指を舐め上げるリュシカを見下ろしながら、ティトォは感動に震えていた。  
自らの愛液すら付着する指を何の躊躇もなく舐め上げる目の前の少女を見て、  
その魂が完全に堕ちたことを確認したからだ。  
ティトォの肉体の時間は、百年前に止まった。  
異性に対して激しく興味を持ち、性欲が湧き上がる17歳の肉体のまま。  
もしティトォの肉体がそのまま老いていったのなら、  
肉体の衰えとともに劣情も衰えていっただろう。  
しかし、ティトォの時間が止まるとともに、性欲の減退も止まってしまった。  
紛い物の体ではあるが、その体は常人と同じように男性ホルモンを分泌し、  
それとともに肉欲はくすぶってゆく。  
いつまでも消えることなく増え続けるそれは長い間蓄積され、  
常人の抱くそれとは質、量ともに異なる怪物のような物になってしまった。  
それはティトォ自身がよく自覚し、今まで押さえつけてきた。  
だがティトォの前にある少女があらわれてしまった。  
少女は彼に全幅の信頼を寄せるようになり、  
やがて信頼以上の感情を抱くようになるのにさして時間はかからなかった。  
そんな少女の好意は、ティトォには重荷だった。  
なぜなら彼女の身の安全を守る自信がないのだ。  
 
女神の30指からも、自分の内の怪物からも。  
 
だから、わざと拒絶した。そして、自らに近づかせないようにした。  
メモリアについてからは意識的に会わないようにし、会っても気のない振りをした。  
しかし、さまざまな偶然が重なり、ティトォとリュシカは関係を持ってしまった。  
その上悪いことに、リュシカはティトォの行為を全て受け入れ、  
ティトォの計算を上回る速度で快楽に目覚めてしまった。  
そのリュシカの姿が、ティトォの怪物をつなぐ鎖を引きちぎろうとする。  
堕ちていっているのは、何もリュシカだけではないのた。  
しかしそのことに、ティトォ自身が気付いていない。  
ティトォはじっとリュシカを眺める。  
さして裕福な環境で育ったわけわけではないリュシカの体は、  
頭の先から指先まで折れそうなほどに細い。  
しかしそれは病的な細さではなく、女性らしい丸みを帯びた肉付きで覆われており、  
その表面は周りの景色が写りこむのではと思うほどの汗や体液で濡れ  
ティトォを誘うようにてかっている。  
ティトォの中の何かがゆっくりとせり上がり、溢れてゆく。  
今、ティトォの中の怪物が、ゆっくりと顎を開けた。  
リュシカの口から指を抜き、荒々しく押し倒す。  
そしてそのまま陰茎を膣内へ一気に進入させる。  
「…もう、リュシカの体はどこもかしこも緩みっぱなしだね。  
少しは僕の物を締め付けたりはできないのかい?」  
「も………むり………れす………」  
「ふん。自分だけ気持ちよくなってそれまでかい?ずいぶん自分勝手だね。  
さっきも言ったけど、もう僕の魔力は限界なんだ。  
ホワイトホワイトフレアをかけなおして君のだらしないここを  
再び締りがよくすることはできないんだよ?  
自分だけ気持ちのいいままでこのまま終わらせようなんて  
ずいぶん虫のいい話だと思わないかい?」  
「ごめ………なさぃ………」  
「本とはもう、僕のことなんてどうでもいいんだろ?」  
「ティ………トォ………さ………にも………きもち………  
よく………なっ………ほしぃ………」  
「だったら」  
そう言うと、ティトォはゆっくりとリュシカの細い汗ばんだ首を両手で掴む。  
「抵抗しちゃだめだよ」  
押し倒したまま、そして挿入したまま、まるでリュシカの首を絞めるような  
体勢をとるティトォ。いや、それは「まるで」ではなく……。  
「…これは僕が気持ちよくなるために必要なことなんだから…」  
 
