期待と不安が入り混じった気持ちの中、  
ヒカルは三度キララと唇を重ねた。  
 
既に舌を入れる事に対する羞恥は薄れ、更に奥を求める欲求が湧き出ていた。  
自然と大胆になり、先程のそれ以上に舌を動かす。  
 
情事の際に口内に湧く、  
独特の粘性を持った唾液をお互いの舌から舐めとるように、ねっとりとした愛撫を繰り返す。  
頬の裏側の軟い皮膚を舐め、お互いの舌をはむようにして貪り合う。  
 
唇を重ねたまま、ヒカルは丁度手に収まるくらいの大きさの、キララの乳房に手を触れる。  
 
包み隠すように触れると、丁度手のひらの真ん中あたりに、やや固い突起が触れた。  
ヒカルは、それを中に押し込むように掌で押さえ込む。  
 
「ひっ、………ぅん、…………ちゅ……」  
 
キララの口から漏れた嬌声を、ヒカルは更に深く唇を重ね合わせて塞ぐ。  
 
押さえ込むように触れていた乳房から手を離し、今度は突起の部分をつまむようにいじる。  
先端に触れる度に、びくんと体が震えた。  
 
唇を離すと、唾液が糸を引いた。  
 
ヒカルが、キララの乳房に顔を近づけると彼女もそれを察し、  
母親が赤ん坊に授乳をさせる時のように自らの乳房を持ち上げた。  
 
はぷっとヒカルが吸い付くと、キララはまた抑え気味に嬌声を上げた。  
 
乳輪から渦巻きを描くように、その先を舌でいじりまわす。  
一方で、片方の手では、もう一方の乳房を掴み、手の中で少し乱暴に揉みしだく。  
 
「やっ、はあっ、ん、あっ、…ひゃうっ……だ、だめ…ぇっ」  
 
絶え間なく押し寄せる生まれて初めてのその快感に、  
キララは抗うことも出来ず声を上げる。  
 
「っあぅ、…ら、…いう……っふ、あ、…んんう……」  
 
いつの間にか、キララはヒカルの頭を抱き寄せるように抱えていた。  
快感のためか時折その黒髪に顔をうずめ、小さく押し殺すように声を上げる。  
たとえヒカルがその相手であっても、まだ喘ぐことに対する羞恥心は残っていた。  
 
ヒカルの愛撫は続いた。  
 
舌で転がすように舐めていたそれを、  
舌先で先端をくりくりと押したり、歯を当ててみたり、  
甘噛みをしたまま、その先を舌で舐め回してみたり。  
 
「あうっ!」  
ヒカルが思いっきり乳房を吸い上げると、キララは反り返るように体を突っ張らせた。  
 
口をそれから離した時、形のいいキララの胸が揺れ、戻った。  
 
キララはまだヒカルの頭を抱いたまま、放心しているように呆けた表情を浮かべていた。  
快感のあまり、まだ現実に戻れてきていないのだ。  
 
ヒカルが顔を近づけると、瞳の焦点がようやく戻った。  
 
「……どう?」  
「…おかしくなりそう……」  
キララは頬を染めたまま、伏目がちに言った。  
その仕草が、快感の壮絶さを何よりも雄弁に物語っていた。  
 
「……次は、………ヒカルの番。」  
 
キララは髪を耳にかけ、ヒカルの膨張した性器に顔を近づけた。  
 
「……マ、…マジで?」  
その問いに答えることなく、キララはそれを口に含んだ。  
口の奥、喉の手前まで咥え、先がすっぽりと覆われる。  
 
「……は、……ぅ…」  
 
ヒカルは、体のほんの一部から広がる未知の快楽に、心ならずも声を上げてしまう。  
 
キララは先程のお返しとでもいわんばかりに、舌を激しく動かす。  
つるりとした感触を楽しんでいるのか、まるで飴玉でも舐めているかのように。  
 
ヒカルは腰を落とし、両手を後ろについて体を支えるのが精一杯だった。  
 
「…ぅあ、………やば…………すごっ、気持ちいっ………ぅ…」  
「ん…んふっ、ちゅぽ、かぽ…………きもち、いひ?」  
そう上目遣いに聞かれ、ヒカルはもう何も考えられなくなっていた。  
 
