「これは酷い。全治三ヶ月かのぉ」  
 めだかが雲仙から受けた傷を診て医師がくだした判断は全治三ヶ月と重いものだった。  
「すまぬが一週間、みんなで学園を守ってくれ。私もすぐに戻る」  
 しかし、医師の言葉など関係ないとめだかが発っした言葉は一週間で治すと言ったものだった。  
「キミは一週間で退院するつもりかね!? 無理だよ! 最低でも二ヶ月は入院をして安静だ!」  
「それでは、一週間よろしくな」  
「人の話しを聞いてくれ! 君達も友達だろう! この子がいかに無茶を言っているか・・・・・・」  
「了解」  
「お任せあれ」  
「頑張る」  
 しかし、その場に医師の味方は誰一人としていなかったのだった・・・・・・  
「・・・・・・本当に怪我が一週間で治ったら退院を認めよう。ただし、一週間は絶対安静だ」  
 妥協するしか無かった医師は最低限の条件を言った。それにめだかは満足そうに頷くのだった。  
 
 さて、めだかがいなくてもめだかボックスへの投書は止まらないし、生徒会の仕事も勿論あるのだ。  
 生徒会の面子もめだか程ではないが十分優秀なので普通なら一週間程度問題はないだろう……普通なら。  
 
「しかし、めだかちゃんはすげえよな。俺ら三人でヒィヒィ言ってる仕事量をあっという間にこなしちまうんだから」  
「ああ。さすがめだかさんだ」  
 などと駄弁りながら仕事している野郎共と違いもがなは黙々と書類に目を通していると思いきや、手が全く動いていない。  
(黒神さんいないし、これはもしかして、人吉君とキスで仲良し計画のチャンスなんじゃ!)  
 などと考えているもがなの目には阿久根のことなど全く写ってなかった。哀れ阿久根。  
「それじゃ投書の依頼へ行ってくる」  
 そういい阿久根は生徒会室から出て行った。  
 
(チャンスッ!!!)  
「さて、めだかちゃんが帰ってくるまで頑張りますか」  
「う、うん。頑張ろう」  
 自然に会話できたことに安堵したもがな。  
「ね、ねぇ! 私、君と仲良くなりたい!」  
 普通に言えたっぽいが実際は凄く噛んでいるのであしからず。  
「えっと、昔に比べたら結構仲良しだと」  
「でも、まだキスしてないし・・・・・・」  
 仲良し=キスするという思考回路はめだかちゃんだけで十分。そう思った善吉であった。  
「えっとな、別に仲良しでもキスしない関係はあるぞ。めだかちゃんが特別なだけで」  
「うるさい! キスするぞ!」  
(話し聞いてくれよ・・・・・・)  
「それとも・・・・・・私とキスするの、嫌?」  
 涙目の上目遣い。人吉善吉。名前の通りお人好しである彼は決してノーとは言えない。  
「あのな・・・・・・そういうのじゃなくてな。異性するのと同姓とするのとは違うんじゃないかと思うわけで」  
「きっとキスするればそんなこと気にならなくなる程仲良くなれる!」  
 そういい善吉にタックルするもがな。そのまま善吉を押し倒す。  
「考え直せ! ちゃんと俺とお前は仲良しだから!」  
「それじゃキスしよう!」  
「結局そうなるんか!」  
 唇を近づけようとするもがな。それを阻止する善吉。しばらくその攻防を続けるともがなが唇を近づけようとするのをやめた。諦めたかともがなの顔を覗き込むと・・・・・・  
「ヒック……ウゥ・・・・・・そんなに……ヒック……私とキスするのが……ウック・・・・・・嫌なの?」  
 ……泣いていた。善吉の胸元に零れ落ちる滴。もがなは顔をくしゃくしゃにして号泣していた。  
「私のこと嫌い? 私は・・・・・・人吉の……ヒック……こと……ウック・・・・・・大好き、だよ……」  
 罪悪感で押し潰されそうになる善吉。  
「あのな……俺もお前のことは好きだぞ。ただ、それとキスするのは別問題で・・・・・・」  
「……今、なんて?」  
「えっ? それとキスするのは別問題で」  
「その前!」  
「俺もお前のことは好きだぞって」  
「……わっ、私もっ! 人吉のこと好きだ! 大好きだ!」  
 そのままもがなは顔を近づけた。善吉は油断していたので避けるのが遅れて……  
「・・・・・・んっ」  
「……んー!!!!」  
 ・・・・・・どこからかズキュゥゥゥンなどと聞こえそうな感じで二人の唇が重なった。  
 
「ひっとよしくーん! コンビニで新商品漁りにいこー・・・・・・何してるの?」  
 お約束としてこういう時は大体誰かが入ってくるものだが・・・・・・運悪く入ってきたのは弱みを握られたくない人bPの不知火半袖さんであった。  
「ひはいひま! はなへろ」(喜界島! 離れろ!)  
「んっ、はへひい。ほんなにひたふごかははいへ」(んっ、激しい。そんなに舌動かさないで)  
 善吉の呼びかけ届かず。しかし、舌まで入れているとは・・・・・・喜界島もがな、おそろしい娘っ!  
「ひっとよしくーん♪」  
 語尾に音符まで付けて、ゴキゲンッスね半袖さん。などと言えればどれほどよかっただろう。善吉には最早絶望しかなかった。  
「へっ! ひらふいはん!」(えっ! 不知火さん!)  
 ここに来て半袖に気づいた。遅すぎますよもがなさん・・・・・・しかも気づいてなお口を離さないんですね貴方。  
「喜界島さん。そろそろ口離したら? 人吉くん苦しそうだよ」  
 きゅぽんという謎の擬音と発しながら言う不知火。もがなは慌てて唇を離す。  
「だ、大丈夫?」  
「一応」  
「ならもう一回」  
「やめい!」  
 羞恥心というものがないのだろうかと思う善吉。まあ、そんなこと考えている暇があるなら・・・・・・  
「それじゃ、説明してくれる?」  
 ・・・・・・この場をいかに切り抜けるかを考えたらどうかと思いますが。  
「ハハハハハハ」  
 乾いた笑いと共に、今日の財布を中身を思い出す善吉だった。  
 
【めだか退院まで後6日】  
 
続く?  
 
 
 
おまけ  
 
(人吉とキスした……でも……黒神さんとした時と違って……なんか胸が凄く熱くて、ドキドキしてる……なんだろうこれ?)  
 まだまだ精神面で子供なもがなさん。そのドキドキの正体知った時彼女はどうするのでしょうか? それはきっと……波乱の幕開けになるのかもしれません。  
 

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