無意識に引き寄せた、彼女の身体の温かさで目が覚めた。  
 
腕の中にいる彼女は、やわらかで暖かだ。目を瞑っていて、長いまつげが白い肌に影を落とすのが見える。穏やかな  
寝顔で、普段の彼女からは想像もつかないほど女性らしい。落ち着いた寝息が肌にあたり、くすぐったい思いにかられる。  
 彼女は毒女だけれど、今は忘れてもいい。可愛い寝顔を心ゆくまで眺めていたい。そっと絹のような赤毛を指で梳いた。  
彼女に触れるのは、とても気持ちがいい。肌も、髪も、その生き方も。  
 そっと頬に唇を寄せると、長いまつげが震えて、アニシナは目を覚ました。アニシナは、寝起きらしく少し焦点の定まら  
ない視線でこちらを見つめる。水色の瞳はいつになく優しげな光で、思わず頬が緩んでしまうほど可愛い。  
「グウェン・・・? もう朝ですか・・・」  
「まだ少し起きるには早い」  
 そう言って腕の中に引きとめようとするが、アニシナはやはり人の話を聞かず、腕の中から出ようと身体を捩った。  
「湯を浴びたいのでもう起きます。あなたももう起きなさい・・・っ!?」  
「・・・ッ!」  
 アニシナが身体を起こすと、頭に鈍い痛みが走った。アニシナも同時に顔をしかめる。  
 髪がひっぱられたのだ。  
「なんですっ・・・! 髪が絡まっているじゃありませんか」  
 黒灰の髪と、赤い髪が絡まって交じり合っている。昨夜の激しく長い交わりの時に、弾みで絡まってしまったのだろう。  
離れようとすれば、互いの髪がひっぱられてしまう。  
「切ってしまいましょう。髪など解いていては時間がかかります」  
「何? 女の髪だぞ。そんなに簡単に切るなどと言うな。時間がかかっても解けばいいだろう」  
 そう言って、絡んだ髪に手を伸ばし、不器用な太い指で繊細な髪を解きにかかった。アニシナは腕の中から出るの  
あきらめて、こちらの胸に頬を寄せて髪が解けるのを大人しく待っている。アニシナが大人しくしていることをいいことに、  
抱きしめるようにアニシナの小柄な身体を抱え込み、髪を解いていく。  
 小さな身体は、柔らかくて暖かい。  
 長いまつげは陰を作る。白い肌がばら色に染まっている。触れる髪が気持ちいい。  
 我慢できずに、アニシナの唇を唇で塞いだ。目覚めのキスにしては、長くて深い。いくら数時間前に身体を重ねても、  
彼女が欲しいという欲求はおさまらない。  
「んっ・・・ふぅ・・・ちゅ、ん・・・」  
 アニシナは逃げるそぶりも見せず、激しい口付けを受け入れた。それが嬉しくて、もっともっと、と深く口付けを繰り返す。  
ようやく離れたものの、さらに離れがたくなって小柄な身体をきつく抱きしめた。  
「・・・髪は解かないのですか」  
「・・・もう少し一緒にいるなら、後でも構わないだろう」  
 また、絡まるかもしれないから。  
 アニシナは呆れたような、あきらめたような表情をしたが、そっとこちらの首に腕をまわした。  
 もう少しだけ、二人の夜明け前は続く。  
 
 
 

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