応えないヒカルを察し、キララは首を上下に動かし、愛撫を激しくする。  
口の中で、先っぽがほんの少し膨れたような気がした。  
それと同時に、舌に当たっている筋のような部分がぷっくりとふくらみ、  
温かい粘液質のものがキララの口内へ放出される。  
喉にはりついた分もあれば、舌の上に出された分もあった。  
 
「――ん、こふっ、……っふ、……」  
 
ヒカルの体が小刻みに震え、口の中でそれが暴れ回るように脈打つ。  
やがて大きく肩で息をするヒカルを見て、キララはひとまず終ったのだろうと解釈し、口を離した。  
 
「……ろう? ヒカル?」  
口の中に溜まった精液をそのまま、キララは訊いた。  
 
「……おかしくなりそうだよ。」  
苦笑いを浮かべならも、ヒカルは素直にそう言った。  
それを聞いてキララは満足そうに笑い、  
口の中に残っていた精液を唾液と共にごくりと飲み下した。  
 
「………の、飲んで平気?」  
「…平気だよ。………ヒカルのだもん。」  
「………」  
 
面と向かって言われ、  
ヒカルはまたも愛おしさのあまり、無言でキララを抱き寄せた。  
 
しかしそのまま抱擁を交わすわけではなく、  
ゆっくりとキララをベッドに寝かせた。  
 
「…じゃあ、次は僕の番、だね。」  
「………うん。」  
そう頷き、体の両脇に置かれたヒカルの手をぎゅっと握った。  
 
「……その前に。」  
「…なに?」  
ヒカルは傾けていた上体を一旦戻す。  
 
「…キララがしてくれたんだから、僕も。」  
そう言うと、キララの足をばっと開かせた。  
 
「や…っ、ちょっ…」  
「……まだ、これからだから。」  
 
そう言って、ヒカルはじゅんと濡れたキララの恥部に、そっと、あてがうように指を触れた。  
 
 
彼女は、今更のように背徳感に駆られていた。  
 
 
これで、いいんだろうか。  
そう自問したが、答えは出てこない。  
 
 
ナエの、ひとりの女としての告白を思い出した。  
彼女は言った。自分もヒカルのことが好きだった、と。  
そして、真剣にその想いを伝えることをも考えた、と。  
 
彼女はこうも言った。  
想いを伝えなかったのは、「あなたがいたから」だと。  
 
それは、ある意味で負けを悟ったような境地に似た物があるのだろう。  
完全な差を見せ付けられ、抗う気概も無くなり、勝負すらしない。  
キララから見れば、それは好ましい言い方ではないが、自分の「圧勝」に他ならなかった。  
有り体にいうなら、力勝ちとでもいえるのだろうか。  
 
無論、色恋沙汰は必ずしも勝負ではない。  
人それぞれ、個々人で千差万別。  
それを勝負ととるか、単なるコミュニケーションととるかは、概して言えることではない。  
 
でも。  
究極的に客観視をしてしまえ、結局、ナエは負けたことに他ならなかった。  
そしてキララは、勝負にこそ出てはいないが、結果として勝ったというのは事実だ。  
 
それは図らずも、キララが幼少より築いてきたヒカルとの信頼関係によるものだ。  
決して、誰にも埋める事の出来ない時間の差が、その分水嶺だったに違いない。  
 
もちろん、キララはそれを勝ち負けに区別することを良しとしない。  
そんな淡白な二元で分けてしまうことが、何だか悪いように感じられるから。  
 
ナエは単に諦めたというわけではなかった。  
自ら身を引き、この上ない覚悟で退いた上に、キララ自身に対して叱咤すらくれた。  
 
それはきっと、ナエだからこそ出来たこと。  
同じ相手を愛した、同じ性を持つ人間だからこそ、出来うることだった。  
 
キララは、そんなナエに尊敬の念すら抱いた。  
凛とした大人の表情で、自分を叱ってくれた、そんなナエの器量に。  
 
 
だが、今の自分はどうだろうか。  
 
 
自分から言い出すつもりが、ヒカルに先んじられ。  
純粋に伝えたいとだけ想っていたはずの気持ちは、いまや情欲に溺れかけ。  
快感の波に呑まれ、ナエの悲壮な決意すら忘れかけていた。  
 
