「やあ、僕だよ僕。あれ、みんな忘れちゃったの?神たるこの白玉様を!え、なんで僕が神様なのかって?それはメダロットの
戦闘システムを作ったのがこの僕だからだよ!!」
廃工場のベッドの上、白玉は独り熱弁を振るっていた。
「ぼ?」
「ああ、なんでもないんだよ。僕の可愛いジュニア・・・・・。」
白玉の愛機、リンボマンボも主のイカレっぷりを心配して・・・・・居る訳でもないが、この男、いろんな意味で心配だ。今も明かりをつけず、闇に
溶け込んで何やら良からぬことをしているようだった。
「ナエすわん、ハァハァ・・・・・・・。」
そう今夜も白玉はナエに萌えていた。白玉の座り込むベッドの隣に本人が用意したナエ専用ベッドには星の数より多そうな
写真が散乱していた。微笑むナエ。寝ているナエ。仕事に勤しむナエ。全てがナエ一色だった。ここまでくれば神業だがそれと
同時に犯罪でもある。夜が更けるにつれ白玉の息は荒くなる。
翌朝、白玉は何やら妖しい薬物を調合していた。目は充血し、クマも出来ている。どうやら徹夜をしたようだ。
「むふ、むふふふふふ・・・・・・・・・・ついにできた・・・これでナエさんのハートとボディをガッチリキャッチ!!」
白玉の高々と掲げた手の中には、先程の薬品を含んでいると思われる謎のキャンドルがあった。何とも分かりやすい手段を思いついたものだ。
「おっと、そう言えばライターが無かったな。」
そう言うなり先程のキャンドルを握り締め、小躍りしながらコンビニに向かった。
「いらっしゃいませ〜。」
爽やかな青年の声が心地・・・・良くなさそうな白玉だった。
「(アガタヒカル・・・僕の抹殺リスト第一位、妖しいアホ毛ランキング第一位、僕のナエさんに近づいたランキング第一位・・・・・・まぁとにかく僕のナエさんに
馴れ馴れしくする害虫で、ナエさんとチョビット仲が良いからって調子に乗ってる勘違い男だ。早めに計画を進めなければ・・・・・。)」
「あの・・・・お客さん?何かお探しでしたらお手伝いしますけど・・・・?」
妖しすぎるオーラを漂わせる白玉にヒカルは多少警戒しつつも努めて普通に接した。
「ふふ・・・・ライターなりマッチなり火が点くやつをくれたまえ。」
「は、はぁ・・・(もしかして変人で有名な白玉さん?いやいやみんな同じ顔だから白玉さんじゃないかも知れない・・・・)。」
いろんな意味で伝説となっている白玉はある意味神なのだろう。しかしそれはそれで神と言う存在が安っぽく感じられる。
今さっき買ったライターと謎のキャンドルを手に、白玉は追放されたにも関わらず威風堂々研究所へ向かった。
ナエの研究室が近づくにつれて徐々にその隠しても隠し切れない異様なオーラが強まる。白玉の指先が近づき、そして扉に触れた。
『あぁ・・・ナエさん、例えどんなに離れていても僕は君を、君だけを愛し続ける!!』
『白玉さん・・・・・私も・・・・白玉さんのこと・・・・!』
『た、たまらん!!!!!!』
毎度お馴染みの白玉の妄想が沸点に達したそのとき・・・
「た、たまらん!!!!!!」
「そこに居ったのか、白玉君・・・・。」
すぐ後ろには将来のお爺様(?)であるメダロット博士が立っていた。
「・・・・・・・・何がたまらんのかね?」
「お・・・お爺様!!」
歴史に名を刻む事もなく、神白玉は散華した。