私にとって善吉くんは初めての男の子だった  
今まで出会ってきた男の子は私を見るなり避けずんだような目で私を罵り、誰も私と触れ合おうとしなかった  
学芸会でフォークダンスを踊ったときも、私一人がぽつんと立っていた  
そんな『過負荷』な生活を『普通』と感じるようになったある日、私は初めて手を差し延べられた  
 
「……、かえ……、え……、かえ……、江迎!」  
「ふぇっ!?」  
完全に一人歩きしていた思考が止まり、ようやく江迎は現実への帰還を果たした  
「な……、何? 善吉くん」  
「いや、この螺子外してくれよ」  
「え? あ、うん。 そうだよね。 外さないと(最後まで)出来ないよね」  
「あぁ、(帰ることが)出来ねぇからさ。 頼む」  
「うん、分かった。 じっとしててね善吉くん」  
螺子へと手を伸ばしかけて……、ハッと思い出したように手を止める  
後ろを振り返る  
そう、江迎は自称善吉の恋人である以前に−十三組の一員である  
クラスのリーダーである球磨川の許可無しでこれはいけない  
勿論、善吉をこのままにするなど論外だ  
だが……、球磨川の逆鱗に触れればもう二度と善吉とは逢えないかもしれない  
それが何よりも江迎には苦痛だった  
許可が欲しい……、そう思った矢先、部屋の入口から手が伸び、1枚の文字がかかれた画用紙が見える  
画用紙を掴む手には学ランが纏わり付いていた  
カンペのつもりだろうか、画用紙には『OK。 ヤっちゃって』と描かれている  
そのカンペは幸か不幸か善吉の目には入らない  
「あああ……、球磨川さんが応援してくれてる……。 外すね、善吉くん」  
ようやく手を伸ばし、善吉の螺子に触れた  
触れた先から螺子が腐食し、落ちていく  
「あら? 善吉くんって私の能力見るの初めてかしら? 私の能力は触れたものを腐食させるの。 危ないから触っちゃダメよ。 もちろん凄く私は残念なんだよ」  
本当に恐るべき能力だが、今はこの上なく役に立つ能力だと善吉は思う  
全ての螺子が溶け、善吉はようやく球磨川の戒めから解放された  
「助かった……、ありがとう江迎。 じゃ、またな」  
「じゃ、またな?」  
「じゃ……、またな……」  
「じゃ、またな?」  
「…………」  
今度の蹴りは全力を遥かに越えた蹴りだった  
あの勢いで蹴ればもしかすると地下を揺らすどころか破壊することすら可能かもしれない  
会心の蹴りで江迎を倒し、出口へ向かおうとする……、その刹那  
背後から来る黒い怨念のようなものが善吉の足を止めた  
恐る恐る振り返ると、ボロボロになりながら立ち上がる江迎の姿があった  
 
「くっ……!」  
「痛いよぉ、善吉くん……。 あぁ、痛い……」  
「江迎ぇ……」  
「善吉くん……、どうしてなのぉ……? 私はただ、ただただ愛してるだけなのにぃ……」  
悲痛な顔に涙を浮かべる江迎  
その様子は善吉の目にはとても普通に見えた  
そうだ、江迎はただ愛を語っただけのハズである  
ちょっと過剰で、ちょっと常識外れの愛を語ったに過ぎない  
それを一方的に拒んだのは善吉だ  
確かに江迎の愛は相手の気持ちを無視した一方通行な愛だろう  
だが、だから何だ  
善吉がめだかに抱く愛情も相手の気持ちを理解していない一方通行な愛ではなかろうか?  
一方通行な愛とは片思いの他ならない  
ただ、善吉と江迎の違いは表現しているかしていないかだ  
しかも、表現しなくては伝わらない  
そういう意味では江迎の方がよっぽど普通ではないかと善吉は思える  
「ねぇ、善吉くん……?」  
「江迎……」  
そう思うと心が揺れた  
今、善吉の目に映るのは自分への真っ直ぐな愛を投げかける美少女なのだ  
「江迎……。 手以外で腐食の力を持つ場所は無いんだな?」  
「え……? うん、そうだよ。 さっきキスしたって腐らなかったでしょ?」  
「わかった。 それだけ分かれば良い。 目を閉じてろ怒江」  
 
