
「そんなことは分かってます!・・・ヒカルさんは私が今までどんなに辛かったか分かりますか?本当は、ヒカルさんが
幸せならそれで良かったんです。そう思って諦めようとしたのに・・・・忘れようとしたのに・・・結局、忘れる事ができません
でした・・・・。それどころか、いつも考えているのはヒカルさんのことばかり・・・。」
幼い頃のナエはヒカルのことを想うたびに心地が良かった。毎日が幸せでいられた。しかし、今のナエにとってヒカルとの思い出
は決して心地の良いものばかりではない。なぜならヒカルにはナエよりも深い関係でいる幼馴染がいるからだ。拭っても拭っても
止め処なく溢れる切なさに心が引き裂かれそうなほど悲しかった。ヒカルは鈍感でどこか飄々としているが人一倍優しい心を持っている。
だが、それが例えどんなに優しい心を持ち合わせていようとも他人の思っていることなど、分かるはずもない。
「僕にはナエさんの感じてきた苦しみは、少しも分かってあげられないと思う・・・。今まで自分は誰のことが好きなのか考えた
事もなかったから・・・。キララも好きだし、ナエさんのことも好きだ。煮え切らない僕のせいでナエさんに辛い思いをさせてしまった
んだよね?ごめん・・・今の僕には謝る事位しかできない・・・。自分勝手かも知れないけど、僕に少し時間をくれないかな?」
ヒカルは努めて優しく言った。しかし、そんな一言で解決するほどナエにとって浅い話ではない。以前のナエならばそれで許して
いたかも知れない。だが、今となっては許せるはずもなかった。自分以外の誰かの名前が出ることすら許せない。
「ダメです。そんなことをしたらきっと、ヒカルさんはキララさんを選んでしまいます・・・そんなの絶対に許しません・・・。私だけの
ものになっていただけないヒカルさんなんか大嫌いです・・・・・・!」
言うなりナエは唯でさえ動けないでいるヒカルを押し倒し、腕を床に押さえ付け体の自由を完全に奪った。
忘れ去られたかのように、床にはボロボロの写真が投げ捨てられていた。
「ぅ・・・ッ・・・・ナエさん・・・・・頼むから、せめてこの布切れだけでも・・解いて・・・・・くれ・・・。」
「逃げるおつもりなのでしょう?そんなの絶対に許さないんですから・・・。」
ヒカルの悲痛な声などナエには聞こえていないようだった。自分に都合の良い理想の関係が、例えかりそめとは言え実現するの
だと言う感覚。そして想い人の愛情を束縛し続けたいと言う考えしか今のナエの頭にはなかった。
「ヒカルさん・・・誰にも渡したりなんかしません・・・。これからはずっと私だけのもの・・・・。」
ナエの唇はゆっくりとヒカルのそれに近づき、そして重なった。
「んっ・・・・んん・・・・。」
初めこそ触れるだけだったが、ナエはヒカルをさらに感じたいが為に、次第に強く唇を押し当てた。
「・・・ナエさん・・・・・・。」
「はぁ・・・・素敵ですわ・・・。ヒカルさんとの口づけが、こんなにも気持ち良いだなんて・・・・・・・溶けてしまいそう・・・。」
熱に犯されたかのような表情で艶やかにそう呟くと、再び不慣れな、想いだけの下手で稚拙な口づけが今までの空白を
取り戻すかのように、幾度となく繰り返された。
「んむ・・・・・・・ぴちゃ・・・・くちゅ・・・。」
ナエは一生懸命ヒカルに口づけをし、舌を這わせ、ヒカルの身体に自分と言う存在を刻んでいった。ムリヤリ舌をねじ込まれ、拒もうとする
ヒカルだが体が思うように動かない。自分の口内を好き放題に荒らして回るナエをヒカルは悲しそうな目で見つめた。
「・・・・なんでここまで・・・・・・・いつものナエさんに戻ってはくれないのかい・・・?」
「私は・・・ずっと前からヒカルさんとこんなことしてみたいって考えていた、浅ましい女なんです・・・。ヒカルさんはこんな私を軽蔑しますか・・・?」
「・・・分からない・・・・・・・でも、僕は・・・いつものナエさんの方が好きだよ。」
「そんなの卑怯です。これ以上私を壊さないでください・・・私・・・・もう・・・・・・。」
ナエは頬を朱に染めながら、スカートを捲り上げ、自らが分泌する液体で濡れそぼった下着を脱ぎ捨てた。秘所はこれからの行為に
期待しているかのように愛液を滴らせ、ヒカルを待ち望んでいる。
「ナエさん・・・こんなことしてどうするつもりなんだ・・。やめよう?」
「・・・・嫌です。私はヒカルさんのせいで壊れてしまいました・・・もう、戻れません。・・・・・私はヒカルさんがもっともっと欲しいです・・・。」
