箱庭学園にて、「トビウオ三人衆」の名前で知られる、喜界島、種子島、屋久島。  
彼らの中におったつ三本柱は「金・金・金」 世の中は金が全てという超現実主義者であった。  
しかし、実はそんな彼らの中にある絆は血縁・年齢・性別などの全てを超越したほどに硬いものなのである  
「すべてが金」と言い張る彼らを繋ぐものは何なのか。それは喜界島もがながまだ精神的に幼かったときに遡る-----  
 
喜界島もがなは、孤独であった。  
天涯孤独でこそないが、唯一の血縁である父は蒸発、母は父の残した借金を返済する為に倒れるなど、  
存在している分  近くにいなければ余計に寂しく感じるものであった。下手をすれば天涯孤独以上に。  
そして孤独である一番の原因は、友達がいないことであった。  
父親蒸発以前は普通の子並みにはいたし、普通の子並みには好かれていた。しかし、そんな中父親が蒸発し、  
借金が大量に残って母親は返済のために家にほとんど帰らないようになった。その寂しさをまぎらわす為に、  
その事に同情を受ける為に、その当時一番仲が良かった友達に話すと、話した数日後にはその子に避けられるようになっていた。  
聞いた話によると親に接触を止められ、近づくのを厳禁されたのだと言う。  
もちろんその話は学年全土に伝わり、ついにもがなに近づく者は0になった。小学4年生の事であった。  
 
業務的に仕方なく話す先生以外に、もがなはしゃべらなくなった。というより、しゃべれなかった。  
一日に2、3回話せば良い方、という生活が続き、ついにそのまま小学校を卒業し、中学一年生になった。  
 
同時に、母親が過労で倒れた。  
 
住んでいたボロアパートも追い出され、引き取ってくれる親戚も居ず、ついにもがなは施設に預けられた。  
渦巻く絶望の中、非情にも時は進んでいき、もがなの通っている中学校も衣替えの時期になった。  
もうもがなの目に光はなかった。ただ学校に行き、ただ帰るだけ。中学校に入って一度も笑ったことはなかった。  
が、その不幸に反比例してもがなは綺麗になっていった。  
もともと小学校の頃から可愛らしかったのだが、第二次性徴期を迎えた事で顔が引き締まり、「可愛いらしい」顔から  
「美人」な顔にだんだんランクアップしていったのであった。「寡黙な美人」という事で、徐々に学校に噂が広まっていった。  
 
そんなもがなを、男達が見逃すわけが無かった。  
 
もちろんもがなはそんな事に興味はなかったし、男や性についてどころか、すでに人間に対して興味もなくなっていた。  
だから告白も全て断ったし、話しかけられてもたいていは無視した。  
これで「寡黙」に「無愛想」が重なってしまった事により、ついに興味を持たれるようになってしまうのであった。  
不良たちに。  
 
もがなはいつも通りの道をいつも通りのペースでいつも通り何も考えないで通っていた。そして帰り道の中で比較的暗くて人通りの少ない道のとき。  
金髪の同じ学校であろう生徒に声をかけられた。首元に二年生のバッチが付いてる。  
もちろんいつも通り無視したが、今度はそうはいかなかった。  
「おい。ちょっと来いっつってんだろ」  
相手はしつこく食い下がってきた。うっとうしかったので、今日もがなは初めて声を出した。  
 
「いや」  
無愛想で無表情に淡々と言い放った。そしてそのまま帰ろうとすると…  
「待てよ」  
手首を捕まれた。振り払おうとしたが、予想以上に強かった為に動かすことすらままならなかった  
 
「離して」  
また無愛想で無表情に淡々と言い放った。すると相手は短気なようで、怒りで顔を歪めると、さらに握る力を強くした。  
「お前に拒否権なんかあるかよ。おい、もう出て来い」  
声を向ける顔を向けると、そこにはまた不良がいた。同じ金髪だが、意外とガタイが良く、身長は高かった。  
「抑えろ!」  
そう小さい不良が叫ぶと、大きい不良はもがなの脇と手の間に腕を突っ込み90度曲げ、身動きを取れないようにした  
 
「!  離し・・・っ!」  
声を出そうとすると口にガムテープが当てられた。ここまでかなりスムーズな動きで、まるで計画されたようであった。  
「やさしくしてやろうと思ったが、腹立つから一気にやってやっか」  
笑いながら小さい不良が言うと、もがなのスカートに手をかけた。慣れた手つきでスカートを取ると、もがなのパンツが露になった。  
 