キララは今の自分に、ひとりの女性としてひどく引け目を感じていた。  
 
それは、ヒカルとそういうことをしているという事実に対して、  
彼女がほんの少し感じていた罪悪感に因るものでもあった。  
 
当然、法律で決められてなどいない。  
時と場所を考えれば、基本的に誰と契りを交わそうとも自由だ。  
 
でも、今の自分はそういう次元ではない筈だ。  
ナエの決意から来た告白を、まるで踏み台かなにかのようにし、挙句快楽に溺れている。  
 
 
今の自分は―――  
 
 
気がつくと、キララはヒカルの手を止めていた。  
 
 
「……痛かった?」  
 
 
最初にヒカルの口から発せられたのは、キララを気遣う言葉だった。  
 
キララを気遣う言葉には変わりなかった。  
だが、それは今しがたまで続いていた行為のことであり、  
キララが考えている事とはまるで違う、むしろ正反対のこと。  
 
「…違うの。」  
「……じゃあ、…やっぱり、怖い?」  
「………」  
 
彼女は、うまく言い出すことが出来なかった。  
 
「……どうしたの?…」  
「……」  
 
うまく言い表すことの出来ない自分に、少なからず彼女は苛立った。  
 
早い話が、それは自己嫌悪だった。  
 
人としての尊厳をかけたナエの叱咤の後に、  
こうして男と肉欲に溺れている自分に対する、邪険な感情。  
その行為の先を知ることに楽しみを感じていたこともどこか腹立たしかった。  
 
ただ、それを、何の事情も分からないヒカルに対して説明しようとすると、  
どうしても言葉が出てこなかった。  
どこから説明すればわからない上に、  
自分へ感じる蔑視的な感情のせいで頭の中は混乱し始めている。  
 
彼女はただ、ヒカルの手首を握ったまま、  
睨むとも見つめるともつかぬ視線を送ることしか出来なかった。  
 
その一方で、ヒカルは何か自分に落ち度があったのかと考えあぐねているようだった。  
時折浮かべる訝しげな表情は、何か思い当たる節でも見つけたのだろうか。  
ただ、それもやはり正解とは考えにくいらしく、またすぐに困惑の表情に戻ってしまう。  
原因はキララ自身にあるのだから、それは当たり前のことだった。  
 
「……何か、僕にまずい所があったなら、謝るよ。…ごめん、キララ。」  
 
そう言って、ヒカルはそっとキララを抱き寄せた。  
 
行為の続きをしたい為に嫌々謝っているような感はどこにもなく、  
本当に真摯に、自分の過ちを認め、贖おうとする口調だった。  
そしてその表情は、少しも渋面ではなかった。  
 
そんなヒカルの態度だったからこそ、  
彼女の思考はそこで半ば無理矢理に止まった。  
でも、それは彼女が理性を以って考えることを止めただけの話で、  
彼女の心の中では今だ、自分を責める、罪悪感に満ちた思考があふれ出ていた。  
 
もう何も考えられず、優しく抱き寄せられた胸の中で、彼女は涙を流した。  
 
「……っく、……ひっ………ぅわぁあん……」  
 
突然泣き出したキララに、ヒカルは初め、心底動揺したような表情を見せた。  
だがそれでも、今の自分に出来ることはそれしかないと思ったのか、  
震える肩をそっと包み、ぎゅっと抱きしめた。  
 
キララは、まるで赤子がそうするかのように、ひたすらヒカルに抱きついた。  
背中まで手を回し、ぎゅっと両手を握り。  
 
 
もう、何がいけないのかも分からなかった。  
だが、何も分からないこそ、彼女は泣くことしか出来なかった。  
 
 
小一時間ほど経ち、彼女はようやく精神の冷静さを取り戻した。  
体は相変わらず火照ったままだったが、涙で濡れた頬は少し冷えていた。  
 
ヒカルはその間中、ずっとキララを抱きしめていた。  
 
昔両親にしてもらったように、腕枕をしながら。  
優しく優しくキララの髪を撫で、少しも急かす様な真似はせず、ずっと。  
 
「……ごめんね、……」  
 
ヒカルの名前を言うべきかどうか、彼女は一瞬躊躇した。  
勿論、突然泣き出してヒカルを困惑させてしまったことは申し訳ないと感じている。  
だが、元は誰に謝るべきなのかといえば、それはヒカルにではない。ナエにこそなのだ。  
だから、彼女は一瞬の躊躇の後、…自分にしか聞こえないような小さい声で、その名前を呟いた。  
「ナエちゃん」と。  
 
「……いいよ、キララ。キララは、何も悪くないんだ。」  
 
事情は何一つ知らないヒカルの言葉だったが、  
その何も悪くない、という言葉は、今の彼女にとっては随分と救われるものだった。  
 
そんな、少し見当違いの優しさでさえ、今の彼女の涙腺を緩めるには充分だった。  
彼女は、目の端がじんわりと潤み、また視界がぼやけるのを感じた。  
 
「………私、私ね。今日、ナエちゃんに言われたの。」  
 
キララの話はいきなりだったが、  
それでもようやく核心を話してくれると感じたのか、  
ヒカルは優しい笑顔を崩さずに耳を傾けた。  
 
「ナエちゃんもね、…ヒカルのこと、好きだったんだって。  
でも、諦めたんだって。…なんでだと思う?……私が、いたからなの……!」  
 
そこまで言い終えた時、再び彼女の目から涙がこぼれた。  
 
「私がいたから、ヒカルのこと、諦めたんだって…!  
ナエちゃん、そう言ったの。…そんなこと、普通言えないよ……!  
でも、それだけじゃないの。その後、私を叱ってくれたんだよ?  
もっとしっかりしなきゃいけない、って…!私にそう言ってくれたの!」  
 
もう、彼女は随分と声を震わせていた。  
ヒカルはただ、その華奢な体を抱きしめることしか出来ない様だった。  
 
「なのに、なのに!私、こんなことしてるんだよ?  
気持ちいいことして、それでナエちゃんのことなんか忘れてたの…!  
最低だよ、私、最低だよ、最低…………さいて…………ぅ…!」  
 
キララはもう、抑えが利かなかった。  
声を押し殺すことさえも出来ず、声を上げて泣いた。  
許されないとは分かっていても、それしかもう出来ることはなかった。  
 
シーツに、溢れる涙がぽたぽたと零れ落ち、跡をつくっていく。  
 
 
 
外は、もう陽がだいぶ傾いていた。  
 
 
 
「……ねえ、キララ。」  
 
ヒカルの声は、それまでとどこか違う調子だった。  
先程までの、気遣いに溢れた優しさのあるものではなく、  
何か普通に会話をするような響きがあった。  
 
「……」  
 
キララは、その口調を自分への咎めがあるものだと解釈し、じっと黙る。  
 
「…その、言いにくいんだけどさ。………それ、ウソだよ。」  
「へ?」  
 
思わず、キララは間の抜けた声を出してしまった。  
 
「いや、あの。ナエちゃんさあ、僕のことが好きだった……って言ったんだよね?」  
「…そ、そうだけど。」  
「ナエちゃん、かなり前からもう縁談がまとまってるんだよね。」  
「……え??」  
 
キララは目を見開いたまま、  
ヒカルが何を言っているのかを必死に整理している様だった。  
 
「ナエちゃん、あれで結構いいとこのお嬢様なんだよ。  
メダロット博士見てもわかると思うけど、職業研究者ってかなりあっちの方には疎遠になるだろ?  
だからってわけじゃないけど、だいぶ早い時期からもうそういう話は考えてあったらしくてさ。  
まあ、許婚ってわけじゃないけど……そういう人はいるんだよ。」  
「で、でも、だからって…」  
「もっと言うとさ……その、えっと…僕、一度……その、言ってるんだよね。好きだ、って。」  
「…えぇ?」  
 
キララはそこで急に表情を歪め、さも不機嫌そうな顔をしてみせた。  
 
「い、いや!あれはまだ僕が小学生の頃だったからさ、その、全然他意はないというかっ!」  
「…ふうん。それで?」  
「そ、それでさあ。その時に、キッパリ言われちゃったんだよねえ…」  
ヒカルは、照れ隠しのように笑って見せた。  
 
「……何て?」  
キララは、泣き腫らした目を吊り上げていた。  
まるで、亭主の浮気を問い詰める妻のように。  
 
「………『ヒカルさんみたいな人は、私のタイプじゃないんです。』…って。」  
「…………」  
 
暫くの間、キララは無言でヒカルを睨んでいた。  
先程のような弱気な目線ではなく、…気弱な子供なら、それだけで泣き出してしまうほどの鋭い視線。  
ヒカルは、それをはぐらかすような笑いを浮かべながら、あいまいに受け流す。  
 
