「なんかさっきから静かね?」  
「え?」  
「アンタよ。なんか、ずーっと黙ってない?」  
「い、いや、そんなことないよ」  
「…?何もぞもぞしてんのよ?」  
「いや、えっと、その、ちょっと足がかゆくって…」  
「はぁ?…あ、そう。」  
 
長いこと間近で女子を抱いていれば、下半身もそれなりの様相を呈してくる。  
そもそも、イッキの年齢では女体に触れる経験さえ無くて当たり前なのだ。  
いきなり異性を、しかも短くない月日思いを募らせてきた幼馴染を抱いたとなれば、  
海綿体が充血してしまうのも無理はない話だった。  
 
「やっぱなんか変じゃない?」  
「え!あ、えっと、な、なにが?」  
「なんかさ……さっきから体離そうとしてない?」  
「っ?! いや、そんなこと、ない、と思うけど…たぶん…」  
「“たぶん”って何よ。なに、疲れてきたの?」  
「そ、そういうわけじゃないけど…」  
「そういうわけじゃないってことは何か理由があるんでしょ?」  
「う…」  
「何よ。今更隠すこともないでしょ?」  
「いや……その…」  
「黙ってちゃわかんないって…言わないと、」  
 
そこでアリカはにやっと意地悪い笑みを浮かべ、背を預けていたイッキへ思い切り体重をかけた。  
体勢が体勢だった為、イッキは抗うこともできず、そのまま背中かから倒れこむ。  
 
「う、うわ!」  
「ほらー!白状しなさい、って…」  
 
仰向けに倒れこんだせいで、  
イッキは下半身に雄雄しく張ったテントを隠す事が出来ず、  
その状態を無抵抗にもアリカに見られてしまった。  
 
「……………うわあ………」  
「…………ご、ごめん……」  
バツが悪く、イッキはそっぽを向いたまま、呟くように謝った。  
「……………い、痛くない?大丈夫なの?」  
「……痛くはないけど…」  
会話もほどほどに、2人の間には険悪さとは違う微妙な空気が漂い始めていた。  
「………」  
アリカは無言のまま、イッキの下半身へ視線を注いでいる。  
イッキは怒張したそれを、例えズボン越しにでも見られる羞恥のあまり、  
まともにアリカの顔を見ることも出来ず、ただ頬を紅潮させて顔を背けていることしか出来なかった。  
 
「………ねえ、それさ……どうやったら元に戻るの?」  
「え、えっと……たぶん、じっとしてれば戻ると思うけど…」  
「ふーん…………あのさあ…」  
アリカの目に、一瞬だが好奇の色が宿る。  
「……触っても平気?」  
「えぇ!?」  
「…やっぱり触ると痛かったりするの?」  
イッキの反応を見てか、アリカの表情に若干の陰りが宿る。  
「……い、痛くはないよ…」  
「そっか………」  
アリカの、下半身を見る目にいっそう熱が宿る。  
「…その……触ってみていい?」  
「え、さ、触るって………こ、これ…?」  
「…他にないでしょ」  
イッキの視線が、テントを貼る自らの屹立へ、  
そしてそれを興味深げに見つめるアリカへと流れていく。  
「…い、…いいよ……」  
震えるような声で、イッキは呟いた。  
 
「……どんな感じなら触っても平気なの?」  
「…あんまり強くは……」  
「ふーん……、…………………」  
肯きながら、アリカの手がゆっくりとテントの上を覆う。  
布越しに感じる幼馴染の手の感触に、イッキは思わず深い感嘆の息を漏らす。  
「……っ……」  
震える吐息を漏らすイッキを気遣う意味で、アリカは彼の表情を見る。  
相変わらず横を向いたまま、整った横顔をこちらに向けている。  
すっかり紅潮した頬のせいで、いくらか幼く見える顔立ち。  
「……ひょっとして、気持ちよかったり………するの?」  
「…………わ、割と……」  
「…まだ、手、乗せただけなのにね」  
なるべく普通の口ぶりを装いながらも、アリカも内心は相当に興奮し、緊張していた。  
 
男性器とて、テレビではモザイクがかかるし、  
父親のとてそう頻繁に見るわけではない。  
つまり、男性器というのは殆ど記憶にも薄い、極めて希薄な存在であった。  
少なくとも、今こうして、イッキのものに触れてみるまでは。  
 
