今日は冷える。外の気温はマイナスに達するほどの域にあるみたいだ。  
人吉君に振られてから早半月。私はひとり図書館にいた。もちろん、会計としての仕事に必要な資料を図書室からお借りするためだ。  
「はぁ〜…」  
あれだけキレイに人吉君に振ってもらったとはいえ、やはり心にダメージは残る。そんな簡単に吹っ切れるなら過負荷なんてやってない。  
そう思いながらも本棚に手を伸ばし、あれじゃないこれじゃないと資料を探して回る。目当ての本を探すだけなら図書委員さんにでも聞けばいいんだけど、この所私は出来る限り1人で居たかった。  
「うーん…やっぱり見つからないな」  
しかし物思いにふけながら探し物をしても上手くいくはずがなく、私の欲しい資料は全く持って見つからない。むしろここが何の本棚かわからなくなってしまったぐらいだ。  
どうやら前回会計を務めた喜界島さんは、そういった資料の位置は全て把握していたようで、そのへん特別との核の違いを見せ付けられる。まぁお金への執着が生み出せる所業である部分もあるんだろうけど…  
「えーと…あ、あった。」  
探し始めて20分。やっと目的の資料を見つけることが出来た。箱庭学園の図書館は十二町さんがたった1人で管理しているにも関わらず、夥しいほどの数の本が納められていたため、図書委員さんの力を借りず本を探すのはとても難しい。  
見つかったこと自体はありがたい。しかしひとつ障壁が…  
「…はしごないかな」  
見つけた本は私の身長の二倍もあろうかというところに佇んでいた。というかこの学園、無駄に天井高くない?  
幸い、本の下端であれば背伸びすれば届きそうではあったので、私はとりあえず手を伸ばしてみることにする。  
「んー…」  
しかしその算段は甘かったようで、あと一歩というところで私の指は届かない。無理な姿勢をしているがために私の足はプルプル震える。  
「ふんっ」  
さらに力んでみるが、それで身長が伸びるなら全国のちびっ子は大歓喜だ。  
届かない。悔しいけど本気で届かない。もう1人でいたいとか言ってられないよね…  
そうして一人で本を取ることを諦め、図書委員さんを呼ぶことを決意した私は手を降ろし、浮かしたかかとを地面に落とした。その時だった。  
「これでいいのかい?」  
という落ち着いた声と共に、私の頭上に長い剪定ハサミが現れた。剪定ハサミ?  
そう思っている私の手に剪定ハサミからひょい、と資料が乗せられる。どうやら剪定ハサミの先っぽは丸くしてあるようで、切れ味は0と言っていいほど無い。そのため資料は全く傷ついていない。  
「あ、ありがとうございます」  
そういいながら私が振り返ると、そこには人吉君のお友達にして「十三組の十三人」と呼ばれるエリート集団の1人、宗像形先輩がいらっしゃった。  
顔を合わせるのは昨年末の人吉君の祝勝会以来で、何気に1対1で対面するのは初めてだったりする。  
私が少し頭を下げてお礼をすると、宗像先輩は改めて話題を振ってきた。  
「久しぶりだね。元気だったかい?」  
「あ、はい。おかげさまで。先輩、今日はどうかしたんですか?」  
「ん、まぁこれといって用事があったわけではないんだけどね。暇だから時間つぶしに居たって感じかな」  
「あ、そうなんですか。」  
とりあえず他愛もない会話を少し交わす。  
あまり会話したことがないので、実は宗像先輩の事はほとんど知らなかったりする。球磨川さんから伝え聞いた話では殺人衝動があったらしんだけど…その辺は触れるべくもなく。  
「どうやら君は生徒会の業務中のようだね。役に立てたようで何よりだ。生徒会はうまく行ってるかい?」  
「はい!おかげさまで」  
そう私が返すと宗像先輩は少し微笑み返してくれる。人吉君には「年下にはすげー優しいぜ。ロリコン?」と聞いていたので改めてそれを実感する。  
そして改めて、こうして宗像先輩に触れてみて球磨川先輩を殺したというのは信じられなくなってしまっていた。いかにも普通で、異常たる要素は私の目ではひとつも捉えることができなかったからだ。  
剪定ハサミ除く。  
「おっと、それじゃ必要以上に邪魔するべくもあるまいね。それじゃ、頑張ってね」  
「はい。資料をとっていただいてどうもありがとうございました」  
「いや、気にしないでくれ」  
そういうと先輩は私に背を向けて座席のほうへ戻っていく…エリートらしい整った足並みで戻っていくが、その手には「殺しの哲学」だの「初対面の人と仲良く接する方法」だのと宗像先輩とは縁の遠そうな本が見えた。  
まぁそんな事は気にするとこでもないと踏んだ私は、そこで図書室を後にすることにした。  
それにしても宗像先輩、なんとなく安らぐなぁ。球磨川さんが過負荷に近いようで遠い存在とか言ってたけど、やっぱり近いんじゃないかなぁ。  
 