ナエの手がたどたどしくヒカルの下半身へ伸び、そして衣服の中へ侵入した。文字どおり手も足も出ない状態のヒカルにはナエを止める術など
あるはずもなく、成されるがままだ。ヒカルが言葉で幾ら制止しようが、今のナエには通じもしない。ヒカルはナエの愛撫にただひたすら耐え
るしかなかった。
「あ・・・・まだ撫でただけなのに・・・・・もうこんなに・・・・。」
3、4度手で撫でただけで、まるでナエの期待に応えるかのようにヒカルのものは敏感に反応している。
手の中で徐々に大きくなり、熱を帯びるそれに対してナエは自分の気持ちが高揚しているのを感じた。
ずっと隠されていたヒカルのものがいきなり外気に触れた。ナエが次なる行為のために、それを取り出したのだ。しかし、膣へ導こうにも
思うように入らない。
「どうして!・・・・何で私を受け入れてくれないんですか・・・。キララさんなんかよりもすっとヒカルさんの事を想っているのに・・・どうして・・・・!!」
ヒカルが自分を拒絶しているように思え、ナエは切なさで今にも泣き出しそうなほど叫んだ。何度も何度も同じ行為を繰り返し入れても、
今度は腹部が裂けるほどの痛みが襲う。
「ッ・・・ひ・・ぃ、痛い・・・・・。」
「大丈夫!?・・・もう止めようよ。今なら間に合う。」
自分が縛られているのも忘れ、ヒカルは痛がるナエを心配した。
「・・ぅ・・・嫌です・・・・私を独りにしないで・・・ください・・・・・・。」
ナエは苦しげな表情で言うと、ヒカルのものを自分の中へ無理矢理に導いた。その結合部からは純潔の証しとも言える紅い血
が流れている。激痛のあまりナエは仰向け状態のヒカルへ倒れ込んでしまった。その激しい息遣いはヒカルの頬を撫で、二人
の心臓の鼓動と呼吸音がこの空間を支配していると言って良いほど静かだ。それからしばらくの時間がたった。それでもナエは
未だに辛そうな表情で息を荒げている。
「大丈夫?・・・痛い?」
倒れているナエを気遣うように見やり、優しい口調でヒカルは尋ねた。
「こんな酷い事されてるのに優しいんですね・・・・・ヒカルさんがそんな風だから・・・私は・・・ずっと忘れる事ができなかったんですよ?」
「ごめん・・・・・・・。」
「もう良いんです。これからはその優しさも私が全部独り占めしちゃうんですから・・・。」
友達などではなく、女としてヒカルに愛されたい。その一方的な想いがやがて衝動となり、乙女を失った痛みさえも忘れさせ、ナエの
腰を動かした。そしてヒカルの存在を確かめるように締め付け、愛撫した。
「うぅ・・・・・・ナエ・・さん・・・・・やめ・・・・・!」
いくらナエが初めての事とは言え、それはヒカルにとっても同じ。ナエから浴びせられる、享受しきれないほどの快感がヒカルの理性を襲った。
ヒカルの意識を自分に集中させ、キララの事など永遠に忘れさせようとナエは焦らし、甘い吐息を漏らした。
「あっ・・・・ん・・・今更・・・引き返せません・・・・ヒカルさん・・・んん・・・・・・ん・・。」
いつも自分の指をヒカルのものだと思い込み、胸を荒々しく掴む自らの手をヒカルの手と置き換え、独り自慰に夢中になっていたときとは違う。
指とは比べ物にならないほど太く長いそれは、初めこそ苦痛を与えたものの、今ではナエを虜にするほどの快楽を与えた。夢想でしか味わった
ことの無いヒカルとの交尾は既に現実であり、それは想像以上の快楽をもたらした。しかしそんなナエに一抹の不安が脳裏をよぎる。
「キララさんとはこういう事したんですか?」
「・・・キララとは、そう言う関係じゃない・・・・。」
「した事がないんですね?」
「・・・・・・・・。」
ナエは無言を肯定と受け取り、勝ち誇ったように薄ら笑みを浮かべた。
「嬉しい・・・私がヒカルさんの初めてなんですね・・・・。ヒカルさんは初めて出来た友達。ヒカルさんは私の初恋の人。全てが私に
とって初めての人・・・。もう、離しません。浮気したら嫌ですよ?」
ヒカルを自らの恋人にしたかのような錯覚を覚え、ナエは狂喜した。自分が与える愛でヒカルが悶える様が愛しく、そしてまっさら
な心を自分の思いのままに塗りつぶしていくのが幸せで堪らなかった。
「くっ・・・・・う・・・・。」
休む暇なく浴びせられる快楽の波に耐えるも、その限界は確実に近づいてきていた。初めてで、ナエの膣に入っただけでも果ててしまい
そうなのを我慢し、そして今もまた我慢し、ヒカルの精神は長年使い込まれた雑巾のようにボロボロになっていた。
「そんなに・・・私の身体、気持ち良いですか?」