「……………すごい…こんなになるんだ……」  
指先をわずかにあてがう様にすると、確かすぎるほどの感触が帰ってくる。  
「…………」  
「これさ………その、…どうして……こう、なるの?」  
「………それは………その…なんというか…」  
「……なんか………いけないこととか想像するとなるの?」  
「…そ、そんな感じかな……」  
自己の恥部に文字通り直接触れられながら、  
更に心の中の羞恥さえも覗かれるような質問に、イッキは耳まで真っ赤にしていた。  
 
「………なんか、想像したんだ…」  
「……ご…ごめん……」  
イッキの羞恥はますます最高潮に達し、心なしか目の端も潤み始めていた。  
濡れ眼で、顔を高潮させ、謝る幼馴染。  
アリカは女子であるが、イッキのその様子には、流石に若干の感慨を覚えた。  
と言うより、女子であるからこそ、母性本能をくすぐられるような心地になると言うのだろうか。  
「ねえ、イッキ………どうすればいいの?これ…」  
そう問いかけ、わずかに指の腹でテントを押さえつける。  
イッキの顔が、苦悶とも恍惚ともつかぬ表情にゆがむ。  
「ど、…どうって………」  
「…たぶんだけど……触られたりすると、その…気持ちいいんじゃないの?」  
「………う、うん、…まあ……」  
素直に肯定してもいいものかわからず、一瞬躊躇して頷く。  
「………だからさ…………いいよ?……」  
「………え、…?」  
アリカの言わんとするところがいまいち理解できず、  
イッキはアリカの方へ紅潮した顔を向ける。  
「……私でいいなら……………シて、あげるから…」  
アリカの言葉に、イッキは思わず生唾を飲み込んだ。  
 
「…それとも、やっぱり……私じゃヤだ?」  
「い、いや……僕は…………ア、アリカがいい……」  
予想以上にストレートなイッキの物言いに、アリカも思わず頬を染める。  
「……うん…わかった。あ、でも……」  
「……?」  
「その……こういうことする前にさ………ちゃんと、しない?」  
「………ちゃんと、って……何を?」  
「……ほんっと、鈍いんだから…。…もう、そのままジっとしてて」  
そう言うと、アリカは身を乗り出して、  
後ろ手に座り込むイッキへ、覆いかぶさる様に迫っていく。  
「…え、ちょっと、アリカ…?」  
イッキの鼻先、ちょうど一寸くらいのところでアリカはぴたりと顔を止める。  
「いいから……ジっとしてて…」  
アリカが吐息を吹きかけるように言うと、  
そのまま吸い寄せられるようにして二人の鼻先が触れ合う。  
「…っ………」  
驚く間もなく、アリカの唇が触れる。  
イッキの、小学生特有の柔らかい唇と、またアリカの柔らかい唇が、押し合うようにして触れあう。  
アリカの頬もイッキと同じくらいにまで紅潮し、イッキはさらに下半身のテントをハッキリとした物にする。  
 
 
一分程度なのか、四、五分なのか。  
時間の感覚さえ麻痺するほどの体験、感覚。  
濃密とはいえない接吻だったが、  
性に関しては全てにおいて未体験ともいえる二人にとっては、十分すぎるほどに刺激的だった。  
 
どちらからともなく、二人は唇を離す。  
わずかに糸を引いた唾液のせいなのか、その瞬間に微かに生唾の香りがした。  
 
「………ファースト、だからね」  
「…………ぇ、あ、…う、うん……」  
「…………ふふ」  
イッキの両脇に両手をついたまま、アリカは嬉しそうに笑った。  
 
「……チャック、降ろしてよ」  
「う、うん」  
促されるまま、イッキは自分のズボンのチャックを下ろし、  
その間隙から怒張した逸物を出す。  
 
「うわ……」  
さしものアリカも覚悟はしていたが、  
いざ実際の男性器を目の前にすると、流石に身動ぎしてしまった。  
充血して膨れ上がった亀頭と、張り詰めた包皮。  
うっすらとピンク色の血管が浮き上がる陰茎は、きれいな肌色をしていた。  
「さ、触るわよ」  
半ば自らに言い聞かせるように、アリカは言う。  
イッキは声も出さず、小さく頷いただけだった。  
 
ゆっくり、おそるおそるイッキのペニスへ手を伸ばした。  
 
かすかな指の感触に、律動を起こすようにペニスが動く。  
アリカが、触れた指でぷっくりと膨れた亀頭のあたりを、  
包皮の上から押すように刺激すると、イッキははぁあ、と大きくため息を漏らした。  
 
「……どうなの?これで…気持ちいいワケ?」  
「か、……かなり…」  
「ちょっと触っただけなのにね…………」  
親指と人差し指で、ペニスを挟むように触ったまま、まじまじとアリカはそれを見つめる。  
「…ねえ、これさあ……」  
「……え?」  
「舐めたら気持ちよくないの?」  
「えぇっ!!?」  
アリカの口から出た想像だにしない言葉に、イッキは思わず大声を出して驚いてしまった。  
 
「ちょっと!!声大きいわよ!」  
「あ、ご、ごめん……!だ、だけどアリカ、何言ってんのさ…!舐めるって、それじゃ、まるで変態みたいじゃ…」  
「う、うるさいわねー!ちょっと思っただけよ。それに、だいたいさあ…」  
一呼吸置いて、アリカは指先に少し強く力を入れる。  
「ぅ、あ!」  
「変態はアンタほうなんじゃないの?」  
「そ、そんなこ、っうぅ」  
「こんなとこ触られて、気持ちよさそうな顔してさぁ」  
「だ、だって、これは…」  
「自分でもしてたんじゃないの?変なこと想像したりして」  
「そ、そんなこと」  
「ウソ。アタシ、知ってるんだからね〜?」  
意地悪な口調で、アリカはわざと上目遣いで言った。  
「最近さあ……体育のときとか、アタシのことよく見てたでしょ?」  
「!!!」  
「ナエさんと会ってるときだって、胸ばっかり見てるし……」  
「………いや……その……」  
「どう考えてもイッキのほうが変態でしょ」  
そう言うと、アリカはおもむろにペニスから手を放し、  
ぐいっとイッキに顔を近づけた。  
「…ね?」  
「………い、いや、……だから…」  
「……言い訳しないの」  
吐息混じりにそう言ったかと思うと、アリカは乱暴にイッキの唇を奪う。  
イッキが言葉にならない声を出したが、そんなものはまるで聞こえないかのように、アリカはそのまま後ろへと押し倒した。  
「(……な、なんかアリカ………さっきから変……)」  
内心は密かに、幼馴染の変貌振りに驚きながらも、  
体はキスの興奮にしっかり反応していて、さっきから勃起した一物がアリカのオーバーオールにグイグイと当たっていた。  
下腹部の違和感を感じたのか、アリカはふと唇を離す。  
「………もっと固くなってない?」  
「だって……い、いきなりアリカがキスするから…」  
「それで興奮したんだ」  
「い、いや、だから」  
「正直に言いなさいって」  
そう言うと、アリカは異常なほどに艶かしい表情を浮かべ、  
色のある仕草でイッキの頬を撫で、ゆっくりと顎のあたりへ指を滑らせる。  
 
「黙ったまま?」  
棘のある口調のまま、アリカは再びイッキの股間に手を触れる。  
今度は手のひらでぐりぐりと、押し込むようにしてペニスを刺激する。  
「ぅ、あ」  
「何も言わないんなら、ここで止めちゃおっか?」  
詰問された上にペニスを弄くり回され、イッキは既に耳まで真っ赤にしていた。  
額にはじっとりと汗が滲み始め、彼が肉体的にも十分興奮し切っていることを如実に表していた。  
「ちゃんと言えたら、…もっとしてあげてもいいよ?」  
「…う………」  
これ以上の快楽か、これ以上の羞恥か。  
そのどちらかを選ばなければいけないのは事実だったが、  
アリカに散々な言葉責めを受け、羞恥心が高まると同時に、  
徐々に体の芯から湧き出すような快感が溢れてくることも事実だった。  
「いつまでも、手だけでいいの?」  
「い、いや………えっと……」  
「…アタシのさあ……口でしてほしくないの?」  
そう言うと、アリカはわざと舌先で唇を舐め、薄く口を開く。  
「………いや……その…」  
「正直にさ……言いなさいよ」  
「な、…何て……?」  
「…そうね………いいわ。…じゃあ、オーソドックスに“僕は変態です”、って」  
「え、ええ!!?」  
単刀直入な言葉に、さすがのイッキも驚愕の声を上げる。  
 