「!!!」  
「・・・無地かよwまぁお前には似合ってんなw」  
もがなは久しぶりに感情を感じた。怒りでも焦りでもなく、恥ずかしさであった。  
少しパンツを見られて恥ずかしがるという女の子らしい感情をまだ持っていた事に驚きを感じた。  
だがそんな悠長な事は言ってられなかった。  
「そーらよっと!」  
一気にパンツを下ろされた。パンツどころか中身を、しかも知らない他人に見られるという恥ずかしさにもがなはやっと「焦り」を感じた  
 
「!!! ・・・!」  
本当に動きが取れない。足もほどよく押さえられていて、すこし振動させる程度が限界であった。  
「へへっ!綺麗な色してるじゃねーかよ!毛も疎らなのがいいなw それじゃ、いただこうかな!」  
そういいながら小さな不良はチャックからすでに大きくなっている性器を取り出した。  
「余興もねーから痛いかもってか痛いだろうが・・・まぁ自業自得ってことでwいっただきまーす!」  
小さな不良は前からもがなの腰に手をかけ、挿入する体制に入った  
 
「・・・!!!!!」  
何もすることができず、恐怖におびえることしかできないもがなを、小さな不良は満足そうな目で見ていた。  
そして、もがなの秘部と不良の性器が触れ合いそうになった瞬間・・・  
 
「ぶごっ!」  
大きな不良が声を上げて吹っ飛んだ。もがなも一緒に飛ばされそうになったが、腕をつかまれてバランスが崩れる程度に収まった。  
「・・・!誰だ!・・・ってお前らは・・・」  
 
「種子島!屋久島!」  
 
不気味な笑みを浮かべた二人が立っていた。  
「なにすんだよ!」  
小さな不良は二人に怒りをぶつけた。二人は動じずに  
「なにもしてねーよ」  
淡々と答えた。  
「んなわけあるk」  
ばこーん  
 
種子島のパンチによって大きな不良の近くに小さな不良は飛ばされた。  
「んなわけある」「よな?」  
「・・・っ!覚えてろよ!」  
 
二人の無言の脅迫により、不良二人は退散していった。  
あまりに一瞬の出来事でもがなには何がなんだか分からなかった。  
もがながたじろいでいると、二人はもがなにもがなのスカートとパンツを投げた。  
「1000円」  
もがなに服が到着すると同時に、種子島からの声が聞こえた。  
「助けてやった代1000円だ。犯されることを考えたら安いもんだろ?」  
もがなはとりあえずスカートを履き、そこからパンツを履くと、二人を不思議そうに眺めた。  
「まさか惜しむってんじゃねえだろうな?」  
種子島の鋭い目つきにもがなは一瞬心臓がヒヤっとしたが、冷静を装い、静かに答えた。  
 
「・・・そんなお金、ないよ」  
そう言うと種子島はさらに目つきを鋭くした。  
「んな訳あるかよ!今時の中学生でしかも女子なんて1000円ぐらい安いもんだろ!こちとらボランティアじゃねーんだよ」  
 
「金が世の中全てなんだよ!」  
 
普通に聞けば最低であるそのセリフに、もがなは強く心を打たれた。  
 
「おかねが・・・すべて?」  
「そう!金がすべて!金で解決できないことはないし、金で買えないものはない!何だって金だ!金!」  
今まできいてきたどんな綺麗事よりも正論に聞こえた。もがなにとっては疑いようのない正論であった  
が、興奮しかけている種子島にストップをかけたのは屋久島だった。  
「まぁまぁ、よく見ろよ。コイツ、1年の喜界島だぜ?」  
どうやら自分のことを知っているらしい。  
「!! ・・ん、なら今持ってるわきゃねえか。おい喜界島!また取り立てにくるからな!」  
「俺はお前と同じ中学の、三年三組屋久島。コイツは二年一組種子島。まとまった金ができたら渡しに来い。見逃しはしないからな。」  
そういって二人は去っていった。自分の名前を聞いた瞬間引き下がるということは、年上の人にまで自分の境遇が伝わっているということを  
この時思い知った。が、そこはどうでも良かった。彼らは冗談でもなんでもなく、本当に渡しに「助けてもらった代」を求めてきた。  
彼らに少し、興味を持った。  
 
