「おねーちゃん、じゃーねー」  
「ムームーマウスありがとー」  
プレゼントを手に満面の笑顔で手を振る子供達に手を振り返し、  
サンタの格好をしたアクアが、トナカイの被り物をしたミカゼの頭をたたいて命令する。  
「ほんじゃ次いくよトナカイ」  
「ヘイヘイ」  
やる気の無い声でアクアをおんぶしたミカゼが返事をする。  
 
ぼかーん。  
 
突然ミカゼの頭部で小さな爆発が起こる。  
「この世のどこにしゃべるトナカイがいるんだ馬鹿。子供の夢を壊すんじゃないよ」  
真っ黒になった頭で口から煙を吐いてミカゼが反論する。  
 
「トナカイ爆破するサンタの方が夢を壊すっつーの」  
「なんか文句あるのかい…?」  
そう言ってアクアはミカゼの鼻の穴に飴玉を詰め込む。  
「ふぁんでもあひましぇん……」  
ミカゼはただ従うしかなかった。  
 
 
屋根から屋根へと跳躍しながらミカゼはぼやく。  
「あーあ、魔方陣が始まるまでは町には帰らず修行に専念したかったのに」  
それを聞いて背に乗るアクアは少し目を吊り上げる。  
「何言ってんだい、きのこ食ってただけの癖に」  
アクアが山に入ってミカゼを見つけたとき、ちょうどミカゼはいつものきのこタイムを満喫(?)していた。  
「……好きで食ってたわけじゃないんだけどな……」  
 
「くだらないこといってるとまた頭吹っ飛ばすよ。飴なら今日はどこにでもあるんだから」  
メモリアのクリスマスでは、各家庭で飴細工を飾る風習がある。  
屋根の上から辺りを見回すと、玄関に、門柱に、バルコニーに、さまざまな場所に飾られた  
色とりどりの飴細工が幻想的な風景を作り出す。  
「すごくきれいな眺めなんだが……」  
(アクアを乗せて見ていると、まるで地雷原だな……)  
 
「まったく、ぶつくさいってるんじゃないよ。リュシカやジルのおっさんは最初から協力的だったんだぞ」  
それがイマイチ分からない。リュシカの方は分かる。  
にこにこしながら子供達にプレゼントを配る姿が容易に想像できる。  
しかし修行マニアのジールボーイがわざわざ時間を割いてまで  
サンタやトナカイの格好をして子供達の相手をする姿はとても想像できない。  
「……あんな顔のトナカイ見たら子供が泣くぞ……」  
 
「ま、あのおっさんはこの前の30指暴走の時に町の人達が殺された現場へ駆けつけてたらしいからね。  
今回手伝ってくれるのも、それが関係あるのかもね」  
「………………………………」  
 
メモリア政府は毎年クリスマスに怪我や病気で苦しんだり、親を失った幼い子供達へプレゼントを贈っている。  
しかし今年は、贈呈するプレゼントの数が多くなりすぎてしまった。  
それは、ヨマ一味の虐殺で不幸な子供が突然増えてしまったからだ。  
 
プレゼントの数は確保できたが、それを配る人員が少々不足していた。  
その話を聞いた時、アクアは即座に  
「じゃあ私達が手伝ってあげるよ。近頃は切り裂き魔も出て物騒なんだろ?」  
と提案したらしい。  
 
 
「で、次の川沿いの通りを左に曲がったところにある……あの黄色いレンガ造りの建物だ」  
地図を見るアクアに指示された建物の前へミカゼは着地する。  
「ここはさっきみたいな病院か、それとも孤児院か?」  
ミカゼの背から降りたアクアが答える。  
「小学校の寄宿舎だよ、親のいない奨学生や親元を離れた留学生の子が暮らし……」  
 
しかし、門の前でアクアは立ち止まり、喋るのをやめる。  
普通ではない気配が、目前の建物の中から感じられたからだ。  
 
「ミカゼ……」  
注意を促すと、棒つきの飴を取り出す。  
ミカゼも気配に気づいたのか、こくんと頷くと腰をかがめいつでも蹴りを放てる体勢で構える。  
門から約十メートルの距離にある入り口のドアの裏に何かがいる。  
 
