『「友達に隠し事をしない」ーーー。これが箱舟中学の「今月の目標」ですね』  
『素晴らしい目標だと思います!』  
『友人と心を開いた付き合いをすることで、人間関係とはより豊かになっていきますから!』  
『はい、勿論生徒会一同心して定着に取り組みます』  
『より良い学園を作っていくために!』  
そう言って球磨川は箱舟中学校の職員室から退室した。  
『なーんちゃって』  
『「友達に隠し事をしない」だって』『馬っ鹿みたい』  
『人間関係に秘密、と言うかプライベートは必要に決まってるだろ』  
『人類補完計画じゃあるまいし』  
『そう言う自分達は本音を隠して生徒に建前ばっか押し付けてるのにね』  
『全く学校ていうのはパラドックスのパラダイスだぜ』  
そう呟きながら生徒会室に向かう。  
と言っても、箱舟生徒会の生徒会室は職員室のすぐ隣にある。  
程なくして生徒会室のドアの前に立つと、何やら中から三人分の声が聞こえてくる。  
 
『おや』『珍しいなあ』  
球磨川は思わずひとりごちた。  
箱舟生徒会のメンバーが一同に揃うことは滅多にない。  
気まぐれな安心院なじみが生徒会室に居着かないのは言うまでもなく、真黒はコンサルティング業で忙しいし、  
阿久根は球磨川の「お願い」により、学園の平和を守るためにしばしば外出しているためだ。  
しかし、もし今球磨川が生徒会室に入れば、生徒会メンバーがフルで揃うことになるのだ。  
(ちなみに会計は今は欠員中だ)  
本来なら喜ぶべき事態だが、球磨川には何故か妙な胸騒ぎがした。  
ドアを開けようと扉に近づくと、三人の声色がいつものそれと異なった雰囲気を帯びている事に気付いた。  
思わずドアを開ける手を止め、耳をドアにはりつけ聞き耳を立てた。  
「じゃあ……始めようじゃないか。ふふ」  
安心院なじみの妖しげな声が聞こえる。  
「……俺、三人でやるのは初めてなんですけど」  
阿久根の抑揚の少ない声。  
「あ、俺が最初は上をやるから、阿久根くんはいつも通りで大丈夫だよ。  
俺、体力無いからねー。先に阿久根くんに動いて貰った方が都合が良いんだ」  
真黒の飄々とした声。  
球磨川は会話の内容が呑み込めず、ただ三人の声を聞くことに集中した。  
「ーーーじゃあ、いきますよ」  
「んっ……」  
阿久根の淡々とした声が聞こえると同時に、安心院の甘やかな吐息が聞こえる。  
「じゃあ、俺は上を脱がしていくよー」  
真黒の声と共にごそごそと衣擦れの音がし始めると、安心院の嬌声はより一層大きくなった。  
「んあっ……ああ……」  
球磨川は三人が中で何をしているかようやく悟った。  
間違いない。三人は生徒会室の中でセックスをしている。  
 
そう認識すると、球磨川は脳にぐわんとした衝撃を受けた。  
(『何考えてるんだ』『職員室の隣だぞ』)  
しかし、音を漏れないようにする位なら安心院のスキルでいくらでも出来るはずである。  
それをしないのは、三人は職員室横のでセックスをするというスリルを楽しんでると言うことに他ならない。  
球磨川は状況を認識すると、怒りがこみ上げると同時に股間が熱くなるのを止められなかった。  
球磨川は生徒会室の廊下側の小窓がほんの少し開いているのを見つけた。無我夢中でその隙間から中をのぞき込んだ。  
予想通り、生徒会室の中には重なり合っている三人の姿が見えた。  
真黒は机の上に座り、安心院を抱きかかえている。手はブラウスの中を妖しくまさぐっており、真黒の手が動く度安心院は熱い吐息を漏らす。  
安心院は仰向けの形で真黒にもたれかかっている。腰は机の上に乗り、真黒によって持ち上げられたブラウスにより腹部が丸見えで可愛らしい臍がのぞいている。  
阿久根は唯一机には乗らず、机の横で膝立ちになり安心院のスカートの中に顔を埋めている。  
どうやら太ももの付け根にキスを施しているようだ。  
「ふふ……阿久根くんも上手くなったもんじゃないか。  
最初の頃はまるで僕を壊すみたいに無茶苦茶に抱いてた癖にさ……んっ」  
「彼、学習能力が高いからねー。  
何回か個人レッスンすれば十分だったでしょ」  
「そういう君もすぐ上手くなったじゃないか。  
僕が初体験だったのに。『解析』のおかげかい?」  
「ああ、それはあるだろうね。  
正体が意味不明な君もセックスに関しては普通の小娘だったから」  
「言ってくれるじゃないか……あんっ!」  
真黒が安心院の乳首をつまみ上げた。ブラウスもブラも上にずり上げられ、乳房が完全に露出している。  
 