江迎さんに本をとってあげた次の日。また江迎さんは図書室に来た。  
僕がこんなにも図書館にいるのは、登校義務が免除されているのからだ。免除されているがゆえに暇で、そのもてあました暇つぶしに図書室で役に立ちそうな本を読みにきている。  
それも一日中。  
以前の僕だったら、こんな人が何度も行き交うような場所は殺しを我慢できる自信が無くて来れなかったけど…  
江迎さんはずっとキョロキョロしている。昨日はたまたま、江迎さんが取れそうにない本を僕が取れそうだったので取ってあげたが、今日はそうでもないようだ。  
何度も何度も本棚を往復しているところからして、たぶん探している本が見つからないんだろう。  
何度も図書館を行き来している僕は、ある程度本の位置について知っている自信があったので、知っていれば江迎さんに教えてあげようと話しかけてみることにした。  
「どうしたんだい?」  
「えっ!あ、宗像先輩。どうも昨日はありがとうございました」  
過負荷には珍しく礼儀は欠かない江迎さん。いやむしろそのめちゃくちゃさ加減が過負荷の過負荷たる由縁なのかも知れない。  
「いやいや。で、今日はどうしたんだい?」  
「あ、困ってるように見えちゃいましたか。すみません、実は…」  
かくかくしかじかと江迎さん。  
どうやら江迎さんは昨日とおなじく生徒会のための資料を探しにきているようだ。  
 
まぁ案の定、僕はその資料の位置を知っていた。記憶力にはある程度自信がある。  
「あ、それね…それなら知ってるよ」  
「本当ですか!?教えていただけますでしょうか?」  
「いいよ。ついておいで。」  
頭を下げる江迎さんを連れて僕はその資料の位置まで歩き始めた。  
2人分の足音だけが静かに響く  
「もうそろそろ生徒会の仕事には慣れたかい?」  
なんとなく無言で歩くのも無愛想すぎる気がしたので、江迎さんに少し話しかけてみる。  
江迎さんも少し笑顔になって僕の質問に答えてくれる。  
「はい。ただまぁまだ上手くいかないところは多いですけどね」  
「始めのうちは仕方ないさ。やっていくうちに出来るようになるよ」  
「はい。ありがとうございます」  
江迎さんは笑顔を崩さない。あれ、本当にこの子過負荷の一員なんだろうか。  
「ここだ。ついたよ。」  
僕は足を止めると本棚を指さす。その先にはちょうど江迎さんが探していた「参考文献」はどっしりと収まっていた。その数20巻。  
「うわ。多いですね。あ、ご案内ありがとうございました」  
そういうと江迎さんはきっちり頭を下げる。その時に少し良い香りがした。やっぱり女の子はたいがい匂いをつけてるもんなんだね。  
「いや、構わないよ。また何か見つからないものがあったら言ってみてくれ」  
「はい!あ、いやはいじゃなくて…はい」  
堂々と助けを仰ぐ返事をしてしまった事に引け目を感じてしまったのか江迎さんは一度遠慮した。でもその後訂正したのがなんとなくおかしくて、僕達は少し笑いあった。  
 
その後僕は一度、江迎さんに別れを告げたあと最初の位置に戻ると本を読み直し始めた。最近は人吉くん以外の友達を作ってみるために対人関係の本を読んでいるが、どうも理解できない部分は多い。  
友達と接するときは武器を持って接してはいけません。脅しによる友達は真の友達といえないのですから…だって?そんな馬鹿な。  
そうこう読んでいるうちに恋人のページにも接することになる。別に彼女がいるわけでもないけど、最近人吉君にも婚約者が出来たことだし全くの無関係というわけでもない。読んでおいて損は無いだろう。  
その1、気になる人に接近するときは武器を持って臨んではいけません。状況によっては犯罪になります…だって?さっきからなんだか状況がピンポイントすぎる気がする  
しかし案外、内容は真面目なものであったので僕は集中してその本を読み始めた。こうやって集中している時間はあまり嫌いじゃない。  
「あのー…」  
背筋を伸ばして読みふけっていると、突然後ろから声が聞こえた。聞き覚えがある声だ。  
「さっきはありがとうございました。となり、いいですか?」  
やはり江迎さんだ。接近に気付かないほど集中していたのかな…それとも江迎さんの体運びが素晴らしいのか。  
「あぁ、別に構わないよ」  
「ありがとうございます」  
そういうと江迎さんはスカートを手でおさえて座る。しかし、誰も(ついでに言うなら何故か図書委員も)いないんだからもっと広いところに座れば良いのに  
そうして江迎さんは一度笑顔で会釈するとさっきの資料を持って仕事を始めた。  
 
