箱庭学園に入学して一年。生徒会の副会長に就任して一年が経った。  
 なんやかんやで、俺の幼馴染みは生徒会長として上手くやってる。  
 的確な指摘と、伴う能力に、着いて来るカリスマ性で、半ば神格化した存在感。  
 そんな幼馴染みが、最近ヤバイ事に興味を持ち出した。  
 発端は一週間も前、二人だけで居た夕暮れの生徒会室、前期の会計作業が終わり、帰る用意を始めた頃。  
 
「善吉。おちん……ペニス、なるモノを見たいのだが」  
 
 余りにも有り得ない言葉に、俺は呼吸すら忘れて体動を止めた。  
 生徒会室には夕日が差し込み、一面を赤く染め、栄える彼女はそれとは違う赤で微かに……ほんの微かに、俺だけが分かる赤で頬を染める。  
 幼馴染みは長テーブルの向かい側で椅子に座り、俺は鞄を持って入室戸の前。こんな場面で耳に届いた、男性器の名称。  
「はっ、ははっ、何言ってんだ生徒会長さん? 早く帰ろうぜ」  
 喉は急激に渇き、唾を飲み込んでやっと笑える。聞こえた単語の処理は放棄して、珍しい冗談と捉えて聞き流した。  
 
 
 
 
        『非情の女帝』  
 〜こんなに苦しいのならば、愛などいらん!〜  
 
 
 
 
 いつまで経っても掴みきれない、黒神めだか独特のペース。当然二人の距離も縮まらない。  
 二人は、いつまで経っても、変わらない、幼馴染み。そう、思ってた。でも……  
「んっ、聞こえなかったか? 善吉の、ペニスを、見せてくれと言ったのだ」  
 コイツは変わった。言動の意味すら理解できん。  
 めだかは席を立ち、目の前まで来ると、俺の鞄を取り上げてテーブルに置く。  
 そして再び有り得ない言葉を添えると、俺の頬を包むように両手で挟んだ。  
 じんわりと伝わる、柔らかくて暖かな感触。けれどしっかり俺の顔を固定し、目を逸らせなくする。  
 二歳の時から惚れ通した、憧れの麗顔は眼前。真っ直ぐに俺を見据えて離さない。  
 微かに紅潮した肌はそのままで、真剣に、性器を見せろと言ってるんだ。  
 
「イヤだね、ギャグだとしても笑えないぜ」  
 俺が? めだかに? チンコ見せろって? アホか!  
 いや、いずれはそんな関係にムニャムニャ……だけど、これは無いだろ? もうちょいムードが有りゃ、もしかしたら見せてたかも知れんが。  
 視線を逸らさず、逸らせず、否定のセリフで幼馴染みの訴えを却下する。  
 しかし、  
「ふむっ、私を困らせるな善吉。お前の、ペニスを……見せておくれ」  
 そんなに俺の言う事を聞いてくれてたら、こんなに苦労はしない訳で。  
 今度はしっかりと、赤くぷっくりとした魅力的な唇で、ペ・ニ・スと三度目を紡いだ。  
 さすがにイラッと来る。なんだよ、理由も教えられずに見せる訳無いだろうがっ!  
「だからな、イヤだっ……」  
 断ろうとして、  
 
 
「 み せ ろ 」  
 
 
 今度は俺の訴えが却下された。  
 めだかが吐き出す命令口調。ガキの頃から身体に刷り込まれた、絶対服従の言葉。  
 こう言われて断る術を、俺は未だに知らない。  
「ぐっ……ちっ、今回だけだからなっ!!」  
 ベルトを外してチャックを開け、手早くズボンを足首まで下げ落とす。  
 こんなもんは、ゆっくりしてると逆に恥ずかしい。  
「ふふっ、私は随分と好いて貰ってるのだな。何もしてないのに大きくなってるぞ?」  
 めだかは俺の頬から手を離すと、その場で膝立ちになり、勃起した陰茎に目線を合わせて微笑む。  
 本当、心と身体は別だよなぁ。幾ら拒否しても、好きな女に触れられただけでコレだよ……はははっ。  
「うーむ、凄いな。他のペニスを見た事は無いが、善吉のはたくましいと思うぞ。血管が浮き出て、太くて、固そうで、ふうぅっ……みごとに反り返っておる」  
 冷静に解説するめだかの吐息は、少し、ほんの少しだけ乱れていた。いやらしく熱を帯び、肩を上下させて呼吸する。  
 俺しか気付かないだろう些細な変化。めだかは……興奮してるんだ。  
 冷静なフリをして、間近で熱い吐息を吹き掛けて、呼応してビクビク震える陰茎に釘付けになってる。  
「男はコレを使ってセックスをするのだろっ? だったら、私のクチを貸してやる。思い切り腰を振って良いぞ。イラマチオ……だったか? 思い切り、イラマチオしろ善吉」  
 そして理由も教えられぬまま、めだかは俺の手首を取ると、躊躇(ちゅうちょ)無く自らの頭に乗せたのだった。  
 
