「じゃあ渋谷またね〜」
「ああ。じゃーなー村田」
俺、平凡な高校生渋谷有利は友人である村田健と草野球の帰りある公園の近くで別れた。
その公園は俺と村田が中学以来、少し微妙な形で再会した所で、俺の人生を180度変える体験をした所でもある。
それは、公衆トイレから異世界へゴーという普通の高校生ならまず体験しない様な事。
そこで俺は更に驚きの肩書きを言い渡される。
堀江社長の肩書きも凄いが俺の肩書きもなかなかだ。
俺様は、魔王様だったのです。
で俺はその世界で絶世の美少年と婚約したり、身に覚えの無い隠し子が現れたりと色々あったが、今は伏せておこう。
俺はふと懐かしくなり、村田と再会した公衆トイレの近くまで来てみる。
すると、何だか聞き覚えのある声がする。
「おい、次どうするよ。」
「んー?そろそろ本番いっちまうか〜?」
この声は・・たしかまえ村田をカツアゲしていた奴らの声だ。
俺は声のする方へ廻ってそいつ等に声をかける。
「おいお前等また何かってっおいお前らっなんて事してんだよっ!!」
余りに酷い行いに俺は理性を失いかける。
そこでは二人の男が一人の少女の服をはぎ取り、辱めていた。
少女は目隠し、猿ぐつわをされ、胸部と秘所の肌は露わになりロープで縛られていた。
そしてその子の目からは涙が流れていた。
「んだよ〜渋谷じゃねーか。おめーも混じるか〜ひっひっひ」
「それともぉ〜またトイレに顔突っ込みてーのか?」
こいつらの女の子への仕打ちと、何の悪気も感じられないげひた笑い声に怒りが更に加速する。
「お前らっ」
ぎりっと歯軋りをする。
今は俺の怒りを発するより、あの子を助ける方が大切だと言う事だけが理性を支えていた。
相手は二人とは言え片方はスタンガンを持っている。殴りかかっても返り討ちにされるだろう。
なら、どうすれば・・・
そんな時、頭をよぎったのは、炎に囲まれた少女たちが、龍をかたどったお湯に助けられる姿。
しかし、この世界の、一般高校生である俺に出来るだろうか。
いや、やらなくてはならない。
どのみち女の子一人助けられ無い力なんてあっても意味がない。
そう決意したとき俺の精神は空高くにあった。
「か弱き清純なる乙女の純潔。それを己の淫らな欲望で汚そうとは何事かっ!!」
地上では俺が前口上を並べている。
俺は時季はずれの第九に包まれながらその様子を眺めていた。
「この世の中、如何なる獣とて相手の同意を得てから行為に及ぶというに、ああ男尊女卑の悲しき風潮よ。
命を取ることは本意ではないが止む終えん。
お主等を斬る!」
ヤンキー連中はきょとんとしている。
そして、俺の武器は刃物ではない。
公衆トイレからギュロロ・・・と水が、渦巻く一本の竜巻のように現れる。
そして、巨大なトカゲに形作られる。
「成敗!!」
「なっうわぁぁぁ」
ヤンキー連中が食われる。
そして水の中でぐったりしてきた頃、
「真に命を取るわけにもいくまい。
しかし、以後改善の様子がない場合、そのときは覚悟しておくがよい!」
ふっとトカゲを形作っていた力が消え、気絶したヤンキー×2と水は地に落ちる。
水は、正義の二文字の形で地を濡らす。
「大丈夫?怪我はない?」
心が体に戻った俺は、少女に駆け寄りまず目隠しと猿ぐつわをとる。
すると、そこにいたのは・・・
「なっ、橋本?!」
「えっ、渋谷君?!」
そこにいたのは、数日前俺の彼女になった、橋本麻美だった。
何だか沈黙してしまう。
先に橋本が口を開いた。
「・・・あのさ、ロープも外してくれない?」
「あっああ悪い今外すよ」
俺は急いでロープを外す。
「ふう。ちょっと待ってて服着るから」
「あ、うん」
幸い破かれてはいなかった。
俺は橋本が服を着終わるのを待った。
「ふう。助けてくれてありがとう渋谷君。結構演技派だったんだね。
それと、今のことは誰にもいわないように」
勿論誰にも言えるわけがない。
「もちろん!絶対誰にも言わない。」
「でもホントに助かったよ。渋谷君いっつもここ通るの?」
あんな事されて・・・泣くほど酷い事されたのに、橋本はいつも通りだ。
強い娘なんだなと俺は思った。
「いや、今日はたまたま通りかかって・・・それより橋本、どっか怪我とかしてない?」
さっきの奴らがスタンガンを持ってたことが気にかかり訊いてみる。
「うん。大したこと無いんだけど捕まったときちょっとね・・」
そう言って左の二の腕をさする。
ちょっと見せて、と言うと一瞬躊躇してから見せてくれる。
「うわぁ」
その腕はとても痛々しいほど腫れていた。
「ちょっとゴメン」
そう言って俺は腫れている部分に手をかざす。
「何?」
「ん、早く治るオマジナイ」
そう言いつつ俺は更にかける言葉を考える。
(後は生きる気力を引き出す・・・か
そうは言っても何を言えば・・・
そうだ!一応橋本と俺は付き合ってるんだから)
「なあ、橋本。この腫れが引いたらさ、二人でどっか遊び行かない?」
「渋谷君・・・それはひょっとしてデートのお誘い?」
「うん、まぁ一応・・・」
「でもさ、腫れているところは服着てれば見えないし、プールも時期はずれだし、もしかしてどこかいかがわしい・・・」
「違う違う!その、腫れたままだと痛くて楽しめないだろうと思って」
どうやらいらぬ誤解を招いたようだ。
俺は慌てて言い訳すると橋本は少し残念そうになあんだと言った。
何故だろう?