僕は意に介すことなく読書の続きに戻る。そんなこんなで、10分ぐらい僕のページをめくる音と江迎さんのペンの音のみが図書館に響き渡ることとなった。  
僕はこういう雰囲気に慣れているのでどうということは無かった。むしろ、心地良いぐらいだ。この静寂が。だが、江迎さんのほうはそうでもなかったのか、少し落ち着かないように見える。  
…体の動きというより、感情に落ち着きがないって感じだけど  
僕がそうして江迎さんを横目に観察していると、江迎さんはペンを止めた。あれ?ちょっと見つめてたのが気付かれてたのかな。なんだか気を使わせたようで、少し悪い気になる。  
だがそうでもなかったらしい。江迎さんは腰を少し浮かしこちらに向くと座りなおした。  
「…宗像先輩。少し、お話聞いてもらってもいいですか?」  
あぁ。わざわざ隣に座ったのは僕に話したいことがあったからか。別に直で声をかけてくれてもよかったのに。これで合点がいった。  
僕も首を少し江迎さんのほうに向けて返事を返す。  
「構わないよ。どうしたんだい?」  
失礼かと思って一応本を閉じる。  
「人吉君のお友達、と聞いていましたので…一番お話を聞いてもらいやすいかな、と思いまして…」  
ばつの悪そうな顔で僕を見ながら言う江迎さん。なるほど、また人吉君の痴情のもつれ関連というやつか。僕が個人的に相談をもちかけられる初めてだけど、こういうのを見たり聞いたりするのはそう珍しいことではなかった。  
「こうして真剣に持ちかけられたからには、しっかり聞くよ。答えに導いてあげれるかはわからないけどね」  
「…!ありがとうございます!」  
はにかんでお礼を言ってくれる江迎さん。こうやって礼儀正しく振舞われると話を聞く甲斐もあるってもんだね。  
「で、どうしたんだい?」  
「あ、はい。実は…」  
 
そこで僕は、南極での江迎さんの告白のことや、人吉君が江迎さんをしっかり振ったことを初めて聞いた。恋から人吉君が切腹したとは聞いていたけど、まさかそんな事情があったとは…  
そんなこんなで、そういった話を振ってきた江迎さんの話をまとめると、つまりは人吉君に振られたダメージから未だに回復できないらしいのだ。そのせいで業務にも集中できないので、みんなに迷惑かけてしまわないかとても心配らしい。  
「…とにかくおつかれさまだったね」  
僕も相談されることにはなれていないのでそういう言葉しかかけることが出来ない。  
 
「やっぱり、諦めることが出来てもいつまでもダメージを引きずってしまうのって過負荷っぽいでしょうか…」  
しょんぼりと下を向く江迎さん。  
「それは違うんじゃないかな。僕は女の子をそんなに知っているわけではないけど、女の子なら普通、そうなっちゃうもんなんだと思うよ」  
知ったようなことを言ってしまってちょっと後悔する。けれどもあまり江迎さんはそんなに気にしていないというか意に介していない。  
「でも、やっぱりもうあの時からだいぶ経つのにまだまだこんなに気にしてるのって駄目だと思うんです。けれども、気にせずにはいられないっていうか…」  
…あれ?さっきも同じようなこと聞いたぞ?なんだか話がループしてる気がする。やっぱり自分が過負荷ってことを自覚してるばかりにマイナス思考になりがちなんだろうね…  
「こうやって、ずっとこうやって後ろめたい気持ちになるんです。どうしたら、私はこの状態から抜け出すことができるんでしょうか」  
江迎さんが力の篭ってない目でこちらを見てくる。これは過負荷の目じゃない。でも、女の子の目でもない。強さも弱さもまるでない、文字通り力の篭ってない目だ。  
僕は江迎さんをそこまで知っているわけではないけど、今までみた限りの彼女を見る限り、江迎さんに強さなんて無くても良いと思う。でも…  
「抜け出す必要なんて無いよ。」  
「え?」  
江迎さんが驚いたような顔でこっちを見る。  
「弱さを捨てようとする必要なんてない。弱さは過負荷の原動力で、欠点で、短所で、それでいて誇りなんだろう?なら、その気にしてしまう弱さってものも江迎さんは捨てちゃいけないんだよ。誇りなんだから」  
何を言ってるんだろう僕は。要点をまとめるなら欠点が誇り?普通になかなか言ってる事は最低だね。これって十三組所属の僕が言っても嫌味にしかならないんじゃないのか?  
しかし思った以上に江迎さんには効いていたようで、一瞬ハッとした顔をすると考え込むようなポーズになった。  
しばらく考え込んだ後、下げていた顔を僕のほうへ向けなおした。その向けられた顔の中にある目には、さっきとは違って力が篭っていた。その顔にも赤みがかかって血が通っているのがよくわかる。  
「…ありがとうございます。吹っ切れませんでした。一生抱えて生きていきます」  
笑顔でそう言う江迎さん。一瞬寒気が背中を襲った。なんだか逆に怖い気がしないでもないけど…たぶんこれは解決ってことでいいんだろう。  
「まぁ助けになったなら良かったよ」  
僕は少し安堵した。しかし、何か気になることでもあるのか今度は江迎さんが目の前でもじもじし始めた。トイレでも行きたいのかな?  
 
