タッタッタッタ
僕は今、とあるメダロットを探している。
数年前に再開して以来、彼とはまともに会っていない上、どこにいるかも分からない。
だが探さなくては…探して伝えなくてはいけないことがあるから…。
―数ヵ月前―
『博士が亡くなられた?!』
『はい、お爺さまが…うっうっうっ…』
人が死ぬ、それは必然的なことだ。だがあの人には似つかわしくない。
僕が小学生だった頃に知り合い、それからもずっと付き合いがあった。博士は老人とは思えないほど若く、行動力があったのを覚えている。…だから必然的なことが僕には受け入れられなかった。
数日後に葬式をあげることが決まった。メダロットの権威だった博士の葬式は盛大に行なうそうだ。その手伝いをする中で、僕は博士との出会いを思い出していた。それはハロウィンの日、とあるロボトルをして『………彼も呼ばなくては……。』
その日から僕は彼を探した。久しぶりに快盗になり、様々な山林を回った。しかし葬式の日に間に合うことはできなかった。
しかし博士の死を伝えることはできる、いや伝えなくてはならないのだ。
そう信じ僕はそれからも探し続けた。彼を…友人として共に戦った彼を。
タッタッタッタ
ガサガサガサ
『やっと見つけた、君は…ロクショウ君だね?』
少ない情報を元についに僕は捜し出した。初代KWG型メダロット「ヘッドシザース」。すでに二十数年も昔のメダロットだ。だからいまでも稼働している可能性があるのは彼しかいない。
『何故、拙者の名を…?』
『いや……久しいな、あいつも元気か?』
仮面をつけていても彼には分かったようだ。
『ああ、元…』
途中まで言い掛けてメダロッチから威勢の良い声が飛ぶ。
『俺は元気だ!おいっヒカル!すぐさま転送しろ!!!』
『(はいはい)…メダロット転送!』
光の中でメダロットが組み上がり僕の目の前に現われた。初代KBT型メダロット『メタルビートル』。KWG型と同じ日に発売された旧型だが、コイツ(メタビー)はこのパーツしか付けようとしなかった。
『話は抜きだ!俺と戦え!!!』
いきなりそう切り出すと構えるKBT。
『戦いは好まぬが…お主となら良かろう!』
右腕からチャンバラソードを引き出すKWG。
こうなることは想像がついた、久しぶりに再開した二人に話等必要ない、戦えば通じ合えるライバルなのだから。
………
パタタタタッ!!
沈黙を破り、サブマシンガンの銃口が火を噴いた。
ボン!ガッ!ボフッ!
『フン!』
造作も無く避けるKWG。
この程度の弾が当たるはず無いとKBTも分かっている。
パタタタタタ!
ドンッ!ドンッ!
リボルバーとサブマシンガンを撃ちまくる。
当たらない、しかしそれも時間の問題だった。
ガン!
KWGの肩の装甲に鈍い音が響く。
リボルバーが命中したのだ。
『ちっ!』
直ぐ様回避の方法を変えるKWG。
KBTはただ連射していた訳ではない。撃ちながら逃げるターゲットのスピードを計算し、弾の軌道修正を行なっていたのだ。
『どうした?!ロクショウ。腕が鈍ったのか?』意気がっての挑発、腕が良くなっても性格までは良くならないらしい。
………
再び沈黙が流れる、完全に気配を消したKWGはどこにいるかすら分からない。
………
『覚悟!!』
それは一瞬だった、懐に入ったKWGは構える暇も与えずKBTの右腕を切断する。
『メタビー!!!』
『ぐぅ!』
呻きながらもKBTはすぐさま右腕を切り離す。
バーン!
弾倉を真っ二つにされたため弾が誘爆したのだ。
『やるな、ロクショウ!!』
『お主も!!』
何年も前、廃校で戦ったとき決着が付かなかったロボトル。
彼らはその決着をつけたかったのだ。
月に照らされるKBTとKWG。僕が入り込む隙は既になかった。
ザン!
『当たるか!!』
KWGの一撃が決まってから、一進一退の攻防が続いた。
暗闇からの奇襲を2回も許すほどKBTは甘くない。
またサブマシンガンが直撃するほどKWGも遅くはなかった。
パタタタタ!!
カン、カン!
『くそぉ、直撃しない!』
KWGにも弾は当たっていた。しかし致命傷になるようなダメージではない。
『捉えた!ハンノーダーン!!』
バシュバシュ!
頭部パーツ「ミサイル」から、2発の反応弾がKWG目がけて発射された。
『あまい、見切った!』
ジャキーン!
チャンバラソードにより反応弾は二つに切断されてしまった。
ドコン!ドガンァ!
制御が効かなくなった反応弾はあらぬ方向へ飛び、爆発音が4回響く。
ジャコン!
『止めだ!メタビー!』隙だらけになったメタビーにピコペコハンマーを構え突撃するKWG。
『ちいっ』
直ぐ様、弾幕を張り反撃にでるKBT。
しかし遅かった。
ハンマーはもうすでに顔の目前だったのだ。
バチィィィ!
ロクショウの勝ち、僕はそう思った。
しかし決まる寸前、KWGの左肩から突如火花が走りハンマーが止まった。
『もらったぁ!!』
KBTは動かなくなった左腕を掴み、胴体を思い切り蹴飛ばした。
『ぐわぁぁぁ!!』
KWGは後方にある木まで吹き飛ばされ、背中から叩きつけられてしまった。
ガシャーーン!
抵抗することもできず、地面に落下。
『はぁ、はぁ、はぁ』
突然のハプニング、それはKWGの肩に当たっていたリボルバーの弾が原因だった。そこに負荷が集中し肩が停止。…偶然以外のなにものでもない。
『ん?抜けちまったみたいだな』
良く見るとKBTはKWGの左腕を持っていた。
『ヒカル!預かってろ!』
そう言いながら、左腕を投げて寄越す。
すでに生産中止になっている大切なパーツだと、KBTは知っているのだ。自分も同じだから。
『おい、ロクショウ!もうくたばっちまったのか?!』
……
三度静けさが辺りを包む。しかしまだKWGは終わっていないと、身構えるKBTだった。