「と言うわけで、実験です。フォンヴォルテール卿!!」  
 部屋に入っての第一声がそれだった。幼馴染の傍若無人ぶりに頭を抱えるフォンヴォルテール卿グウェンダル。  
「どういうわけなのか、まず一から説明するのが筋じゃないのか。」  
 アニシナはふんと鼻を鳴らした。  
「あなたに言ったら、また余計なことに気を回すのが目に見えています。ぐだぐだ言わずに、この薬をお飲みなさい。」  
 言って小瓶を取り出した。震えるグウェンダル。  
「い、一体何の薬だ・・・?」  
「これは一時的に視力をなくす薬です。」  
「なに!?そんなものを私に飲ませる気か!私は明日も仕事が・・・」  
「一時的に、です。数日すれば治ります。いいからお飲みなさい!」  
「い、いいいいいいや待て。なぜだ!?なぜそんなものをぐあっ!!」  
 幼馴染が動揺している間にアニシナはつかつかと近寄って、力強い細腕でグウェンダルの顎を鷲掴みにした。  
「ほら、とっとと口を開けなさい!」  
「いいいいいいいやだ」  
 無理やりこじ開けられそうな口を必死に閉じて抵抗するグウェンダル。  
「仕方ありませんね。」  
 アニシナは小瓶のコルクを口で開け、そのまま薬を口に含む。何をしている、と言いかけたグウェンダルの唇に、アニシナ  
は唇を重ねた。そのまま舌でグウェンダルの唇をこじ開け、薬を流し込む。  
 あまりに唐突な出来事で、グウェンダルは口に流し込まれた薬を、喉を鳴らして飲み込んでしまった。  
 それを確認した後で、アニシナはゆっくりグウェンダルから離れた。  
「さて、これでしばらくすればあなたは盲目になります。」  
「な、なんの研究だ・・・?」  
 と言ってからグウェンダルはようやく答えにたどり着いた。  
「ジュリアか・・・?ジュリアの目を治そうとしているのか?」  
 アニシナは片眉を上げた。  
「さぁ、どうでしょう。」  
「彼女の目は、治らんと・・・」  
 アニシナがグウェンダルの目を手で塞いだ。自信に満ちた強気な声が耳を打つ。  
「わたくしと、そこらの役に立たない医者と同じにしてもらっては困りますね。」  
 手を離されても、グウェンダルの目は光を映さなかった。  
「・・・何も見えん。」  
 
「そうですか。まぁ、この程度の薬なら造作もなく作れますとも。壊すより作るほうが、ずっと難しいですからね。」  
「待て、私の目は壊れたのではないな!?」  
「違います。一時的に目の機能を止めただけです。・・・さて、こちらにあなたの目を治すことができるかもしれない試薬が  
あります。」  
「・・・かもしれない?」  
 そこの突っ込みは無視して、アニシナは続けた。  
「ですが、あなたに今飲ませた薬はすぐに次の薬を与えると化学変化が起きてしまうので、5時間以上はあけて次の薬を  
服用しなければなりません。」  
「・・・私は少なくとも5時間はこのままだと言いたいのか?」  
「まぁ、要はそういうことですね。どうですか?目が見えないというのは不便でしょう。これからより良い障害者保障の法案  
をつくるためには、あなたもこういう経験をしたほうがよいでしょう?」  
 グウェンダルは何も言わなかった。アニシナの目的は大体わかったし、それがいつもよりは有益な実験であろうというの  
もわかった。自分が犠牲になるのも、まぁ仕方がない。  
「・・・5時間も何をしていろと。」  
「編み物でもしていればいいでしょう。目が見えなくてもできるのでは?」  
「道具がどこにあるのか、目が見えんのではわからん・・・。」  
 ソファから立ち上がって歩こうとすると、さっそく机に足のすねをぶつけてよろめいた。とっさに近くにいたアニシナにしが  
みつく。目が見えないせいか、いつもより柔らかく感じて心臓が一瞬跳ねた。  
「す、すまん・・・。」  
「ジュリアの偉大さがわかりますね。武人が、たかが目が見えなくなっただけで自分の部屋もろくに歩けないとは!」  
 アニシナはグウェンダルをソファに座らせて、編み物道具を持ってきてやった。  
「わかりますか?」  
「ああ・・・。」  
 編み物は手の感覚でできる。が、どうも網目や出来具合がよくわからない。適当に編んでいると、隣に座ったアニシナの  
ため息が聞こえた。  
 