「でも…やっぱり、私は駄目な女の子なんです。」  
目をそらしてそういう江迎さん。吹っ切らないとはいえ、まだまだ引きずる気なのかな。  
「君が駄目な女の子だって自分で思うなら、その自分も大切にしなくちゃいけないんじゃないかな?さっきの結論だと」  
何が駄目なのかよくわからないけど、まだマイナス思考ならそれを肯定してあげる他無い。  
「それでも、私は駄目な女の子なんです。」  
江迎さんがこちらに目を向ける。ここまで言われると、もはや何が駄目なのか気になってくるな。たまには言葉にして聞いてみるのもいいのかも知れない。  
「そうなのかい?さっきから駄目駄目って言うけど、君のいったいどこが駄目――」  
そこで、江迎さんの顔が急速に僕のほうに近づいてきた。気付いて構えを取る暇もなく距離を詰められる。長さにしてわずか5cmほど。江迎さんの少し荒くなっている息が直で届くような密着と言ってもいい距離だ。正直状況がよくわからない  
「私は」  
「私はこうやって2日続けて優しくされただけで、すぐに惚れちゃううような駄目な女の子なんです」  
そういうと江迎さんは僕と唇を重ねた。  
 
宗像先輩の唇を奪うと、私は先輩の首の後ろに腕を回してしっかりロックした。宗像先輩は驚いたような顔、というか実際驚いていたんだろうけどそんな顔をして一瞬制止していた。私はそんなことも気にせず目を閉じてさらに唇を押し付ける。  
宗像先輩はそんな私を優しく引き剥がそうとしたけれど、優しく引き剥がそうとした程度で剥がれるほど私は甘くない。さらにロックする腕を強くすると、今度は舌も入れようと舌で先輩の唇を少し舐めた。  
…ところで私は正気に返った。あぁ、先輩に何をしてるんだろう!  
「…んぁっ…」  
先輩が引き剥がすとおりに私は引き剥がされると、私と先輩の唇の間には糸が垂れた。先輩は一度袖で拭き取ると、それを失礼だと思ったのか申し訳なさそうな目になった。  
私は唇から垂れる唾と先輩の余韻に浸っていたが、しばらくして本当に正気に戻る。そして自分のしたことを思い返して一気に恥ずかしくなってしまった。  
私は両手で顔を隠す。  
「…ぁぁあっ!先輩ごめんなさい!!私ったら、興奮してしまって何が何かもわからず先輩にその…キスを…」  
言ってさらに恥ずかしくなってしまい次の言葉が出なくなってしまう。あぁ、これって強姦罪みたいなの適応されちゃうんじゃないのかな?女の子からでも適応されちゃうんだろうか…  
先輩に対しての申し訳ない気持ちと恥ずかしい気持ち、そして罪の意識が全て一気に襲ってきて、私はどうにもいかなくなってしまう。  
手で顔を隠しているから先輩がどんな表情をしているか私にはわからない。  
私はいっそこの場から逃げ出してしまいたかったが、失敗から逃げるのは駄目だと球磨川先輩から教わったばかりだ。逃げるわけにはいかない。  
そうしてしばらくふさぎこんでいると、宗像先輩が声をかけてくれた。  
「…江迎さん」  
「はいっ」  
私は声が上ずんでしまう。上目気味に両手から顔を離して先輩の顔を見るが、そこそこ無表情なのでどういう感情なのかまったくわからない。  
「申し訳ないです…先輩には慰めてもらったのに、こんな恩を仇で返すようなことをしてしまって…」  
申し訳なさのあまり目を逸らしてしまう。しかし宗像先輩は真っ直ぐ私を見据えると声をさらに次ぐ。  
「それはまぁいいとしてだけど…」  
…あれ?先輩怒ってないのかな?一度先輩は頬をかくとさらに続けた。  
「前にも、こんなことがあったのかい?」  
 
先輩は少し心配するような目で私を見た。そこで私は一瞬思考停止したが、直後にじわっと涙が浮かんでしまった。  
私は先輩に迷惑をかけてしまったのに、先輩はそれでいて尚、私が好色な女なのではないかと心配してくれているのだ。  
私が急に泣き始めてしまったせいで、先輩は無表情ながらにあたふたと慌て始めた。その様子はなかなかに愉快なものがあって見ていたかったが、やがて先輩は口を開いた。  
「えっと…とにかくさっきのことは許すよ。」  
焦ったあまりそれしか出てこなかったようで、つむぐような調子でそう言った。  
「本当に…いいんですか?」  
私が涙をぬぐいながら言うと、先輩はコクリとうなずいた。  
「…ありがとうございます。」  
同情からの宥恕だとわかってはいても、私は救われた気にならないではいられなかった。  
…あ、そういえば質問に答えていないような気がする。どうせだから今答えておこうかな  
 