次の日、登校するが、あの二人は見えなかった。一応、施設に落ちていた300円を拾ったので渡そうと思ったが、  
まぁいないなら仕方ないと諦めた。  
授業が始まり、終わり、始まり、終わりを繰り返し、ホームルームを終え、また同じルートで帰路についているときであった。  
すると、最悪がそこには待っていた。  
「よう、喜界島。」  
昨日の不良二人・・・に加え、追加に二人、大きい不良よりさらに大きい不良が待っていた。  
「ありゃお前の彼氏かなんかなのか?・・・見たところ今はいないようだし、今度こそヤらせてもらうぜ」  
もがなは走りだした。まさか二日連続同じ場所で彼等がいるとは思ってなかったからだ。  
「・・・逃げれると思うなよ」  
小さい不良は速かった。全力のもがなにほんの10秒ほどで追いついた  
またもがなの手をがっしり捕まえた。後ろからゆっくり不良三人も近づいてくる。  
「なぁw今度こそ楽しもうぜw」  
今度は、「恐怖」も感じた。  
後ろの不良が追いついた。これで完璧に四対一。もがなは動くことすらできなかった。  
それどころか  
「・・・?はっ!ははっ!見ろよコイツ!漏らしてやがんぜ!」  
恐怖に耐え切れず、放尿してしまっていた。  
股に感じる生暖かさを感じながらも、これからの恐怖の寒さを感じていると・・・  
 
「がふっ!?」  
小さな不良が吹っ飛んだ。またもがなは引っ張られてバランスを崩す程度で収まった。  
「・・・ってーな!   あ!またお前等か!種子島!屋久島!邪魔すんな!」  
短気な不良はキレながら叫んだ。  
「そりゃあこっちのセリフだ。代金回収しようとしてんのに邪魔すんじゃねえよ」  
屋久島がニヤけながら答えた。  
「あ、ありがとう・・・」  
もがなは、小学校以来久しぶりに礼を言った。が、二人とも眉ひとつ動かさなかった。  
「500円追加だ」  
それどころか、「助けてやった代」の上乗せをしてきた  
「500円追加で助けてやる」  
自信満々の笑みでそう答えた。  
「ふざけんな!この二人はなぁ、柔道・空手をそれぞれやってんだ!しかも段位とってんだぜ!」  
こっちも自信満々だった  
「いけっ!やっちまぇ!」  
猛進する二人。なかなかの勢いだ。だが・・・  
 
「・・・払う」  
 
ゴッ  
 
次の瞬間には二人とも地面に倒されていた。柔道・空手の経験者が素人に一発でやられた瞬間だった。  
「我流に負けてる程度じゃ、たいしたことねえんだな」  
慣れているというより慣れ極めたという感じだった。実に無駄のない動きで綺麗にカウンターしていた。  
「・・・覚えてろよ!おい!行くぞ!」  
彼等不良はセリフも何もかもが小物だった。小物らしく背を向けて逃げていった。  
それに比べ種子島、屋久島は  
「これで昨日の分もあわせて1500円だ!きっちり耳そろえて払いやがれ!」  
セリフこそ小物だったが、何故かもがなには大きく見えた。が、既に昨日の事の整理と  
さっきの出来事の整理はすんでおり、彼等も落ち着いた今はしっかり「男」であるとしっかり認識していた。  
「・・・300円でいいならとりあえず」  
いつもの調子でぶっきらぼうに渡すと、その場を去ろうとした。やはり、その二人も怖かったのであった。  
「おっ あるんじゃねえかよw ま、とりあえずあと1200円な」  
二人はうれしそうに小銭を眺めていた。・・・そんなに金欠なんだろうか  
興味より今いる「男」に対する恐怖心が勝り、結局何も言わずその場を走って立ち去った。パンツは濡れたままだった  
 
こんな事がありながらも何故かもがなは毎日同じルートを帰った。毎日襲われた。毎日助けられた。  
何故か、そうしなければいけない衝動に毎日駆られた。あの二人に助けてほしかったのかもしれない。  
だけど、2回助けてもらっても、3回助けてもらっても、彼に対する恐怖心さえ一行に消えてはいなかった。  
ちなみに、すでに「助けてもらった代」は4000円を超えていた。そしてついに不良はこなくなった。  
そんなある日、もがなの教室に二人が来た。  
1人でご飯を食べていたもがなにとって、もうすでに気にする目もなかったが、やはり注目を浴びるのは嫌だった  
 
「・・・何かよう?」  
この時、もがなは無愛想でも無表情でもなく、ただぶっきらぼうに答えた。  
そして、教室が静まり返った。もがなは気づいていないが、教室で彼女が感情のこもった声を出すのは初めてだったのだ  
そして、二人を見るときだけは、いい意味でも悪い意味でも光が少しだけともっているようだった。  
「なんか用、じゃねえよ。さすがに4000円も貯められちゃこっちとしても商売あがったりなんでね」  
相変わらずお金にはしつこかった。ちなみに300円以降払えていない。  
 