少しづつ、両手に力を入れてゆくティトォ。  
リュシカの気管は狭まり、リュシカの脳が異変を察知する。呼吸は弱まり、  
今までティトォの下で死んだように動かなかったリュシカの肢体が、酸素を求め暴れ出す。  
うっすらと笑いながらティトォはリュシカへ話し続ける。答えることができないと知りながら。  
「やればできるじゃないかリュシカ。また君の中が力を取り戻してきたみたいだ」  
人間は生命の危機が訪れると、衝撃や圧迫といった外部の刺激が引き起こす  
肉体の損壊を防ぐため、筋肉を緊張させる。  
リュシカの全身は圧迫からくる気管の活動の停止、  
そして呼吸器の異状により起こる酸欠から肉体を守るため緊張状態になっていた。  
それは、リュシカの膣壁も例外ではない。  
もちろん、ティトォはリュシカの命を奪わないように加減はしているだろう。  
しかし自らの物が締め上げられてゆく感触に満足そうに笑う表情は、  
もういつものティトォの顔ではなかった。  
それは、自分さえ気持ちよくなればいいという外道の笑み。  
ついにティトォの理性は怪物に乗っ取られてしまった。  
もがくリュシカを見下ろしその細い首を絞めたまま、  
ティトォはゆっくりと腰を動かし始める。  
たとえリュシカがどれだけ暴れようと、上にティトォが覆いかぶさり、  
さらに今までの情事で体力の失った少女の抵抗など  
ティトォならばいくらでも自由にすることができる。  
圧力の増したリュシカの中はあ心地よく、怪物の飢えを満たす。  
そして膣壁の圧迫により快感が強まっているのはなにもティトォだけではない。  
高い圧力の膣内で起こる抽出運動により、リュシカの体が抵抗以外の動きをし始める。  
「ぁ………っ………げほっ………ぐっ………ぉ………」  
酸欠と恐怖と苦痛と、こんな状態でも感じる快楽とで、  
リュシカの口から掠れる様な喘ぎ声が上がりはじめる。  
そんなリュシカを見下ろすティトォはますます独占欲と征服欲と破壊欲が燃え上がり、  
さらに腰のスピードが上がる。  
不自由な体勢で、ままならない呼吸で、リュシカは絶頂へと達せられてしまう。  
「ぁ………あひぃ………あぁ………ぁぁぁああああぁぁっぁぁぁぁっ………」  
リュシカの目から光が消える。しかしそれは今までのように快楽のせいだけではない。  
しかし、たとえリュシカ目から生気が失われようと、怪物は止まらない。  
リュシカの首を片手で絞めたまま、器用にリュシカの体を半回転させる。  
「あっ………ぅぁぁぁああぁっっ………………」  
体の中の狭くなった空間を満たす肉塊が回転に合わせ柔肉を抉る感覚に、  
リュシカは続けざまにイってしまう。  
そのままリュシカの体を裏返しにしたティトォは、  
まるで獣のように首を絞めたままリュシカを背後から犯す。  
「ぃぁ………………ぁっ………………ぅぇ……………」  
ベッドに顔を押し付けられ、ますます苦しくなった呼吸でリュシカが呻く。  
そして呼吸が妨げられ分だけ、ティトォを包む圧力が上がる。  
「ぃあぁ………………ぃゃあああああぁぁぁぁぁぁっっっっ」  
また絶頂を迎えたリュシカの体を抱え、体位を変えようとしたその瞬間、  
ティトォの視界に鏡が映った。  
まるで悪魔のような形相で、リュシカの首を絞める自分の姿がそこにはあった。  
狂気のようなその光景にティトォは我に返り自らの手をリュシカの首から離す。  
 
「……なんてことだ……僕は何を……?」  
両手で顔を覆うティトォの眼前で、  
リュシカの赤く腫れあがった首が空気を求めごほごほと咽ていた。  
 
 
 
体中を包む心地よくも気だるい感覚に浸りながらも、  
リュシカは少し違和感を感じていた。  
ティトォと一緒にベッドに入ってからもう数時間が過ぎていたが、  
こう長い時間ティトォが自分の体を放っておくことなどなかったからだ。  
一瞬も休むことなくまとわりつくように繰り返された愛撫が、  
久しく行われない。それはとても異常なことなのだ。  
涙や汗で掠れる視界でティトォを見ると、彼は両手で顔を塞ぎ  
まるで凍りついたように動かない。  
「ティ……」  
舌も、唇も動かすのが億劫だ。  
だがリュシカの声を聞くと、ティトォはすっと立ち上がりベッドから降りて  
自らの服を着始めた。  
「どう……したんですか……?」  
「もう、やめよう」  
目を見開き慌てて尋ねるリュシカ。  
「何で……ですか?あたし何か怒らせるようなことしましたか?」  
「今のでわかったのさ、僕がいかに罪深い人間かって事がね。  
自分がいかにどす黒く、危険な人間だって事がよくわかったんだ」  
「ティトォさんが……罪深い……?」  
「そうさ。当たり前だろう。こんな風に交じわり合うのが初めての君でも分かるだろ?  
普通の男はね、好きな女性の首を絞めたりしない。  
クリトリスを摘んでフェラを強要したり、遺品に愛液をかけるような真似もしない。  
そしてそれらのことが酷いことだと相手に分からないよう  
思考や精神をコントロールすることもしない……」  
薄寂しそうに笑うと、ティトォはまた衣服を着始める。  
「でも、あたしは……きゃっ!?」  
「リュシカ?!」  
急いでベッドから降りようとしたリュシカは、足が縺れそのまま前のめりで倒れそうになり、  
慌てたティトォに抱きかかえられる。  
そのまま愛しい男の下半身へ抱きついたまま、リュシカは続けた。  
「あたしは言いました。……壊されても……めちゃくちゃにされてもいいって……」  
「そうだね……でもね、これ以上君を抱いていると……君より先に、僕が壊れそうなんだ」  
「ティトォさんが……壊れる……?」  
首を傾げて尋ねるリュシカ。  
「そうさ。壊れるんだよ……いや、さっきもう壊れていたさ。君の首をこの手で絞めた瞬間に。  
だから、もうダメなんだ…これ以上やれば、もう、僕はいつもの僕じゃなくなるんだ」  
「それは、壊れているんじゃありません……」  
笑みを浮かべ、リュシカはティトォを見上げる。  
呆気にとられたティトォの顔を優しい目で見つめながらリュシカは続ける。  
 