と、突然四つ足の影が入り口から駆け出した。  
(速いっ!)  
その影は一瞬でアクアに近づき飛び掛ろうとするが、瞬時に繰り出した牽制の軽い蹴りと  
目潰し程度に抑えた爆発を同時に喰らい後ろへ飛びのいた。  
「くくくっ貴様らでは私は止められん」  
威嚇するように大声を上げ、影はミカゼとアクアの中間を走りぬける。  
速さと四つ足で走る体勢の低さで、アクアとミカゼはどちらもそれを捉えることができなかった。  
 
「メルチナ……?」  
まるで獣のように4本足で歯を剥き出しにしてうなる女は、どこか人間離れしてかつての面影を失っていたが、  
二人から数メートル離れた場所でこちらを振り返り睨む彼女は確かにメルチナだった。  
「ずいぶん獣じみた知り合いがいるじゃないかい?誰だいあいつは」  
アクアはすぐにでもスパイシードロップを発射できるよう構えてミカゼに問う。  
 
「女神の30指だよ……」  
「じゃ、撃つね」  
ミカゼの答えを聞くなり、容赦なくスパイシードロップを発射するアクア。  
「ちょっ、ま」  
ミカゼの静止が間に合うことなく、メルチナに爆撃が飛ぶ。  
しかしメルチナはまるで猫のような身のこなしでそれをかわすと、足元の地面を隆起させそこから近くの塀へ飛び移り、  
寄宿舎の向かい側にある建物の屋根へと飛び移ってそのまま闇へと消えた。  
 
「追いなミカゼ。あたしの魔法じゃ町を壊しすぎる」  
「分かった!!」  
返事をするとすぐにミカゼはメルチナを追ってジャンプする。  
「さてと……どういうことか説明してもらおうかね」  
アクアは通りの暗闇を睨みつける。  
その闇の中から、禍々しいオーラをまとった男が現れた。  
「さて、どこから説明すればいいんですかね……」  
薄笑いを浮かべながら、アダラパダは呟いた。  
 
「あんまりふざけたことを言うなよ……魔方陣の出場資格がなくなるからね」  
何も答えずつかつかとアクアの側へ歩いてくると、その脇を通り過ぎそのまま門をくぐるアダラパダ。  
「……まあ大体想像できてるとは思いますが、今メルチナさんは正気じゃねーんですよ」  
スパイシードロップの照準をアダラパダの背後にあわせ、彼の後について建物へともに入ってゆくアクア。  
 
「もともとこのメモリアは魔法使いの国と呼ばれるほど過去多くの魔法使いを輩出しています。  
ですから町のいたるところに彼らの遺物が存在する。正の遺物も、負の遺物も。  
まあ、こんなことはこの国で長い時を過ごしたあなたにはいまさらな話でしょーが」  
アクアとアダラパタは寄宿舎の地下へと侵入した。  
途中青ざめた顔で歩いてくる寮母と思われる高齢の女性と出会ったが、  
アクアが話しかけようとする前にアダラパダが極楽漣鞭で黙らせた。  
 
「何してるんだいっ!」  
とたんにアクアは憤怒の形相でアアラパダを非難する。  
「しょうがねーでしょ?今はとにかく時間が惜しいんですよ。  
余計なことで時間潰したくないんで」  
連鞭が老女の魂を掴む間アクアが手出しできないのを分かっているのか、  
余裕の笑みを浮かべてアダラパダは寮母を眠らせる。  
 
寮監から注意されているのか、生徒達は自室から出てこないのが幸運だった。  
騒ぎが大きくなっていない。今のうちにメルチナを狂わした原因を調べる必要がある。  
「魔力の残りかすを感じる……どうやらここか……」  
アダラパダが地下の一角の扉を蹴り倒すと、その部屋には濁った魔力が漂っていた。  
そしてその部屋の片隅に、ぐったりとしてギターを握ったまま気を失い倒れた妙齢の美しい寮母がいた。  
アクアが駆け寄り、脈拍や外傷の有無を確認する。  
そのどちらにも異常が無いのを確認し、アクアは安堵の表情をうがべ今度は部屋の様子を調べる。  
部屋の中央の石畳が1枚ぽっかり外され、その空間には何も無かった。  
 