 
「…それと、私はこんなことしたのは初めてです。人吉君でもこんなことはありませんでした。」  
まぁこんなこと初めてでもしてるのが異常なんだけれども。  
しかし、そういうと宗像先輩は何故か安堵のような表情を浮かべた。  
そして ふぅ、と一息つくと少し微笑んだ。  
「良かったよ。僕の事を好きになってくれた女の子がそんなことばっかりする女の子じゃなくて。」  
「え?」  
私が話が見えずにキョトンとしていると先輩は私の肩に手を置いた。そうしてそっと優しく引き寄せると私と唇を重ねる  
突然のことで何が起こっているのかわからなかったが、とりあえずキスをしていることだけはわかって何故か私は恍惚に浸ってしまっていた。  
5秒ぐらいして宗像先輩は唇を離す。  
そして先輩は一度恥ずかしげな表情を浮かべると、恍惚を浮かべていた私の肩を離した。  
「突然で驚きはしたけれども…僕もそう嫌ではなかったよ。会ってまもない女の子とこういうことをするのはどうかと思ったけれど、先にそっちがしてきたからこれでおあいこだね」  
え…?嫌ではなかった?つまり、嬉しかったってことでいいのかな?そんな、まさか私から無理矢理キスしたのに宗像先輩は嫌じゃなかったなんて。これって運命って言うべきなのかな?  
そうだよね、向こうがいやじゃなかったって事はもともと私に好感をもっていてくれたんだよね。会って間もないのにこうやって互いに惹かれあうのって運命という以外に何者でもないような気がする。  
あぁ、どうしよう人吉君が好きだった頃のことを思い出してしまう。いや、これはあのとき以上かも知れないいやあの時以上だどうしよう。  
惚れっぽいとは思ってたけどここまで本格的に惚れちゃうのってやっぱり中々ないと思う。さっきキスしてても思ったけどやっぱり相性いいのよ私たちは。  
先輩は過負荷に近いし私は過負荷そのものだしもともと心地いいものは感じていたからこうなるのは当たり前、必然だったんだわ。そしてもうこれは向こうからの求愛と受け取っていいわよね?  
ということはゆくゆくは恋人になって、甘い学園生活を送って、先輩の卒業を見送ってから私も卒業して結婚…ゆくゆくはたくさんの子供にめぐまれて幸せな生活を…  
たくさんの子供?あぁ、宗像先輩がそんなに子供多く欲しくなかったらどうしようかしら。一応しっかり今の内に聞いておくべきだわそうだわ。  
 
「宗像…先輩」  
「ん?どうしたんだい」  
「子供は…子供は何人欲しい?」  
 
「え?それってどういう…んぐっ!?」  
宗像が言葉を紡ごうとしたその矢先、江迎は宗像に飛びついた。今度は先ほどよりも勢いが良かったため、床に倒れこむ。  
江迎はまたもや首の後ろに手を回していた。今度は先ほどとは比べ物にならない力で締め付けている。  
それは、もはや宗像に窒息を感じさせるほどであった。  
宗像は今度も引き剥がそうとするが、やはり剥がれない。本気で突き飛ばすことも出来ないのでもはや宗像に策は無かった。  
そしてここぞとばかりに江迎は舌を挿入しようとする。宗像も唇を閉じて抵抗しようとするが、上手い具合にギュっと首を締め付けられ、  
唇の力が緩んだ隙に舌を挿入されてしまった。むさぼるように宗像の舌に食らいつく江迎。舌だけでなく口の中のあらゆるところをも江迎は舐め回す。  
そのころにはもはや宗像に抵抗の余地はなく、引き剥がそうとしていた手も江迎の肩に置いているだけの状態になっていた。  
「んちゅっ…んぐ…じゅるっ…はむっ…んぁっ…」  
江迎の声も漏れるほどの舌の猛攻に、ついに宗像も観念したのか肩に置いていた手すら無気力に垂れ落ちてしまう。  
相変わらず江迎は幸せそうな顔で、宗像の口の中に唾液を送り込み、宗像から唾液を無理やり吸い取って摂取する。  
もはやディープどころでは済まされないそのキスに、江迎は軽いオーガズムを迎えたりしていた。  
「んんっ…!んあぁっ…んむ…っ…んふっ…じゅるっ…」  
江迎は飽きることなく、そしてほど良いオーガズムを迎えながら同じことを続けること10分。  
その十分間の中で江迎はテクニックを進化させ続け、もはや舌フェラと呼べるレベルの絶技を習得していた  
「んじゅるっ…ぷはっ」  
そして突然、江迎は宗像から離れる。その口から引いた、糸も呼べるほどの液体は、下になっている宗像の胸元にべっとり垂れる。  
その後江迎は体を少し左にずらすと、右手で宗像のズボンをまさぐり始めた。  
「5分ぐらい前からずっと当たってましたよ…先輩」  
その言葉に対し宗像が何か言わんとせんとしたその瞬間、江迎はその唇をまた塞ぐ。そうして慣れない手つきながらにベルトをはずし、  
ズボンのチャックをガッと降ろしたあとにパンツごとズボンを下げると、既にガチガチに固まっていた肉棒が空気に晒された。  
「ふふっ…」  
江迎は一度口を離して不敵な笑みを浮かべると、宗像の棒をなでるように握り、そして上下運動を開始した。  
「5分間、苦しかったんですよね?私を押し倒して性欲の赴くままに動きたかったんですよね?でも13年という長い年月、殺人衝動を我慢してきた先輩は  
それをなまじ我慢できるだけの精神力があった、そしてか弱い女の子を暴力的に制してはいけないという自制心も。大丈夫ですよ、私が満たしてあげますから。」  
そうして江迎は宗像の首筋を舐め挙げてまた口に戻ると、手首の上下運動を活発化させた。  
「ふふ…」  
キスをしながらそう笑みをこぼす江迎。それに対する宗像は、跳ね返るでも引き剥がすでも受け入れるでもなく、硬直という対応を取るのだった。  
江迎は先ほどから手首を上下させているが、そのペースは一定ではなく常に変化し続けている。速度が上昇することもあれば、下降することもある。  
この時点で江迎は、脈数などで宗像の絶頂のタイミングを完全に理解し、絶頂付近になれば速度を落とすという風俗嬢顔負けのテクニックを手に入れていた。  
「はぁむ…っ…むぁぅ…」  
キスは宗像に全く不快感を与えず、むしろこそばゆい感覚を与えることで性的興奮度を上昇させ昂ぶらせていた。  
そうして性欲を吊り上げられた宗像は、江迎から逃げ出すでもなく押し倒すでもなく、硬直していた。  
並みの人間であれば、性欲を頂点まで引き上げられて、目の前で自分のことを悪しく思っていない人間が求めてきていれば我慢などしようもない。  
しかし、先ほど江迎が語ったように宗像は耐えうるだけの自制心があった。  
並みの人間に耐えうることの出来ない性欲を耐えうるだけの自制心があった。その自制心にに全身全霊を注ぎこんでいるがゆえ、他の身動きがが一切とれないのであった。  
それが指一本を動かすという単純な動作であっても、今の宗像には行うことができないのだ。  
「ふむっ…!ぷはぁ」  
江迎は再び宗像の体の上に這い上がると、また唇を離した。  
そして今度はそのまま眼前に肉棒が迫る位置にまで体をスライドさせ、握っていた片手を今度は両手に持ち替えた。  
「先輩。今から何するかわかりますかぁ?」  
依然として扱く手を止めず、江迎は語りかける。宗像も依然として動かない。  
「この硬くなった先輩のおちんちん。ナメてイカせちゃいます」  
舌なめずりをする江迎。そしてそこでようやく宗像が発言できる程度の精神力を取り戻す。  
 
