「『さあ、みんな元気になったことだし、次の関門に行こうか!』」
球磨川の号令で、候補生達はキャピキャピはしゃぎながら、部屋を出て行った。
その後ろ姿を見送る保健委員長・赤青黄は、唇を噛み締める。
悔しい。あの大嫌いな球磨川禊に対してギブアップしたという敗北感が、
彼女に重くのしかかっていた。
その心の声が聞こえたかのように、立ち去りかけていた球磨川が
くるりと踵を返して戻ってきた。
「『そうそう、これ返しておかなきゃね』」
怪訝そうな顔をする赤に、2枚のカードを渡した。
「ジョッ、ジョーカー!?しかも2枚…!」
「『いやー、やっぱり友達だねえ!この子達いつの間にか
僕のポッケに潜り込んでいたんだよ』」
赤の脳裏に、先刻の勝負がフラッシュバックする。
してやられた。ジョーカーを最初から抜いていれば、出てくるはずがない。
それをまんまとブラフに引っかかり、自ら負けを認めてしまったとは…。
赤の中で、屈辱が怒りに姿を変えた。
「『やれやれ、また勝てなかった』」
球磨川は涼しい顔で、今度こそ立ち去ろうとした。
(許せない、絶対許せない……!)
赤は、右手の『五本の病爪』を音もなく身構え、
暢気に歩いている球磨川の背後に忍び寄っていく。
安心院なじみに叱られるかもしれないが、もはやどうでもよい。
こんな屈辱を、それもあの負完全・球磨川禊に受けるなど、あってはならないのだ。
『五本の病爪』で引っ掻けば、病気を自在に操れる。
幸い相手は、最弱なことでは名高い球磨川だ。どんな病気を持っていても
不思議ではないだろう。
時間差で心臓発作を起こすようにしておけば、自分が疑われることもないはずだ。
(死ねっ!)
赤は球磨川の背後に追いつくと、『五本の病爪』を振りかぶった。
しかし。
「『そう来ると思ってたよ』」
「え…うああっ!?」
球磨川が振り向き様に言ったかと思った次の瞬間、赤の身体は大小多数の螺子で
壁に縫い付けられていた。一瞬の早業だった。
「ば、馬鹿な!………え?………きゃああっ!」
驚きの声は、すぐさま悲鳴に変わった。
ただ磔にされたのではない。赤は、裸エプロン状態にされていたのだった。
「『これは正当防衛だ。僕は身を守るために、やむなく君を裸エプロンにした。
文句ないよね?』」
「そ、そんな無茶苦茶な…」
「『ナースキャップは残してあげたじゃないか。ああ、何て紳士的なんだ、僕は』」
羞恥と悔しさで真っ赤に顔を染め、赤は螺子の拘束から逃れようとした。
ところが意外なことに、左手と両脚はがっちり固定されているにも関わらず、
右手は全く自由な状態であった。
「ふんっ、抜かりましたね。裸エプロンに着替えさせるのに気を取られて、
右手を拘束し忘れるなんて。所詮、あなたは負完全です!」
嘲笑しながら、赤は右手を伸ばし、左手周辺の螺子を外そうとする。
しかし手首を挟むように大螺子が2本、さらに指を取り囲む形で、
小螺子が数十本打ち込まれている。外すにはかなり手間取りそうだ。
「くっ!この…!」
赤は悪戦苦闘しながら『五本の病爪』を伸ばし、螺子を1本1本取り外し始めた。
その様を眺めながら、球磨川は屈託のない、無気味な笑みを浮かべた。
「『かすり傷一つ負わせずに、そこまで精密に螺子を打ち込める僕が、
右手だけ忘れるなんてこと、あるわけないじゃーん(笑)
