あたしがストレイトキャッツにバイト入りする少し前の話。  
 あたしは今日も下僕である都築巧を探して、放課後一色に染まる校舎内を歩いてた。  
「巧〜、どこにいるのよ。この梅ノ森千世様が直々に探しってやっているのよ。早く出てきなさいよ!」  
 二階へと続く階段を上り、角を突き当たったところに、ようやくあたしの下僕を見つけた。  
 あたしはにんまりとした笑みを浮かべ、巧の方へと抜き足差し足忍び足で近づき、その腰にバッと飛びつく。  
 あたしに飛びつかれた巧はグラリと蹌踉けるも、どうにか体制を整え、驚いたような迷惑そうな眼差しであたしを見つめる。  
「おい、梅ノ森。急に後ろから抱きつくなよな。ビックリするだろう?」  
「ふ〜ん?じゃあ、前からならいいの?」  
「ちょ、そういうこと言ってんじゃねぇー!お、女の子がなぁ、気軽に男に抱きつくなと言うことを言ってるんであって」  
 あたしの冗談交じりの言葉に、巧は顔を真っ赤にして反論する。  
 そんな巧の言葉を華麗にスルーし、自慢のふわふわの金髪を掻き上げ、  
「ふん、まぁいいわ。そんなことより、巧。あたしの呼びかけに応答しないってどういう事?今日の昼休みの時、あたし放送で言ったわよね?  
 放課後に迷い猫同好会の部室に来なさい、と。それなのに来ないのはどうして?」  
「そ、それは・・・・・・。う、梅ノ森にはかんけぇねぇだろ!」  
 巧はあたしの言葉に口ごもり、終いには逆ギレときた。  
 あたしはそんな下僕の態度に、堪忍袋の緒が切れ、指をパチンと鳴らした。  
 すると、あたしにいつも付き添っている二人組のメイドが音もなく現れ、呆然としている巧の背後に回り、巧の首筋に手刀を打ち込む。  
 巧は糸の切れた人形のように倒れ込み、それをメイドの一人が支えた。  
「ふん、聞き分けのないバカ下僕には体で分からせるしか、仕方ないようねぇ。鈴木、巧を部室に運びなさい」  
 メイドは恭しくかしこまりました、と礼をして、巧を抱えたまま、煙のように消えた。  
 あたしは鈴木を見つめ、ニヤリと不適に笑い、巧が待つ部室へと向かったのであった。   
 

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