「…やめるなら、いまのう」  
「宣言します。30秒以内です。」  
宗像が言い終わる前に江迎はその言葉を遮る。そして呆気にとられている宗像を一瞥すると、  
目にも留まらぬ速さで肉棒にしゃぶりつき、上下運動を始めた  
「…っ!?」  
あまりの衝撃に一度宗像は腰を浮かせた。その反応に喜んだ江迎はもう一段、スピードをあげる  
「じゅるっ!じゅぽっ!ずるるっ!じゅっ!」  
凄まじい吸引音が図書室内を響き渡る。もはや宗像の声は声になっていない。  
「じゅるぅぅぅぅっ!」  
そして江迎がトドメとばかりに全力で肉棒を吸引すると、その吸引につられるように宗像の腰も浮いた。  
そしてすかさず江迎はその下に手を回すと、抱きつくように締め付ける。江迎は確信していた。  
この吸引で宗像は精液を尋常ではないほどに吐き出すと。  
「っ!?〜〜〜〜〜ぐぷっ!」  
その直後、江迎の口の中に白濁液が大量に注ぎ込まれた。全て飲む気でいたが、あまりの勢いと量に  
むせかえらずにはいられず、しかし宗像のズボンを汚すわけにはいかないので必死で抑えている江迎。  
「〜〜〜〜っ!!…ごくっ」  
しばらくその量とむせかえりに悶えていたが、なんとか喉を落ち着けて奥に流し込む。  
「ぱぁ…もう、なんて量出すんですか」  
江迎は困ったような声を出すが、その顔はどう見ても嬉しそうである。  
「んふ…♪…あれ?」  
頬に手を当てて恍惚の表情を浮かべていた江迎だが、自分の想定していた事態と思い違っていた事に気づく。  
江迎の想定であれば、ここで宗像のタガが外れて有無を言わさず襲い掛かってくるはずであった。  
しかし、当の宗像を拝見してみると、息子こそ反り立たせているものの全く動く様子は無かった。  
力尽きているという様子ではなく、むしろあふれ出んとする何かを抑え付けているような、苦悶の表情であるかのように見えた。  
「先輩…」  
その様子を見た江迎は、聖母のような優しい笑顔を浮かべるとおもむろに立ち上がった。  
「こんなことをされても、私を傷つける可能性があるからってそうやって我慢するんですね」  
そして手をクロスさせるようにして自分の上着を掴み、脱ぐ。その下は何故か体操服だったが、その理由を追求するべくもなく江迎は脱ぎ捨てた  
その後はもちろんスカートに手をかけてサッと取り払った。下着姿になった江迎はわずかに顔の赤みを増すと、宗像にまたがり、腹の上にのしかかった。  
そしてそのまま上体を倒すと、口を宗像の耳元に持って行き、優しく、淫靡にささやいた。  
「大丈夫ですよ、先輩。弱い人間に、弱い人間は殺せません。」  
その言葉を聴いた宗像の顔から、少しだけ浮かんでいた苦悶の表情が消えた。そして体中に入っていた力が徐々に抜けていった。それを江迎は感覚で感じた。  
「…本当に、僕は弱いな」  
「ええ、弱いです本当に。最弱なんじゃないですか?」  
「…最弱は球磨川君に譲るよ。僕は今、君のおかげで少し強くなれたからね」  
そういうと宗像は江迎の後ろに手を回してブラジャーのホックをはずす。  
江迎は一瞬驚いたが、その後さらに嬉しそうな表情を浮かべると、それを受け入れた。  
そして宗像は江迎のパンティもおろし始める。少しおろしづらい姿勢だったが、江迎が自ら足を動かして脱がしやすい体勢に変えたため、なんとか脱がすことができた。  
図書室の中心で、江迎は全裸になった。その背徳感も江迎の興奮をさらに高揚させる。  
そして江迎は再び上体を起こす。  
そして自分の股にそっと指を当てる。  
「んっ…」  
その指には、目視できるほどの量の愛液があった。江迎はそれを自らの準備完了と解釈した。  
一度深呼吸するとゆっくり腰を浮かし、宗像の反り立つそれにゆっくりとそれをあてがった。  
「…んっ」  
宗像はその江迎の行為を黙って見ていた。おそらく処女であろう江迎が初めて挿入するのだから、余計な苦しみは与えてはいけないだろうと微動だにしなかった。  
「んんん…!」  
そうしている間に江迎は、少しずつ肉棒を自分の中に沈めていった。既に亀頭は全部入り込んでいる。  
「…んんぐぁぅ…!」  
片目を閉じて痛みに耐える表情を浮かべながらも、尚 江迎は腰を沈めるペースを落とさない。すでに竿の半分まで入った。  
「…ん……!」  
そして一瞬江迎の体が停止したかと思うと、一気に竿の根元まで腰を下ろして宗像の肉棒を全て自分の体の中に収納した。  
 
