箱庭学園に黒神めだか在り。
生徒会長就任直後から、そう言われるまでのネームバリューが既について回っていためだか。
それ故か、目安箱を設置してしばらくは冷やかし目的の投書も少なからずあった。
しかし剣道部の一件でその徹底に徹底を重ねる実態が知れ渡ってからは、イタズラ投書は減っていった。
残ったのは、純粋な投書のみ。
純粋なる請願と、
純粋なる悪意である。
密室で、下卑た笑みをたたえる全裸の男衆に包囲されれば、今回の投書は後者だったことは明白だ。
しかし黒神めだかは、そんなことに思いを巡らせはしない。何故かというと、
「悪いな会長さん。でも、困ってるってのは本当だぜ?」
「うむ! 私も貴様達の抱える悩みを微塵も疑ってはいない」
黒神めだかは人間が大好きだからだ。
「性欲を持て余し、紙面でとはいえ他人に処理を頼むのはさぞ勇気が要ったことだろう。
だが、案ずるな。体が健全であることを恥じる必要などない! 少なくとも私は蔑まない!
貴様達は何も悪くはない。ただ、手段と目的がわからなくなっているだけなのだ」
めだかにとって全人類は家族だ。家族のためなら、自分の身を投げ出すことに躊躇わない。
その度合いは、既に異常の域。故に頼めば股くらい開いてくれるだろうと男達は投書したのだが。
「ただし、予め言っておくが…… 処 女 は や れ ん 」
凛っ!とした宣言に、男たちは失望を見せることなく、むしろ色めき立った。
あの生徒会長といえど所詮は女、処女をこんなことで捨てるのは嫌と見える。
それでいい。抵抗してもらわないと犯り甲斐がないというものだ。
「では私に飛び込んでくるがいい、童貞諸君!」
「「「「「決め付けるなぁぁぁぁぁぁぁ!」」」」」
無自覚の挑発に、上下ともにいきりたった童貞(仮定)たちがめだかに飛び掛る。
手段とはめだかを組み伏せること。目的とはその上でめだかの処女を奪うこと。
無論、なすすべくもなく蹂躙されるめだかではない。
羞恥も躊躇もなく、めだかは両手で自らに殺到する無数のペニスのうち2本を握る。
シュッ。
「うっ!?」「おふっ!」
一擦り。
たったそれだけの動作で、絶頂に達した2本は白い反吐を撒き散らして萎縮した。
あまりの早業に、つい動きを止めてしまう男たち。全裸で。
「やはり、両の手だけというのは効率が悪いな」
制服の裾に手をかけたと思った次の瞬間、その服は勢いよくパージされていた。
ついに露になる、まさに完璧な黒神めだかの裸身。それでもニーソックスは穿いたままというフェティッシュな姿。
「じっくりねっとり相手をしたいが、善吉に5分だけと言われている。体すべてを使って、貴様達をヌかせてやろう!」
再び火の点いた男たちは、前にも増した勢いでめだかに突進をかけた。
その後もめだかは両手の他にも、あるときは脚、
「素足の方が良かったか?」「ひぎぃ!」
あるときは胸、
「根元から包み込んでやろう」「イグッ!」
あるときは腋で、次々と処理していった。
「二の腕の感触は乳房と同じらしいぞ?」「あったかいナリィ!」
ペニスからペニスへと、その美しい肢体を躍動させるめだか。
凛として揺れるおっぱい。
おっぴろげられる凛としたお股。
それを見ているだけで、暴発してしまう者が続出した。
次々と使い物にならなくなる砲身。このまま全滅か――そう思われたとき、事態を打開する者が現れた。
「よし! 後ろを取ったぞ!」
「む……」
後ろから羽交い絞めにされ、加勢した別の男に柔らかな両の太ももを持ち上げられる。
さながらテディベアのようなポーズをとらされるめだか。
「もらったああああああああああああああ!」
おいでませと言わんばかりのめだかの姿を好機と見て、正面突破をはかる。
危機感を抱いている様子はないが、めだかの処女もこれまでか――
と、思う者は、まだまだ黒神めだかという人物を知らない。
「はっ!」
めだかは最低限の動作で、腹筋で下半身を持ち上げ、腰の位置を僅かにずらす。
正門を目指していたはずのイチモツが突っ込んだのは、後門の方であった。