「ほらっ、私のクチを女性器に見立ててセックスすれば良いんだ……簡単だろ? なぁに気にするな。私が咳込んでも、嘔吐いても、お前は気にせず動いてくれ」  
 めだかは上目で見上げ、小さな口をいっぱいに広げ、手を俺の背中に回して組む。  
 つまり、僅かでも腰を前に突き出せば、俺のガチガチはパックンチョされる状態。  
 しかもこんな誘い方されたら、誰だって断れねーっつーの!! 断れねーよ、断れねーけど……  
「無理すんなよ、めだかちゃん。好きでも無い男にこんな事すんな」  
 まだコイツは幼馴染みだから。コイツの中で俺は、信頼できる幼馴染みだから。  
 好きな女とできるなんて嬉しいさ。けど、その女が俺を好きじゃありませんでしたってのは、ちょっと悲し過ぎるぜ。  
 ならここは、できるならしたいけど、本心はしたいけど、断腸の思いで……引き離す。  
 そう決めて、乗せていた手を後ろに滑らせ、めだかの手を解こうとするが、  
「おい聞いてんのか? だーかーらー、ぎっ……離せってばよ!」  
 両指はガッチリと交差して組まれ、絡まり合って、一向に動かない。  
 それだけ、めだかの強い意志が伝わって来る。  
「イヤだっ!! 私は気付いたんだ……お前の好意を知っていながら、それを当たり前にして、良い様に使ってた自分の愚かさに」  
 クチは相変わらず陰茎の前。目を細めて俯き、溜まり切った考えを漏らす。  
 俺は全然気にしてないが……っつか、今までは気付いて無かったのかよっ!?  
 まっ、何にせよ、  
「それぐらいで愛想尽かしてたら、幼馴染みなんかやってねーよ」  
 今更だわな。こっちは分かってて使われてんだから。  
「ふふっ、優しいな善吉は……でもな、スキと言う感情がまだ理解できないんだ。お前の好意に、いつ応えれるかもわからんのだよ」  
 
 そんなもん、とっくに覚悟してるっつーの!  
「もう十五年も待ってんだ、後十年ぐらいは待ってやるさ」  
 だから、安心させる為の保険を。こんな行動に二度と走らせない為に。  
 俺の好きな女は、自分を大切にする人で在って欲しいんだ。  
 そう思えば、気分だって落ち着いて来る。深い呼吸を一つ、二つ、三つ。  
 めだかを見下ろして見詰め、無理をするなと教え諭す。  
 俺達はゆっくりでいい。恋をするのは、大人になってからでもいいんだよ。  
 でも……  
「十年で足りなかったらどうする? だがな、それでも私は、お前に隣へ居て欲しい。だからっ、ぜんきちぃっ……お前の想いを、好意をっ、受け止めさせておくれ?」  
 めだかは俺の想像を超えて切羽詰まっていた。  
 腕を離すどころか、更に力を篭めて腰を引き寄せる。  
「他の女を見るな。私を好きにして良いから、このカラダで……満足してくれ。さぁ、挿れろ善吉っ! えんりょなきゅ、ふぇっくすしろ!!」  
 ガラスの覚悟は音を立てて崩れ落ちた。  
 こんなにイヤらしく誘惑されたら、雛鳥の様に口を開けセックスしようと、  
「でっ、でもさ……」  
 好きな女に言われたら、俺は……  
 