 
「なるほど……確かこの寄宿舎はどっかの没落した豪商の家を建て替えたもんだ。  
……おそらく昔の家主が物珍しさに集めていた魔獣かなにかの封印があって、  
そいつが今の管理人達に存在を知られぬまま眠り続け、  
何かの拍子に封印が解かれ精気を吸うため人の体を借り暴れだした……そんなところかね」  
「メモリアでは年に1,2回の割合でこういう事件が起こるらしいですね……  
全く古臭くてしちめんどくさい町ですねぇ。……どうやらここにある大きなネズミの糞とかじられた木片を見る限り、  
ネズミのやろーが偶然封印を解いてそいつが出てきたと。  
……つまり、まずここでこの気絶した寮母さんに取り憑いた何かが、精気を蓄え今度はメルチナさんに取り付いた、と」  
 
すると、うやうやしく礼をしながらアダラパダはアクアの方へお伺いを立てる。  
「ちょっとだけこの人に話を聞きたいんですが、よろしいですか?  
急いで情報を得ないと、こちらの仲間も、そちらの仲間もピンチに陥りそうなんで」  
唇をかみ締めて、アクアは睨み上げながら答える。  
「一度操った後、危害を加えず魔法を解くなら別にいいさ」  
 
そんなアクアを楽しそうに見下ろしながら、アダラパダはケキャキャと笑う。  
「では、早速やらせてもらいますよ。極楽連鞭!!!」  
極楽連鞭が寮母の精神を支配し、失っていた意識を無理矢理覚醒させる。  
その瞳にアダラパダの携帯のマークが浮かび上がった。  
「では、あなたがここで体験したことを話してもらいましょうか……?」  
「私が…物置に掃除用具を取りに行こうとした時…この部屋の前を通った時、この部屋から物音がして…  
いつものように子供達が肝試しをしているとばかり思って扉を開けようとしたら…  
いきなり背後から見たことの無いメガネをかけた娘さんが『開けるな』って叫びながらやってきて」  
 
そこでアクアがアダラパダに問いかける。  
「あのメルチナってのはここで何をしていたんだ?」  
「別に僕は知りませんよ。いつも30指の皆さんの行動を把握しているわけじゃねーんで。  
まあ、僕がたまたま邪悪なエネルギーに気がついたようにメルチナさんも偶然魔獣の気配に気づいて駆けつけたんでしょ。  
なんせ僕らは平和を愛する女神様の使者ですからねぇ。ケキャキャキャキャ」  
「ふん。虫唾が走るね」  
そんなアクアの鋭い視線を受け流しながらアダラパダは呆れたようにため息を吐く。  
「…しかしメルチナさんにも困ったものですね。正義感が強いのはいいがこんな一握りの土も無いところじゃ  
どうにもならないことが分かっていただろーに。…で、その後あなたはどうしましたか?」  
 
アダラパダはまた女に問いかける。  
「突然見ず知らずの人に呼び止められてびっくりして…  
でも、そのあと急に扉から突然ギターが出てきて…」  
はっとして二人は彼女が持つギターに目をやるが、そのギターからはもう何も感じない。  
「そしてそのギターから今度は煙のようなものが出てきて私の体をムリヤリ部屋の中へ引きずり込んで…  
そしてその後部屋の中でその煙が私の体に染み込んできて…」  
この時、初めてこの夜アダラパダの顔から笑みが消えた。  
「染み込んで取り憑くタイプか。やっかいですねぇ」  
彼はおもむろに携帯電話を取り出した。  
 