「だって、ないんだもん。仕方ないよ。」  
ないものは、しかたない。  
だってないんだもん。  
「理由になってねーよ! だから、お前にゃ体で返してもらうことにした!」  
教室がまた静まり返った。「白昼から売春発言!?」「なんかエロい!」などの声がたくさんあがった。  
が、種子島は気にせず続けた。  
「お前競泳部入れよ!」  
 
「・・・・・・・・・・・・・は?」  
もがなにいろいろな疑問が浮かんだ。  
きょうえいぶ?なんか一緒に泳ぐとかそんな感じのこと?あ、競泳か  
てかそんな部活あったっけ?  
体で返してもらうってことは、働くんだろうけど・・・どうやって?  
「だから競泳部!きょ・う・え・い・ぶ!俺等二人しかいないんだけど、ってか十分だけど!」  
二人?そんなんで部活が成り立つんだろうか?  
「お前に逃げられちゃ敵わんからな!見張れてなお返済してもらえんなら願ったり叶ったりのポジションだわ!」  
「んまぁ要約して説明すると、お前俺等の部活でアルバイトしろ」  
えーと・・・ 部活でバイト?  
もうホントに清清しいぐらい疑問しか浮かばなかったが、体が勝手に反応した  
 
「いいよ」  
「よし、そうと決まればとりあえずこれ書け」  
「飯食うぞ」  
「アルバイトの説明するぞ」  
そこから展開が速すぎてもがなの脳が付いていけなかったが、要約すると競泳部の主な活動は、  
地域の祭りや大会での賞金ゲットや、八百長をして金をもらう等の「勝つ」ためでなく  
「稼ぐ」ための部活であること、もがなの役目は鍛えて速くなって相手から八百長依頼がくるほどになって、  
その金で支払いをしろ、との事だった。  
「じゃあ、とりあえず放課後待ってるからな」  
一通りもがなに説明すると屋久島種子島は帰っていった。何故かもがなは行かなければならない気がした。  
 
〜そして放課後〜   
競泳部の部室に向かってみると、まだ鍵が開いていなかった。どうやら二人ともいないようだった。  
とりあえず部屋の前で座り込んでいると、1人の体育教師が目の前を通った。  
・・・と思ったら、もがなの前で止まった  
「・・・君が、喜界島もがなかい?」  
 
「そうですけど?」  
「初めまして、顧問の五島だ。たしか今日付けで競泳部に入ったんだろ?」  
 
「はい、そうですけど?」  
相変わらずあの二人以外には無愛想で無表情だった。  
「・・・やっぱあの二人が他人を入れるなんて、すごいなんか変な感じするなぁ〜・・・」  
何かもがなはピンときた。顧問のこの話がどうしても気になった。  
 
「あの、あの二人って何かあるんですか?なんか、とてつもない不良とか・・・?」  
「あぁ、いや、とんでもない。それどころか屋久島くんについては模範生だよ。」  
「僕が言ってるのはね、彼等のこれまでの事だ」  
あの二人の・・・これまで?  
すごいそそられる話題だった。もがなはその話に食いつかずにはいられなかった。  
「あの、その話。教えていただけますか?」  
「・・・あぁ、別に隠してる訳でもないらしいから別にそんなかしこまらなくていいよ。実は、彼等はね・・・」  
 
五島先生にもがながこの日聞いたことはものすごく衝撃的だった。  
二人とももがなと同等、それ以上の境遇や待遇をうけて、今の金銭絶対主義になったこと。  
彼等は自分達以外、そして五島ですらもマトモには信じないこと。そして関係すら持たないことなどなど・・・  
つまり、彼等は学校の中でも二人だけで孤立した存在だということを聞かされた。  
まぁ結論がそうなだけであって、決して五島の言い方は嫌味チックではなかった。  
「君も、聞くところによるとすごいみたいだね。彼等なりの同情、って奴なのかな?」  
かれらが、自分に情を向けている。情を向けている。もがなの中でそれだけがループした。  
「それじゃ、先生はもう行くな。」  
先生が行くのも気にかけずに考えていた。今まで、母親以外に見てくれる人がいなかった私を、知り合った  
ばかりのあの人たちが真に気にかけてくれている・・・  
それが、なんとも言えないもどかしさになっていた。もどかしすぎるほどに。  
だからもがなは。  
 
