ひどく気分が悪い。  
体はびしょ濡れ地面に大の字。衣服は襤褸切れのよう。  
ライターは木っ端微塵。目の前にかざした手は真っ赤だった。  
体のいたる所から命の実感が抜けていく。  
「・・・負けたんだ」  
今にも消え入りそうな声でボソリと呟く。  
100年ぶりの本当の客と名のった女に僕とミカゼは完全に敗れさった。  
勝利と思った刹那にライターがガス切れするなどと誰が予想しえようか。  
首を起こす事も出来無いが恐らく向こうではミカゼが虫の息の筈だ。  
すぐに回復を、彼を助けないと。また僕の為に人が─  
「まだ、生きてんのかよ。しぶといな」  
体の横で声がした。  
 
女の目から放たれる殺気は酷く濃い。最も片目は空洞なのだが。  
「あと一歩だったじゃねぇか。」  
「まだ・・・まだだ・・がッ!?」  
体を蹴り飛ばされる。鈍痛で意識が飛びそうになる。  
今度は髪を掴んで体を引き起こされ、顔を覗き込まれる。  
「女だったのかよ。」  
僕の闘志なぞはもう毛ほども気になっていない。  
「・・・だったらどうだって言うんだ、  
もしかして女だから見逃すという事も無いんだろう。」  
これが今の僕に出来る最大の抵抗。ただの皮肉。  
「ああ、すぐ楽に殺してやるぜ。」  
 
最期まで諦めるつもりは無い、この間にも新たな総眼図を。  
とにかく死ぬ間際まで彼女の観察を。  
彼女は笑っている、水の刃は出ていない。  
体はもう膨れてはいない。  
自分の体の血液の流出が止まったような気がする。  
女の首がカタカタと揺れている。  
おかしい、それは確か─  
 
「・・・どうやら楽に殺しては貰えない様だね。」  
「ハッ、楽に死ぬ気も無いんだろうが。  
精一杯足掻く様を見せてもらおうか?」  
どうやら体内の水分を操作されて、  
血液が出てこなくったらしい。  
殺されるのが延びるのは好都合だった。  
どんな責め苦でも耐えしのげば  
魔力も回復し、何より反撃の機会が来る可能性もも、  
総眼図の完成の可能性も高くなる。  
スッとアビャクの手が差し伸べられる。  
まずは、脚か?手か?それとも眼か?  
手は予想外のところで動きを止めた。  
 
アビャクは襟を掴むと一気に上半身の服を破り取った。  
ティトォの白い素肌と、小振りな乳房が外気に触れる。  
「な、何を!?」  
「オマエ、まだ男を知らないだろう。」  
場違いな質問に一瞬思考が止まる。  
「・・・・な」  
「やっぱりか、百年も人から離れた暮らししてたんじゃぁ  
巡り合う機会も無いだろうな。」  
何故か、頭が急に回転を始める、まさか、この女は。  
「もちろん家族を目の前で殺されたり、  
盗賊にその後で母親の死体を犯されたり、  
その横で強姦されたりしたことなんか無いんだろう?」  
 
「オマエも運が良い。初体験をしてから死ねる。  
女の場合はな、毎回徹底的に虐め抜いてから殺す、  
ということにしている。」  
四肢に水の縄が絡みつく。  
「やっ・・・やめ─」  
今まで監察してきた情報も、屈さないようにしてきた言葉も、  
全て投げだしてでも、それだけは─  
「ああ、いいともやめてやるさ。」  
アビャクの顔は悪魔が笑うように小刻みに揺れていた。  
 
グっとアビャクが胸を引き絞る。  
「っ・・・・!」  
痛みに身をよじる、が水に縛られ体をくねらせることしか出来ない。  
嗜虐心をそそられたのかさらに力任せに胸を弄ばれる。  
「はは、小せぇな。」  
「・・・う、る・・・さい・・うあっ!」  
一層強く握りつぶされる。血の付着した乳房が淫靡に形を変えさせられる。  
チロっと舌先が乳首に絡みつき、血を舐めとっていく。  
「う、ん・・・やめろっ!」  
尖った先端を容赦なく責められる。  
だが、この程度で屈するような柔な女ではない。  
体をよじらせながら、必死に耐える。  
「まあ初めてだから感じるってワケにもいかねぇか」  
スッと脚の付け根に手を伸ばされる。  
「や、やめろ!」  
グッと脚を摺り寄せるが対して効果をなさない、  
むしろ、さらに扇情的になってしまう。  
「水よ」  
水の縄に左右の脚が引っ張られる。  
丁度、足がMの字のような形に固定される。  
 