目を閉じた江迎の唇に柔らかい感触が訪れる  
江迎の思考が過去を遡り、この感覚を見付け、そして全てを……、受け入れられたことを気付くのにとても長い時間を要した  
それほど江迎にとっては喜ばしいことだった  
決して激しくはなく、ただ甘く優しい善吉のキスに江迎は酔う  
そのまま善吉は江迎を後ろ倒しにする  
無機質な床で江迎が傷付かないよう、優しく抱き留めるように頭と背中を両手で庇った  
善吉は唇を離す  
「良いんだな? 怒江。 俺は優しく出来ないかもしれないし、お前を芯から受け止められないかもしれないぞ?」  
「わた、私は。 全然構わないよ善吉くん。 ありがとう……、善吉くん」  
 
善吉は江迎の服を丁寧に脱がせていく  
袖口が手に触れないよう、細心の注意を払ってその服を剥ぎ取る  
ブラのホックを外すと豊満な胸が姿を現した  
「善吉くん……、興奮する?」  
「大きさはまぁまぁだけど……、綺麗だよ怒江」  
「大きさのくだりは余計だよ? 一応私自信あるのに……」  
「悪ぃ悪ぃ」  
善吉が2つの実に手を伸ばす  
手が触れただけで江迎には絶頂に近い刺激が走った  
「あぁ……、あっ、ふぁん……」  
「お、おい……? 触っただけだぞ……?」  
「イ……、イイもん……、善吉くんの手ってだけで……、はぁ……、それだけでイっちゃいそうなぐらいイイもん……」  
「怒江……」  
善吉の中で「触っただけでイきそうなぐらいなら激しくしたらどうなるのだろう」……、試したいという欲望が芽生える  
試したい……、この『普通』の少女がどうよがるのか試したい  
欲望に任せ、善吉はその乳首を片手で抓り、もう片方の乳首に歯を立てた  
 
「ひゃあ……っ! あ、あぅぅ……、あぁぁんっ!」  
その瞬間、江迎が迎えたのは絶頂であった  
びくびくと身体を跳ねさせ、暴れて快楽を逃がそうとする  
だが、善吉がしっかり抑えているので江迎はその快感を全身で、全て受け止めねばならなかった  
「ひゃうう……、はぁ……」  
「ホントにイっちまった……。 む、怒江……?」  
「はぁ、はぁ、はぁぁ……、気持ちイイよ善吉くぅん。 もっと……、もっと頂戴。 善吉くん……、私にもっと気持ちイイを頂戴」  
無言で、頷くことすらせずに善吉はその指を怒江の秘所に這わせた  
可愛いげのある、フワフワした下着は体液を染み込んで本来の柔らかみを失っていた  
下着の上から、ただ這わせているだけなのに小気味良い水音が響く  
下着の上から、ただ這わせているだけなのに怒江はぴくぴくと可愛らしい反応を示す  
恥じらいと快楽に耐える怒江は善吉を煽るのには充分過ぎた  
(これが3時間前まであんなに気持ち悪かった怒江か……? いや、元々可愛い女の子だもんな)  
改めて善吉はその身の毛もよだつアプローチを拒み続け、江迎を傷付けたことを後悔した  
この少女はこんなにも愛おしく、愛らしいのに  
「はぁ、善吉くん……、指が優しい……、好きぃ……」  
喘ぎ声の中にも善吉への愛の言葉が混ざっている  
それほどにまで強烈な善吉への愛なのだろう  
江迎の手は善吉を抱きしめたくて、でも出来なくて中をさ迷うばかりだった  
 
