「ふぃー、疲れた疲れた」
宿の部屋に入るなり、アクアはベッドの上にころりと倒れこんだ。
今日もアクア一行はメモリアを目指してまったりと旅を続けていた。
空港に近づくにつれて村は増え、野宿ということは少なくなったが、それでも徒歩での旅だと時間はかかる。
昼からずっと歩きっぱなしで、村に着く頃にはとうに日が暮れていた。
アクアは痛む脚を揉み解し、不機嫌そうにぶつぶつと呟く。
「まったく、地図を見間違えなけりゃ夕方には着いたってのにさ」
とはいえ地図を見間違えたのはアクア自身であり、しかも行程の半分以上はミカゼにおぶってもらっていたのだが。
それでも疲労は濃く、それはそのまま眠気となって返ってきた。
「……ねむ」
隣の男部屋でミカゼが大量の荷物を置いている音を聞くともなしに聞いているうちに、アクアはうとうとと目を閉じかけた。
「アクアさん、アクアさーん」
が、部屋に入ってきたリュシカののんびりした声に、不機嫌そうに体を起こす。
「宿の人に聞いたら浴場、もうすぐ閉めちゃうそうですから、今のうちお風呂入っちゃいましょう」
「風呂? あたしゃ明日の朝入るからいいよ。もう眠くてさ。んじゃおやすみー」
手を振って布団に潜り込もうとしたが、リュシカに腕を掴まれて引きずり出された。
「駄目ですょ。女の子なんですからちゃんと清潔にしておかないと」
「大丈夫だってば。今日は涼しかったからそんな汗もかいてないし。ほら、腕離しな」
「……ほんとですか?」
リュシカは首を傾げ、アクアの腕を離した。
やれやれと溜息をつき、アクアは再び暖かい布団に入ろうとした。
しかし、それを止めたのは予想もしなかったリュシカの行動だった。
腕の代わりに布団の中からアクアの脚を掴み出したのだ。
「あん? ちょっとリュシカ、何やって……」
疑問の声も耳に届く様子はない。
そして、リュシカはアクアの裸足に鼻をつけると、ふんふんと鼻をひくつかせた。
「ほら、やっぱり汗臭いじゃないですか。ちゃんと汗流さないと病気になって死んじゃいますょ?」
「な、ななな……!」
リュシカの行動に顔を真っ赤にして――珍しいことではあったが――アクアは狼狽した。
慌てて脚を引き、今にも爆撃せんばかりの睨みを利かせる。
「リュシカ! あんた何してんだい!」
「え? 何って、アクアさんが汗かいていないっていうから確認をしただけですょ」
「だからって人様の足を嗅ぐ奴がいるかい!」
「そうですか? じゃあ首にします」
そう言って、「え?」と聞き返すアクアの細い首筋に再び鼻先を押し付けた。
リュシカの髪の先が鎖骨をくすぐり、アクアは思わず悲鳴を上げそうになる。
一度大きく息を吸ったリュシカは、すぐ近くにあるアクアの顔を見上げた。
「ほら、やっぱり汗かいて――」
「分かった! ちゃんと入るから体嗅ぐのやめなってば!」
諸手を挙げて観念の意を表し、リュシカから身を引く。
これ以上粘ったらどうやって説得されるか分かったものではなかった。
「良かった。じゃあ一緒に入りましょうね」
破顔一笑。
自分の行動に少しの疑いもないといったほんわかした表情でリュシカは微笑んだ。
(……ま、いいんだけどさ)
脱衣所で、籠に服を放り込みながらアクアは眠い目を擦った。
朝早くに風呂を開けているかも分からないのだから、入れるうちに入っておいた方がいいのは確かだ。
シャツもショーツも脱ぎ捨ててタオルを体に巻くと、ちらりとリュシカの方を見た。
同じく全裸になったリュシカは、不器用そうに髪を下ろしているところだった。
その胸元はアクアのほぼ平坦に近い胸と違い、明らかに膨らみを持っている。
肉体年齢にして二歳の差ではあったが、見下ろす自分の身体とは随分差がある。
