人吉善吉は暗号解読に励んでいた。頭を掻きむしり、文字を見つめ、読み直しては繰り返す。
日が沈むごとに焦りが増し、手汗で紙が滲んでいた。マズい……こんなはずじゃないと自問自答をする。
どれだけ時間がたったのだろうか………気温が下がり指先が悴んできた。
ふと……背中が温かいことに気付く。
善吉が振り向くと、そこには親友の不知火半袖が背中合わせに寄りかかっていた。
「ちょっ、いつからいたんだよ!ていうか何やってんだ!?」
「あたしはただ食後の休憩をしてるだけだよ」
そう言って、不知火は口直し用のブドウ糖入りの飴を差し出す。
言葉は少ないが、善吉には不知火が応援してくれてることはしっかりと伝わった。
それからまた善吉は暗号解読へと励みだす。
後ろで口元が緩みそうな不知火はうつむいて善吉の心音を聞きながらウトウトし始めた。
不意に善吉が立ち上がり、不知火はハッと目を覚ます。
「おっ!?すまん、寝てたのか」
「解けたの?」
「いや、トイレだよ」
立ち去ろうとする善吉の上着をぎゅっと握りしめ、寝ぼけた不知火は何を思ったのか、口を大きく開けて指を指した。
終わり