「だってそれは……きっとティトォさんの心の表に出ない一部だから。  
だからそんな、あたしに対するティトォさんの酷いことも、  
ティトォさんの心であることには変わりないって思うんです。  
あたしはあんまり頭が良くないし、それにこういう事に詳しくないから  
上手く言えないんですけど……、どんな人だって、こういうことをしている時は、  
普通じゃないんですよ、多分」  
「リュシカは怖くないのかい?首まで絞めるような男に自分の体を預けて」  
気の抜けたような顔で見下ろすティトォに、リュシカが少し考え込む仕草をして答える。  
「それは怖いですょ、もちろん。でもそれ以上に……嬉しいんです。  
いつも理知的で冷静なティトォさんが、あたしと……その、こういう事をしている時は  
今までの私と距離を置くティトォさんじゃく  
本当のティトォさんのまま接してくれている気がするから」  
リュシカは今まで知らなかった。  
ティトォが心の中で性欲に対して激しく葛藤していることを。  
射精した後の力の抜けた顔が、年頃の少年のように可愛いことを。  
口ではもう止めようといいながら、その下半身の強張りはズボン越しでも分かるほど  
熱く堅く猛るほどリュシカを求めている事を。  
それらはティトォと繋がる事がなければ、知ることはなかっただろう。  
「あたしはティトォさんのことをもっと知りたいんです。  
この心と体を使って。……だから、ティトォさんがしたいように……して下さい。  
それが私の望みでもあるんですから……」  
しばしの沈黙の後、ティトォは静かにリュシカの体を抱きかかえ、ベッドの上へ移動させる。  
「……僕も知りたくなったよ……君がどこまでいやらしいのか……」  
「っそ、それはティトォさんが……」  
「僕のせいか……でも、それだけじゃないだろう?  
それは……君が強いからさ……」  
「あたしが……強い?」  
リュシカと同じようにベッドの上へ移動し、ズボンを脱ぎながらティトォは囁く。  
「そうさ。君は強い。僕の常軌を逸した欲求を知ってもそれを受け止められるほど。  
……だから怖くなる」  
「ティトォさん……?」  
もし弱いだけの少女ならば、ただ守るだけでよかったのに。  
リュシカは確実にこの先の戦いで戦力になりうるだろうし、  
自分に付いてこようとするだろう。  
だが、果たして血にまみれ傷つく彼女を見て、自分は耐えられるだろうか。  
そんな自問自答をしながら、リュシカの体の中へゆっくりと侵入を開始する。  
 
「ふあああぁぁぁぁっ」  
わずかに陰茎が進入し擦れる感覚だけでリュシカは軽くイってしまう。  
そんなリュシカの耳元に口をつけ、ティトォがゆっくりと語り始める。  
その右手にライターを握り締めながら。  
「本当の僕を知りたいか……なら教えてあげるよ……リュシカの体へ、直にね」  
ティトォの声と火打石を弾く音とともに、リュシカの体内に異常が起こる。  
「嘘……大きく……?」  
それは、不思議な感覚だった。リュシカの胎内に穿たれたティトォの肉棒が、  
その中でしだに大きくなっていく。中のものが膨張する感覚に、  
リュシカは悶えながら喚く。  
「そんな……もう魔力はないって……言ってたのに……言ってたのにっ」  
「そう、もうホワイトホワイトフレアは使えない。  
だけどね。これはホワイトホワイトフレアを新たに使ったんじゃない。  
逆にホワイトホワイトフレアを解除したのさ」  
「そんなぁっ、あっ……」  
長さも太さも1.5倍近くになり、その圧力にまたもや果てるリュシカ。  
しかしティトォのそれはまだ膨張を止めない。  
「僕のこいつにホワイトホワイトフレアがかかっていたのは  
君がこいつを舐めたとき見たよね。  
そしてホワイトホワイトフレアに血流を制御する力があるのっても確か話したよね。  
もう分かっただろう?僕は最初から性器へと流れる血量をセーブして、  
大きくなり過ぎないようにしていたのさ。初めての君が壊れないように、ね」  
それは2倍近くになってから、巨大化を止める。  
「っっあああぁぁっ」  
そのあまりの大きと圧迫感にリュシカはまたもや限界を迎える。  
「大丈夫かい?でももう僕は止まらない。自分でも止められない。  
感じるかいリュシカ?これが本当の僕だ」  
絶え絶えの呼吸で、リュシカはシーツを掴みながら呟いた。  
「…………ティトォさん…………動いて…………」  
「……いわれるまでもない……」  
そう答えると、ティトォはゆっくりと動き始めた。  
 

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