「…用意する食材は、こんなものかな?」  
「いや、念の為だ、もう一度確認しておこう」  
誰もいなくなった放課後の教室で書類を置いた机を挟んで向かい合って座り、学食に必要な食材の確認をしているのは食育委員長、飯塚食人と米良孤呑だった。  
「…よし、大丈夫そうだな」  
「じゃ、僕はこれを生徒会に出してくるから」  
「ああ、頼む」  
不備が無いことをしっかりと確認した書類を持って食人は教室を出て行った。  
「…ハァ」  
食人を座ったまま見送った孤呑は急に力が抜けたように溜め息を吐きながら机に突っ伏した。なぜ溜め息が出るのか、その理由はついさっきまで向かい合っていた男、飯塚食人だ。  
意見の違いからもともとは仲が良い訳ではなかったのだが、今では互いの実力を認め合い、良き相棒といった感じだ。だが、いつからか孤呑の頭から食人のことが離れなくなってしまった。  
いつも彼のことを考え、彼と一緒にいるだけで緊張してしまう(なんとか平静を装ってはいるが)。食育委員としての仕事をするほとんどの場合は食人と共にいる孤呑にとって、これは深刻な悩みだった。そして一人で机に突っ伏している今も彼のことを考えている。  
「……ロード…」  
静かな中で孤呑は男のニックネームを呟いた。  
 
 
窓からそれを覗いていた者が一人。  
「おやおや、なんだか青春してるねぇ」  
 
安心院なじみだ。少し空いてしまった時間を持て余して適当に散歩をしていたところでたまたま食育委員長の話し合いを目撃したのだ。  
「なるほどなるほど、どうやら米良さんが飯塚くんのことを…」  
と、そこで安心院は何かを思いついたような顔をする。  
「………よし、たまには良いことするんだぜ。彼女の背中を押してあげようじゃないか」  
そうして安心院は、48.31%の気まぐれと51.68%の暇潰しと0.01%の善意により、一京分の一のスキルを使うことにした。孤呑は窓の外の安心院に気付かない。  
「自制心をなくすスキル『抑の無い人(ストッパストッパ)』」  
 
 
「あれ?メラリー、まだいたのかい?」  
教室に置いたままにしていた自分の鞄を取りに食人が戻ってきた。座っている孤呑の方へ歩きながら声をかける。  
「先に帰っててよかったのに…」  
「ロードぉ!」  
「うおあっ!?」  
突然孤呑が食人に飛びつき、食人を押し倒した。勢いが強かったため食人は倒れて床に背中を打ちつける。  
「痛って…んむっ!?」  
「んむっ…ちゅ…れろ…」  
食人が痛みを訴える間もなく孤呑の唇が食人の口を塞いだ。涎を垂らしながら舌を食人の口に入れ貪るように口付けをしつつ右手で食人の股間をそっと撫で回し、それによって彼の分身は大きくなっていく。  
「…ぷは……ロード…」  
長い口付けを終えると孤呑は体を引いて食人のズボンのベルトに手をかける。  
「お、おいメラリー!?」  
食人が呼びかけても『抑の無い人(ストッパストッパ)』によって欲望のままに動いている孤呑の耳には届かない。彼女はベルトを外して彼の分身を出すと迷いなく口に咥えてしゃぶり始めた。  
「っ…!メ、メラリー…!」  
「んっ、んむっ、ん…」  
一心不乱に食人のモノをしゃぶり続ける孤呑。それによって与えられる激しい快感に食人は長くは耐えられなかった。  
「うっ…ぐっ!」  
「んむっ!んっ…!」  
食人が達しても孤呑は口を離さず、食人の子種を全て受け止めて飲み下す。  
 
「…っぷは…」  
一滴もこぼすことなく飲んでから口を放す。  
「く…はぁ…」  
動揺と快感で放心状態となっている食人に構うことなく、孤呑は今度は彼の股間にまたがる姿勢になり、自分の下着をずらして彼の剛直を秘所にあてがう。  
「!? メラ…うっ!」  
「んんっ!!」  
驚く暇もなく食人は再び激しい快感に襲われる。  
「いっ…!」  
孤呑の顔が一瞬苦痛に歪むが、すぐに彼女は自分の体を上下に揺する。  
 
 
そんな様子を安心院は窓からずっと覗いていた。  
「おお、すごいすごい…あんなの見ちゃうと僕も興奮してきちゃうぜ…よし、球磨川くんでも誘惑してみようかな」  
そんなことを呟いて安心院はその場から姿を消した。  
 
 
「ふっ、ん、んんっ! ロード…ロードのが…私…の…中に…」  
「メラ…リー…」  
孤呑は動きを止めずに言う。  
「好きだ……ロード…好きだ…!」  
「……え?」  
その言葉に食人は少しだけ冷静さを取り戻した。  
 
今なんと言った? 好きだと言った。  
誰が? 米良孤呑が。  
誰に? 飯塚食人に…自分に。  
 
ならば自分が彼女に返す言葉は?  
 
そこまで考えたところで  
「ふ、あ、あああぁぁ!」  
孤呑が絶頂を迎えて食人の分身が締め付けられ、それによって彼もまた彼女の中で限界を迎える。  
「うっ…!」  
孤呑の子宮に食人の子種が流れ込む。  
「あ、ああ…熱い…」  
腹部に食人の熱を感じながら愉悦の表情を浮かべ、少し惚けた後彼女は我に返った。『抑の無い人(ストッパストッパ)』の効果が切れたのだ。  
「……ロ…ロード…すま…ない……私は…」  
孤呑の目から大粒の涙がこぼれる。  
「……私は……こんな…」  
「………」  
「…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」  
孤呑は泣きながら何度も謝る。  
「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」  
「………」  
 
食人は上体を起こして謝罪の言葉を繰り返す孤呑を抱きしめた。  
「……ロー…ド…」  
「…一つ質問させてくれ、メラリー。その…好きって言ってくれたけど、あれは僕のことを異性として好き…という意味で、とっていいのかな?」  
「………」  
孤呑は無言で頷く。  
「…じゃ、何も問題ない。謝ることなんて何もないさ」  
「……え…?」  
「まあ、突然こんなことをされたのはびっくりだけど…好きな子にされるのは、うん、満更でもないし…」  
「…!」  
「えっと、まあそういうこと…僕も…メラリーが好きだ」  
「……ロード…!」  
思い人が受け入れてくれた喜びから孤呑も食人の背中に腕をまわした。  
「…ロード」  
「ん?」  
「…好きだ」  
「うん、僕も」  
「大好きだ」  
「うん、僕も」  
「…ロード」  
「…ん?」  
「えっと…誰もいないし、ロードが良ければ……その…ここでもう一回…」  
「………喜んで」  
 
 
 
その日から食育委員会のダブル委員長のコンビネーションはますます良くなったとか。  
 
終  
 

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