「ただでさえ不器用なあなたに、盲目の生活というのは思った以上に困難なようですね。」  
「・・・ジュリアと比べるな。あれは私と同じくらい不器用だが、生まれたときからああいう生活をしているんだ。たった今目が  
見えなくなった私にあれと同じことをしろと言われても無理だ。」  
 目が見えないといっても、光や光の暖かさがわかることには驚いている。確かに、ジュリアがいつもどんな世界で生活  
しているのかはわかる。これで日常生活を不便なく送っているジュリアはたしかに偉いと思う。  
「ジュリアはその状態で文字も読みますよ。」  
「無理だ。」  
 アニシナが呆れて肩をすくめた。そういう様子は、なぜだか手に取るようにわかる。  
「なんでもかんでも無理無理と・・・!やってみようという根性もないのですか!」  
「これは何の実験だ!?別に健常者に盲目の体験をさせ、その案計統をとるためではないだろう!?」  
「まぁ、そういう意図もありますが。」  
「あるのか・・・。」  
 がっくりとうなだれたグウェンダル。アニシナはそのグウェンダルの顔に手を伸ばし、自分の視線とグウェンダルの視線を  
合わせた。  
「とりあえず、わたくしと目を合わせて会話することから始めなさい。」  
「・・・合ってなかったか?視線。」  
「ええ。あさっての方を向いていましたよ。」  
 今アニシナがどっちを向いているのかわからないので、視線を合わせることさえ難しい。よくジュリアは目が見えないのに  
視線を合わせてくるが、それがこんなに高度なことだとは思っていなかった。  
 グウェンダルはアニシナの顔を指でなぞった。頬、目、鼻、唇。あらためて触れると、いかにも繊細な造りで妙に緊張した。  
そんな考えに耽っていると、急にアニシナが笑い出した。自分の妙な考えを見透かされたのかと思い、慌てて手を引っ込め  
た。  
「な、なんだ・・・?」  
「いえ、何も。」  
 
 そう言いながら、笑みの気配は消えていない。不思議に思っているのが表情にでたのか、アニシナはグウェンダルの  
まねをするように、顔を指でなぞってきた。指は細くて小さくて、暖かかった。  
「あなたがわたくしをこんなに真っ直ぐに見るなんてことは、今までなかったと思って。」  
「・・・そうか?」  
 今まではアニシナの夏空の色をした瞳が苛烈に輝くと、思わず目を背けてしまっていたが、今はその色も見えない。  
恐ろしくて目を背けることもない。ただ、なぜだろう。それが歯がゆかった。  
「やはり、目が見えないのは不便だな。」  
「あなたにはそうでしょうね。」  
 すぐ近くでアニシナの声がするのに、あの水色と赤色が目に入らないのは、なぜだか落ち着かない。そっと隣のアニシナ  
の腰を引き寄せて、腕の中に収めた。アニシナの身体は、目で見る以上に小さくて柔らかい。こんな身体のどこからあの  
怪力が生まれるのか、眞魔国の777あるうちの不思議の一つだ。  
 アニシナが腕の中で笑う気配がする。  
「何です、急に。」  
「いや・・・。」  
「不安にでもなりましたか?大丈夫です、この毒はわたくしがきちんと量を調節し、視力を奪うことはないようにしてあります。」  
「・・・やはり毒だったのか・・・。」  
「それはともかく。一体いつまでこうしているつもりですか?」  
 意地悪そうに笑っている顔が想像できる。グウェンダルはアニシナの耳元(と思われる場所まで)に口を近づけた。  
「・・・これなら、お前がどこを向いているか考えなくてもいいだろう。」  
「おや、そういうことですか。」  
 腕の中に閉じ込めてしまえば、目が見えなくてもアニシナの存在は感じるし、目線のやりどころに困ることもない。しかし、  
アニシナが大人しく閉じ込められているわけもなく。  
「怠けてはいけませんよ。人と話すときは相手の目を見なさいとツェリ様に教えられませんでしたか?」  
 