「結論は、二人をしばらく見てからでも遅くないよね」  
考えない事にした。  
 
しばらくすると二人が来た。何やら息と服が少し乱れている。息も荒い。まさか・・・  
「てめぇ嫌な事考えてんじゃねえぞ気持ち悪い」  
「それは俺のセリフだ。種子島お前しばらく俺に寄るな」  
それから二人はしばらく罵り合った。そして、落ち着いたあたりに屋久島が一言。  
「体育の後だったんだ。」  
そんなに急いで来たんだ、と驚きながらも表情には出さなかった。  
「じゃ、入れよ。詳しく説明するから。」  
この時点で、すでに二人に対する評価はかなり代わりつつあった。彼等はもがなの中で「男」ではなく  
「屋久島『先輩』」「種子島『先輩』」という位置づけになっていた。ギリギリ。  
 
-------------------------  
 
「んじゃま、説明はこれぐらいにして、明日な。水着もって来いよ。」  
一通り八百長の手順とか教わったもがなは何故かwktkしていた。手順を聞くだけでもお金がかなり入りそうだったからだ。  
「ま、そろそろ暗くなりそうだし、帰るか。」  
屋久島の提案に賛同し、部室を出、校門で別れた---  
かと思いきや、何故か二人とも付いてきた。  
 
「・・・どうしたんですか」  
「いや、別に。こっちから帰っちゃ悪いのか?」  
「いや別にそうじゃないですけど」  
「嫌なら4000円すぐ払え」  
「嫌です」  
「じゃ払え」  
「いやその嫌じゃなくて」  
嫌のゲシュタルト崩壊寸前。  
もがなは、二人が自分を気遣って付いてきてくれているとそこでやっと気づいた。  
なら余計に申し訳なくて、引き離れたかったけど二人の視線が厳しくて無理だった。  
 
「じゃあな、喜界島。水着。水着。水着。ちゃんと言ったからな」  
「はいはい」  
二人とは施設の前で別れた。確か二人もどっかの施設住まいだったと思うけど。  
ここから一番近い施設でも10kmはあるはずだ。歩くにしてはなかなか遠い。  
「もう帰るわ。また明日な。」  
夕日を背景に歩く彼等がなんとなく大きく見えた。  
夜になって布団に入っても、彼等のことを思い出した。彼らのことを思い出すと、もがなにまたひとつ感情が浮かんだ。  
学校に行くのが「楽しみ」だという感情が。  
 
次の日の朝、彼等は朝から施設の前にいた。  
「・・・どうしたの?」  
「伝え忘れてたんでな。朝練。」  
「・・・朝練?」  
もがなには新鮮な響きだった。  
「そ。朝練。早くお前には速くなってもらわんと困るからな。」  
「水着は持ってきたんだろうな?」  
二人が予想以上に真面目な事にビックリした。ホントにビックリして、驚愕が表情に出てしまっていた。それにまたビックリ。  
だがそんな事は構わなかった。  
「うん!」  
 
 
 
「・・・確かに水着もって来いとは言ったよ?」  
「うん。で、持ってきて着たよ」  
「うん。まぁ本来ならここからスタートって訳なんだが・・・」  
「な ん で ス ク 水 な ん だ」  
着替えてプールでもがなと対面した二人は唖然としていた。  
もがなはスクール水着を着用していたのである。しかも胸には「4-2」の文字が。  
「だってこれしか持って無いもん」  
「いやな、スク水はいいんだけどさ・・・」  
種子島でさえ直視できなかった。なんというか、スタイルもよく、バストの成長も著しいもがなに3年も前のスク水を着せるのは、  
それはそれは官能的だった。ていうかエロス抜群。  
「入学のときに買わなかったのかよ」  
「丁度お母さん倒れたから制服ぐらいしか間に合わなかった。」  
「・・・すまん」  
また少しもがなは驚いた。母が倒れた話だけで二人が恐縮するとは思わなかったからだ。とりあえずこの空気を払拭しようと思った。  
「いいよ別に。それよりさ、こないだ言ってたやつ教えてよ」  
「ん?あぁ、いいよ。とりあえずお前は体操してプールに入れ」  
話を終えるや否や二人はプールへ飛び込んでいった。そこでもがなに疑問が浮かんだ。  
「え?二人はもう体操したの?」  
「いんや。でも俺等はしなくてもいーの。お前は真似すんなよ」  
その謎の自信が今回は怪しかった。が、まぁ釣るのは自分ではないのでとりあえず一通り体操をすましてからプールへ入った  
「ひゃあ」  
「無表情のくせに変な声だしてんじゃねーよ」  
ホントに変な声だった。何故自分で出したのかもわからない。  
「じゃあ教えるぞ・・・」  
二人の説明は短くも簡単でわかりやすかった。全ての方法を教わった後、それを実行するための練習を1時間弱やった。  
 