「んああぁぁああっぁっ!」  
江迎が痛みに仰け反ると、その股の間から破瓜の証である赤い液体が垂れ下がってきた。  
「だ、大丈夫かい」  
流石に傍観に徹していた宗像も心配せずにはいられなかったようで、江迎に声をかけた。  
しかし江迎は宗像にパーを突き出す。おそらく大丈夫のサインであろう。  
「…これ、しきの痛み…全身をドライバーに刺されたときに比べればなんでも…」  
「? う、うん」  
宗像は何を言っているか理解はできなかったがとりあえず相槌は打っておいた。  
そうして繋がったまま停止すること1分、江迎の荒れた息はそろそろ通常程度に回復して、笑顔を浮かべる余裕まで生じていた。  
「そろそろ大丈夫です…先輩、私のことを好きなようにしてください」  
そう言うと江迎は髪のリボンをほどいた。  
「もうめちゃくちゃにしてくれてもいいです…先輩のだったらなんだって大丈夫です」  
そして江迎は覚悟を決めたように目を閉じた。少し股が痛いけれど、宗像であるならばたとえ菊門を荒々しく使われたとしても良いと思っていた。  
だが、江迎の覚悟に反し、宗像は上体を起こすと優しく江迎を抱き寄せた。  
「えっ…」  
「好きにしてもいいんだろう?だったらこれだってアリじゃないかな」  
目を開けた江迎が目の当たりにしたのは、肩越しに見える宗像の背中。対面座位から見える優しい景色だった。  
「じゃ、遠慮せずに動かさせてもらうよ」  
そう言うと宗像はゆっくりと腰を動かし始めた。  
「んっ…!」  
江迎はそれに感じたのか、目を閉じながらぎゅっと宗像の制服の背中を握る。  
「んっ、んっ、んっ、んぁんっ」  
宗像は一定周期で腰を動かす。それに合わせて出る江迎の声から苦しみが徐々に薄れてゆき、ある程度大丈夫と感じたので  
腰を振るスピードを少しずつ上昇させていった。  
「ん、ん、んん、んぁ、んぃっ、んああっ!」  
そのスピードに合わせて江迎の声も少しずつ大きくなっていく。  
ここが図書室であることなどおかまいなしであるかのように。  
「んんんっっ!あぁっ!いぃあっ!んああっ!」  
宗像は腰のスピードを上昇させ続ける。しかしあくまでも荒々しくなく、几帳面なまでに同じ軌道でのピストン運動であった。  
のぼりつめるオーガズムの中で、江迎は宗像の肩に乗せていた顎を浮かすと、顔を宗像の真正面へと持っていく。  
「んきぃっ…き、きすぅ…んっ!」  
トロンとした顔で舌を出してせがまれては、流石に平常心を保ち続けた宗像でもそうはいかなかった。  
勢いよく江迎の舌にしゃぶりつ…こうとするがむしろ江迎のほうからしゃぶりつかれてしまう。  
互いが互いにしゃぶりつきあい、もう舐めているのか吸っているのかもわからないほどの舌の攻防に  
宗像の息子はさらに膨張し、江迎の膣もさらに締め付ける。  
「んじゅ…じゅるっ、じゅるるっ!」  
そしてそのまま舌の勢いと下の勢いが相まってバタン、と江迎の背のほうに倒れこむ。しかし江迎が怪我をしないように宗像はそっと後ろに手を回していた。  
結果的に正常位の形となる。  
先ほどよりも宗像的に動きやすい姿勢になったため、宗像の腰の動きはさらに加速、一気に加速した。  
「あっ、ぁぁあっ!あんっ、あぁんあっ!んあぁあ!」  
江迎は今までの中でも一番激しいよがりを見せる。体中の力が抜けているが、しかし宗像の腰の後ろに足を回すことだけは忘れていなかった。  
「あ、あ、あぁ、ああああっ…!」  
もう少しで頂点、というところで  
江迎は宗像の首を締めるように掴み、宗像は江迎の首にどこから出したのかナイフを突きつけていた。  
2人は息を荒々しくしながら、もう少しで絶頂を迎える寸前であるのにその姿勢で動かなくなった。  
少し見つめあった後、2人は静かに口を開いた。  
「逃げないのかい、刃物だよ」  
「逃げないんですか、腐りますよ」  
2人は互いにそっと微笑みあう。  
「大丈夫だよ、君はそんなことをしないから」  
「大丈夫ですよ、あなたにそんな度胸はありませんから」  
そして2人してクスっと笑った後  
宗像は思い出したかのようにピストンを再開した。それも今までに無いほどの全力で。江迎のほうもそれに合わせて腰を動かしていた。  
「せぇっ、んぱぁいっ!…んあぁっ!そのまま、そのままでいいですからぁっ…最後までいっしょにっ!」  
「…いいんだね?ぐっ」  
「いいんですっ!まんがいちがあっても、んぅ、ん…わたしの将来のゆめ、およめさんでしたからぁっ!」  
 