「……言えないんなら、ここでお預け」  
そう言って、アリカはイッキの股間に押し付けていた掌を離す。すると、  
ズボンの、丁度張ったテントの天頂のあたりが、うっすらと湿り気を帯びていた。  
「……どうする?」  
アリカは、狼狽するイッキに対しても一向に譲歩する様子を見せず、  
愛しさの中にわずかな蔑みを含んだ視線をイッキに向ける。  
「…………ぼ、…」  
「ん?」  
「…………僕は……」  
アリカは少しだけ唇を緩ませ、間誤付くイッキの様子をただ見ていた。  
言葉の先が紡げないイッキを見て、若干の娯楽さえ感じているかのように。  
「………ボクは、何?」  
「…………僕は、へ、…変態……で、すっ」  
語尾だけを強く言い切り、イッキは羞恥のあまりうつむき加減に頬を落とす。  
その様子を見て、イッキに視線を落としたまま、アリカは口元だけを緩ませた。  
「………っ、………」  
肩で息を切るほど呼吸の乱れているイッキは、  
それ以上何をいうべくもなく、ただ無言のまま、最高の羞恥と、  
これからの未曾有の快楽への微かな期待を膨らませていた。  
 
アリカは、表情を崩さないまま、そっとイッキに顔を近づける。  
 
 
「……本っ当に、ヘンタイなんだから…?」  
 
 
一言だけを言い捨てると、そのまま顔をイッキの下腹部まで降ろし、  
ゆっくりと唇をペニスに近づけた。  
 
「………ん…」  
僅かに喉を鳴らし、アリカは自らの口内にイッキのペニスを迎え入れた。  
舌が感じる明らかに異質な感触、密着した状態で香るわずかな臭い。  
いずれもこれまで経験のした事のないものだったが、アリカは構わずに舌でイッキのペニスを味わうようにして執拗に刺激する。  
「…ぁう、……あ………」  
まさに文字通り未知の快楽に、イッキは時折荒い息を漏らしながら打ち震えた。  
まだ剥けきっていない包皮の先からわずかに露出した亀頭を、  
時折アリカの舌が撫でるように刺激する。舌が亀頭を撫でるたびに無意識にペニスが反応してしまい、  
結果、さらに性器全体が充血していく。  
 
アリカは、イッキのペニスの変化を如実に舌で捉えており、  
びくっと顫動を起こすたび、舌で亀頭を嬲るように愛撫する。  
 
「……アリカ………アリカぁ………」  
うわごとのように、イッキはアリカの名を呼ぶ。  
それに呼応するように、アリカも舌の動きを激しくしていく。  
 
不定期に激しくなっていたイッキの呼吸が、やがて一定のリズムを帯びるようになる。  
亀頭は既に最高潮に充血し、パンパンに膨れ上がっていた。  
 
アリカもそれを舌で感知し、ここらでもう一度焦らしてやろうと思っていた。  
だが、アリカが一気に視線をやり、一度ペニスから口を離す為顎を引こうとしたその時、  
後頭部からのあらぬ力と共に、一気に喉の奥までペニスを押し込まれた。  
 
「おぶ、えぅ?!」  
突然のことにアリカは何が起きたかが理解出来ず、目を見開く。  
「アリカ、や、やば、アリカ」  
イッキの声が聞こえ、ようやく状況を理解する。  
イッキが、両手でアリカの頭をがっちりと掴み、乱暴に上下させていた。  
そう、まるで性玩具でも扱うかのように。  
「ぅ……ぅおぇ…………」  
アリカは、喉の奥にペニスが入り込むことによって反射的に起きる嘔吐感を必死にこらえる。  
イッキはまるでアリカのことなど意に介さないように、  
ただアリカの「口」に、必死に自分のペニスを出し入れしていた。  
 
「…アリカ、…アリカ、アリカ…!」  
既に理性は消えかけ、快感を高めるためにイッキは本能的にアリカの名前を呼ぶ。  
勿論、アリカの返事など必要なかった。  
 
度重なる嘔吐感を我慢し続けているせいで、アリカの目尻にはうっすらと光るものが浮かんでくる。  
が、既にイッキは絶頂まであと僅かの所まで来ていたため、ますます動きは激しさを増していく。  
出し入れというよりは、イッキが腰をアリカの顔面に打ちつけているという状態に近かった。  
 
「…………も、…ダメ……、だ、出すよ、アリカ、アリカっ、アリカ」  
アリカの口内に、生暖かい液体が広がった。  
突然の異物感に、アリカは目を瞬かせる。  
 
一度の放精では収まらず、二度、三度とペニスは顫動を起こし、精液をアリカの口内へと放出していく。  
イッキは、アリカの頭をしっかり押さえつけたまま、最後の一滴までアリカの口内に射精した。  
 