前戯もいよいよ最終段階を迎えた  
江迎はひそかに近付きつつある幸福の時を待ちわび、善吉の指から奏でられる愛を受け止めていた  
強すぎる快楽で見落としていたが、その指はいつの間にか下着を潜り体内へと入り込んでいた  
もうすでに迎えた絶頂の数は計り知れない  
小さな絶頂を含めればそれこそ無数だろう  
常に江迎の身体はびくびくと跳ねていた  
「怒江……、もう引き返せねぇぞ……。 最後に聞く。 良いんだな?」  
「何でわざわざそんなこと聞くの? 私は善吉くんと一つになれるのをずっと待ってたんだよ? 善吉くん、早くぅ……」  
「分かった、いくぞ……!」  
ズボンから取り出した自身を江迎に宛てがうと善吉はその腰を少しずつ埋めていった  
 
ゆっくりと、優しく  
その優しさを感じ取った江迎の心はもはや『過負荷』のものではなかった  
しばらく進むと抵抗を感じた  
弱く、頼りない抵抗だと善吉は思った  
これを打ち破れば江迎は何か変わるかもしれないと善吉は思う  
やすやすと破り去り、善吉は最深部へと行き着いた  
「くうっ……!」  
「大丈夫か……? 怒江……」  
「あ、当たり前だよ善吉くん……! こんな痛み、愛があれば何とも無いから」  
江迎はそういうが、無理をしているのは明白だ  
江迎が痛みかは解き放たれるまで善吉は動けない  
「ね、善吉くん……。 なら……、キスをして……。 キスしてくれたら大丈夫だから……」  
「あ、あぁ」  
ちゅっ、と触れ合うだけのキス  
だが、江迎はそれだけで力が抜け、トロンとした虚な表情を浮かべた  
「来て、善吉くん」  
「あぁ、行くぞ怒江!」  
グッと腰を引き、ズンと押し込む  
「はぁ−−−−−ッ!」  
巨大な熱い衝撃に叩かれ、江迎は胸に溜まった空気を全て吐き出した  
それと同時に身体を内側から引き裂くような強烈な快感を感じた  
「あっ、あっ、あっ、あああぅぅぅぅ!」  
抱き着けないならせめて、と江迎は脚を善吉の腰に絡める  
もはや善吉に酔いきった江迎は善吉の腰を感じる度に絶頂を迎える  
その度に締め付けられ、善吉にも限界が訪れていた  
「あぁ、善吉くんがぁ……、びくびくいってる……。 出そうなんでしょ? 出して善吉くん……。 今日は危険日だから……、3人子供作るなら今から1人目作っても遅くないよね? ふぁ、ああぁ、ひぃぃぃん! だ、出してパパァァァァ!」  
「く、おおお……」  
そうして、最後は2人で果てた……  
 
ジーッと回り続けるカメラ  
球磨川はとても満足そうにカメラを止めた  
「ふ……、ふふふ……」  
こちらもまた何度も絶頂を迎えさせられた瞳がいた  
瞳は不適に笑う  
「『どうかしましたか? 人吉先生♪』」  
「球磨川くん……、あなた善吉の『異常』に気付いてるかしらん? まぁ、私も憶測に過ぎないけど私の憶測が正しければ……」  
「『怒江ちゃんはもう駒としては使えませんね』」  
「……!」  
「『イヤだなぁ、憧れの人に追い付こうと僕なりに彼について考えただけですよ。 ま、それが正しいかは僕も確証が持てませんが』」  
「……、だったら何で……?」  
「『だってー、今日は本屋でエロ本買う予定だったんですよ? でも、人吉先生にフラれたから仕方なくエロビデオを作ったんです。 でも、良い役者が居ないでしょ? だから怒江ちゃん(捨て駒)を使ったんです♪』」  
球磨川は冷たく、残虐で、この世で最も醜い笑みを浮かべた  
「『その結果良いのが撮れましたよ。 善吉ちゃんと怒江ちゃんの濃厚な絡み。 BGMに人吉先生の喘ぎ声。 世の中に出しても売れそうですね。 早速今夜から使いますね♪』」  
その後、夕飯の食材を買いにスーパーに立ち寄った喜界島はティッシュを6箱くらい上機嫌で買う球磨川を目撃したという  
 

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