ほら、そろそろ何か感じてきたんじゃないの?』」
「負け惜しみを……うっ!?」
螺子を取り外す右手の動きが止まった。全身に凄まじい悪寒が走る。
「か、痒いっ!!」
悪寒の正体は猛烈な痒みだった。発信地は両の乳首とクリトリスだ。
よりによって女体の最も敏感な3か所から、全身に不快な電流がほとばしる。
赤は顔を引きつらせ、身を捩らせた。
「う、ああっ!え、エプロンに、何か仕掛けましたね!?」
「『ピンポーン!エプロンの裏地の、乳首とクリちゃんが当たる部分に、
とろろいもを塗っておいたのさ。』」
「なっ、何てことをっ!」
「『江迎ちゃんが『荒廃した腐花』の能力で丹精込めて作ったとろろだからねー。
生命力に溢れてとっても美味しいんだけど、肌についたらさぞかし痒いだろうね。』」
「ふ、ふざけないで…うあああっ!」
そうしている間にも、とろろは赤の柔肌に浸透していく。痒みで気が狂いそうだ。
たまらず、『五本の病爪』でエプロンの上から乳首を掻いたが、逆効果だった。
とろろをますます乳首に擦り付ける形になり、赤は悶絶する。
「ひいっ!くううっ!」
今度はクリトリスだ。あまりの痒みに、赤は恥も外聞もなくエプロンの裾をめくった。
薄いアンダーヘアと、ひくひく震える陰唇、それにとろろが付着して
赤く腫れあがったクリトリスが球磨川の視線に曝されることになった。
しかし、それを気にする精神的余裕など、もはやない。
赤は『五本の病爪』で、クリトリスを直接掻こうとした。
「『気をつけて掻きなよ、性病でも発症したら大変だぜ』」
『性病でも』『性病でも』『性病でも』……球磨川の声で、赤の手がぴたりと止まった。
(しまったっ……!)
『五本の病爪』は、赤が病気をイメージすることで、自在に相手を病気にさせることができる。
即ち、赤の精神力に依存するスキルなのだ。
だが、今の彼女は痒みのあまり、日頃の冷静さを全く失っていた。
その上、そこに球磨川が「性病」というマイナスイメージの言葉を投げかけたために、
頭の中は性病や死に至る病など、ネガティヴな思考であふれてしまったのだ。
普通の人間の言葉なら聞き流せていただろう。しかし過負荷の極みである球磨川の言葉だ。
たちまちそのネガティヴな響きは、水たまりに波紋が広がるように、彼女の心の隅々まで
性病に冒されて苦悶する自分のイメージで一杯にしてしまったのだ。
このまま掻き毟ろうものなら、性病どころかどんな病気を発病するかわからない。最悪の場合、死だ。
たった一言で球磨川は『五本の病爪』を封じ込めたわけだ。
そして痒くても掻くことのできない地獄を味わわせる為に、あえて右手を自由にさせておいたのである。
何とか心を落ち着けようとしても、一秒ごとに痒みが増してゆく。とても無理だ。
本能に任せて掻きたいという欲求と、命とは引き換えにできないという理性の葛藤で、
右腕がぶるぶる震える。全身が痙攣してきた。もはや限界だ。
赤に残された選択肢は一つしかなかった。
「おっ、お願い!掻いて!掻いてえぇぇ!!」
彼女は半狂乱になりながら、球磨川に懇願する。
「『へー、それが人にお願いする態度?もっと頼み方があるんじゃないのかなあ?』」
「お、お願いします!私が悪かったです!お願いしますから、どうか掻いてください!