そのころミカゼは、メルチナと格闘を繰り広げていた。  
「くそーどうなっちまったんだメルチナの奴」  
川原でメルチナのメテオンの肘うちを喰らったミカゼは困惑していた。  
「このまま時間をかけてはまずいぞミカゼ。  
おそらく娘に取り憑いているやつはあの娘の精気や魔力を吸い取りながら  
少しづつ肉体、魔法の使い方も慣れてきている。  
長期戦になればなるほどパワーもテクニックも上がっていく。  
今のうちあの娘の肉体を痛めつけ動かなくさせるしかない」  
「ってことはやっぱりメルチナには何か憑いているってことですか師匠?」  
「うむ、おそらく私のような魔獣が憑いておる。  
何度もお前があの娘と拳を交わすうちに確信が持てた。  
といってもわしに比べればかなり挌下の魔物じゃがの」  
「じゃあ、メルチナを傷つけず体から魔獣を引き剥がす方法とか知ってるんじゃないんですか!」  
「無いな」  
「そんな、師匠なら」  
「わしだから無理だと分かるんじゃ。  
あの娘に取り憑いておる者の憑き方はわしの憑き方とは全然違う」  
そこで二人の押し問答に突然アダラパダが乱入する。  
 
『もしもし、聞こえますか狐君?』  
 
突然、ミカゼの頭にアダラパダの声が響く。  
「な、何であんたが?」  
おもわず身構えあたりを見渡すミカゼ。  
『まあまあそう警戒しないで下さいよ。あ、あなたの頭に直接語りかけてるんで  
耳を塞いだりしても全く意味無いんでそこんとこよろしく』  
「で、何の用だよ!!」。  
 
『君にやってほしいことがありましてね、  
とりあえずなんとか彼女を止めてもらえないですかね。  
このまま町で暴れられれば被害が出ますし』  
「もうかなり出てるけどね」  
メテオンのせいですっかり変わったあたりの光景を見ながらミカゼは呟いた。  
『まあ、とりあえずできることなら無傷でメルチナさんを捕らえてくれませんかねぇ』  
「そりゃ俺もできることならそうしたいけどよ」  
『できますよ。難しいですが、方法が無いわけではないですよ』  
「本当かっ?どうすりゃいいんだ?」  
 
『まあとりあえず、メルチナさん犯してくれればいいだけなんで』  
「よしっ、分かった」  
より太くなったメテオンの腕の攻撃をかわし着地するミカゼ。  
「………………………………………………………………  
 
ええええええ、ってなんでそんなことする必要あるんだよ?!?!」  
 
『まー落ち着きやがりなさい。そうですねえ、どこから説明すればいいか。  
まあシャーマニズムって奴を1から説明するのも面倒なんで  
掻い摘んで乱暴に話しますよ。  
まず、今メルチナさんの体に何か別の魂が入り込んでそれが  
メルチナさんの体を乗っ取っている。  
これはまあ、なんとなく分かりやがりますよね』  
 
そのメルチナは四つん這いになって猫のように威嚇しながら  
「ふふふ、ついに人間達に復讐する時が…」  
などと呟いている。ミカゼはメルチナとは1、2回しか会っていないがどう見てもこれは別人だ。  
そう思わざるおえない。  
 
『そしてそのメルチナさんに取り憑いてる奴は女性に取り憑くタイプなんですよ。  
そしてそいつはある特定の条件を満たす女性にしか取り憑けない』  
そういえばさっき寄宿舎の門で、こいつはアクアを狙った。  
あれもアクアに取り憑こうとしてのことか?  
 
『そう、そういう他人の体を乗っ取るタイプの精神体は  
二つの取り憑き方によって分けられるんですよ。  
まず最初は精神の無い物体に依り代として取り憑き、  
それを身につけた者の精神を外から乗っ取るタイプ。  
身につけると人が変わってしまう呪いの妖刀やら仮面なんて類はこれですかね。  
 
そしてもうひとつは精神体自体が取り憑く者の精神の中に入り込み、  
内側から乗っ取るタイプ。  
そう、今まさにメルチナさんに取り憑いているそいつですよ。  
この内側から乗っ取るタイプの精神体が取り憑ける条件はまず女であること。  
そしてその女が処女であることの2つが条件なんです』  
 