二人が会話している間、阿久根は淡々と脚への愛撫を続けていたが、やがて脚の付け根の中心に顔を埋めた。  
舌を尖らせ、ショーツの上から秘部の形をなぞり、時に食む。  
「ああ……阿久根くんっ……!そこ……!」  
遠目からでも、ほぼめくりあげられたスカートから安心院の白いショーツが見える。  
そこからショーツよりも更に白い脚が突き出し、唾液と愛液でてらてらと光っている。  
球磨川の脳内は混乱していた。  
今にもこのただれた教室に割って入って三人を断罪したいという気持ちと。  
ただこのまま、恋する相手の艶めかしい姿を見ていたい欲望と。  
感情が綯い交ぜになったまま球磨川は立ち尽くし、ただ掌で熱くなった股間をまさぐるだけだった。  
そうこうしてるうちに阿久根が安心院のショーツをずらし始めた。  
机の上にぺとりと置かれたそれはぐしょぐしょで、もう本来の用を為していない。  
「挿れますよ……」  
阿久根がカチャカチャと自分のズボンの前をくつろげた。  
凶暴に昂ぶったそれは彼の通り名を想像させた。  
「ふう、んふ……来たまえ」  
いつも通りの不敵な笑みを浮かべる安心院。  
だが、紅潮した頬によりこの世のものとも思えないほど艶があった。  
阿久根が挿入しやすいように真黒が安心院の身体を少し傾けてやると、バランスが崩れたのか、安心院は真黒に縋るように腕を絡める。  
すると真黒は愛おしげに安心院の首筋にキスをした。  
体勢が安定したのを見ると、阿久根は膝立ちをやめ立ち上がり、安心院の両足を掴みその間に身体を進める。  
阿久根が安心院の脚を広げたおかげで、球磨川の位置からでも安心院の膣が完全に見えた。  
球磨川にとって初めて見るそこは、ぬらぬらと光り、ひくついてまるで生き物みたいだと思った。  
「あ」  
「あああ」  
ぬちゅり、ぬちゅりという音と共に、阿久根の男根が安心院の秘部に飲み込まれていく。  
「あああああ」  
阿久根と安心院の身体が殆どくっつくと、安心院は長く啼いた。完全に根元まで埋まったのだ。  
安心院の顔は恍惚に染まり輝いている。  
「動きますよ」  
阿久根がそう言うとリズミカルな運動が始まった。安心院の腰に手を置き、前後に自身の腰を揺らす。  
「ああっ…ああっ……!」  
阿久根の動きと共に安心院が声をあげ、腰を揺らす。  
桜色の唇は開きっぱなしで、端からはだらしなく唾液が垂れる。  
普段の超然とした彼女からは想像もできない姿だ。  
 
阿久根が動いてる間も真黒は動きを止めない。唇で安心院の耳を食み、指は乳房を揉みしだいたり乳首を指で弾いたりしている。  
上からの刺激にも下からの刺激にも安心院は従順に反応する。  
あらゆる方向からの快楽に溺れ、もう殆ど自我を失いかけてるように見えた。  
「ふ……」  
阿久根の方も息が荒い。徐々にピストン運動が早くなる。  
「いきますよっ……!」  
深くえぐるように突く。  
「ああーーーっ!」  
安心院はびくりと体を震わせ、本日一番の嬌声をあげた。  
同時に、びゅくびゅくと安心院の膣から白い液体が溢れ出た。  
(『中出しかよ』)  
しかし二人は意に介する風もなく、陶然とした顔のままふうふうと肩で息をする。  
真黒は自分に上体を預ける安心院の髪を優しく梳いていたが、しばらくして言った。  
「じゃあ、次は僕もよろしく」  
おもむろに安心院の菊門に指を伸ばす。  
 
「あ……真黒くん……そこは……」  
「なんで?せっかく三人なんだし両穴行っとこうよ。  
こっち、初めてでもないでしょ?阿久根くんももう一回くらい余裕だよね?」  
阿久根のはぁ、という短い応答。  
「やれやれ……変態だねやっぱり君は……」  
「そんなことないよ。対象が妹以外の性癖に関しては至ってノーマルだよ。  
二本挿しくらい普通普通」  
 
真黒は安心院を姫抱きにし、机から降りる。  
自分の学ランを脱ぐと、床に敷きそこに安心院を座らせた。  
阿久根も倣って自分の学ランを脱ぎ、床に服二枚ぶんのスペースを作る。  
真黒は安心院を寝そべらせると、スカートがめくれて剥き出しになった尻に指を割り入れた。  
 
「あ゛っ……」  
 
安心院の快と不快が入り交じった声。  
真黒の指がもぞもぞと動く度、安心院は体をくねらせ苦しむように床にうずくまった。  
「潤滑剤欲しいな。これでいいや」  
今度は真黒は安心院の膣に指を割り入れ、精液と愛液を掻き出す。  
ぬぷりという音と共に、あぁ、と安心院が悩ましげな声を出す。  
真黒は指についたそれを使い、安心院の菊門をゆるゆると解した。  
そうして作業を繰り返しているうちに、真黒が「そろそろ良いかな」と言い自身を取り出した。  
 