 教えられた。ただし、ニュアンスは若干異なる。  
 グウェン、女の子を口説くときは瞳を見てあげなきゃ。照れてちゃダメ。あなたのしぶーい声と、父親に良く似た瞳で見つ  
められたら、どんな女の子だって恋をしてしまうわよ!  
 とかなんとか。グウェンダルが母の教えを思い起こしていると、アニシナは腕の中からするりと抜け出した。ぬくもりが消え  
てしまった腕は、行き場もなく宙をさまよう。  
「ほら、こちらですよ。」  
 不意に強い力で顔を固定された。アニシナの細い手が、がっちりとグウェンダルの顔を包み込む。その手の暖かさに、  
ほんの少し胸が高鳴ったが、それ以上に思うところがあって憮然とした表情になる。  
「・・・近くないか?」  
「わかるのですか?」  
「・・・これだけ近ければな。」  
 アニシナが、グウェンダルの顔に自分の顔を近づけている。吐息が唇にかかるほどの距離だ。アニシナの声は楽しげな  
色に満ちている。からかわれている。  
「アニシナ。」  
 頬にやられた手に無骨な自分の手を重ねながら、グウェンダルは咎めるように幼馴染の名前を呼んだ。そのグウェンダル  
の表情があまりに可笑しかったのか、アニシナは喉の奥で声を殺すようにして笑った。その様子が手に取るようにわかって、  
グウェンダルは羞恥に顔を赤く染める。アニシナはそんなグウェンダルの反応にますます気を良くして、首に腕を回して密着  
してきた。小さくて柔らかな身体が近づいてきて、甘い香りが鼻腔をくすぐる。実際にはどんな状況なのか視認することが  
できないが、グウェンダルの想像ではかなり恥ずかしい構図になっているはずだ。  
「グウェン。今ちょうど目が合っていますよ。わかりますか?」  
 珍しく音量を抑えた声が、自分の唇の間近で聞こえた。背筋からしびれるような感覚が走り、脳が麻痺していくのを感じる。  
それでも、声と顔だけは冷静だった。  
「わからん。」  
 アニシナは眉を跳ね上げたかもしれない。声に出さず、ため息もつかないので詳しいことを察することができない。  
 
「やれやれ。やはりあなたには無理・・・おっと。」  
 あまりに唇の間近で話すので、拍子に唇同士が触れ合った。ほんの少し、掠めるほどの接触で、キスと言うにはあまりに  
中途半端だ。グウェンダルは、その接触に少しいらついた。もどかしい。  
「アニシナ。いい加減にしろ。」  
 眉をひそめてそう言うと、アニシナが鼻で笑った。未だ顔が接近している状態で、指で頬をなぞられた。ゆっくりと這う指の  
動きが、グウェンダルをさらにいらつかせる。  
「アニシナ・・・」  
「何を、いい加減にしろですって?」  
 見えなくてもわかる。目の前にいる彼女の水色の瞳は、楽しげな光で苛烈に輝いているだろう。その自分の想像上の瞳  
に、胸が早鐘を打つ。  
「答えなさい、グウェンダル。何をやめろと言うのです。」  
 この体勢を今すぐやめろ。まず私からどけ。そんなに顔を近づけるな。いつまで私をからかうつもりだ。  
 様々な要求が脳裏に浮かんだが、口に出すのはためらわれた。従来の性格もある。だが何より、本当の要求がそんな  
ことなのか、自信が持てなかった。  
 迷っている沈黙にアニシナは飽きたのか、グウェンダルの額に自分の額を合わせてきた。鼻先に唇をよせ、そのまま頬  
や瞼に軽く触れるだけの口付けを繰り返す。  
その柔らかな接触に、グウェンダルは負けた。いつだって、彼女には負けてしまう。  
「アニシナ。」  
 ようやく口を開いた幼馴染に、アニシナは動きを止めた。もう、そんな一瞬さえもどかしい。  
「・・・じらすな・・・」  
 超重低音で恥ずかしげにつぶやいた。蚊の鳴くような声だったが、この至近距離でアニシナが聞き逃すわけもない。  
笑みを浮かべた気配がする。先程より腕に力を込めて身体をこちらに密着させてきたが、やはり唇へのキスはしてこない。  
唇を掠めるように、頬や顎に口付けてくる。  
「アニシナ。」  
 