(……生意気だね。年下のくせにさ)
実年齢でいえば年下というレベルの話ではないのだが、アクアは少し悔しそうに奥歯を噛んだ。
「それじゃあ入りましょ……って何で睨んでるんですかアクアさん」
「何でもないよ。しょーもないことだし」
不老不死の不可抗力であり、元の身体に戻ればまだ育つ可能性もあるのだ。
そう念じて何とか割り切ると、浴場の扉を開けた。
「気持ちいいですねー」
「んー、そだね」
アクアとリュシカは隣り合ってシャワーを浴び、一日の疲れと汚れを洗い流した。
閉める寸前ということで他に客はおらず、なかなかの広さを持つ浴場が貸し切り状態だった。
下ろした黒髪が湯に踊って背中を叩く感触に、アクアは自然と目を閉じる。
心地いい。湯の温かさに体が溶けていくようだった。
ただでさえ眠気に襲われていたアクアは、次第にかくんかくんと首を揺らし始めた。
「……クアさん、アクアさんってば」
「……んー」
肩を揺すられ、アクアは自分がまどろんでいたことにようやく気づいた。
汗を流しただけで満足してしまい、起きていようという気力が湧かない。
「もう。いくらシャワー浴びててもこのまま寝たら風邪引いちゃいますょ」
「……ん。分かってる」
「ほら、髪洗って体洗って、お風呂に入って温まりましょう」
「んー……」
がくん、と首が前に倒れる。
既に身体を洗い終えたリュシカはその様子に苦笑し、半ば寝ているアクアに提案をした。
「何ならあたしが洗ってあげましょうか? ムジナの穴にいた頃は小さい子達をよく洗ってあげてましたし」
普段ならば小さい子扱いした時点でリュシカは爆風に飛ばされていたことだろう。
が、今は飴もなければ意識もほとんどない状態だった。
それでも何とかリュシカの言葉を反芻したアクアは、その提案が自分にとって楽であると判断した。
「じゃ……任せる」
それだけ言って、リュシカにもたれかかった。
「はい、お任せください」
どことなく懐かしい気分になり、リュシカはその小さな体をそっと受け止めた。
わしゃわしゃと泡立つ感覚が髪に広がっていく。
目を覚ますわけではなく、さりとて完全に意識を失っているわけでもないアクアは夢うつつにそれを感じていた。
(……あ、そっか。リュシカに頼んだんだっけか)
長い髪が丁寧に洗われていく。
「アクアさんの髪、すごく綺麗ですねー。うらやましいです」
耳元で聞こえる声に頷きのようなものを返し、再び洗われる心地よさに身を委ねた。
「じゃ、流しますね。目閉じてください」
「……閉じてるよ」
むしろ開けろと言われたら抵抗するぐらいにまぶたが重たい。
シャワーが頭皮を打ち、泡が体の上を滑って流されていく。
先ほど以上にさっぱりし、アクアは気持ち良さそうに大きく息を吐いた。
「体洗いますょ」
「うん」
シャンプーのおかげで、何とかリュシカの言葉が分かる程度には目が覚めた。
泡立ったスポンジが背中をごしごしと擦るに至って、さすがに寝入ることはなくなった。
「はい、万歳してくださーい」
保母のように優しく包み込むようなリュシカの声には逆らおうという発想すら起きない。
言われるがままに両腕を挙げ、腋から横腹にかけてを擦られる。
「……くすぐったい」
「あ、ごめんなさいです。もう下げていいですょ」
腕を下げ、今度は肩、首筋と泡に覆われていく。
やがてスポンジは白い腿の上を滑り始めた。
「んっ……」
「あ、またくすぐったかったですか?」
「ん……いや、いいよ」
他人に体を洗われるのはどうも勝手が違う。くすぐったいぐらいは我慢すべきだろう。
と、そこまで考えたところでふとアクアの意識が蘇生し始めた。
