蝉の鳴く日差しのキツい夏休みの屋上。  
こんなに簡単に入れるこの学園はどことなく放置主義的なところがある。  
こんな日に学校にくるやつなんて、よっぽどの物好きだろうなぁ…あひゃひゃ☆  
 
「不知火!いるか?」  
 
少し錆付いたドアノブが、重苦しい音をたてながら回った。  
淡い扉の向こうからは、息を切らしながら携帯を片手にやってきた親友の顔。  
連絡すればいつでも来てくれるのは素直に嬉しい。  
 
「人吉ぃ、トレーニングはかどってる?」  
「いや、いつもやってることの繰り返しだよ」  
 
敵になった今でもこうして会ってくれる...ほんと、甘ったるいやつだ。  
不思議な顔してこっちを見てる、いかにも何のようだって聞きたげに。  
まぁ、用事なんて何もない。強いて言うなら会いたかっただけだけど、それじゃ...今日もお約束のを言わなきゃ。  
「まぁ座りなよ、一緒にご飯食べよう」  
もっとこっちに来てよ人吉…あたしは一緒にいたいんだ。  
今日はね…お弁当持ってきたんだよ。  
さあ、食べよう食べよう。  
 
「お?弁当持参とは珍しいな」  
 
朝からつまみ食い我慢して作ったんだ。  
ちょっと眠いけどそんなこと言ってられない、本番はこれから。  
 
「不知火、自分の分どうした?」  
「...あたしはもう食べちゃったよー」  
 
人吉の性格は知ってる、さあ言って。  
 
「よだれ出てるぞ。無理すんな、コレ二人で食べようぜ」  
 
やっぱり、人吉は単純だ。でもそこが大好きでたまらない。  
 
隣に座るあたしの口には、人吉の唾液がついた箸が近づく。  
思わずあたしは箸をかじってしまった。  
 
「コラッ、割り箸ごと食うなよ」  
 
風に乗って人吉のにおいが香る。  
恥ずかしくて顔を隠そうと床についていた手を動かしたとき、人吉の体に触れてしまった。  
人吉がどうしたと顔を覗き込んでくる。  
馬鹿、見るな。振り向いた瞬間、人吉の唇がかすめた。  
人吉も驚き、顔を赤く染めた。  
最初はあった心の余裕がなくなっていることに気づき、あたしは余計に恥ずかしかった。  
 
「うお!し、不知火、…ごめん!」  
 
人吉が後ろに下がったときを見逃さなかった。  
この状態なら、あたしでも男一人を押し倒すくらいはできる。  
人吉を押し倒し、胸板に顔を埋めて思いっきり呼吸をした。  
こいつったらドキドキしてる、あたしもだけどそれには気付いてないみたいだ。  
目を閉じたまま、人吉の唇を奪う。  
ファーストキスはすでに黒神取られちゃったけど、それ以上は絶対に渡さない。  
そのまま人吉の耳元で囁いた。  
 
「……人吉…あたし…もっともっと……仲良くなりたい」  
 
あたしは自分の股間が濡れているのを確かめると、急いで人吉のおちんちんを取り出した。  
かたくて熱くて、とっても愛らしい。  
人吉がパニックを起こしているうちに、早く早くはやく。  
下着をずらし、肉棒を押し当て一気に腰を下ろした。  
大好きな人が体内に入ってくる。頭の中までビリビリしびれる。  
心と体が物凄く満たされていく。  
初めての感覚に、あたしはしばらく動けなかった。  
困惑する人吉の顔を見下ろし、ほほえんだ。  
気持ちいい…人吉の鼓動を体で感じる。  
脈がどんどん速くなって、びくびくと痙攣している。  
 
「不知火…やめてくれ!俺はお前のこと…」  
 
幸福が一瞬で現実に引き戻される。  
なんで?どうしてそんなこと言うの?  
 
「いったいどうしたんだよ?今日は変だぞ!」  
 
全身から血の気が引いていく。  
足がガクガクと振るえだし、呼吸が荒くなった。  
処女をささげたというのに、それでも人吉の中には黒神が居続けているのか。  
そう考えると視界がぼやけてきて、頭の後ろの方に鈍痛が走った。  
声が出なくて、どうしたらいいかわからない。  
すると、人吉が頭を撫でてくれた。  
 
「ごめん人吉……腰抜けちゃった……」  
 
人吉は体を起こそうとしたけど、すぐまた床に倒れた。  
さっき押し倒したときに背中を痛めて起き上がれないらしい。  
つながったまま、しばらく二人で顔を見合わせる。  
人吉は何も言わなかったけど、それでもおちんちんがかたいままだった。  
私はもう一度キスをしてみると、人吉は避けなかった。  
徐々に足の力が戻る。  
顔を涙で濡らしながら、腰を動かした。  
 
くちゅ…くちゅ……ずぷっ……ずりゅ  
 
ふと、人吉の両手が背中に回り、ぐっと引き寄せてくる。  
私も人吉に抱きつき返すと、激しく脈を打たれた。  
お腹のなかで、あたたかいものが流れてくる。  
気持ちよすぎてよだれがとまらない。  
そのまま、気を失うように眠ってしまった。  
 
 
 
 
目を覚ますと、少し薄暗くなっていた。  
人吉のジャケットがかけられている。  
急いで見回すと、人吉は隣に居てくれていた。  
 
「大丈夫か?」  
 
そう聞いてきた人吉に答えようとしたけど、先にお腹が鳴ってしまった。  
いつもなら気にしない音が、今回ばかりはとても恥ずかしい。  
二人でクスクスと笑うと、人吉が体を起こしてくれた。  
帰りは二人で手をつないでご飯を食べにいった。  
蝉の鳴く日差しのキツい夏休みの屋上。  
淡い扉が音をたて、少し錆付いたドアノブの鍵は閉まった。  
今日のことは二人だけの秘密。  
あたしは絶対に黒神には負けない。  
 
 
 

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