“グチュグチュ”  
まず、状況を整理しよう。  
不測の事態に面した場合は冷静に物事を見つめ直すのがいい。  
と、人吉善吉は第三者の視点で現状把握に努める。  
“ニチャニチャ”  
まず、この場所。  
ここはフラスコ計画の視察に訪れた時の地下研究施設。  
そこの地下四階、ここは名瀬夭歌の研究室。  
それは理解出来た。  
「ホラホラぁ〜、善吉見えるかー?もっと垂らしちゃうぞー」  
“トロトロ”  
で、自身は何故か手術台の上で固定され動けず、頭の方では楽しげな名瀬師匠を目視出来る。  
「オラ、もっと激しくこねくりまわしてやんよ」  
“ズチュズッチュグチャグチャグチャ”  
「いややっぱ冷静になってもわかんねーよ!なんだこの状況!!」  
善吉の叫びも気にせず、名瀬は鼻歌混じりでハンバーグ作りを続ける。  
 
「フンフフーン。最後に即効性の媚薬(笑)を入れて――」  
「……師匠、その怪しげなミンチは誰に食べさせる気だ?」  
善吉の問いも華麗にスルーし、挽き肉をハンバーグに形作る。  
「よーし、仕上げに……“凍る火柱”!!」  
ボファッ  
そんな擬音と共に、火炎が広がる。  
名瀬夭歌は一瞬で黒神くじらにフォルムチェンジ。  
「善吉く〜ん、アタシの手料理食べて〜ん」  
抑揚のない声で言いながら、手術台を縦に起こす。  
「黒焦げじゃねーか!」  
差し出されたハンバーグは炭と化していた。  
「うるせーなー、いいから食えよ。薬の効果は薄まってねーからよー」  
「いやいやいやそれが一番の問題というかこの状況を説明して欲し」  
まくしたてる善吉を無視し、炭化したそれをパイ投げの要領で口内にたたき込む。  
「べふんっ!?」  
善吉は当然吐き出そうとする。が――  
「もー、善吉くんったらー。好き嫌いはダメよー」  
棒読みでアイスファイア発動。  
氷で口を覆われ、飲み込むざるを得なかった。  
苦味と息苦しさに悶絶する善吉を余所に、くじらは言う。  
「いやさー、この前の会計戦の時の善吉くん超カッケェーとか思ってさー、抱かれてー、っつーかさー、まー気まぐれの暇潰しだな」“最後に本音出た!!”  
氷は解かれたので突っ込もうと思ったが、下腹部の異常にそれどころではなかった。  
痛いくらいに勃起し、脈打ち、亀頭がトランクスに擦れるだけで身体が震える。  
 
「おーおー、立派に育っちゃってまぁ」  
くじらは、ズボン越しでもくっきりと浮かび上がる巨影に感心しながら、しゃがみこんで優しく撫で上げる。  
「っあぁ、師匠……ちょっと待った……!」  
「あ?なんだよ?」  
撫でられただけで暴発しそうだった善吉は、なんとか間を保たそうと何か話題を考える。  
「あー、もう、この状況は諦める。ただ、なんで薬を直接飲ませなかったんですか?」  
確かに、善吉を拘束した現状、ハンバーグ製作の過程は二度手間になる。  
この疑問をくじらはあっさり回答。  
「バカ、“俺(彼女役)の手作り料理を食べて感激のあまり勃起した善吉(彼氏役)との行為”ってシチュエーションがいいんだろ?」  
「普通の男は彼女の手料理食べても勃起しねーよ!」「細けぇことはいいんだよ。ご開帳ー」  
最後の抵抗とばかりにじたばたする善吉の腰を抑えつけ、チャックを一気におろす。  
「“丹精こもったハンバーグのお礼に、俺のソーセージを食べさせてやるよ”。ヤダー、善吉くんたらオヤジギャグー」  
一人芝居をした後、くじらは不知火の様な大口で、善吉のモノを一飲み。  
「うぉッく!ダメだ!」  
柔らかい口に抱擁されただけで、あふれ出る大量の精液をくじらの喉に叩きつける。  
くじらは、突然の射精に驚き口を離す。  
喉に絡みつく精液にむせるくじらの顔に、勢い衰えず射精継続。  
 
「ハァーッ……ハァーッ……」  
今までにない射精に善吉の心拍数はあがり、息も乱れる。  
だが、善吉のモノは衰えることなくそびえ立つ。  
一息ついたくじらは、顔についた精液を艶めかしい手付きですくいとり、その手を丹念になめあげて見せた。  
善吉を挑発するように。  
薬を服用していなくても、健全な思春期男子なら思わず生唾を飲む妖艶な仕草だ。  
「もー、善吉くん超早漏ー☆」  
くじらは、再び手術台を横に倒した。  
 