(……って待てよ。何であたしリュシカに洗われてるんだっけ)
受け答えができるぐらいに目が覚めたというのに、子供のように任せきりにする理由はない。
「リュシカ、目ぇ覚めたから後はいいよ」
「そんなこと言わず、任せといてくださいょ。日頃のお礼も兼ねてるんで」
「……まぁ、いいけどさ」
そう言われては無理にスポンジを奪うというのも躊躇われる。
相変わらずのくすぐったさを感じながら、アクアはじっと泡に覆われる体を見つめた。
「はい、足上げてくださいね」
「ん」
持ち上げると、先ほど匂いを嗅がれた足先にスポンジの泡が絡み付いてくる。
指の一本一本、その股まで丁寧に丁寧に擦られていく。
そして足の裏、踵と撫でるように洗われる。
「さすがにそこは……っく……くすぐったいよ」
「ちょっと我慢してくださいね。ここは特にちゃんと洗わないと」
「……それって、そんなに汗臭かったってことかい?」
「あ、いえ。そういうわけじゃなくてですね」
さすがに気まずく思ったかリュシカが慌てて弁解する。
「えーっと、ほら、足はしょうがないですょ。一番汗かきますし」
弁解になっていなかった。
「ああもう、分かったよ。分かったからさっさと済ませとくれ」
諦めて反対の足も上げると、そちらもやはり拷問のように実に丁寧に洗われた。
何とか我慢し、洗う箇所が足首になったところでアクアはほっと一息ついた。
「ていうか変な順番で洗うね」
「下半身はくすぐったい箇所が集中してますからね。できるだけ分散させてるんですょ」
あんまりくすぐったいところばかり続けて洗うと子供は逃げるから、と付け足した。
子供と同じ洗われ方をされるのは心外だったが、自分から頼んだ手前文句も言えない。
ここはリュシカの流儀に従うしかなかった。
脚全体が泡に覆われると、次にリュシカは胸にスポンジを持っていった。
「じゃあ次はお胸ですね」
「え。いや、そこは自分で――」
先ほどの話からすると、すぐに股を洗うとくすぐったいからということだろう。
が、リュシカが胸を擦った瞬間アクアの体に走ったのはくすぐったさどころではない感覚だった。
「ひゃ!」
「え? どうかしましたか?」
「ん……いや、何でも」
乳首が擦れた瞬間、不覚にも高い声が漏れてしまった。
散々丁寧に洗われて敏感になった体が、胸への刺激を何倍にも高めて受け取ってしまったのだ。
「? じゃあ続けますよ」
リュシカは背後からアクアを抱き寄せるようにして、再び胸を洗い始めた。
泡でぬめる背中にリュシカの膨らみが押し付けられ、妙に生々しい感触が伝わってくる。
(って……リュシカ相手になんで変な気分になってんだいあたしゃ)
咳払いをして、何とか自制を保つ。
今自分は胸を石鹸で洗われているに過ぎない。いつも自分でやっていることだ。
(ただ体洗ってるだけ、ただ体洗ってるだけ、ただ……)
「ひぁん!」
ぬるぬるした感触が胸全体を撫で、我慢できずに声を上げた。
胸の奥底から湧いてくる感覚は、くすぐったさではなく間違いなく性感だった。
「アクアさん、ひょっとして胸がくすぐったい人ですか?」
さすがに怪訝そうにリュシカが尋ねてくる。
「ん……うん、少しね。だから後はやっぱり自分で――」
「でももう少しですからちょっと我慢してくださいね」
優しく擦るのがくすぐったいと思ったのだろう。リュシカはごしごしと力強く胸を擦った。
「……っ! ゃっ……!」
勃ち上がった乳首がスポンジで強く擦られ、自慰以上の性感が生み出される。
唇を噛んで必死に喘ぎを殺しても、体は関係なくビクビクと震える。
(は、早く終わってくんないかな……)
何だか自分がひどく無防備である気がして、アクアは所在無さげに視線をたゆたわせる。
