『オワリ』くま×安心
※今やってる物語全部終結後のIF
「物語は幕を閉じた。」
カーテンの隙間からの日差し。それ以外に明りの存在しない部屋で、彼女はただ一言言い放った。
『少なくとも………こんな時に言う言葉では無いんじゃないかな?』
息を荒くしたまま、彼は呟く。窓際に立つ彼女が泰然としているのに対してこの有様は男として悲しくもあるが、相手が相手だ。そして、彼が彼だ。仕方ない。
「それでも、聞いておきたくてね。」
彼女………安心院なじみの横顔に一切の変化は見られない。が、よくみればその病的に白い肌には汗がにじんでいるし、すらりとした足の付け根からは彼………球磨川禊の放った白濁が流れ出ている。
ついさっきまで激しく体を重ねていたというのに、流石は人外と言うべきか。もう体力も回復したようだ。それとも、お得意の一京分の一だろうか。
「今までこの学園で紡がれた数多の物語。その中で、めだかちゃん絡みの物は総じて、過去の物語の延長線上だった。」
安心院は窓を離れ、ベッドの上で胸を上下させていた球磨川のもとにすり寄る。それは純白の女神のようでもあり、底なしのサキュバスようでもある。球磨川は虚ろな目のまま、上体だけを起こして彼女と相対した。
「全ての始まりはフラスコ計画という、この僕が今に至るまで終わることを許さなかった物語。続いて、中学時代から終わることができなかった君との物語。最後は一切合財ひっくるめて、善吉君とめだかちゃんの始まりから引き延ばされてきた物語が、全てを締めくくった。」
安心院の白い指が、球磨川の薄い胸板をなぞる。淫靡に、だが清純に。
対して、球磨川の右手も彼女の胸に伸びる。かつては「割るほどはない」などと言っていたらしいが、十分過ぎる大きさだ。未だ屹立をやめない先端に指を這わせ、彼女の出方をうかがう。
「だけど、今回ばかりは話が違う。正真正銘、もはやどんなグダグダ展開であろうと引き延ばせないほど、綺麗さっぱりと全てが終わってしまった。」
『後悔でもしてるの?』
「喋る体力も出てきたみたいだね。安心したよ(安心院さんだけに)」
言いながら安心院の手も動きを変えた。先程自分の膣中に精を放った彼の分身を撫で上げるように、たださするかのように触れる。さすがにまだ難しいか。半分ほど硬くなったところで、彼女は言葉を続けた。
「後悔?そんなものはない。むしろ、ずっと永劫の時の中を「続け続けてきた」僕にとって、こうやって何かが綺麗に終わってくれるのを見るのは嫌いじゃないんだ。」
けどね、と。
「君に取ってさ。このオワリはどういう風に映ったのかと思って。」
『………おいおい、安心院さん。いちいち聞くようなことなのかい?』
言葉を続ける前に、安心院の尻に手を回して彼女の裸体を引き寄せる。
『少年ジャンプのような、綺麗で、高潔で、お涙ちょうだいの、最低最悪の結末だったよ。』
安心院はそれに、微笑みで言葉を返す。
「そうだね。マンガと現実を混同しちゃいけない。あの終わり方は、きっと少年ジャンプなら大団円として迎えられただろう。けど、現実世界に生きている一高校生の青春のケリの付け方としては最低最悪だ。」
『やっぱりわかってたんじゃないか………ッ』
「おや?また元気になってきたじゃないか青少年。とはいえ、あと一回くらいが限度かな?」
元気を取り戻し始めた剛直を擦られ、球磨川は吐息を抑える事が出来なくなってきたらしい。かくいう安心院も、球磨川に注ぎ込まれた子種とともに新しい湿り気を隠せていない。
『やり直したら、もっと上手くいくとでも?』
「冗談。やり直せないし、引き延ばせない。ッ………だ、から、オワリと言うんだ。」
隙を見て股間に滑り込まされた球磨川の指が、彼女の膣中の浅いところまで入りこむ。クチャリと聞こえた水音と、彼女の言葉の途切れ方。あぁ、あと一回では彼女は満足しそうにない。
「………昔、の。古い、たった一度きりの知り合いの口癖を借りるとしよう。」
言葉を休めず、彼女は彼の体にまたがる。「早くよこせ」と目が語っていた。
「もう、終わったことだ。」
『………』
一瞬、言葉を休め。
「うん。もう、終わったことだ。」
球磨川は微笑みと偽りない言葉、そして同時に腰を突きあげた。
「ヒッ!は、あぁ………」
『ッ………全く、もう3回も出したのにまだ欲しがってる。君の体は文字通りの底なしかい?』
「おいお、い。君が、そうさせて、るんだ、ろ?」
荒い吐息と、肉体が衝突する音。そして淫らな水音。部屋に響くのは、それだけ。
『愛してるぜ、安心院、さん。』
「そういう………言葉、は、ぁ。括弧、付けずに、あっ欲しい、けど、ね・・・!!」
意地悪く乳房を撫で上げ、桜色の先端を口に含む。彼女も反撃のように、彼の鎖骨の上に舌を這わせる。
全ては、終わったことだ。もし新しい物語に彼らが関わるとしたら、彼は今まで通り負け続け、彼女は人間を見続けるだろう。
だが、それは全て新しい物語。あの幼馴染二人の物語の続きはもう、あり得ない。
全ての物語は彼女と彼が丸ごとひっくるめて、エンドマークを叩きつけた。それこそ文句の付けようのない、「完全(ジ・エンド)」を。
「はぁ、あ、球磨、川、君!!4回目、と、いこうか!!」
『ッは、じゃあ、本当に、孕ませるつもりで、いく、よ!』
お互いの、もう何度目かの絶頂が近い。だが、そこでスマートにいかないのが負完全。
白桃の如き彼女の尻を支えていた掌の人差し指が動く。
「っ!!!?んあ、はああぁぁ!?」
『安心院さ、ん。これが、君、の………弱点、だよ、ね?』
人差し指が貫いたのは、彼女の菊門だった。数えることもできない年月を生きてきた彼女の弱点。それはなんともはや、俗に言う「アナル」。負完全であるがゆえに弱点に極めて聡い彼が、見逃す道理などありはしない。
そして、容赦も無い。中指という、追撃が襲う。
「ふ、あ、あ、あああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」
『………か、はっ………!!』
彼の剛直を道連れとでも言わんばかりに締め上げる膣圧。それに屈して、4度目の子種を注ぎ込む彼。
ビクンビクンと定期的な痙攣。そして、結合したまま安心院が上になる形で二人は横になった。結合部から、収まりきらなかった白濁があふれ出るのがわかる。
『流石に………ッ限界、だよ。』
「は、あ、………じゃあ、また、明日、かな?」
いつもの終わり方。いつもの約束。
負完全である彼が律義に護る、約束。
「僕達ってさ、結局、どういう関係なんだろうねぇ?君が括弧をとってあの一言を言ってくれれば、セフレなんて表現も出さなくて済むんだが。」
『………そうだね。』
彼が放った『愛している』の一言。その全てにつけられた、演技染みた括弧。
(………ま、言ってもくれなかった頃よりは、ね)
恐らく、このセフレ以上恋人未満と言う物語に、オワリが来るとするならば。
「………ねえ、安心院さん。」
彼が、カッコつけることを辞めた日。