「処女にしか取り憑けない?なんでだ?」  
『多くの国家、文化では巫女という職業につく女性は  
処女で無ければなれないことが多いんですよ。  
これは、一度男と関係を持った魂はもう人間の魂しか身ごもれなくなるからなんですよ。  
まあ修行すれば処女であろうと性別が男であろうと霊を体へ下ろす事ができるようになるらしいですがね』  
 
「じゃあ、俺がその、メルチナをアレすれば……」  
『そうですね、メルチナさんの体からは出てくるでしょうね』  
「ちょっと待てよ、メルチナの体から出たあとはどうなるんだ?」  
『……まあ、他の女の方に取り憑くかと』  
「それじゃ意味ねーじゃねーか!っていうかその新しく取り憑くたびにその、ナニしていかなきゃならないのかよ!!」  
『まあ、こちらとしてはメルチナさんさえ無傷でもどればいいんでね。  
外から取り憑くタイプなら依り代を破壊すればいいから楽なんですけどねぇ』  
「楽なんですけどねぇ、じゃねーよ。大体本人の許可もな」  
 
「甘いぞ、クソガキ」  
突然、耳元でアダラパダ以外の声がした。  
と、いきなり強烈な衝撃波がメルチナへ襲い、メルチナは吹き飛んだ。  
「アクア!いつの間に」  
「あんたがくだらない講釈を聞いている間にだよ。  
ま、ここみたいな人のいない所ならあたしが少し本気出しても大丈夫だろうからね」  
そういうと、アクアは倒れたメルチナに駄目押しのスパイシードロップを食らわせる。  
 
「……おい、やりすぎじゃねーのか?」  
「ふん、これぐらいで死ぬようじゃ魔方陣でも生き残れないし  
30指にもなれていないさ。  
それにあたしらが30指の都合に合わせる必要はないしね。  
そうだろ、アダラパダ?」  
しかし返事は無い。  
「とに、勝手に話しかけてきて勝手にいなくなりやがった」  
「ならこっちも勝手にやらせてもらうまでだ。  
おいあんた、聞こえるだろう。もうその娘の体は使い物にならないよ。  
そんなくたばりぞこないよりも、こっちにちょうどいい体があるよ。  
中身の魔力の量も段違いさ」  
 
そう誘いながら、アクアはメルチナへと近づいた。  
「アクアっ、なにを」  
ミカゼが叫ぶ間もなく、メルチナの体から煙状のオーラが立ち上がり、  
アクアの体を包み込みそのまま染み込んだ。  
 
「アクア……」  
恐る恐るミカゼが語りかける。  
「なに怯えてんだいミカゼ」  
「アクアの……ままなのか?」  
「とに、あたしの精神力を舐めんじゃないよ。  
あんな小娘とは鍛錬の質も量も段違いなんだからね。  
とはいえ、このままだとやばいね……畜生、  
内側からあたしの魔力を吸い取り始、てる」  
アクアの体がふらっと傾く。  
「おい、大丈夫か?」  
「今の所は、ね……このまま成長されればやばいけど……ミカゼ、  
川向に鉄柵で囲まれた大きな屋敷が見えるだろう……  
あたしを抱えて、鉄柵を飛び越えて館の中へ連れて行け。  
今日は誰もいないはずだ、ノックはいらない」  
「ああ、分かった」  
 
ミカゼは頷くと、アクアを抱え川を飛び越えた。  
 
館の中の寝室についてから、淡く頬を染めたアクアはベッドに  
腰掛けてわずかに視線を落としながら言った。  
「ミカゼ、今からあたしを抱け」  
 
「?ああ、こうか」  
そう軽く呟くとミカゼはアクアの体を抱きしめた。  
 
 
そしてそのまま約3分が経過した。  
 
「…………何をしている?」  
「え?いや言われたとおりに抱きしめ」  
 
ぼかーん。  
 
爆発でミカゼは吹き飛ばされる。  
「お前は馬鹿だ。本当に馬鹿だ」  
「なんだってんだいきなり!おまえのいうとおりにしたじゃねーか!!」  
 
「違う!!あたしが言った抱けというのは……つまり……  
その……セ、セックスしろってことだっ!!  
てか今までの話の流れから普通にそうなるだろ  
女の口から何恥ずかしいこと言わせてんだお前は死ねっっ」  
そう叫ぶとアクアは狂ったように飴玉を投げつけどんどん爆発させる。  
 