もう、もう、おかしくなっちゃうぅっ!!」
球磨川はそれでも、意地悪く畳み掛ける。
「『いいや、まだ誠意が足りないね』」
「えっ?」
「『僕の可愛い後輩達に対する、さっきの君の謝罪だが、全く上っ面の口先だけのものだったね。
今度こそ、心からの謝罪が聞きたいんだよ。例えば……
…先程の、可愛い候補生の皆さん及び偉大なる球磨川せんぱいへの非礼な振る舞いの数々、
心からお詫びいたします。あなた方に比べれば、私・赤青黄は取るに足らぬゴミです。
人前で平気で裸エプロンをめくり上げ、オマンコを丸出しにしてボリボリ掻き毟るような
変態の露出狂です。ああ球磨川様、どうかこの淫乱な牝豚のオマンコの火照りをお鎮めください。
どうかその指先で、このスケベ女のいやらしいオッパイとマンコを慰めてくださいませ…
…こんな風にね。さあ、どうした!言いたまえ、ハリーアップ!』」
長い。その上過剰に脚色され、泥水の中に頭を突っ込まれたような屈辱的単語のオンパレードだ。
「くっ!…う……!」
最後のプライドが、言葉を口に出すのを押しとどめようとする。
「『さあ、言うのか?言わないのか!? Yes or No!? ハリー、ハリー、ハリーアップ!!』」
だが球磨川に駄目押しされるまでもなかった。地獄のような痒み責めによって、
彼女の理性の壁は既に、ガラガラと音を立てて崩れ落ちていた。
半泣きになりながら、赤は声を振り絞る。
「さっ、先程の、可愛い候補生の皆さん及び…偉大…なる球磨川せんぱいへの非礼な振る舞いの数々、
心からお詫びいたします!あなた方に比べれば、私・赤青黄は……と、取るに足らぬゴミです…
人前で平気で裸エプロンをめくり上げ、お…お……おま……」
「『ハリー!!』」
「おっ、オマンコを丸出しにしてボリボリ掻き毟るような、変態の露出狂ですっ!!
ああ球磨川様、どうかこの淫乱な牝豚のオマンコの火照りをお鎮めください!!
どうかその指先で、このスケベ女のいやらしいオッパイとマンコを慰めてくださいませえっ!!」
「『合格!』」
球磨川はハサミを取り出した。赤のエプロンの乳房の周辺をチョキチョキ切り抜く。
「な、何を!?」
「『何って、まずはとろろがくっつかないようにしないとね』」
切り抜き終わると、その円形の穴から、形よく整った赤の乳房が、剥き出しになる。
切り取られたエプロンの切れ端には、とろろがべったりついており、乳首はすっかり赤くかぶれていた。
「『そんで、乳首を綺麗にして、と』」
その乳首を球磨川は口に含んだ。ペロペロとしゃぶる。
「ひいいっ!」
悲鳴を上げる赤をよそに、球磨川は左右の乳首を代わる代わる舐めて綺麗にする。
「『はいお待たせ、今、掻いて上げるからね』」
すっかり硬くなった乳首に爪を立て、球磨川はかりかりと掻き始めた。
「ふ……うああっ!」
ゾクゾクするような快感が、赤の全身を貫いた。
痒いところを掻くというのは、人間にとっては性的行為に匹敵する快感である。
地獄の責め苦を味わった後であるなら尚更のこと、通常の数十倍の心地よさだ。
「はう!…ん…ああっ!……き、気持ちいいっ…!」
この世にこんな快楽があったとは思わなかった。
赤は陶酔状態に陥った。目がうつろになり、半ば開いた口からは涎が垂れている。
かりかりかりかり。ぽりぽりぽりぽり。
大嫌いな球磨川に、乳房を剥き出しにされ、乳首を掻かれているという状況も忘れ、
赤は天にも昇るような快感にどっぷり浸りきった。
「……う…うっ!?」
しかしそれも長くは続かない。乳首の痒みがようやく引いたかと思いきや、
こちらを放置するのは不公平だとばかりに、クリトリスが猛烈に痒くなってきた。
「ひ、ひっ、ひいいっ!」
赤は太腿を擦り合わせ、何とか痒みを鎮めようとしたが徒労であった。
もう答えは一つだ。赤はすがりつくような視線を球磨川に送る。
球磨川は乳首を掻く手を止め、ニヤニヤしながら彼女の顔をのぞきこんだ。
もちろん、素直に掻いてあげるほど球磨川はお人好しではない。
「『いいだろう。しかし謝罪の言葉は聞かせてもらったが、さっきは財部ちゃんのおかげで
君のギブアップ宣言を聞きそびれちゃったんだよね』」
「くっ……!」
「『君のような高慢な女が這いつくばって土下座する姿が、僕は何より好きなんだ』」
(どこまで根性の腐りきった男なの!?あんたなんか人間のクズよ!)