「よっこらセックス」  
仰向けに横たわる善吉に背中を見せるように跨り、腰は上げたまま倒れこむ。  
シックスナインの態勢だ。  
善吉の目前には、誘惑するように左右に振る美脚美尻。  
アイスファイア時なのでタイツはなし。  
変わりに可愛らしい純白のパンティが善吉を釘付けにする。  
「邪魔くせぇな」  
先ほどまでの仕草とは一転、自分のパンティを力任せにはぎ取る。  
“ヤダ、優しくしてよー”と一人芝居をしながら。  
そんな少し引くような様を見せられても、善吉はただただ見惚れていた。  
今のくじらの一連の動作に一つツッコミを入れるべきだが、それすらせず、必死に顔をくじらの秘所に近付けようとする。  
くじらは決して腰を降ろさず、ギリギリの所で善吉の息吹きを感じていた。  
「いやん☆くすぐったいー。お返しだー、えいー」  
相変わらずの低テンションのまま、胸部の包帯を下げてたわわな果実を外気にさらし、両手で乳房を持ち上げ、善吉のバベルを包み込むように挟む。  
しかし、くじらの豊満なバストでさえ、薬によりデビルからサタンと化したモノを包みきることは出来ず、先端がはみ出す。  
「な、名瀬先輩……」  
切なそうに、懇願する様に呟いた善吉に、ニマァーッと少し不気味な笑みをあげる。  
「仕方ねーなー……えいっ☆」  
上げていた腰を降ろし、ついでにはみ出す亀頭を咥える。  
 
善吉は正に無我夢中でしゃぶりついた。  
周囲からじわじわだとか、一点集中だとか、ポイントを探ったりだとかすることもなく、野獣が獲物を食い散らかす様に貪った。  
激しくなめ回し、激しくなぶり、激しく吸い付き――  
くじらも呼応する様に、乳房で激しくこねくり、激しくなめ回し、激しく吸い付き――  
「んぁっ、んっ、むっ、うっ」  
善吉の激しい愛撫に、自然と口の端から声が漏れる。  
先ほど射精したばかりの善吉だが、到達は早かった。  
「ひゃんっ!」  
頬に精液を打ち付けられ、演技ではない素の嬌声が出る。  
 
そしてくじらは不機嫌そうに腰を上げ、善吉お預け状態。  
善吉は舌を必死に伸ばすが届かない。  
「なぁ善吉ちゃんよぉ、薬飲ませたのは俺だし我慢しろとは言わないけどよー、出す時は出すって言ってくんねーかなー?」  
「あ、あぁ……ごめん師匠……」  
“ったくょー”と不平を漏らしながらも、善吉のモノを再び咥える。  
またすぐイってもらってもつまらないので、くじらは丹念な愛撫に切り替えた。  
睾丸を揉み、竿を根元からなめあげ、カリ首を舌で一周し、尿道をほじる。  
だがそんな丁寧な攻めでも、ものの数分で――  
「師匠、名瀬先輩ぃ、また……」  
善吉は薬に関係なく、元来の早漏だったのかもしれない。  
 
その時、くじらの脳裏に閃光走るッ!  
悪魔的閃きッ!過負荷側と言われただけのことはある圧倒的閃きッ!  
くじらは不敵な笑みを浮かべた後、一転して激しく攻め立てる。  
善吉は歯を食い縛り苦悶の表情を浮かべる。  
「っく、っはッ!先輩すいませイッ――」  
善吉が到達する瞬間、  
「アイスファイア!!」  
「えぇっ!?」  
くじらが発すると、亀頭丸々氷に覆われた。  
「あうっ!」  
昇り詰めた精液は、氷に阻まれ逆流する。  
「痛ッ」  
尿道の付近が凍る痛みを知る者は、南極探索隊くらいなものだろう。  
「痛い痛い師匠これ勘弁!」  
これほど痛がるのはくじらも想定外だったが、狼狽はしない。  
「わりーわりー、今俺の膣熱(ヒート・ヴァージン)で溶かしてやんよ」  
起き上がり体を反転させ、体の前面を善吉に晒す。  
下から見上げるくじらの乳は圧巻だが、痛みに悶える善吉には、くじらの言葉すら届いていない。  
「じっとしろよ……こっちだって緊張してんだからよぉ……」  
善吉のモノをしっかりと持ち、秘所にあてがい、深呼吸一つ。  
そして、一気に根元まで挿入。  
「ひぃっ!ぐぅぅぅ……」  
氷の亀頭が子宮口から熱を奪おうとするが、逆に押し負け、徐々に融解する。  
拘束された善吉からは見えないが、挿入部から流れ出る液体には、愛液と水の他に、血液が混じっていた。  
 