 
そんな感じで3分近くアクアの飴玉爆発地獄を必死で避けきったミカゼは  
肩で息をしながらアクアに問う。  
「だけどよおっ……ここでお前の体から追い出したとしても……  
すぐに煙になってどっかいっちまうんじゃないか……」  
おなじく息を荒くしたアクアは答える。  
「別に大丈夫だよ……ここは城にテロとかの異常があった時に  
大臣や官僚達がテロリストから逃れて潜むために作られた場所だからね……  
建物全体が簡単な対魔法使い用の結界で覆われている。  
魔獣の類が何かに憑依せずここから出ることは不可能さ」  
 
「他に方法はないんだな……」  
「あればとっくにそれをしてるさ」  
「……そのよう、セックスって言ってもよ……どこまでやりゃいいんだ?  
たとえばその、最後までやらなくても、指でやるだけとか、口でやるだけとか……」  
「全部に決まってるだろーが。最後までちゃんとやれ」  
 
「分かったよ……」  
 
ぼかーん。  
 
「なんだよ、なんでだよっ、今度は何だよ!!」  
吹っ飛ばされたミカゼは叫ぶ。  
「あたしとやれるのになんだいそのテンションの低さはっ。  
童貞のあんたが大魔法使いアクア様とやれるんだよっ!!  
もっと心底嬉しそうにしな!!」  
 
(童貞なのはその通りだけど自分だって処女じゃないか……)  
と思ったがミカゼは口には出さなかった。  
(でもまあしょうがない…腹くくるとしようか)  
 
意を決し、アクアのサンタ衣装を脱がせようとするミカゼ。  
 
ぼかーん。  
 
「今度は何だーー?」  
 
「うるさいっいきなり脱がせようとするやつがあるかい!!  
……その……あたしが脱ぐから、あんたは後ろ向いてなっ……」  
 
釈然とせぬまま言われたとおり後ろを向き、自分もトナカイの被り物を脱ぐミカゼ。  
 
「アクア、お前もしかして照れて」  
 
ぼかーん。  
 
「すんません、黙ります」  
 
後ろでぱさっぱさっというアクアの服を脱ぐ衣擦れの音が聞こえる。  
その音を聞くたびに、ミカゼはその姿を想像してしまう。  
 
(うう……でも、なんかその気になれないな……)  
そりゃアクア本人が許可を出しているし、アクアはかわいいと思うが、  
どうしてもミカゼはやる気になれない。たとえ実際には100年以上生きた存在とはいえ、  
外見上は子供にしか見えないアクアとする事に抵抗があるのだ。  
 
「……いいよ……」  
 
アクアの許しが出たので、ミカゼはゆっくりと振り返る。  
そこには、左腕で両胸を、右手で股間を隠しうつむきながら  
ベッドの上にぺたんと座るアクアの姿があった。  
 
(うっ……やべえ……)  
 
その幼い裸体は、子供のそれに少女の柔らかな肉がわずかについただけで、  
お世辞にも肉感的とはいえなかった。しかし、恥らうアクアの表情や  
仕草は成熟した女のそれであり、そんな肉体と雰囲気のアンバランスさが  
子供にしか見えない肢体を妖艶なものにしている。  
アクアの姿が目に入った瞬間、ミカゼはアクアを押し倒したい衝動に駆られた。  
 
しかしその少女のかたわらにおいてある大量の飴玉を見て、思いとどまった。  
 
「……あのーそこにある飴玉、片付けてくれません?」  
 
いつ爆発されるかわからない状況では押したおすどころではない。  
「うるさいよっ……」  
きっと顔を上げて叫ぶが、とたんにミカゼの裸(主に下半身)  
が目に入り赤面して目を伏せるアクア。  
「あんたが調子に乗った時に吹っ飛ばすためだよ!  
あと痛くしてもぶっ飛ばすからね!!  
ほら、いいから速くキスしな!!!  
……少しぐらいなら、その、舌入れてもいいから……」  
 