 
口内に出された精液を片手に吐き出し、  
アリカは恨めしげにイッキを睨めつけた。  
 
「ちょっとアンタ……」  
「…ご、ごめん……」  
謝るイッキの声には詫びる様な気色は薄く、  
むしろ射精の後に残る余韻に惚けているような声色だった。  
 
「…ていうか、何よコレ……?オシッコには見えないし…」  
「……ぼ、僕にもわからない…」  
アリカは、渋い顔をして、イッキの出した精液を見つめる。  
時折鼻を鳴らして匂いを嗅いでは、また顔をしかめる。  
「わかんない、ってアンタ、自分が出したもん―って、あれ?」  
ふと見れば、イッキの股間の様子が先程までとは打って変わっている。  
「………さっきみたいになってなくない?」  
「…なんか……元に戻っちゃった…」  
しおれるペニスを前に、アリカは不思議そうな顔をする。  
必死に口内で愛撫を繰り返していたと思えば、不定にも謎の液体を吐き出し、  
そうかと思うと、今度は空気を抜いたかのようにしんなりとしおれるペニス。  
まさに正体不明の様相を呈するそれに、アリカはこころなしか好奇心を刺激された。  
 
「ね、それ、また大きくなるんでしょ?」  
「え?……どうかなあ………今すぐにはわかんないけど…たぶん…」  
「…いいわ。じゃあ、アンタはそのままでいて」  
そう言うと、四つんばいでイッキの元へ近づいてぐっと顔を近づける。  
そして、いつもと同じ、少し意地悪そうな笑顔を浮かべた。  
「…同じことすれば、また大きくなるでしょ?」  
アリカは、不可思議そうな顔をするイッキを諭すように言った。  
 
少しだけ頬を染めて、アリカはそっとイッキへ抱きついた。  
優しく手を背中に回し、しかし心の底から彼を信頼し、身を預けるように。  
 
「……」  
イッキは声も出さず、目を丸くしたまま。  
そしてやはり、アリカと同じようにうすく頬を染める。  
「………ちょっと、疲れたし、ね。」  
「………うん。」  
優しく頷いて、イッキもそっと背中に手を回す。  
お互いに抱きしめあう格好となった2人だったが、その光景は「男女」の絡みなどという艶かしいものよりは、  
お互いをよく知った「幼馴染」の触れ合い、スキンシップと言った方が的確だった。  
 
多少の情欲はあったとしても、彼らが今求め合っているのはお互いの体ではなく、  
その内から沁み出して来る体温、そこに宿る確かな温もりだった。  
 
「……なんか、すごく気持ちいい。」  
アリカを腕の中に収めながら、イッキは耳元でそう呟いた。  
「…アタシも。なんか、眠くなってくる気分ね。」  
「うん………人間って、抱いたらこんなにあったかいものなんだね。」  
「誰でもそう感じるとは限らないでしょ?」  
「え?」  
「お互いに、信頼できて、頼れる人じゃないとそうは思わないわよ。  
―いっちゃ悪いけど、アタシだって、カガミヤマとかイワノイとかとこんなことしたくないし。」  
そう言って、アリカはくすくすと無垢な笑みを零した。  
イッキは少しだけ眉をしかめながらも、口元から毀れる自然な笑みを抑え切れなかった。  
 
決して嘲っているわけではない。  
ただ、それでも、アリカの言葉の指し示すところを理解すればするほどに、  
イッキは自然と、その笑顔を隠す事が出来なくなる。  
 
「………イッキ」  
「…うん?…なに?」  
「呼んでみただけ、って一度使ってみたかったのよね」  
ご機嫌な口調でそう返すアリカに、イッキは苦笑交じりの溜息をつく。  
片方の手が自然と、彼女の髪を撫でていた。  
すると、唐突にアリカが声を上げた。  
「あ」  
「?」  
「今、撫でたでしょ?」  
「…え、あ、うん」  
「もっかい」  
「もっかい?」  
「もう一回撫でるの!」  
「うわ!…わ、わかったって」  
急に荒げられた語気に若干怯みつつも、イッキはもう一度、ゆっくりとアリカの髪を撫でた。  
首元のあたりで揃えられた髪から、柔らかく甘い香りが漂った。  
 
「…これ、…凄いよ……イッキ…」  
「……凄い?」  
「………ん……」  
イッキの問い掛けに、返事はなかった。  
返ってきたのは、言葉にもならないほどの、おぼろげな声。  
「アリカ?」  
「……………」  
もしかして、と思い、少し耳を澄ましてみる。  
すると、イッキの予感はすぐに的中した。  
 
 
「…なんで寝てるのさ」  
 

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