「…っ……」  
「んむっ…んっ…」  
布団の上で生まれたままの姿になり、舌と舌を絡め合わせる一人の男と一人の女…二人の過負荷。男の名前は蝶ヶ崎蛾々丸、箱庭学園2年-13組。女の名前は志布志飛沫、箱庭学園1年-13組。場所は、一人暮らしをしている蝶ヶ崎蛾々丸の住居。  
「…ぷはぁ…」  
「は、あぁ…蛾々丸くん…蛾々丸くん…蛾々丸くん…」  
口を離し、女が男の名前を呼びながら自分に覆いかぶさっている男の背中に腕をまわすと、男もまた女を抱きしめた。  
「…大丈夫ですよ、志布志さん…私はちゃんとあなたのそばにいます…」  
「蛾々丸くん…蛾々丸くん…」  
男は女を抱きしめながら考える。彼女とこんな関係になってどれくらい経っただろう。いつから自分たちはこんな関係になったのだろうか。  
 
初めは、飛沫が蛾々丸の住居を訪れたことからだった。それ以前にも、飛沫は未だに親からは愛されず気味悪がられていることもあって自宅にいる時間は少なく、蛾々丸を訪ねることは少なくなかった。だがその日はいつもと様子が違った。  
「…蛾々丸くん…球磨川さんは、確かに幸せになれたんだよな…」  
「? どうしました、突然」  
「なら、あたしたちも、幸せになれるのかな…」  
「…最底辺の過負荷である球磨川先輩が、確かに『幸せだ』と言っていました。ならば、私たちにもそうなれる可能性はあると思います」  
「…あたしは…蛾々丸くんと幸せになりたい…」  
「え…?」  
「…あたしを…蛾々丸くんの物にしてほしい…」  
「……志布志、さん…?」  
「お願いだ、蛾々丸くん…お願いだから…あたしを、今ここで…」  
「……………」  
その時何を考えて、何を思って飛沫を抱いたか、蛾々丸は今は思い出せない。だが、彼がそんな彼女のことをないがしろにするような真似はできなかったというのは事実だった。二人が体を重ねる関係になったのは、その日からだ。  
 
それからしばらく経ち、三回目に体を重ねた翌日の放課後、飛沫が精神的なことに詳しい人と話がしたいと言って人吉瞳を訪ねた。  
瞳は空き教室で彼女とカウンセリングをし、蛾々丸と一緒にいないと不安な気持ちが続くこと、蛾々丸と一緒に幸せになりたいと思うこと、さらにはその蛾々丸ともう三回体を重ねたことなど、蛾々丸に対して飛沫が抱いている感情を聴いた。そして話し終えた飛沫に  
「蝶ヶ崎くんと一緒にいられる時にはなるべく一緒にいるようにして」  
「あんまり不安な気持ちが強くなるようなら、自分から蝶ヶ崎くんに頼んで近くにいてもらうことも考えてね」  
などと、いくつか助言をしてカウンセリングを終えた。そして飛沫が立ち去ったあとはすぐに球磨川に頼んで蛾々丸を自分のいる空き教室に呼び出してもらい、彼に飛沫のことを話した。  
 
「…つまり話を聴く限りだと、志布志ちゃんの中に『幸せになりたい』という願望が生まれたことで『愛されたい』という強い欲求も同時に彼女の中に生まれたんだと思うわ。そして彼女が愛されたいと思う対象は、あなただった。  
長い付き合いの中で無意識のうちにあなたへの特別な感情が芽生えていたのかもしれないわね」  
「……………」  
「あの子は今まで全く愛されてこなかった…それどころか江迎ちゃんと違って愛されることを最初から諦めていた…その反動で、今彼女の中にある、あなたに愛されたいという欲求はとてつもなく強いものになってる。病的なまでにあなたに依存してしまうほどに。  
だから、あなたと一緒にいない時間を不安に感じてしまう。そのことで彼女は私に相談に来てくれたの」  
「…人吉先生。私はどうすればよいのでしょうか。なぜかはわかりませんが、私にはそんな彼女を見放すようなことはできないのです。  
しかし、私と共にいることで、彼女がどんどん駄目になっていくような気もして…そばにいてあげたいとも思う反面、離れた方が良いのではとも思うのです…実は昨日彼女が私を訪ねて来た時、私はそれを遠回しに彼女に伝えたのですが…」  
「…そうしたら、志布志ちゃんはなんて言ったの?」  
「…泣きわめきながら私に抱きついてきて…『離れないで、お願いだから嫌いにならないで、なんでもするから』と…必死になって、何度も繰り返していました。そこからなんとか落ち着かせはしましたが…」  
 