「………でも、それじゃあ、なんでナエちゃんはあんなこと言ったのよ。」  
「うーん……もしかしたら、博士から言われたのかもなあ…」  
「……博士? なんで、そこで博士が出てくるの?」  
「あ、あぁいや!なんでもない、気にしないで!」  
 
質問に答えないヒカルの背中を、キララは回した手でぎゅっとつねる。  
 
「言いなさいよ」  
「わ、わかった!ゆう、ゆうから!」  
 
ヒカルは、渋々と言った感じで話し始めた。  
 
「……いや、実はさ………その、ちょっと前に博士に相談したんだよね…」  
「……相談?…なにを?」  
「えぇっと…その……キララとの関係、について……」  
キララは眉をしかめ、その先を促した。  
 
「えっとさ…その、僕、中学校あたりからキララのこと、好き、でさ…」  
「……」  
「でも、ずっと幼馴染だっただろ? だから、告白してもそういう関係になれるもんかなあ、って思ってさ。」  
「……それで、博士に相談したってわけ?」  
「…ぴ、ぴんぽーん……」  
 
おどけてみせたヒカルの背中を、キララは再びぎゅっとつねる。  
その様は、子供を叱る母親のようだった。  
 
この頃になると、キララの表情からはもう一切の毒気が抜けていた。  
泣き腫らした目はまだ少し赤かったが、もう表情に暗い色はない。  
むしろ、目の前のヒカルに対してふつふつと怒りを湧き上がらせているようだった。  
 
「それで、私は気にして、泣いて、落ち込んで……なるほど。」  
「…あ、あはははは……いや、うん、…泣いてるキララも、可愛かったよ?」  
 
ヒカルがそう言うと、ふっとキララの腕が彼を抱き寄せた。  
 
「……今日は許したげる。…その代わり、今度、メダロット社のレストランでフルコースね。」  
「………い、いえっさー…」  
 
ヒカルの返事を聞くと、キララはぽふっとヒカルの胸に顔を寄せた。  
そして、呟くよりも小さい声で、ささやいた。  
 
「………続き、……しよ。」  
 
 
 
割れ目にそって、つっと舌を這わせる。  
 
ふたつの膨らみを舌先で掻き分け、舌を中へ入れ込むと、きゅっと締め付けられた。  
その戒めを半ば無理矢理解くように、ヒカルは更に奥へと舌を入れていく。  
 
「あ…ぅ…、は、ん…」  
キララはシーツを手でぎゅっと握り、もう片方の手でヒカルの髪を触る。  
 
「…キララ、…気持ちいい?」  
「………き…、ぅあ、んっ、ふっ、あっ」  
キララが答えようとしたところで、ヒカルは舌を更に奥へと滑り込ませる。  
にゅるにゅるとした媚肉をかきわけてゆく感触は、ほんの少し先程のキスに似ていた。  
 
ヒカルは、舌を奥へ入れたり、出したりと単調な動きを繰り返す。  
その度にキララは荒く呼吸をし、眩しそうに目を細める。  
 
「………ひかるぅ……」  
蚊の鳴くような声で、彼女は幼馴染の名前を呼んだ。  
 
 
彼女の内股はすっかり汗ばんでいて、  
秘所に控え目に生えたそれはぐっちょりと濡れそぼっていた。  
 
ヒカルが中で舌を動かす度に、少し粘性のあるぬるぬるとした液体が出てくる。  
喉を鳴らしてそれを飲み込むと、キララは恥ずかしそうに口元に手を当てた。  
 
「…き、……汚いよ?」  
「……」  
 
ヒカルは答えず、黙ったまま、指を勢いよくキララの中へ入れた。  
ちゅぷっと音がして、中でプール状態になっていた愛液が飛び散る。  
 
「ひゃっ!?」  
「……汚くなんかないよ。」  
そう言って、ヒカルは指で糸を引くそれを、キララの顔の前に持っていく。  
 
「…で、でも、は、恥ずかしいって……」  
「……そう?」  
 
普段は、どこかキララがリードし、一歩先んじているが、  
いざこういう場合になると、それはどうも逆転するらしかった。  
 
「……ねえ、キララ。」  
「…うん?」  
「その……そろそろ、いいかなあ、なんて…。」  
「……えっと、…ってことは……」  
「んーっと、だから、その……」  
ヒカルは肝心な部分を伝えることが出来ず、視線を逸らし目を泳がせている。  
 