さらに何度か乳房ともいえない乳房が擦られ、アクアは体を強張らせた。
「はい、胸はもう終わりでーす」
アクアの葛藤を知ってか知らずか、リュシカは至って気楽にそう告げた。
(はぁ……何だかなぁ。この子の天然に振り回されっぱなしじゃないか)
ぐったりといった風情で脱力するアクアの足下に、リュシカはシャワーを浴びせる。
足の泡が洗い流されたのを確認して、リュシカはアクアの耳元で告げた。
「じゃ、次立ってください」
「はいよ」
敏感な胸が終わってアクアはすっかり気が抜けていた。
立ち上がらせて、次にどこを洗うつもりなのかなど考えもしなかった。
「それじゃ、ここで最後ですょー」
あやすような穏やかな言葉と共に、スポンジがアクアの体毛も生え揃っていない股間に密着した。
「あんっ!」
自分のものとは思えないようなひどく女らしい声が漏れ、アクアの体が崩れ落ちそうになる。
何とかリュシカの肩に掴まって踏みとどまると、リュシカの笑い混じりの声が上ってきた。
「お股はくすぐったいですょね。でも我慢してくださいね」
まったく悪気のない様子で、スポンジがアクアの性器を前後に擦っていく。
胸への刺激で準備の整っていた性器は、透明な体液をたっぷりと分泌してスポンジに染みこませていく。
リュシカは気づいていないようだが、スポンジが離れた瞬間、膣口との間にねっとりとした糸が伸びるのが見えた。
リュシカの肩に掴まったまま、身をよじってアクアはスポンジを避けようとする。
「あ、まだ途中ですょ」
「そ、そこは自分で洗える! ていうか全部自分で洗えるからもういいよ!」
「ほら、そんなにじたばたすると転びますょ? くすぐったいならちゃんと強くやりますから」
子供を洗ってるときにそう対応してるのだろう。リュシカはアクアの抵抗に取り合わず、再度股間へスポンジを押し付けた。
「くぁっ……! あっ……ゃめ……!」
ほころんで蜜を垂らす膣を、その上で静かに固くなっているクリトリスを、スポンジと泡が這いずる。
「ここは汚れが溜まりやすいし自分じゃ洗いづらいですからね。じっとしててください」
スポンジに明かりを反射する透明な濡れ糸が絡み付いていることに首を傾げはしたが、リュシカの洗浄は止まらない。
やがてスポンジは股の下を大きく擦り、尻の側にまで及んだ。
どうせだからこのまま全部洗おうというのだろうか、小さな臀部もすぐに泡に覆われた。
体中がぬるぬるする。
研ぎ澄まされた皮膚感覚が泡の一粒一粒まで拾っているような気がして、アクアの全身が震える。
そしてリュシカは女性器を洗うのにこだわりがあるのか、尻を洗いながらも返す手で性器を擦っていく。
「ふあぁっ! やっ、やぁぁっ!」
もはや声を隠すことなどできず、アクアは喉の奥から性感のままに喘ぎを搾り出した。
顔は真っ赤に紅潮し、目元に浮かんだ涙は拭われないまま頬を伝い落ちる。
(違う……自分でするのと、全然……!)
百年の間に、アクアは自慰を重ね、未発達な体でも十分性感を得られるようになった。
が、自分の指で思うとおりにするとの他人に触られるのとでは羞恥も快感も桁が違った。
淫らな声は抑え切れず、体はまったく言うことを効かない。
ここに至ってようやく子供相手のときと違うと感じたのか、リュシカが顔を上げる。
「アクアさんどうかしたんですか? ……まさか体の具合が!?」
肩にほぼ全面的に体重をかけているアクアの腰を支え、心配そうに尋ねる。
ここで止めろと言えばリュシカはさすがに止めるだろう。
存在変換してしまいそうな羞恥も、小さな体に収まりきらない快感も落ち着くだろう。
だが、
(……ここまで気持ちよくなって、やめられるわけないだろ……!)