 
「ふぅ〜。疲れた」  
「ハッ!まだまだこんなもんじゃねえよ」  
チャイムが鳴ったので終了、ということで屋久島と種子島はプールから上がっていた。  
もがなは少し疲れていたのでゆっくりプールサイドに向かっていた。  
「ほらよ」  
種子島に手を差し伸べられた。  
「あんだけ動いたんだ、まぁあがるのに手間取って遅刻してもアレだしな」  
屋久島も手を差し出した。  
「・・・ありがと」  
もがなは少し照れた。そして二人の手をつかみ、一気にプールから上がった。  
「!?」  
その瞬間二人が焦りだした。目を横に向けた。  
「・・・?」  
急に目を逸らされてもがなも不審に感じていた。そして何かあったのかと焦りも感じた。  
「どうしたの?私どこか変?」  
不安そうな声で尋ねられて耐えきれなくなったのか、屋久島がゆっくり口を開いた。  
「・・・胸見えてる」  
 
「え?・・・きゃああああああああああああ!!!」  
今のあがった勢いで取れたのだろうか?もがなはすぐに手で隠した。  
「・・・見た?」  
「・・・そらな」  
しかし、もがなは別の疑問を感じていた。なぜなら、二人は自分の犯される寸前を見ているのだ。いまさら胸をみたところで、  
二人にとってはどうってことはないと思ったからだ。  
あと、自分がまた恥じらっている事にも気がついた。が、とりあえずそのことはおいて置いた。  
 
「なんで照れてるの?」  
「・・・そりゃおめえ、なぁ?」  
「・・ああ」  
「助けてくれたとき一度見てるでしょ?」  
「・・・あんときゃハッキリ見てねえってか見ないようにしてたんだよ」  
「あ、そうなんだ」  
疑問は意外と早く解決した。意外とシャイな二人であった。  
 
「と、とりあえず見たのワリーがただの事故なんだ。忘れて速く行かないと遅刻すんぞ」  
「う、うん」  
 
その後、ぎくしゃくしながらも三人はそれぞれの更衣室で着替え、それぞれの教室に向かって行った  
そして午前中授業を終えた昼休み、二人はまたもがなの元へきた。今度は本格的な稼ぎ方の話に入っていた。  
昼休みが終わり、午後の授業も終わって部活の時間になったもがなは部室に行った。開いていなかった。  
しばらくすると二人がきた。また服が乱れて息も乱れてる。また想像したがまた怒られた。  
「最近は激しい動きをする体育なんだ」そうだ。  
その後、あとはほとんど朝と変わらぬことをした。時間の余裕があったのでゆっくり時間をかけてやり、7時ごろには終えた。  
二人はまた帰り道付いてきた。ついでに帰り道にあるスポーツ用具店に連れて行かれ、水着を買ってもらった。  
「4000円に3500円上乗せ」らしい  
 
微妙な変化はあるが、毎日がこんな感じだった。  
朝一緒に登校→朝練→一緒に昼飯→部活→一緒に帰宅と、とにかく授業以外は一緒にいた。  
部活前に服を乱してくるのも変わらなかった。  
 
もがなはいつのまにか二人に敬語を使わなくなっていたことに気がついた。二人の前でよく笑うようになったことにも気がついた。  
いつしかもがなは、あの二人を中心に中学校生活を考えるようになった。  
 
「♪〜」  
放課後は機嫌がよく、1人であってもニヤけていた。クラスの皆ももがなの変化に気づいていたが、屋久島種子島が怖く、声がかけられなかった。  
(さて、今日も行こうかな)  
機嫌よくカバンを持ち上げ、教室を出て行こうとした。  
「お、喜界島」  
すると、顧問の五島に声をかけられた。  
この時点ですでにもがなにとってはあの二人ほどでは無いにせよ、「親しい関係」の枠組みに入ってしまっているうちの1人である。  
「すまんな、ちょっとこれを職員室に持っていってくれんか」  
そういいながら手渡されたのはカバンだった。五島の手を見ると何やら色んな機材があって、よく持てているな、という状況だった。  
「これを体育館に運ぶんだがさすがにこのカバンがあるとやりづらくてな」  
「いいですよ」  
「ん、すまんな」  
五島からカバンを受けとった。意外と重く、もがなは両手で支えなくてはいけなかった。  
「それじゃ、行きますね」  
「おう、ありがとな」  
そうしてもがなは歩き出した。やっぱりカバンは重く、職員室への道のりは意外と遠そうだった。  
 