「…蝶ヶ崎くん。今の彼女にそういったことはもう絶対に言わない方がいいわ。とにかく今はなるべくそばにいてあげるようにして。そこから少しずつ彼女の精神状態を安定させていって、それから彼女の心を治療していくしかないと思う。  
彼女の方から相談に来てくれたのはよかったわ…これからは私もできる範囲であなたたちに協力する」  
「…わかりました。ありがとうございました、人吉先生」  
蛾々丸は瞳に礼を言って教室を出ると、すぐに飛沫が戻っているであろう-13組の教室へ向かった。そこで、恐らく自分の姿を探していると見える彼女の姿を確認し、彼は言う。  
「志布志さん、こっちですよ」  
 
それからさらに数週間が経ち、場面は冒頭に戻る。  
飛沫は抱きしめていた腕を離し、蛾々丸の顔を見つめて言う。  
「蛾々丸くん…今日も…蛾々丸くんのを…あたしの、中に…」  
「大丈夫ですよ、わかっています。あなたが私に望むことは全て叶えます。だから安心してください」  
蛾々丸はそう応えながら、すでに硬くそそり立った自身を飛沫の秘部にあてがい、ゆっくりと挿入していく。  
「あ…あ、ぁあっ…」  
蛾々丸が深く飛沫の中へ入っていくにつれて、飛沫は甘い声をあげる。この感覚を味わうたびに、彼女の心は満たされる。  
「あ…あ…」  
そのまま蛾々丸は飛沫の奥まで到達し、そこで動きを止めて再び彼女をだきしめ、彼女と密着する。  
「…私はいつでも、こうして志布志さんを抱きしめます…大丈夫です、私は決してあなたから離れません…だからあなたは何も不安に思うことはないのです…」  
「…蛾々丸くん…蛾々丸くん…」  
彼女はそんな彼の名を、そこにいることを確認するかのように何度も呼ぶ。そしてそんな彼女に応えるように、彼は動き始める。  
「んっ、はっ、あっ、あっ…」  
彼の動きに合わせて彼女は声をあげ、動きながらもそんな彼女をしっかりと抱きしめて彼は彼女に語りかける。  
 
「…私は明日も、明後日も、その先も、あなたの傍にいます。私はずっと、あなたの隣に居続けます」  
今やもう何度彼女に伝えたかわからないその誓いを、彼は今日も繰り返す。そしてそれを喘ぎながら聞いている彼女は段々と昇りつめていく。彼もまた同じように昇りつめていく。  
「あっ、んっ、ああっ…はっ、あっ…」  
「志布志さん…志布志、さん…」  
「んっ、が、蛾々丸くん…そ、の、まま…あたし、のっ…中、に…!」  
「…志布志、さん…!」  
「は、あぁぁーーーーーー!!」  
そして蛾々丸は飛沫の中で達し、それに続くように彼女も達した。避妊具は着けていない。飛沫が蛾々丸の熱を体内で感じるこの感覚を望んでいるからだ。だから彼女は瞳から貰った避妊薬をいつも服用している。  
「あ…ああ…ぁ……」  
蛾々丸の射精が終わると飛沫はゆっくりと力尽きるようにして布団に頭をつけ、そのまま意識を手放した。蛾々丸は精液などの処理をしてから布団に自らの体を横たえて、彼女を抱きしめる。  
「……これで一体何回目でしょうねぇ…」  
蛾々丸は静かな声でぽつりと呟いた。今までこんな行為を何回繰り返し、一体あとどれだけこんな行為を繰り返すのか。蛾々丸には思い出せないし、予想もつかない。  
「…でも、大丈夫ですよ、志布志さん…私は…何度でも…」  
彼女に伝えるためではない、自分への静かな誓い。それを呟いて、蛾々丸も意識を手放した。  
 
 
「…志布志さん、朝ですよ、志布志さん」  
翌朝、蛾々丸は自分の分と飛沫の分、二人分の朝食の用意をしてから飛沫を起こす。起こされた彼女は、ゆっくりと布団から上体を起こして彼の顔を見る。  
「…蛾々丸、くん…」  
「朝食はできていますから、食べましょう。そうしたら準備をして…私と一緒に、学校へ行きましょう」  
「…うん…」  
 
そして今日も彼は、彼女の隣で過ごす。  
 
終  
 

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル