中学2年生の秋。ある日の放課後、俺はクラスの男子何人かに囲まれていた。  
「何の用ですか?」  
常にクラスの皆とは違う雰囲気を出していた俺は、友達はおろか近寄ってくる者さえ居なかった。  
今思えば、それは周りがノーマルで、俺がマイナスだったからだろう。だが、そのときはマイナスという単語さえ意味が分からなかった。  
「お前さ、むかつくんだよ」  
リーダー格らしい男子が言う。そして次の瞬間俺を蹴ってきた。  
「がはっ!」  
すぐに殴る蹴るの、一方的なリンチが始まった。  
髪は乱れ、口の端は切れ、思考が定まらなくなってきた。  
 
――ビリッ――  
 
「っ!?」  
制服が破られ、上半身が外気にさらされる。何するんだと叫ぼうとすると、リーダー格の男子が髪を掴んで顔を近づけてきた。  
「よく見るとお前、可愛い顔してんじゃん。――おい、やれ」  
前半の気持ち悪い言葉に顔をしかめていると、リーダーが周りに命令した。  
「……! やめっ!!」  
これからされることの意味を理解して、相手を殴ろうとするが手を縛られる。  
「遊ぼうぜ、蛾ヶ丸ちゃん♪」  
 
「やぁ……やめて…いやだぁ……」  
もう時間の感覚はない。ただただ廻されてやられて、泣くことでしか抵抗ができない。  
「まだまだだって。ほら!」  
誰もが嬉しそうにしている。見ていて気持ち悪い。  
それからも俺は泣き叫び続けた。  
 
「殺してやる…お前等皆殺してやる!!」  
ことが終わり、憎しみがこもった目でそいつらを睨みつける。  
「俺らを? …はっ、ははっ! あはははっっ!!」  
その言葉にリーダ格が腹を抱えて笑いだした。  
「何が可笑しい!!」  
「いや、だってさー、俺んち有名な会社なんだぜ? 自分の貯金もかなりある」  
「だから何なんだよ!! 何で笑うんだ!!!」  
俺が泣きながら怒鳴ると、そいつは言った。  
「その金を使ってもっと人数増やせるんだぜ? それこそ、10人でも、100人でも。  
そんな大勢を、お前1人で何とかできるわけねえだろ?」  
「……あ……」  
現実に呆然とする俺を見て、そいつ等は立ち去るときに言い放った。  
「あ、そうそう。これから毎日放課後残れよ? 可愛がってあげるからさ♪」  
笑顔で言い立ち去ったそいつら。教室には俺一人だけが残されていた。  
 
それから3年後。高校2年生になった俺は自分を変えた。  
一人称も『私』に変え、とにかく周りのエリートを恨むようになった。  
エリートと聞くと、あいつ等を思い出してしまうから……  
そのうち、球磨川というマイナスにも会い、自分の安らぎを得た。  
そして――  
 
「『エリートは皆皆殺しにするべきだよ!』『ね! 蛾ヶ丸ちゃん!』」  
球磨川さんは笑って言う。  
ああ、そうだ。エリートなんて、皆、皆死ねばいい。  
「ええ」  
一度答えて、また言う。  
 
「偉そうな奴ってのは、誰に何されてもしょうがないですよねえ」  
 
 

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