「違う!・・・そんなんじゃ、ない・・・。」
「強がるヒカルさんも素敵ですけど、我慢のしすぎはいけませんわ。気持ち良いって言ってくださらないんでしたら言いたくなるよう
にするだけです・・・。」
ナエはパンパンに張り、今にも破裂しそうな袋を手で優しく解した。
「私、ヒカルさんになら・・・どんなに中に出されても平気ですよ。」
そう言うとナエはクスリと悪戯っぽく笑って見せた。
「そんなこと・・・できない・・・・・・。こんなこと、僕は・・・」
「嫌です・・・私のこと好きだって、私だけを愛してるって、気持ち良いって・・・・キララさんなんかより私の方が大好きだよって、
言って欲しい・・!!」
まるで脅迫か拷問のようにヒカルのものを締め付け、腰を振り、先程まで乙女だった女は徹底的に攻めてくる。一方のヒカルに
は抵抗する余力さえもう残ってはいない。目を瞑り、ただ最後の時を待つしかなかった。
「あっ・・・・ん・・・・あん・・・ヒカルさん!・・あ・・・・ヒカルさん!!」
快楽に顔を歪めながらナエはヒカルにキスを求めた。抵抗した所で無駄だと言うのは分かっている。
ヒカルは素直に従い軽く触れる程度の口づけを受け入れた。もう全てを諦めたのかも知れない。それに気を良くしたのかナエは舌を
絡めさせ、恋人同士がするような深く濃い口づけを要求してきた。それさえも何の抵抗もできず享受せざるを得ない。
ただし目は閉じたままで。目の前で動物の様に乱れ狂い、欲望のままに腰を振るこの変わり果てた女の姿を見たくなかったからだ。
清潔な印象を与える白衣はもはや清潔と言うには程遠く、飛び散る二人の精液と汗で酷く汚れていた。
「ぅ・・・・・・・キララ・・・・・・。」
苦悶の声を上げながらヒカルは大切なもう一人の幼馴染に謝った。
「ヒカルさんが名前を呼んでいいのは私だけ・・・優しくしていいのは私だけ・・・・愛していいのは私だけです!私が1番じゃなきゃ嫌・・・
2番目も3番目も存在したらダメなんです!それなのに・・・!私のことなんか微塵も目に入ってなくて・・・キララさんのことばかり・・・!!
ヒカルさんは私のもの・・・・・眼差しも、唇も全部・・・・。」
乱暴にヒカルの唇を奪い、それ以上何も言えないように封じ込めると、自分以外の人間を考えさせる余裕を与えないほどの快楽で
ヒカルのものを包み込む。
「ぅあ!」
「早く!早く膣に・・・ヒカルさんの・・・全部・・・膣に・・・出してください!!」
「・・・ま、不味い・・・・・もう・・ん・・・・!!!」
「あっ・・・ヒカル・・さん・・・・・んんっ!私・・・・・・私・・・・もうダメ、です!!あぁぁっ・・・・!!!」
ヒカルのものから勢い良く放たれた今にも溢れ出さんばかりの大量の白濁液を余さず受け止め、ナエもまた堰を切ったかの
ようにヒカルを自らの愛で染めた。
今まで快楽に染まりきる事のできなかったナエの心は完全に満たされた。
「はぁ・・・・出てます・・・・私・・・・ヒカルさんに種付けされてる・・・・ヒカルさんにも分かりますか?・・・・私、今ヒカルさんの
赤ちゃんを作っているんですよ?」
いまだに膣内で射精し続けるヒカルのものを、ナエは淫孔全体で愛しげに包み、子種を搾り出そうと腰を振るわせた。
「・・・・・・・・ナエさんは・・・本当にこんなことを望んでいたの・・・?」
正気沙汰ではないナエの行動にヒカルは絶望に打ちひしがれた。
しかしナエはそんな思いなど気にした様子もない。先程の余韻に酔いしれたような表情で答えた。
「ヒカルさんがいけないんですよ?私以外の誰かに優しくしたりなんかするから・・・ヒカルさんに近づく人たちをどうしようかと
毎日のように考えて、狂い死にそうな程ヒカルさんのことを想って・・・でも、これからはずっと一緒・・・死ぬまで、ずっと・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・。」
「こんなに沢山愛してくださったんですもの。私を・・・・お嫁さんに貰っていただけますよね?」
何もかも諦めた。だからもうこれ以上は絶望しなかった。
ヒカルの手足を拘束し続けた布きれはナエによって解かれた。そこには青黒い痕が残されている。ヒカルはぐったりとした様子で
死んだように動かない。そんなヒカルを癒すようにナエは縛った痕を舐め回し、唇を何度も零した。そして首筋に舌を這わせ頚動脈の
辺りを頬が凹むほど強く吸引し、刻印にも似た痕をそこに残した。
「うふふ・・・・もう・・・これでヒカルさんは私だけのものです・・・嬉しい・・・・・。」