誰にともなく、捨て鉢な気持ちでそう思い、リュシカの頭に抱きつくようにして体重を預ける。
「……何でも、ない。もう少しだろ? 続けとくれ」
「でも……」
「いいから!」
「いや、あの、顔にお胸が当たって見えないんですけど……」
言われて顔をさらに赤くし、アクアは少し体をずらす。
(何やってんだろ、あたし……)
自嘲の言葉は、首を傾げながら再度リュシカが洗い始めた瞬間に喘ぎに消された。
スポンジは性器を、尿道を、肛門を泡にまみれさせ、軽い摩擦を与えていく。
「やっ…あぁぁ! ふぁ……っ!」
「あ、あの、アクアさん?」
「……」
無言で睨むと、リュシカは首をすくめて股間を擦る。
リュシカにもアクアの変調が股への刺激によるものだと分かったようだが、何故そうなるのかは理解できていないようだ。
(これは……後でちゃんと教え込まないとね……)
十五にもなって性的知識が皆無なのは少しまずいだろう。
自分が今何故こんなにも切ない声を上げているのか、リュシカ自身の体に教え込まなければなるまい。
スポンジには大量の膣分泌液が絡みつき、もはや洗うというよりは汚しているというような状態だった。
それが塗り広げられるたびにアクアの幼い体が震え、涎がリュシカの頭の頂点に垂れ落ちる。
リュシカは気づいていないようだったが、その密かな汚染にすらアクアは倒錯的な興奮を覚えていた。
「あっ……あん……!」
全身がほのかに赤く染まり、洗われたばかりの体から汗が噴き出す。
膣から生まれた性感は全身の至るところに飛び火して体の制御を効かなくする。
「よ、よくわかんないですけど……とりあえず、シャワーで洗い流しますね」
リュシカがシャワーの吹き出し口を股間に向けたまま蛇口をひねる。
肩を痛いほどにアクアに掴まれ細かい動きのできない手は、必要以上にそれを回転させてしまった。
勢い良く噴き出た湯の束がアクアの体液にまみれた性器に叩きつけられる。
それがトドメとなり、性器から脳天まで狂いそうなほどの性的快感が突き抜けた。
「やっ……やぁぁぁぁぁぁっ!!」
がくがくと痙攣するように震え、シャワーの透明な滝の中に淡い黄色の流れが一筋混じる。
それを実感してその場に崩れ落ち、リュシカの体にすがりながら、アクアは激しく達した。
「あっ…あぁ……」
「アクアさん……? ほ、ほんとに大丈夫ですょね?」
その問いに頷こうとしたときにまた快感の波が来て、強くリュシカを抱きしめる。
失禁した尿が綺麗に洗い流されるまで、アクアは体内で暴れ狂う快楽に翻弄され続けた。
改めて自分とアクアをシャワーで洗い、腰砕けになったアクアを抱きかかえてリュシカは浴槽に入った。
少し冷えかけていた体を、十分高い温度の湯がじんわりと芯から温めてくれる。
「もう落ち着いたみたいですけど心配しましたょ。一体どうしたんですか?」
「…………」
同性の、しかもまったく無垢な少女の手で絶頂に導かれたのがショックなのか、アクアは無言でリュシカを睨む。
(恥ずかしかった……あたしとしたことが……)
百余年ぶりにお漏らしまでしてしまった。
顔を見られるのが恥ずかしく、温かな湯の中でアクアはリュシカの肩に顔を埋めた。
「あ、匂いを嗅ぐのは失礼じゃなかったんですか?」
「嗅いでないよ馬鹿」
軽く小突き、大きな溜息をつく。
失態は取り返せばいい。被害を受けたら、復讐をすればいい。
(あたしに恥をかかせたことを後悔させないといけないね……思いっきり恥ずかしい目に遭わせて)
そう思った瞬間、アクアの頭の中にはリュシカに無理矢理性を教え込む手段が無限に浮かんだ。
「……な、なんかアクアさん悪い笑顔浮かべてません?」
「んー? そんなことないって。あたしゃいつでも豪快にしか笑わないよ」
そう言って顔を上げたのは、いつものアクアだった。
その顔には、羞恥と快感ではなくサディスティックな微笑が張り付いていた。
アクアはリュシカを下から見上げると、今の気持ちを端的にこう表現した。
「覚えてなよ」
「な、何で怒ってるんですかー!?」
狼狽するリュシカの頭をそっと撫でながら、アクアは不敵な笑いを浮かべ続けた。