 
「 い れ ろ 」  
 
 
 ちっ、くしょぉぉぉぉぉっ!!!  
 両手をめだかの頭部に置き直し、先端を唇の間にネジ込み、そこからは根元まで、  
「もっ、ヤメないからなっ!!」  
 
 ぢゅぷぢゅぷぢゅぶぢゅぶぢゅぶ……  
 
 一息でペニスを差し挿れた。  
 狭い咥内を掻き分け、柔らかな頬肉を押し広げ、粘着質な唾液の中を扁桃腺がカリ首に引っ掛かるまで、深く深く杭を打ち込む。  
「あ、あ、あっ、あ゙っ……」  
 めだかは小刻みに身体を震わせ、目を見開き、それでも頬を上気させたままで、声にならない声を漏らす。  
 苦しそうで、けれど繋がれた手は決して離さない。  
 まるでそうするのが義務かのように、咽奥まで到達してるペニスを、拙(つたな)く、優しく、一生懸命に、グチュグチュと刺激してくれる。  
「うぅっ……めだ、かぁっ」  
 とても、気持ち良くしてくれる。  
 溶けて無くなってしまいそうな程の情熱的な熱さ。このまま動かなくても射精してしまうだろう。  
 でも、めだかは、焦点の合わない虚ろな瞳で俺に訴えてる。批難を浴びせてる。  
 咥えままモゴモゴと口を這わせて三字。  
 
 
『 う ご け 』  
 
 
 めだかは、自らを性欲の捌け口にしろと言ってるんだ。  
 苦しいのに、頑張って、無理をして、小さなクチでいっぱいに頬張る。  
 
 容量が限界を越えて溢れ、唾液がボトボトと胸元に垂れ落ちても、美味しそうに、愛おしそうに、ペニスに吸い付いて離れない。  
 こうなったら後はもう……  
「動くぞ? できるだけ早く、終わらせるから」  
 めだかの望みを叶えるだけ。  
 
 ぢゅる、ぢゅる、ぢゅる……  
 
 吸い込み、搾り取ろうとする力に反抗して、先端を唇の裏側まで引き抜き、  
 
 ぢゅぷんっ!!  
 
 喉の奥、食道の入口へと打ち付ける。  
「ぁ、ぁっ、あっ、ぁふぁっ……」  
 荒々しく。力任せに。欲望を貪って。  
 奥を突く度に響く微かな吐息を聞きながら、優越の征服感に身を浸す。  
 だって経緯はどうあれ、あの幼馴染みとセックスしてるんだ。しかも相手から求めて来た。これ以上、心まで高揚する事はきっと無い。  
 だったら、今。この時。この瞬間。ここだけの快楽に流されたって良い筈だ!!  
「ううっ……めだかぁ、めだかぁぁぁぁぁぁっ!!!」  
 唇から食道まで、抜け出ないギリギリの最長のストロークで、一心不乱に腰を振る。  
 
 ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅっぷ!!  
 
 めだかの中は、本当に気持ちいい。  
 引き抜く時はキツく締め付け、押し込む時は優しく吸い付く。舌は裏スジからカリの括れまで舐め回し、俺のピストンに応えて自在に動きを変える。  
 俺の為に、俺の好きだって想いを受け止める為に、まともに呼吸できないのを我慢して、ひたすらに射精へ導いてくれてるんだ。  
「もっと、はげしゅく、ひろっ……」  
 
 ぢゅっぷ、ぢゅっぷ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっ、ぢゅぶっぢゅぶっぢゅぶっぢゅぶっ!!  
 
 めだかは、まるで喉の奥が性感帯で有るかのよう。  
 一突きごとに身体を震わせながら、ヨダレを口横から零しながら、恍惚とした表情のままで、好きに咥内をなぶらせてる。  
 そっか、めだかは喉の奥が感じるのか……なら、もっと気持ち良くしてやるよ。  
 一方的じゃなくてホッとした。俺はイキそうだし、めだかも、遠慮無く、イッてくれっ!!  
「めだかっ、めだかぁっ! イク、ぞっ……」  
 乗せていた両手を寄せてめだかの頭部を前傾させ、口から食道までを真っ直ぐにする。  
 
 そして、  
「ふうっ!!」  
 唇をこじ開け、頬を押し広げ、小ぶりなノドチンコを擦り上げて、口の中よりも、もっとエロいヒダ壁に包まれた穴……  
 
 ぢゅぶぶぶぶぶぶぶっ!!  
 
