「オチと堕ち」
ぼく(ティトォ)は、
ぼく達の共存する魂の交流場、通称夢の樹にてぼくと彼女(アクア)は、
誰もいない静かな空間に、二人でいた。
永遠に感じる閑散たる時間が静かに遠くの方を見るぼくと、俯き今にも泣き出しそうな彼女を包みながら―
事の始まりは極めて分かりやすく、アクアが鬼人ジール・ボーイに完全敗北、そしてプリセラと換わった事である。
慰めの言葉も見つからない、いやどの言葉であろうと彼女へは聞こえの悪いものにしかならないのだから。
激しい叱咤でも良いさ。彼女もそれを望んでるだろう。
でもぼくには、ぼく達この戦いに関わった者の誰がそれを出来るんだろう?
言葉も無く時間は過ぎる。
と、その時だった。
横に座っていた彼女がいきなり僕に抱きつき耳元で囁く。
「ティトォ…」
驚きはしたがすぐにそれは納得へと変わった。
その声は弱々しく、女の子らしい声だった。
普段は強い、いや強く見せている彼女からは想像できない。
そんな彼女への同情の念、あるいは―。
気付けば、ぼくは彼女をぎゅっと抱きしめてこう言っていた。
「ぼくが護るよ、アクアを―ずっとこの先。この呪いが解けても」
ザイニンノキズノナメアイ―
そうとられたって良いさ。構いやしない。
ぼくと彼女はお互いに顔を見合わせ、徐々に近づき、深い口づけを交わす。
抵抗はある、お互いに。
でも一秒、また一秒と長く交わすにつれ、それは溶けていく。
「ティトォとこんなことになるなんて…、思ってもいなかった」
彼女が顔を離し、呟く。
紅潮した顔が、愛らしかった。
「いや…かな、ぼくなんかとじゃ?」
「ううん、すごく嬉しい」
もういつもの彼女は、強気な作られた彼女はいない。
いるのは本当の、13歳の彼女だ。
「じゃ…いいかな…?」
「うん、優しくしてティトォ…」
言い終わるとぼくは彼女の柔肌に手を伸ばしていた―。
一方その頃。
鬼人ジール・ボーイはプリセラによって破られた。
ミカゼ、リュシカ、サンが彼女に駆け寄る。
「流石はプリセラさん、とでも言っておきますか」
サンが皮肉るように言った。
「そんな事より、ちょっと待ってて」
プリセラがその言葉を完全に流して言う。
「どうしたんだ、プリセラ?」
と、ミカゼ。
「この勝利はあたしの妹分、アクアと共に最初に伝えたいんだ。心配してるだろうしね」
そういい終わると身体の中のアクアに呼びかける。
「……………」
「どうしたんですか?プリセラさん」
呼びかけを始めたとたんに「何?」と顔が歪んだプリセラにサンが問いかける。
「いや、うん。その…何これ?」
周りが凍りついたように静かになる。
と、次に彼女はこう言った。
「ティトォとアクアがハダカで何かやってんだけどさ、何あれ?」
「ぶえーーーーー!?」
プリセラ以外(ジル含む)が一斉に驚きの声を上げる。
「え、なにみんな?何やってるかわかったの?」
「いや分かったもなにも…な、なぁリュシカ」
「み、ミカゼさん。あたしに振らないでくださいよ!」
「……」
サンが遠くを見ながらタバコをスパる。
鬼人といわれたジール・ボーイも暫くは空いた口がふさがらずにいた。
「だから、何さ!何をやってるのさ!!?」
しかし誰も答えようとはしない。
ただただ山地にはプリセラの疑問の声が延々と木霊する