そうしてしばらく歩いていると、3年らしき教室から声が聞こえてきた。  
「-----っつってんだろ」  
種子島の声だった。  
(あ、いるなら今日ぐらいは一緒に行こうかな)  
教室に入ろうとした。すると、見たくもないものを見てしまった  
 
 
 
(この間の、不良・・・!)  
そう、もがなを強姦寸前まで追い詰めたあの不良たちであった。  
しかも前一緒にいた人に加え、さらに数倍もの人数に膨れ上がっていた。  
(二人は何をしてるの・・・?)  
嫌な考えが浮かんだ。だが、その考えは一気に消されることになる。  
「もうアイツにかかわんなっつってんだろ!!」  
種子島の真剣な怒号によって。  
「るっせーな!もうちょっと静かに叫べや!」  
無茶な提案であった。  
「そろそろあきらめたらどうだ?お前等もそこまで執拗する必要もないだろ?」  
屋久島が静かに答えた。  
「へっwてめーらこそそろそろあきらめろや。見ての通り、昨日の二倍だ。さすがにヤベぇって思ってんだろ?逃げたらいいじゃねえか」  
(昨日・・・?)  
もがなの中でなにかが引っ掛かった。  
「数なんてカンケーねーんだよ!」  
種子島がまた叫ぶ  
「なんだお前ら、なんでそこまでアイツを守るんだ?体売られてんのか?w」  
「アイツ」というのが自分であるということを薄々もがなは理解した。  
「んなワケねーだろが!」  
さらに、もがなの中で全てが繋がっていく。  
「じゃあ何だってアイツ襲うのをテメーらが止めるんだよ!!?」  
もがなは涙が止まらなかった  
「金もらってんだよ!!!ワリーか!?」  
もちろん、そんな金など一度も払ったことはない。払ったのはあの300円っきりだ。  
「あぁ!?どんだけかよ!?じゃあそれ以上の金やるからこっち付けや!」  
「お前らの端金で払えるもんじゃない」  
屋久島が静かで怒りの籠った声で答えた。  
「・・・お前らがアイツを狙う理由はなんだ。一応聞いといてやる」  
「ハっ!そうやって拒絶されるもんは手に入れたいタチでなwあとあんなエロいボディ、前々から抱いてみたいとおもってたんだよ!ワリーか!?」  
「明らかにワリーっすよ!兄貴!へへっっ!」  
「・・・もう手加減はなしだ!」  
屋久島の大きく怒りの籠った声が聞こえた。  
「上等だよ!行け!お前ら!」  
「「おう!」」  
 
そこからは大惨劇だった。おもに相手が。  
クラスに詰まるほどいた不良たちは種子島、屋久島の二人に5分ほどで半分にされた。  
残る半分怯えて襲ってこないやらなんやらで隅のほうで固まっていた。  
そして種子島屋久島は倒した不良に加減なく蹴りを浴びせ、しばらくは残るであろう傷を残していった。  
もがなは二人に守られていたのだった。今まで二人の服が乱れていたのはこの為だったのか、と深く考えこまされた。  
「オラ!テメーらさっさと行けや!・・・チッ!武器でもなんでも使ってやりゃいいだろうが!」  
そういった瞬間不良たちは「その手があったか!」といわんばかりの顔で掃除用具をつかんだりいろんなものを掴んだ  
「ゴタゴタ言わずにさっさと来いやぁ!」  
 
またさらに大惨劇だった。おもに相手が。  
武器をもった不良たちも武器を使う暇もなくやられ、武器を奪われ、遠慮なく蹴られ傷を残され・・・  
種子島たちもボロボロになりながらも、ついに残るは3人となった。前の柔道空手コンビと最初からいた大きいほうの不良であった  
「うらぁ!」  
そこからも一瞬だった。種子島が襲いかかったと思うと蹴りで空手がやられ、やられている内に屋久島に殴りで柔道がやられ、うろたえている内に大きいほうの不良が殴り蹴りでやられた。  
「ごふぁ」  
アフターケアも忘れなかった  
「・・・はぁ・・・あのチビは?」  
よく見るとあのボスチックな小さい不良がいなかった。もがなは涙目になりながらよく見ると、うまいこと二人の死角に小さい不良が入り込んでいた。よく見ると手に何か持っている  
もがなは走りだしていた。  
「しねや!」  
両手にスタンガンを持っていた。  
「・・・っ!しまっ・・!」  
既に遅かった。が・・・  
「ごふっ」  
もがなのナイスキックが炸裂、二人の眼にもがなのパンツが炸裂した。  
「・・なんでお前がいるんだ」  
種子島は悔しそうなようで呆気にとられた声で尋ねた  
「・・・たまたま」  
もがなは笑いながら答えた。それを境に三人は沈黙を迎え、屋久島が噴き出したのをきっかけに三人で爆笑しだした。  
が、そんな中、空気を読まずに不良が声を挙げた  
「・・・ふん!テメーら、引き上げんぞ!」  
不良たちはみんなヨロヨロながらも起き上がろうとした  
「逃がすと思ってんのか・・・?」  
「へっ!今にがさねーとしらねーぜ!今度は何連れてくるかわかったもんじゃねーぜ!」  
「何連れてきたってカンケーねーよ」  
「・・あの施設がどうなってもいいのかな?w」  
「・・・っ!卑怯な!」  
「今考えたらこの手を最初っから使っとけば良かったんだよなぁwwそうだそうだ!今、選ばせてやる!ここでソイツを俺にレイプさせるか、お前らの施設をつぶしまわるか、どっちがいい?w」  
「・・・!クソがっ!」  
最悪の笑みでそう言い放った不良は、完全に勝ち組のつもりでいた。もがなはそこで、一瞬で覚悟を決めた。  
「・・・私が行けばどうにかなるんでしょ?」  
「なっ!もがな、黙ってろ!」  
屋久島が声を荒げた。  
「おっほっwwwわかってんじゃねえかwwww」  
気持ち悪い笑みで不良はさらに笑いあげた  
「最高だ!やっぱ力以外で何かを支配するときほど気持ちいいもんはなi」  
 
 
「はーいそこまでー」  
「!?」  
何かの声によって遮られた。  
「てめ・・・五島!」  
不良の顔は一気に歪んだ。苦笑いに。  
「今の、先生はちゃんと録音させてもらったぞ。警察に持っていけば十分対応してもらえるレベルだな!」  
右手にはICレコーダーがあった。  
「るせーよ!その程度じゃ警察も動かねーしな!」  
散々同様しながらも五島に不良は言い放った。  
「・・・ふーん。じゃぁ、先生も奥の手使わしてもらうな。お前、確か中学出たら久留米組入るんだってな。」  
いままでにない冷たい声で五島は言い放った。  
「あぁ!?ワリーかよ!?進路に文句言うほどてめーもエラくねーだろ!」  
だんだん不良が強気になってきた。  
「いーや、別にいいとは思うよ。でもなー先生、お前に知っててもらいたいことがあってな?お前、俺のおじいちゃんの名前知ってる?」  
五島に二度と見られないであろう冷酷な笑みが映った。  
「しらねーよ!誰が知ってんだよそんなの!」  
「じゃあ教えてやろう。釣瓶って名前なんだ。変な名前だろう?」  
「!?」  
その名前を聞いたとたん、不良は慌てて走り出した!  
「ももももももうテメーらにはかかわんねえよ!かかかか感謝しやがれ!」  
すばらしいスピードで走り去って行った。  
 
 
 
「・・・なんで先生が」  
「いやー だってお前遅いんだもん(笑)」  
いつもの五島の笑みでこたえた。  
「ん、もう手も空いたし荷物自分で持って行くわ。じゃあな、早く部活やれよ。」  
こうして久留米組5代目組長、久留米釣瓶の孫は去って行った。  
 
 
「きのうまでおたのしみでしたね」  
「・・・るせーな。勝手に俺らの喧嘩見てんじゃねえよ」  
「まぁ、俺らが独断でやった事だ。気にかけたりすんなよ。」  
二人はもがなと目を合わせなかった。  
「でも二人に守ってもらえるほど私お金払ってないよ?」  
もがなは意地悪な笑みで尋ねた。  
「これから払ってもらうんだよ!しばらく返せると思うなよ!」  
「まぁ、10万とかそのへんのレベルだと思わない事だな。」  
そんな事をいう二人にもがなはさらに話を続けた。  
「二人ともボロボロじゃん。」  
「・・・っるせーな」  
「お前も目真っ赤だよ」  
もがなも自分で気づいていた。なんか目が痛かった。  
「・・ふふっ」  
もがなは小さく笑った。  
「なんだ気持ちワリーな」  
もがなを見ずにいった。そんな二人に、もがなは悪戯せずにはいられなかった。  
二人に近づいて、もがなは二人の頬に軽くキスをした。  
「っ!」  
「っ!」  
 
 
「二人とも、ありがとぉっ!」  
 
 

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