 更に狭くキツい穴を、ヌルヌルな肉の突起まで一気にえぐる。  
「はへぇっ!!?」  
 すると痛いくらいに咽穴は痙攣して締まり出し、尿道を拡張させて、噴き出しそうな精液を通り易くしてしまう。  
「ぐっ、力を緩めてくれ! このままだとナカに出しちまうぞ!!」  
 我慢なんてできない。このままだと、確実に中へ射精する。  
 さすがにそれは苦しませ過ぎ……そう思い、ペニスを引き抜こうとするが、めだかは白目を向き、痙攣しながらも、一層に背中へ回した手で俺を抱き締めるだけ。  
 震動するヒダ壁にヌチュヌチュと咀嚼されて、捕らえられて監禁され、射精を強要されてる。  
 だけど、そんな事したら、俺はもっとお前を……  
「うっ、ぐっ、頼むよっ、めだか……抜かせてくれ、本当に、限界なんだっ!!」  
 こんな献身的な奴、これ以上好きになったら、十年なんて堪えられるか? そんな自信ないぞ! きっといつか間違いを起こす。  
 だから、俺はっ!!  
 
 
「 だ せ 」  
 
 
「めだ、かっ……ぐぎいぃぃぃぃっッ!!?」  
 びゅるびゅぅぅぅぅぅっ!! びゅびゅっ! びゅくびゅく!! ドクンドクンドクン……  
 空になるまで射精した。  
「ふんんんんんっ!!?」  
 気持ち良く搾り取ってくれる穴の中に、  
 好きな女の口の中に、  
 二度と無いかも知れないチャンスを逃さぬ様に、  
 逆流して唇の隙間から垂れ落ちるまで、大量の精液を注ぎ込む。  
 そこまでしてやっと、めだかの力が抜けた。組まれていた手から、漸く解放される。  
「はあぁっ、ゆっくり、引き抜くから……んっ!?」  
 奥深くまで呑み込まれていたペニスをズルズル引きずり出すと、めだかは支えが無くなったかの様に、アヒル座りの姿勢に崩れ落ちた。  
 ペタンとお尻を着き、口は開けたまま、閉じ切らない咽の奥まで見せ付けて、虚ろのな瞳で俺を見上げてる。  
「あっ、あっ、あっ♪ だせ、とはいったが……だれがっ、こんなに、たくひゃん、しゃせーしていいって、いったんら?」  
 未だ定期的にビクンと身体を揺らし、舌足らずな声で俺に不満を吐き出す。  
「はぁっ、はぁっ、めだかぁっ、凄く……はぁっ、気持ち良かった」  
 俺は息を整え、めだかに礼を言い、  
「ふふっ、まだっ、おなかのナカで……びゅくびゅく、ゆってるぞ?」  
 めだかは人の役に立った事がそんなに喜ばしいのか、今度は満足そうに、自らの腹を両手で撫でた。  
 
 
「すまんな善吉、みっともない所を見せてしまった」  
 後始末を終え、二人並んで夕焼けの帰路を歩く。  
「気にすんなよ、俺も似たようなもんだからさ」  
 二人でゆっくり、歩幅を揃えて。同じスピードで、ゆっくり、ゆっくり。  
 まっ、付き合うってのに進展は無かったけど、当分はこのままで良い。幼馴染み以上、恋人未満の微妙な距離で。  
 こっちもゆっくりだ。焦らずに、ゆっくり、ゆっくり、距離を縮めて行く。今日はその自信が付いた。  
「おちん……ペニスとのセックスだが、ふふっ、なかなか良かったぞ」  
「ははっ、さようですか」  
 もう笑い話しになってるが、めだかの顔は赤い。俺もそうだろう。夕日と全く違う紅葉色。  
 
「だから頑張れ」  
 唐突に、全文と繋がらない台詞。  
 扇を開いて口を隠し、視線だけを俺に向けてる。  
「頑張れ善吉っ!」  
「はっ?」  
 だから何を頑張れと……  
 
「頑張って私を落とせ。頑張って……私を惚れさせておくれ」  
 
 それはまぁ、頑張らにゃならんなー。  
 
 
 

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