「……したいの?」  
キララは少し意地悪そうな目つきで言った。  
 
「…えっと………うん。」  
単刀直入に訊かれて、一瞬即答することを躊躇ったが、  
ヒカルは確かに首を立てに振った。  
 
「…その前に、いっこだけ。」  
「…何?」  
 
キララは急に面持ちを変え、少しばかり真剣さを帯びた表情になる。  
 
「……もちろん、するんだから、最後まで責任とってくれるのよね?」  
「……最後、っていうと………終るまでってこと?」  
「違うわよ!バカ!」  
 
キララははぁ、とため息をつき、呆れた。  
ヒカルは何を咎められたかがいまいち理解できていない様子で、  
表情からはクエスチョンが抜けていない。  
 
「…最後ってのは……その、…アレよ、アレ。」  
たった一言、漢字に直せばたかだか二文字のその言葉を  
彼女の口から言う事は、大いに躊躇われることだった。  
 
気恥ずかしさよりも、もしものことを考えるとやはり聞くのが怖かったからだ。  
もちろん、この後におよんで今更ということはないだろう。  
ただそれでも、ヒカルのように気弱なタイプには、  
その言葉はかなりのインパクトがあるには違いなかった。  
 
「……け、…」  
頭文字だけが、ぽろりと口からこぼれた。  
 
「…あ。」  
そこまで来て、ヒカルはようやく理解できたようだった。  
 
「………、…結婚?」  
「そ、そうよ。」  
 
古い貞操観念かも知れない。  
 
ただそれでも、自分が体を許すのは、生涯の伴侶となる相手だけでありたい。  
 
そういう思いが、彼女にそれを言う事を促したのだった。  
 
「……」  
「…」  
 
ヒカルは急に真面目な顔になり、じっとキララの目を見つめる。  
キララも、わざと逸らすことも出来ず、ただ見つめられていた。  
 
「……当たり前、だろ。」  
 
それは、キララがこれまでに聞いて来たヒカルの言葉のどれよりも力強く、  
そして最も男らしい口調だった。  
 
 
 
メダロット社の、数ある研究室の一角。  
 
通路の奥まった場所に、隠れるように薄汚れたドア。  
そこには「アキハバラ」と名札がかけてあった。  
 
「おじいさん、いますか?」  
コン、と一回だけ短く区切られたノックの音を響かせた。  
 
「ナエか? すまんの、今手がはなせんのじゃ。勝手に入ってきてくれい。」  
「失礼します」  
 
そう言って、ナエはゆっくりとドアを開ける。  
 
部屋の中は随分と薄暗く、  
作業台のようなものが据え付けてある所だけ蛍光灯が灯されていた。  
 
ナエはうわ、暗いなどとぼやきながら、  
手探りで壁際のスイッチを探してバチバチとつけていく。  
すっかり採光の奪われていた部屋は、改めて明るくなると、随分と雑然としているのが分かった。  
 
「…っふー。これで一段落じゃの。」  
博士は額をぬぐいながら息をついた。  
 
「お疲れ様です。…あんまり根を詰めないでくださいね?」  
ナエは少し咎めるような響きで言った。  
「なぁに、このくらい。」  
自身ありげに、博士はぐっと腕を上げてポーズをとってみせた。  
 
本人にすれば純粋に身体の壮健ぶりを示したいだけなのだろうが、  
ナエにとってその様子は随分と可笑しく感じられるものだったらしく、思わずくすりと笑ってしまう。  
 
「…ふふ。おじいさんは、いつでも元気ですものね。」  
「そうじゃそうじゃ。ワシはいつまでも元気じゃぞい!」  
いつもと変わらない様子で、博士は豪快に笑った。  
 
「あ、そういえば。えっと…ヒカルさんとキララさんのことなんですけど……」  
「おぉ! どうじゃった、うまくいったか?ん?」  
「その…一応は。」  
ナエは曖昧に笑う。  
 