自分も制服のシーツの上に座ると、安心院を後ろから抱えるように自分の中心に移動させた。  
安心院の柳のように細い腰を両手で抱き、ゆっくりと自身の上に腰を落とさせる。  
「んんん……」  
安心院の苦しげな声。めりめりという圧迫感のある音。  
ゆっくりと、しかし確実に根元まで埋まっていく。  
やがて完全に入りきり、真黒が安心院を膝の上に座らせているような形になった。安心院は「ああああ」と弛緩したような声を出した。  
 
「ほらほら、阿久根くんこっちこっち♪」  
真黒は先ほどから傍観していた阿久根をにこやかに手招きする。  
「俺、ここから挿れるんですか。難しそうですね」  
「何とかなるなる。ほら」  
真黒は安心院の下半身を阿久根の方に突き出すように上ずらす。  
位置が動いたことで腸内が新しく削られたのか、安心院は「あ゛あ゛っー!」と苦悶とも歓喜ともつかぬ声を上げた。  
その反応に気を良くしたのか、真黒は腰の上の安心院を軽く揺すぶって「あ、あ」と更に細かく啼かせる。  
 
阿久根は先程と同じように安心院の両脚を抱えて割り開き、昂りを取り戻した自身を挿入した。  
「んあっ……」  
挿入が完了すると阿久根の身体が安心院に密着する。  
三人の身体はほとんど一つの物体に見えた。  
 
そこからは獣の狂乱だった。阿久根は腰を激しく揺すり、時には繋がったまま安心院の乳房に吸い付き揉みしだいた。  
真黒は阿久根に揺すられる安心院の身体を上手く弄び、タイミング良く下から腰を打ち上げた。  
一つになった三人分の影が広い生徒会室の中で蠢いていた。  
三人共容姿が整いすぎているぶん、それはあたかも出来の悪い芸術作品のように見えた。  
衣擦れの音、ぬちゃぬちゃと液の混ざり合う音、ぱんぱんという肉のぶつかり合う音、安心院の嬌声が教室の中にただ響いた。  
 
どの位時間が経っただろう。三人は交互に絶頂を迎えつつ、繰り返し互いの身体を貪り合った。  
時には安心院を床に額着かせ、バックで二人がかりで交互に休まず突いたり、  
片方の自身が萎えると、安心院の口腔にそれが突っ込まれ前からも後ろからも安心院を犯した。  
時には安心院が上に乗り、前後に身体を揺すぶっては狂乱の声を上げた。  
 
球磨川は、恋する相手のこの上なく乱れる姿を、  
その恋する相手を犯す友人達の姿を、写真のように脳裏に焼き付けた。  
 
 
終わり無き宴のように見えたこの行為も、終焉を迎えるようだった。  
三人はゆるゆると着衣を直しつつ、肩で息をしながらも楽しそうに言った。  
 
「やっぱり三人は新鮮だねえ。またやろうじゃないか。真黒くん、阿久根くん」  
「……俺はしばらくいいです。疲れた」  
「僕は後学のためにも後何回か試したいなあ」  
「……その時は俺以外の誰かを使って下さいね?」  
「何言ってるんだい、君以外いないよ?阿久根くん。  
あ、球磨川君の事を指してるなら有り得ないから。  
僕の大事な大事な球磨川君には、僕らのこういう事は、ぜぇんぶ、内緒だからねーーー」  
 
球磨川はそれ以上聞くことは無く、弾かれるようにその場を離れトイレに駆け込んだ。  
そして自身の中心に溜まりきっていた熱を、情けなく放出させたのだった。  
 
ガラリ。球磨川が生徒会室を開けると、そこには安心院だけがいた。  
生徒会室には性の残滓など微塵もなく、まるで魔法でも使ったかのように元通りの空間がそこにあった。  
「やあ、球磨川君」  
机の上に腰掛けた安心院がまず口を開く。こちらも先程までの乱れようが嘘のように、着衣も口調も普段通りの整然としたそれだ。   
 
一拍ののち、球磨川はいつもの貼り付けたような笑顔で安心院に語りかけた。  
 
『「今月の目標」なんだけどさ』  
『「友達に隠し事をしない」だって』  
『良い目標だよね』『まあ僕ら生徒会の面々には必要無いことかもしれないけど』  
『僕らほど秘密の無い友人関係も無いもんね!』  
『僕、箱舟生徒会のみんながだーいすき!』  
そう言うとくるりと後ろを向く。夕日に照らされて球磨川の顔に色濃く影が落ちる。  
 
「そんなに不貞腐れるなよ、球磨川くん」  
 
安心院が球磨川の背中に言った。  
 
 
「君のために、ファーストキスは残しておいてあげてるんだからね」  
 

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