そういってベッドの上で目をつぶるアクア。その体はかすかに震えていた。  
 
考えてみれば、100年以上生きているとはいえ、  
彼女達は極力他人と干渉せず生きてきたのだ。  
恋愛経験の乏しさは自分とそう変わらないのかもしれない。  
 
ミカゼは震える少女に何か言葉をかけるべきかと思い、  
少し考えたがいい言葉は何も思い浮かばなかったのでやめた。  
 
そこでアクアの側へ行って同じように座り込んで、  
緊張して冷たくなった体をそっと力強く抱きしめた。  
 
すると、ミカゼの体の熱がアクアの体に伝わるっていくのとともに  
アクアの震えが収まっていくのが感じられた。  
そして、完全に震えが収まったのを見て、ミカゼは唇と唇を重ねた。  
それは、ただ唇と唇が触れるだけだった。  
舌を絡み合わせることも唇で噛み合うこともないごくシンプルな接吻。  
 
しかしミカゼが口を離すと、  
まるでアルコールを摂取したようにアクアの頬は赤く上気して、  
その瞳はとろんとしていた。  
 
「アクア、手ぇどけてくれる?」  
ほうけているアクアに体を離したミカゼが話しかける。  
 
「えっ…ああ……いいよ……」  
アクアはようやくまだ自分が両手で胸と股を隠したままであることに気がついた。  
しかしいいよと答えながら、アクアはなかなかその両腕を外そうとしない。  
 
ぎこちない動きで、両腕を少し移動させて、しばらくしてその動きを止め。  
そして数秒たってからまたその動きを最初から再開させる。  
 
まるで亀の歩みのようにゆっくりな動き。  
しかし、ミカゼはその両腕を無理矢理引き剥がそうとしなかった。  
まるで刺すような視線で、恥らうアクアの肢体の隠された箇所を、  
ジーと見つめ続けていた。そんなミカゼの視線を意識してか、  
アクアは顔だけでなく体全体がはんなりと桜色に上気してきた。  
 
「で、ここからどうすりゃいいんだ?」  
ようやく両腕を脇にのけ、  
全ての部分をさらしだしたアクアにミカゼが問いかける。  
「そ、そんなの好きにすればいいだろう!」  
「と言われても、ほら、俺って童貞だし。  
百年生きてきた大魔法使い様にはとてもじゃないけど知識とかなわないし。  
……ぜひともやりかたとか教えて欲しいなあ、と」  
それは、ミカゼのちょっとした仕返しだった。  
アクアは顔を真っ赤にしながら言った。  
「……ま、まず胸を揉んで……」  
 
「こうか?」  
そーっと胸を手のひらで掴むミカゼ。  
「あ…」  
思わず声を上げるアクア。  
「……今の痛かったか…?」  
「……別、に」  
「じゃあ、揉むぞ」  
その部分は本の少ししか脂肪がなかったが、そこを揉み解すたびに  
アクアの眉はまるで何かに耐えるかのように垂れ下がり、  
呼吸は不自然なほど荒くなっていった。  
 
「で、次はどうすればいいんだ?」  
アクアと同じく荒くなった呼吸をアクアの耳に吹きかけるように尋ねるミカゼ。  
「……あ?…ああ、……その、あたし、の、」  
胸への刺激を感じていたアクアは、  
より顔を赤く染めると殆ど聞き取れない声で言った。  
「………股の……割れ………目を………  
指で……ゆっくり………………なぞって…」  
 
ミカゼは左手を何も生い茂っていないアクアの恥丘へ伸ばす。  
すると、ミカゼの指の感覚神経がクチュッとした液体の感覚を捉えた。  
そしてミカゼはその蜜の分泌される入り口に指をあてがうと、  
そのまま細長いすぼまりを指で前後に擦り付けなぞり始めた。  
 