恥辱の格好に顔が朱に染まる。  
「・・・ゃぁ」  
長らく忘れていた女性的な恥じらいと云うモノが、  
自分にも残っていたと言うことに多少驚いた。  
ズボンの上から淫裂をなぞられる。  
「・・・当然か」  
多分、濡れていない事を言っているんだろう。  
当たり前だ、あの程度で─  
「グショグショじゃねぇか、この淫乱が」  
「え?」  
下半身に目をやると─たしかに股の付け根辺りが湿っていた。  
それも、間違いなく、自分の淫裂から染み出してきた液体で。  
「え?な、何で──!?」  
「何でも何も無いだろ?そうか、オマエはそんな女だったのか。  
 仙人様が聞いてあきれるぜ。」  
後で気付くことになるのだが、これは勿論アビャクの魔法の仕業だった。  
だが、そんなことは知る由も無く。ただただ現実から目を背けたかった。  
「・・・違うこれは」  
「違う、オマエは俺に胸を弄くられただけでこんなになっちまったんだぜ?  
 どんなにエロい女でもここまではいかねぇだろうなァ、ティトォさんよ。」  
現実から顔を背けるのに夢中で─  
言われることもそのまま受け取りたくなければ無いほどに信じてしまった。  
 
こういうことは気分と言うものが重要なのだろうか。  
アビャクに言葉で辱められ、益々朱に染まる、顔。  
顔だけではない、か細い身体も桜色に上気していく。  
動悸も激しい。自分の身体ではないと錯覚しそうなぐらい息も艶を帯び始めた。  
「詰られて気持ちよくなるたァ、こりゃ本物だな」  
違う、僕はソンナ嫌ラシイカラダナンカジャナイ。  
また責めが始まる。先ほどとは明らかに違う快楽。  
胸を舌がつたう度に身体が震える。  
太ももに水が流れると口から何か声にならない声が出てくる。  
秘部に纏うモノを千切り取られ、露とされても  
既にか細い声を出すのが精一杯だった。  
「本当に濡れ始めやがった。このメスブタが。」  
つぅっと舌が淫裂を這って行く、ゾクっと背筋に快楽が流れていく。  
「ひやぁああ!!」  
背中を反らせ、必死で快感から逃げようとする。無駄だと解っていても。  
不定形の水が淫核にキュッと絡む。冷たさに痛みと更なる快感が走る。  
「や、やだ、やめて!お願いだからぁっ」  
ボロボロと涙まで出始める。  
耳まで紅く染まった顔がさらに情欲の熱を帯び表情も艶(いろ)を得る。  
それを見て直,激しくなる責めに  
「や、はっぁあああああああ!」  
遂に絶頂に達した。  
 
虚ろな目でアビャクの顔を見上げる。  
あちらの顔にも嗜虐の色以外にも情欲の艶が混じっているのはわかった。  
深く上下する胸への責めが始まる。  
先端を吸われ、形を変えられ、水に巻きつかれる。  
 また、同じことの繰り返し。  
淫裂をなぞられ、哀願の言葉を叫び、そのまま達する。  
 また同じことの繰り返し。  
後ろの穴まで指で弄ばれ、水を流し込まれ、快楽を開発されていく。  
 またおなじことのくりかえし。  
口内にアビャクの舌が侵入し、必死に顔を揺するが、隅々まで舐め取られていく。  
 マタオナジコトノクリカエシ。  
声を抑えられなくなり、責めに対する反応も強くなる。  
 マタオナジ─  
表情は艶に蕩け、だらしなく口の間から涎が伝う。  
 マタ─  
次第に快楽の波に身を流されるだけになっていった。  
 
 
 

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