黒神くじらは処女だった。  
 
くじらは、今まで味わってきた痛みを越える痛みに、仰け反り痙攣していた。  
こんなに痛いモノだったのかと、親友・古賀いたみの処女を奪った時のことが脳裏を過り、罪悪感を覚えた。  
 
痛い。正に死ぬほど。  
だが、その痛みを越える大きな充足感を、くじらは全身で感じていた。  
「満ィた、さ、れぇ、るゥ」  
裏声混じりに小さく漏らした。  
 
くじらとは逆に痛みの引いてきた善吉は、仰け反ったまま震えるくじらを不思議に思う。  
もっと激しく攻め立てられるくらいの想像はしていた。  
その時くじらの顔は上向きで、表情は窺えなかったが、頬を伝う液体を、善吉は確かに見た。  
「先、輩……?泣いて――」  
「よっしゃいくぞ善吉ぃ!」  
善吉の言葉を遮るように、前のめりになりながら言い、激しく腰を乱舞させ始めた。  
その様相に、さっきの液体は汗だったのだと、善吉は自己完結した。  
 
「はっ、くっ、やっ、がっ、あっあん、ひゃぁっ」  
くじらは惜し気もなく嬌声をあげ続ける。  
普段お目にかかれないくじらの姿に、善吉のモノは更に硬化する。  
「ぜんっ、きちぃ、ぜんきちぃっ!!」  
本人も意識しない内に善吉の名前を呼び続ける。  
拘束は相変わらずで派手には動かせないが、くじらの動きに善吉も呼吸を合わせる。  
「ひっ、はふん、やばっ、これやばいぃぃっ!」  
「くっ、さっき止められた分もあるからもう!」  
ガクガクと、激しく小刻みに善吉の腰が揺れる。  
「あっ、すげっ、まだデカ、あっ!」  
くじらももう限界に達してしまいそうだ。  
「名瀬!師匠!くじら!夭歌!先輩!」  
「善吉ぜんキちゼンきち古賀ちゃーーーん!!」  
善吉の精液は、子宮の一番奥にまで到達した。  
くじらは糸が切れた様に、パタンと善吉の胸板に倒れこむ。  
「へへっ……やるじゃねーか善吉……この俺をイカせるとは……見直したぜー……」  
善吉の頭に両手を回し、上目遣いで善吉を見上げる。「だがよー、まだまだこんなモンじゃないよなー?薬の効果が切れるまで遊ぼうぜー……」  
くじらは善吉の首筋に強く口付けした。  
「あのー……最後はっきり“古賀ちゃん”って……」  
「細けぇことはいいんだよ」  
誤魔化す様に、善吉の舌をなぶった。  
 
それからどれだけ時間がたったかわからない。  
少なくともお互い二桁は絶頂を味わっていた。  
くじらは善吉の頭に抱きつき何度もキスをして余韻に浸っている。  
善吉がいい加減拘束を解いてもらう様に頼もうとした時だった。  
 
プルル、プルル、プルル、コーリンッ!  
 
携帯電話の着信音、くじらのモノだ。  
「んだよー人が余韻を味わってるっつーのにー……もしもしぃ、誰だー」  
“あー、うん、はいはい”  
善吉の上で寝そべったまましばらく会話をしてると、くじらは急に起き上がった。  
「マジか、わかった直ぐ行くから直ぐ寄越せ。おぉ、じゃーなー」  
くじらは嬉しそうに電話を閉じた。  
「悪ィ善吉、急用、じゃ」  
制服やらタイツやらを引っ掴み、慌ただしく去っていくくじら。  
「――ッ!っておーい!!拘束解いてけよ!!」  
一人残された善吉の叫びが響く。  
 
 
その頃、地下三階の動物たちの世話に来た古賀いたみは、階下から走ってくるくじらに気付く。  
「あっ!名瀬ちゃーん!」  
しかし急いでいるくじらは古賀に気付かず、汗にまみれて走って行ってしまった。  
 
古賀は、しっかりと見てしまった。  
乱れた衣服に、太ももあたりに付着した血、頬を伝う液体(汗だが)。  
「名瀬……ちゃん……?」  
 
―第一部・完―  
 
 
 

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