「け、ケツだと……!?」
ぎゅっ。
「締まるぅぅぅぅぅ!」
後ろといえどようやく突入できた一本槍も、腸内に精液を吐き出し、あっさりと果ててしまった。
白濁液を滴らせながら、めだかの菊門から力なく抜け落ちる。連動するように本体もふにゃりと崩れ落ちた。
「おい、五秒もかからなかったぞ……」
「アナルであれだ、マンコはもっと具合がいいに違いねえ」
幸い、羽交い絞めの状態は保たれている。やるなら今しかない、とめだかに殺到する男達。
「ここからが正念場。がんばるぞ、私!」
そう鼓舞して、めだかがまず取り掛かったのは前方、斜め右前、斜め左前から向かってくる3本。
正面から来る1本を両足で止める、そのついでに残りの2本を膝の裏に挟む。
シュッ。ぎゅっ。
「「「ぬふぅ!!」」」
その3つをイカせる間にも、めだかは動いていた。
自分を後ろから羽交い絞めにしている者と、下から両脚を持ち上げている者に狙いを定めたのである。
前者のムスコは尻の谷間に挟み込み、後者のムスコは腰を落としアナルへとインサートさせる。
むにっ。ぎゅっ。
「「ンギモッヂィ!」」
その間にも、我慢できなくなった者たちが操られるように髪で男根を擦り始め、勝手にリタイアしていった。
そして、立っているのはもはや1人。
「残るは貴様だけか。待たせて済まなかったな、お詫びにとっておきでヌかせてやる!」
「ひっ――」
弾丸のように突っ込んでくるめだかに、もはや欲情などしない。覚えるのは、圧倒的な畏怖のみ。
だが萎える暇さえも与えず、めだかはそそり立ったままのペニスにむしゃぶりついた。
じゅるっ。
「吸っちゃらめえええええええ!」
ビクンビクンと痙攣しながら、溜めていた精液を出す――いや、搾り取られる最後の男。
「……ぷはっ」
奔流をすべて受け止め、息継ぎのために口を離す。支えを失った男はゆっくりと倒れていった。
ちなみに、フェラがとっておきだったのは多人数を相手にするとき口でするのはとても効率が悪いからだ。
めだかがおクチでするのを特別好きなわけではないことを断っておく。
「そろそろ5分か」
投書してきた、悩める家族たちを見回す。誰も彼もが賢者の表情で横たわっているのみだ。
「もう持て余している者はいないようだな」
男が一度抜いてから回復するまでには時間がかかる。5分以内で復活は無理な話だ。
「さて……そろそろ失礼する。次の投書が待っているのでな」
その凛とした捨て台詞を聞いている者はいなかった。
顔こそ穏やかでも、体としては死屍累々。
その山に、頭を掻きながら近寄る男がいた。人吉善吉である。
「一応言っておくと……あー、前の方でしなかったのはめだかちゃんなりの優しさであってだな」
戻って来いと言っておきながら一部始終を眺めていたのは、アフターケアのため。
めだかへの、ではない。完膚なきまでに抜かれてしまう依頼人たちへのだ。ショックでインポになりかねない。
「童貞は本当に好き合っている相手と捨てるべきだと、そう考えているわけで……」
言っていて虚しくなってくる善吉である。なぜ、俺はこんなことをクソ真面目に解説している。
「まあそういうわけなんで……これで懲りずに、まともに彼女でも作ってくれ」
喋る間にも、用意してきたリアカーで男たちの移送を遂行する。
人気のない場所といえど、全裸で白濁液まみれのところを万一風紀委員に見つかったらただでは済まない。
不知火に撮影されて弱みを握られるのも同様である。いずれもめだかの望むところではない。
「だったら最初から、こんな投書引き受けなきゃいいだろうが」
この手の投書は善吉が事後処理を手馴れてしまうほどには回数をこなしてしまっている。
めだかに、自分を安売りして欲しくない善吉にとっては気が気でない。
そんな幼なじみの呟きに、めだかは不満そうに眉根を寄せた。
「そうはいくまい。溜まりすぎて暴走する前に、正しく導いてやらないとな」
「童貞も処女も好きあっている者同士に捧げるべきだ、ってか」
「まさしくそうだ。それに、」
「ちゃんと操は立てているつもりだぞ、善吉」
(終)