江迎はよりいっそう腰に回している足のロックを強くする  
「きてっ!きてぇっ!せんぱいいっぱい出してぇっ!!!」  
そしてトドメとばかりに宗像が大きな一撃を膣にかますと  
ドピュ、ドピュドピュドピュ…と聞こえそうなほどの精液が江迎の膣の中に放出された  
「あぁああぁああぁぁっ!ぁあぁぁ…ぁああああ…」  
江迎は初めて迎えるその絶頂の快楽に耐え切れず、脱力し、腕と足を地面に落としてしまう。舌はみっともなく出ているし、目の焦点も定まっていない。  
しかし、その江迎も今の宗像には非常に愛おしく、今まで得たことの無い得体の知れない感情につつまれたような気分になっていた。  
「あぁぁ…っ …ぁっ…」  
宗像の精液の排出が終わると、同時に江迎の声もやんでいった。  
そしてもう出ないことを確信した宗像は、ゆっくりと江迎の膣から自分のそれを抜き取った。  
そして抜き取った瞬間、一瞬どぷっと聞こえるほどの精液が江迎の膣から放出された。  
「せん…ぱぁい」  
そして江迎は自分が裸であることも厭わず、その目を閉じて意識を失おうとしていた。  
「一生…よろしくお願いします…」  
そしてその重たい一言を放つと、意識を暗闇の中へと落としていった。  
流石の宗像も、ここでは笑うことしかできなかった。  
 
 
 
そしてその出来事から数日が経過した。  
「最近異様に仲いいよなー宗像先輩と江迎。」  
「まぁ、仲が良いと言いますかなんといいますか…」  
「…うん、明らかに何か線を越えてるよな」  
通常通り何の変哲も無いただの生徒会室。細々と会話をするのは虎居と善吉。  
ただ、全てにおいて変哲が無いわけではない。全員が位置についてそれぞれの仕事を全うしてる。全うしているのだが…  
「なんで江迎は宗像先輩の膝の上に座ってんだ!?」  
ついに善吉のツッコミメーターが振り切れてしまった。その異様な光景にここ数日ツッコまなかっただけ耐えたほうであろう。  
「片時も離れたくないんだってよー善ちゃん。まぁかくゆう俺も止めてはみたんだがよー。先輩と後輩に『一緒に居させてください』頼まれちゃ、無理に追い出すわけにゃいかねーよな」  
「…んー、まぁ仕事もこなしてますし、業務上不備が無けりゃ悪くはないんですけど…んですけど…」  
しぶった顔で善吉は江迎たちのほうを見る。  
「へへ、けーいくん。りんごだよぉ〜♪はい、あーん」  
「ありがとう、怒江ちゃん」  
 
「デビルうざったらしい!!」  

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