「あっ、あぁ……」  
その小さな背を反らし、涙目のまま甘美な喘ぎ声を部屋に響かせ始めたアクア。  
「やっ、やあぁっ、やああぁぁっ」  
時々軽くイっているのか、体をビクンと大きく震わせながら、アクアは甲高い悲鳴を上げる。  
 
そんなアクアを見てミカゼの中の何かがどくんと脈打った。  
 
 
普段は自分を苛めるアクアが。  
威張ってばかりいるアクアが。  
すぐに魔法で攻撃してくるアクアが。  
 
自分の指で、声で、熱で。  
悶え、喘いで、泣いている。  
 
 
ミカゼは指を膣口から引き抜き、アクアをベッドへ押し倒す。  
 
「アクア……次は?」  
アクアの澱んだ視界がその瞬間だけわずかな羞恥で光るが、  
その光もすぐに澱みの中へ消え殆ど聞こえない声で  
 
いれて  
 
とだけ呟いた。  
 
 
「……分かった」  
ミカゼも短く答えると、すぐにアクアの上から覆いかぶさり、  
自らの肉棒をアクアの入り口へ押し付ける。  
 
「いくぞ、アクア」  
 
 
ゆっくりと、ミカゼの陰茎がかさの部分までアクアの胎内に埋まる。  
そしてその後は、一気に腰を突き出してアクアの純潔を貫いた。  
 
「……い……」  
耐えるように、アクアが小さな唸り声を上げる。  
 
ミカゼは、キスをした時のようにアクアを強く優しく抱きしめる。  
すると、アクアが泣き出しそうな顔のままミカゼを抱き返す。  
その潤んだ瞳が、少しだけ笑ったようにミカゼには見えた。  
 
アクアの中はあまりにも狭く、ミカゼのものを押しつぶすかのような圧力をミカゼは感じていた。  
しかしそんな圧力の中前後に自らのものを動かして肉壁を掻き分ける感覚は想像を絶するほど心地よく、  
もはやミカゼは腰の動きをとめることができない。  
その激しい動きから生み出される鈍い痛みに、ついにアクアの目から涙がこぼれる。  
 
しかしそんなアクアの痛がる姿も、ミカゼの目にはいつもと違う官能的な姿に映ってしまい、  
ミカゼはぺろりと頬を伝う涙を舐め取るとますます腰の動きを加速させる。  
 
そして、肉のかさを締め上げる何百枚もの肉のひだの感覚を感じながら、  
ついにミカゼは限界に達した。  
 
「うっ……」  
 
短くうなり声を上げると、ミカゼはアクアの胎内に精液を何度も吐き出した。  
 
射精してから5分ほど経った。  
いまだ二人は裸のままで寄り添うようにしてベッドで寝転がっている。  
室内では二人の荒い小さな呼吸以外の音がしなかったが、  
ミカゼがその沈黙を破った。  
 
「……魔獣は消えたのか?」  
 
「……ああ、あたしの中にも屋敷の中にも気配は感じないね。  
おそらくあたしの中からはじき出されたけど  
取り憑くものがないから、そのまま霧散して掻き消えたみたいだね」  
「そっか。なら良かった」  
 
しばらく間を置いて、アクアが言った。  
「最初に私は調子に乗るなって釘を刺したよね…?」  
なんだか雰囲気が悪くなり、ミカゼが内心どきどきして答える。  
「俺、なんか調子乗ってたっけ?」  
「乗ってたよ。あたしに、『やり方教えろ』とかいって  
やらしい言葉無理矢理言わせただろ」  
 
ぼかーん……と来ると思ってミカゼは身構えていたが、  
何も起こらなかった。  
 
「別に、ゆるしてやってもいいぞ」  
「え、本とか?」  
再度顔を紅潮させてアクアははぼそぼそと呟いた。  
 
「ああ。そのかわり、その、キスした時みたいに抱きしめてくれ…」  
 
ミカゼは、言われたとおりにアクアを強く優しく抱きしめた。  
 
 
「ミカゼ……あたしとの約束を守るまで、死ぬんじゃないよ……」  
 
 
 
 
終わり  
 

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