と、平常時なら言っていただろう。しかし、今の赤は痒み地獄の虜囚でしかなかった。
「な、何でも言いますから!早く、掻いてぇっ!」
「『オーケー、リピートアフターミー! 私、赤青黄は球磨川様に完全に敗北したことを認めます』」
「わ、私、赤青黄は…球磨川様に完全に敗北したことを認めます!」
「『生意気な態度を取って、本当に申し訳ございませんでした』」
「生意気な…態度を取って……ほ、本当に申し訳ございませんでしたっ!』」
「『敗北した惨めな負け犬の身、奴隷にされようと、肉便器にされようと、異議一つありません』」
「は、敗北した惨めな負け犬の身、ど、奴隷にされようと……肉便器にされようと異議一つありませんっ!!』」
「『どうかこの下品で淫らな牝の穴を、お好きなように凌辱して下さいませ』」
「く……うっ…………あ……!」
「『さあ、どうしたんだい?レッツリピート!』」
……もうヤケだ。
「どうかこの下品で淫らな牝の穴をっ!!お好きなように凌辱して下さいませぇぇぇっ!!」
真っ赤な顔で涙を流しながら、赤は血を吐くような絶叫でセリフを言い終えた。
「『オーケーイ!ベリーグッド!』」
満面の笑みを浮かべた球磨川は、赤のエプロンをめくりあげる。
とろろの粘りついたクリトリスはすっかり充血し、陰唇は酸欠の金魚のようにヒクヒク呼吸している。
球磨川はその陰唇にむしゃぶりついた。
「ひっ、あああっ!」
「『あー、ごめんごめん間違えた。こっちだったね』」
わざとらしく言い訳しながら、球磨川はクリトリスのとろろをじゅるじゅる啜る。
「はううっ!」
赤の全身がぞくぞく震えた。
「は、早く、早く掻いてぇ!」
しかし、赤の必死の訴えを聞き流すかのように、とろろを吸い終わった球磨川は、
掻くのではなく、彼女のクリトリスを摘んでいじくり始めた。
「ふぁぁっ!なっ、何してるの!?いいから掻いてよっ!」
「『えー、こっちの方まで掻いてあげるなんて約束した覚えないけど?
牝の穴を凌辱してくださいってのはちゃんと聞こえたから、安心してね』」
球磨川は意地悪な笑みを浮かべると、2本の指を赤の秘部に差し入れる。
巧みに動かしながら、Gスポットを刺激してゆく。
「はっ、あっ、いやあっ!こっ、この卑怯者っ!……はううっ!」
「『ありがとう、最高の褒め言葉だよ』」
「やっ、やめてぇ! あっ、あっ、ああっ!!」
まだ痒みのおさまっていないクリトリスを刺激されながら、
同時にGスポットも責められては、耐えろと言う方が無理だ。
赤は絶叫しながら身悶えするが、球磨川の指のスピードはどんどん速くなっていく。
淫らな水音が激しくなり、水滴がほとばしるように飛び散る。
「あっ!あっ!ああっ!あ―――っっっ!!」
そして悲鳴は途絶えた。絶頂と痒みの限界が同時に訪れ、赤は失神する。
断続的に潮を吹く下腹部だけが痙攣していた。
球磨川の表情がふっと緩んだ。ポケットから葉っぱを取り出し、クリトリスに貼り付ける。
両乳首にも貼った。気絶したままの、赤の表情がわずかに和らいだ。
「『江迎ちゃん特製のアロエの葉だよ。目を覚ます頃には、痒みはすっかり引いてるはずさ。
それからこれ以上凌辱するのもやめておこう。可愛い後輩達に軽蔑されたくないからね』」
と、いいセリフを呟きながらも球磨川は、乳房と下腹部が丸出しの状態で磔になっている
赤の姿を写メに収めるのも忘れなかった。
「『ありがとう赤さん、君の尊い犠牲は忘れないよ。やっぱり女の子は裸エプロンだよね!
よし、是非とも優勝して全校の女子生徒を裸エプロンにするぞ!』」
(END)