「そうかそうか! すまんのぉ、わざわざそんなことをやらせて。」  
「いえ、気にしないでください。…それよりも、……本当に研究目的だけ、なんですか?」  
「ん? まあ、多少知的好奇心が伴ったことは否めないのお!」  
博士はにやりと意味深に笑い、机の上に置かれた書類に目をやった。  
 
「……環境とロボトルの戦績が関係することなんて、よくあることだと思うんですけど…。」  
「なぁにをいっちょるか。天領イッキとアガタヒカル!この二人は共に現在、そして将来伝説的なメダロッターになることは確実じゃ。  
その二人に仲のいい幼馴染がいるという共通点を見過ごして、ワシはメダロット博士などと名乗れん!」  
「…まさかイッキくんのほうも?」  
ナエが眉をしかめて訊くと、博士はどこか誇らしげに口元を緩めた。  
 
「もちろんじゃ!」  
「……そうですか。」  
「まぁ、そう怪訝そうなカオをするな。ほれ、ひとつどうじゃ?」  
そう言って、博士は机の上においてある皿にてんこ盛りに盛られた梅干をひとつ奨めた。  
 
「…いえ、結構です。」  
「そうか? 梅干はいいぞぉ……ん〜!」  
 
一つ口に含むと、博士は幸せそうな表情で酸味を堪能した。  
 
 
 
「…い、いくよ?」  
 
キララは消え入りそうな声で返事をして、こくんと頷いた。  
 
先端が割れ目の入り口と触れると、二人はそろってごくっと唾を飲んだ。  
そして、ヒカルはゆっくりと腰を動かし、自身をキララの割れ目の中へと挿れてゆく。  
 
「…っふぁ、…ぁん………」  
亀頭の先端が飲まれるように中へ入っていくと、キララは切なげに声を上げた。  
 
「ちょ…、ぅ、うわ……………」  
ヒカルは感嘆のため息を漏らし、その初めて味わう感覚に言葉に仕切れない感慨を覚えた。  
 
風呂場で、自分のそれを洗う時に似たような感覚を味わったことを思い出していた。  
それがもっと柔らかくなって、もっと生物的になって、更にほのかに熱く感じるような、そういう感触。  
しかも裏も表もなく四方八方から責めてくるものだから、ヒカルはその快感に思わず大げさに呼吸をしてしまう。  
 
「……き、気持ちいい?」  
まったく自信のない口調だった。  
 
ヒカルが気持ちいいかどうかは、いくら初体験の彼女とて見ればわかる。  
時折深呼吸をして、表情をしかめているその様子から、それは容易に察しがつく。  
 
ただ、それ故にヒカルが一言も喋らず、  
たとえ一時でもヒカルとの意志の疎通が図れないことが不安に感じたからだ。  
 
「…すごい、………としか言えないよ…」  
「…そ、そっか……………、…よかった。」  
そう言って、キララは微笑んだ。  
 
「じゃあ、…このまま……」  
ヒカルは更に腰を動かし、ゆっくりとキララの中を押し開いてゆく。  
時折膣内がびくんと脈打つように動き、その度にヒカルは何とも耐え難い快感に襲われた。  
 
「…ぃ、いいよ………ひかる…ぅ、……んぅ……………、…ひゃうっ!?」  
亀頭がずっぷりと中へ入り、ヒカルが更に奥を求めて腰を動かした時、  
キララは突然悲鳴に近いような声を上げた。  
膣の入り口、ヒカルの陽根の隙からはツっと一筋の血が流れた。  
 