 グウェンダルもアニシナの唇を捜すように顔を近づけるが、何せ視力がないので、アニシナに避けられては頬や瞼への  
接触に留まってしまう。腕に抱きしめたアニシナは、徐々に笑い声が大きくなっていく。眉をひそめるグウェンダル。  
「満足にキスもできないのですね。これではキスだけで一晩が終わるのではないですか?」  
「そんなことにはならん・・・。」  
「おや、断言しますね。何か根拠が?」  
 グウェンダルは渋い顔をしながら、それでもアニシナの頬に唇を寄せながら囁いた。  
「・・・私がお前の身体を忘れるわけがない。」  
 例え目が見えなくても、身体がお前を覚えている。  
 アニシナは、驚いたような、呆れたような、よくわからない気配を見せた。何か言いたそうでもあったが、珍しいことに何も  
言わなかった。言わない代わりに、グウェンダルの唇に、そっと自分の唇を重ねた。触れるだけの口付け。しかしグウェンダル  
は離れようとするアニシナの頭を固定して、唇に噛み付くように口付けた。柔らかな唇を吸い、舌を差し入れ絡ませあう。  
息を次ぐのも惜しくて、酸欠状態になりながらアニシナの唇を貪った。柔らかな感触が、先程まで感じていた飢えを満たし  
ていく。甘い衝動が、次々に沸いてくるのを感じた。  
「ん・・・ちゅ、はぁっ・・・グウェ、ぁむぅっ・・・!」  
 唇でアニシナを翻弄しながら、ゆっくりと小柄な身体をソファに横たえた。ベッドまで連れて行きたいところだが、盲目の  
ままアニシナを抱き上げて寝室まで移動するのは困難な上に興ざめすると思われた。自分が横たわるには小さすぎる  
ソファだが、アニシナを横にするには十分な広さがある。上等なソファだし、身体を痛くすることはないだろう。  
 服を脱がすのに、時間はかからなかった。いつもと変わらない服のつくりだったし、今日着ていたものは以前にも脱がした  
ことがあった。ただ、あの時はこんな色事ではなく、実験の際に防護服を着るのを手伝ったからだった。大掛かりな防護服  
は、確かに一人で着ることは困難で、二人がかりでさえ一時間を要した。そこまでして何の研究がしたいのかとも思うが  
・・・今はそのことは置いておこう。  
 素肌を確かめるように滑らかな肌を指でなぞると、アニシナが身体をくねらせた。どうもくすぐったかったらしい。いつもは  
見ることのできる白く滑らかな肌が見ることができないのが残念だった。それでも手探りで、アニシナの胸をやわやわと揉み  
しだいていく。  
「ふぁ・・・」  
 
 小さな声だったが、グウェンダルは聞き逃さなかった。盲目に慣れてきて、聴覚が敏感になっているのかもしれない。  
その声に気を良くして、肌に舌を滑らせる。  
「グウェン・・・明かりを消しなさい。」  
 身を捩りながらそういうアニシナを、グウェンダルは訝しげに見た。  
「私は今、見えていないが・・・」  
「気持ちの問題です。わたくしは見えていますし、こんな明るい部屋ではある種の羞恥プレイです。さっさとなさい。」  
 グウェンダルはますます眉をしかめた。どこに明かりを消すスイッチがあるかわからないのだ。  
「別にいいだろう、明かりくらい・・・」  
 グウェンダルはそう言って、甘えるようにアニシナの胸の頂を舐め上げた。腕の中の身体がぴくりとはねる。  
「・・・っ、ならっ、あなたも服を脱ぎなさいっ!」  
 グウェンダルは、それでアニシナの気が済むのなら、と軍服を脱いだ。少し焦っていたので、妙に時間がかかってしまう。  
もたもたしていると、アニシナが服を脱がすのを手伝ってきた。手伝う、というよりは衣服を剥ぎ取られるといった荒々しい  
手つきで、ここに二人を見る人物がいれば、アニシナがグウェンダルを襲っているように見えただろう。別に珍しくもないが。  
 全裸同士になってアニシナは満足したのか、再び唇を重ねてきた。しばらくアニシナの唇の柔らかさに浸っていると、  
アニシナがそっと下半身に触れてきた。突然のことで身体を震わせる。  
「・・・っ・・・!」  
「おや、もうこんなになっているのですか?大の男がキスだけでこれほど興奮するとは。」  
 アニシナが耳元で囁く。それだけで腰から背筋に快楽の予感が駆け巡る。アニシナがグウェンダルの耳たぶを甘噛み  
しながら、細い指でむき出しの高ぶった雄をひと撫ですると、グウェンダルはたまらないと言うように眉根を寄せた。  
「ふふ・・・。また固くなりましたよ。もしかして、」  
 アニシナは手のひらでグウェンダルを弄び、ふいに高ぶりをぎゅっと握り締めた。  
 
「くぅっ・・・!」  
「言葉で攻められて感じているのですか?」  
 耳元で囁くアニシナの声が、信じられないほど色っぽかった。背筋にぞくぞくと快感が走る。アニシナの手の中で、正直  
に高ぶりが反応してしまう。これでは、アニシナの言葉を肯定したも同じだ。  
「ち、違うぞ、アニシナ。これはっ・・・」  
 グウェンダルが言い切る前に、アニシナは強引に唇を奪った。強く唇を吸い、舌を絡ませる。同時に下半身の高ぶりも  
擦り挙げられ、上下の快楽に意識が遠のきそうだ。目が見えないせいで、刺激の柔らかさにいつも以上に興奮する。たっぷり  
と時間をかけた愛撫から、アニシナはようやく離れた。薄く笑っている気配がする。  
「違うことなどあるものですか。正直に言って御覧なさい。わたくしに苛められたいのでしょう?」  
「違うっ!」  
 言葉だけは強く言ったつもりだったが、相変わらず身体は正直で、ついに高ぶりは震えるほどにまでなってしまったし、  
そのことに顔は羞恥で赤く染まっていることだろう。  
「頑固ですねぇ。身体は面白いほど正直ですが。」  
 アニシナが一瞬身体から離れ、再び自分の足元に座る気配がした。何をしているのか、大体わかる。  
「や、やめろ、アニシナ。見るな・・・。」  
「おや、わかるのですね。」  
 アニシナは今、グウェンダルの足元に座りグウェンダルの立ち震える雄を眺めていた。時折、指ではじいたりなぞったり  
するが、基本はただ眺めているだけだ。  
「やっ、やめろ!」  
「これだけ明るいと、よく見えますよ。ふふ、こんなに大きくするとは。見られて興奮する性質なのですか?」  
 煽られているだけなのは、わかっている。理性ではわかっていても、身体は反応してしまう。これも長年の刷り込み  
だろうか。抗う気力さえも持てず、ただ羞恥に顔を染めて俯くことしかできないでいた。  
 やがてそれを眺めるのにも飽きたのか、アニシナはおもむろにその高ぶりを口に咥えた。そのまま、激しくしゃぶる。  
「っあ!アニシナっ・・・急に、そんな・・・ああ!」  
「ん、ちゅ・・・くちゅっ、ん、んっ・・・」  
 
