淡い色に濡れた双眸に映り込む、驚いたような戸惑ったような顔をした髪を無造作に伸ばした暗そうな少年。
その仄かに染められた頬は、微かに俯けられて出来た影により隠され。少年の内心は驚いて見開かれた目と、何かを言おうと開けられたままの口唇だけが、静かに語る。
「ユウくん……ユウくんがしたいなら……」
音が書き消えた密室に、それは聖堂の鐘の音の如く響き。彼の耳に余韻を残し、彼の体が静かに震えた。
先程、不意に重ねられ。そのマシュマロみたいな柔らかさと砂糖菓子にも似た甘い匂い、心臓が張り裂けるのではないかと思えるほどの心の高鳴りを彼に刻ませた唇は更に続ける。
「……う、うん。そうじゃなくて……その」
恥じらう唇はまるで花びらの演奏会の如く、軽やかなのに簡単に浮き沈む。彼はどんな顔をしたらいいか分からず、困ったような顔をしようと試みたが、出来ないでいる。
断ることも出来るというのに、彼の身体は緊張を解いていく、その身を相手に委ねるように。
彼女の細いが力強い手は彼の華奢な手を取ると
「胸が、ドキドキしてるの……ユウくんと一つになりたいって…………こんなに」
その手に導かれるまま、彼の手は作業着に包まれた彼女の胸に触れた。
細身の身体に似合わぬ豊満な胸の弾力が手に当たり、彼は薬缶の様に湯気を頭から出して。
「…………ナエさん」
手越しに伝わる鼓動に、彼女の双眸に映る自分を重ね。彼は静かに
「ナエさん……ぼ、ぼく」
「ドークス、転送!!」
彼が叫ぶと、前方の空間に積彩色の光が溢れ。真白な四肢を持つメダロットが現れる様に、イッキは顔を歪ませ。
「ちょ、まっ。待てって、ユウヅル、冗談、冗談なんたがらさー」
「ウルサイ! それ以上言う気なら。オマエと言えど容赦はしない」
「なんだよ。人が折角オマエとナエさんのラブイチャライフのノロケでも訊いてやろうと――」
「知るか」
「ち、なら付き合ってやるよ。やるぞ、メタビー」
イッキの傍らに立っていたKBT型と呼ばれるメダロットは手を掲げると「おうよ」と短く返した。
「行くぞ。ロボトルー」
「「ファイッ」」