「ご、ごめん!」  
何が悪いのかは分からなかったが、取り敢えずヒカルは謝った。  
少なからず、彼は取り乱していた。  
 
「……ご、ごめんね…驚いたよね。」  
「…い、いや…。……ど、どうしたの?」  
ヒカルは恐る恐るといった口調でそう尋ねた。  
 
「えっと………たぶん、…………初めてだから、…その……」  
「………あ!」  
 
ヒカルは、「そのこと」をすっかり失念していた。  
 
「…あ、……なるほど。」  
 
そう、考えてみれば当然のことだが、キララは「初めて」なのだ。  
となれば当然、そこにはあるべきものがあって然り。  
 
自分に落ち度がないことが分かり、彼は内心胸を撫で下ろした。  
 
「えっと……こういう時は、お赤飯だっけ?」  
「……………バカ…。…それは違う時よ。」  
「あ、あれ? えーっと、…それじゃあ、」  
 
そう言い掛けて、ヒカルは腰をぐっと前へ動かした。  
じゅぷと液体音がして、ペニスが膣内へ更に入っていく。  
 
「ぁっ!」  
突然に、しかも一気に挿れられたものだから、キララは思わず大きく声を上げてしまった。  
 
 
対するヒカルは、ぐっと屈み込んでキララの両脇に手をつき、ちょうど腕立て伏せをするような格好になる。  
そして、すっと顔をキララに近づける。  
「……これで。」  
そう一言言って、ヒカルはそっと唇を重ねた。  
 
「……」  
「…」  
 
唇が触れあっていたのは、ほんの5秒かその程度だった。  
先程の如く舌を入れる様なこともしない、触れ合うだけのキス。  
 
キララは突然のヒカルの行動の意図が読めず、少し困惑した表情を浮かべた。  
 
「………ど、どーゆーこと…?」  
「いや…その、初めてのお祝い……みたいなさ。」  
「…………それがキスなの?」  
「だって、お赤飯じゃないっていうからさぁ……」  
「…あんたねぇ……、…ふふっ。」  
 
いつもと変わらない、どこか抜けたような幼馴染に、キララは苦笑した。  
 
今していることはこれまでにない初めての体験でも、  
その相手はキララがよく知っている、これまでずっと一緒にいた相手なのだ。  
 
そんなことを思い、彼女は緊張していた気持ちが徐々に緩んでくるのを感じていた。  
 
 
「やだ、ちょ……んぁうっ!!」  
 
お互いが向かい合う様に抱き合い、キララはヒカルの上に跨る格好になっている。  
自重によって更に奥深くまで媚肉が押し分けられ、膣内から分泌された液体がお互いの陰部で糸を引いていた。  
 
「…っふ、……こんな、しかた……ぁっ、あったんだ……んぅっ…」  
恍惚とした表情を浮かべながら、ぎゅっとヒカルに抱きつく。  
「…僕はこれが一番いい、…かなぁ……」  
ヒカルがキララの細い腰を抱いて、まるで大樽を振るかのようにキララの体を激しく上下に揺さぶる。  
その度にヒカルの陽根とキララの淫靡な色をした秘肉が擦れ、彼女は大きく嬌声を上げた。  
 
「…っ、気持ち、…良い?…キララ」  
「そ、そんぁっうっ、んうっ、んっ、ぁっ、ふっ」  
言葉にならない喘ぎが、その快感の度合いを如実に物語っていた。  
 
ヒカルは更に激しくキララの体を上下させ自らの快感の度合いも高めようとする。  
既にキララの膣内は溢れ出す愛液のせいで抵抗を生まない程に潤っていたため、  
必然的にヒカルが体を動かすペースも早いものになっていく。  
本能的に絶頂を求めてどんどんと加速する動きに、キララが敏感に反応した。  
 
「ひ、ひかぅ、ひかるっ、…は、はやす、ぎぃ…んぁ、あっ、ぅんっ、あんっ!」  
キララの呻きも最早ヒカルの耳には届かず、ヒカルは乱暴なまでに激しくキララの体を上下に揺らす。  
しかし突き上げる快感によってキララの膣から止まることなく分泌される愛液のせいで、彼女が痛みを訴えることはない。  
 
「…キララ、………すご…っ、…ぅ……」  
「ひ、かる………す、…き………ぃあっ、んふっ、ぁんっ」  
二人は、ひたすらに欲求の赴くまま目合いにふける。  
 
幼き日より片時も心から消えることの無かった想いを、  
十数年越しに情交を以って二人は消化していた。  
 
 
「らぅっ、ら、らめ……ぇっ、ぁっ、んぅうっ!!」  
噛み殺すように嬌声に突然抑揚がなくなった刹那、  
彼女の体が電撃的に反応し、びくっとのけぞる様に背筋を伸ばした。  
膣壁が急激に動き出し、中で膨らみ切っていたヒカルの陽根を刺激し、  
その亀頭はまるで半ば押しつぶされるように乱暴に揉まれた。  
 
「っ! や、やば……………ぅあ…」  
 
 
一瞬の我慢も空しく、彼は放精感に身を震わせた。  
 
 

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