 舌を使い、グウェンダルの性感帯を辿る。下から上へと舌でなぞり上げ、先端を含み、口で飴玉を転がすように愛撫する。  
喉の奥まで咥えて頭を動かすと、グウェンダルが上擦った嬌声を上げた。  
「っあ、ぁ・・・!はっ・・・」  
「ふ、んぅ・・・、ちゅ、くちゅ」  
 アニシナの口には大きすぎるそれを咥える姿を見るのはグウェンダルも好きだった。だが、今は目が見えず、一方的に  
されるがままだ。アニシナの姿も見えず、目が見えないことで他のあらゆる感覚が敏感になっているこの状況では、アニシナ  
の行為にただ悦ぶだけしかできない。舌を使って口の中で転がされるだけで、もう我慢ならない状況になってしまった。  
「アニシナ・・・もう、いいだろうっ・・・」  
 アニシナが雄から口をはずし、何かを言いかけた瞬間にグウェンダルがアニシナを抱き上げてソファに押し倒した。珍しい  
ほどの早業に、アニシナは睨むことしかできなかった。  
「グウェンっ・・・!」  
 アニシナの呼び声も無視し、扱いだけは優しく、そっと足を割り開き、そこにあるだろう蕾に唇を近づける。舌を使い、場所を  
確かめていく。立ち震える蕾にはすぐにたどり着き、舌で念入りにほぐすと、あっという間に溜まっていた蜜が零れ始めた。  
ぴちゃり、ぴちゃりと音を立てて舐め上げる。アニシナの上擦った声が、耳を打った。  
「あ、あんっ・・・ぁ・・・っはぁ・・・」  
 自分が奏でる音を聞いて、興が乗ってきたのか、グウェンダルはさらに蕾の下の蜜壷へ舌を突き入れた。アニシナの身体  
がぴんと緊張する。腿に力が入ったのか、滑らかな太ももはグウェンダルの顔をきつく挟み込む。その柔らかさと蜜の味に、  
グウェンダルは酔いしれた。  
「あんっ!ぁあ・・・!だめっ・・・ひゃ・・・」  
「今のお前の姿が見られないのはもったいないな・・・。」  
 くちゅっ、ぐちゅ、ちゅるっ  
 舌であらゆる敏感な部分を探られ、流石のアニシナも限界が近かった。グウェンダルも、アニシナのいつになく甘い嬌声  
を聞いて、我慢の限界が近づいている。  
「アニシナ、もういいか・・・?」  
「あんっ・・・グウェン・・・」  
 恐らく、アニシナはうるんだ水色の瞳をこちらに向けて、切なそうに名前を呼んだに違いない。いつもと、同じように。  
 その自分の想像に興奮したグウェンダルは、己の高ぶったものをアニシナへ一気に突き入れた。強烈な快楽が脳天を  
直撃する。  
 
「っ・・・アニシナぁ・・・っ!」  
「はぁあ!グウェンっ・・・ぁ、や、早くっ・・・!」  
 自分で焦らしておいて、アニシナも相当焦れていたようだ。グウェンダルの分厚い胸板に頬を寄せ、背中に腕を回して  
しがみ付いてくる。その力強さと、腕の細さにアニシナを抱いている実感が襲ってきて、グウェンダルは我を忘れるほど  
興奮した。腰を遣い、激しくアニシナの弱点を刺激していく。  
「あ、あ、あぁ!はぁっ、グウェンっ!や、あああああっ!」  
 いつも以上に柔らかく締め付けてくる感触。目が見えないことで、いつも以上にアニシナの熱くなっていく体温や汗の匂い  
が感じられる。目で見る以外の全ての感覚でアニシナを抱いている気がして、グウェンダルはもうどうなってもいいと思った。  
このままでいられるなら、盲目のままだって構わない。  
「グウェンっ・・・」  
 耳元で聞こえる、アニシナの艶めいた声。アニシナの、自分を呼ぶ声が好きだった。  
「もっと・・・名前を呼べ。」  
「グウェダルっ・・・あっ、あぁグウェンっ・・・!も、だめっ・・・!」  
「―――っあぁ・・・!」  
 アニシナが強く自身を締め付ける快楽を感じ、様々な液体が混じる水音とアニシナの嬌声を聞きながら、グウェンダルも  
果てた。  
 
 
―――数時間後  
「な、なんだこれは!ぜんぜん治ってないぞ。世界が白黒だ!」  
「おや、おかしいですね。どうやら光を入れる部分がまだ機能していない様子。ということは、この実験は失敗ですね。  
ジュリアは光が見えないのですから。」  
「なにぃ!?それでは私の目はどうなる!」  
「世界一の名医に治してもらえばいいのではありませんか?お金は十分あるのですし。」  
「一億で命が助かるなら安いもんだ―――違うだろう!!」  
 
おわり。  
 

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