「うーん、じゃあ渋谷君の行きたいところでいいよ」
「え、いやいや橋本は行きたいところないの?」
これは橋本の治療のためだし、俺の行きたいところと言ったら野球関係しか浮かばない。
流石にデートに野球観戦はまずいだろう。
「でも、誘ってきたのは渋谷君じゃん。渋谷君あてあったんじゃないの?
それに渋谷君の好きなとこも知りたいし。
なんなら、野球の試合でも良いよ」
本当ですか!!
いやいや、それ以前に橋本には俺の考えてる事が解るのだろうか?
そこで俺ははっとした。
(コレは橋本の治療が目的なんだから彼女の希望通りにすべきなんだった)
「わかった。じゃあ次の土曜日。ライオンズ対ホークス戦を見に行くって事でどうかな?」
「うん。ぜんぜんオッケー」
そう楽しそうに笑う彼女の顔に見とれてしまった。
「なに?私の顔に何かついてる?」
オーソドックスに言われて慌てて視線を逸らす。
「と、そろそろいいかな?」
「 ? なんのこと?」
「いや、こっちの話」
俺は患部にかざした手に集中してみる。
刹那、俺の手が青白くやわらかい光を発した。そしてその光が収まったと思うと、腫れは引いていた。
「すごい・・一体、何やったの渋谷君?」
なんとか治ったようだ。俺は安心して体から力が抜ける。
「はぁ、よかっ・・・た・・・」
「!?渋谷君っ!?渋谷君!!」
それっきり俺の意識は暗転する。
「・・はい・・・で・・そう言うことですから・・えっ・はい、判りました」
頭に柔らかい感触を感じ、俺は目を覚ます。しかし、この感触はもしや・・・
「う、うーん」
「あ、渋谷君起きた?」
「へっ?あっ橋本っ?なっ何で橋本が俺に膝枕っ?」
「あ、ごめん嫌だった?」
「え?いっいやぜんぜん!」
今まではモテそうとは言え膝枕をしてくれたのは男ばかりだった。嬉しくないはずがない。
「ふふ、じゃあもう少しこうさせてて」
「う、うん・・・でも何でこんなとこ・・・っていうかそれ以前にここ、どこ?」
膝枕をされながら、尋ねる。
「えっとココは私の家の私の部屋。それで何でうちに渋谷君がいるかというと・・・」
どうやら俺は橋本の腕を治した後、気を失ってしまったしかし、そのままにしておくわけにもいかない。
そこで公園から家が近かったからと言う理由で連れてこられた。
んで俺んちに連絡を入れたらしいのだが・・・
「でね、渋谷君のお母さんがでてね、事情を説明したら
『まー、今まで野球だけが恋人だったゆーちゃんの彼女なの!?
わかった今日一日ゆーちゃん貸してあげる。
ほんと野球本位な子だけどその分一途だからちゃんと、つなぎ止めておけば裏切らない子だから。ちゃんとつなぎ止めるのよ。
あと、念のため今日は帰ってきてもゆーちゃん家に入れないからそう伝えておいて。
それじゃあ、橋本さんゆーちゃんをよろしくね』
って」
最後には赤くなってしまう橋本。
お袋、何言ってんだよ・・・
俺は起き上がり橋本に言う。
「ゴメン橋本。お袋が困らせるようなこと言って。
今から帰って叱ってくるから」
「待って渋谷君。
お母さんは私たちのこと想って言ってくれたんだと思う。
それに、本気かどうかわからないけど、帰ってきても家に入れないって言ってたよ」
う、そうだった。あのハマのジェニファーは絶対俺を家に入れないだろう。
「じゃあ、どうすれば・・・」
「だから、お母さんの言うとおり家に泊まってけば。
私たち付き合ってるんだし、渋谷君私を助けてくれたし」
「けど、いいの?」
付き合ってるとは言え男子が年頃の女の子の家に泊まるなんて・・・
「うん!渋谷君なら全然!!むしろ歓迎するよ!」
それならと俺はお言葉に甘えることにした。
親は居ないのか訊いたら、たまたま旅行に行ってたらしい。
「あ、晩ご飯まだでしょ、作ってくるからちょっと待ってて」
そう言うと橋本は部屋を出ていった。
部屋に残された俺は一人何となく居心地の悪い時間を過ごした。
そして、数十分後。
「おまたせ〜」
そう言ってお盆をもった橋本が戻ってきた。
「シチューを作ってみました。
たべてたべて」
「ゴメン橋本泊めてもらうのに食事まで作らせちゃって」
「いいよ気にしないで。
料理するの嫌いじゃないし」
「ありがとう。じゃあ、いただきます」
そう言って俺は橋本の作ってくれたシチューに舌づつみをうつ。
「うん美味しい」
「ふふふ。ありがと
ところでさ渋谷君なんで私の腫れ治せたの?」
俺は食べてた料理を吐き出しそうになるも何とか堪える。
「ひょっとして、渋谷君が変わったことと関係あるの?」
今度は喉に詰まらせてしまった。
俺は慌てて胸をたたく。
「だ、大丈夫っ!?」
「っっぷはっ、ふー大丈夫、大丈夫。
けどなんでそう思ったの?」
実はホントに心が読めるんじゃ・・・
「ん、勘で何となくなんだけど・・・やっぱ関係あるんだ・・・」
なんて鋭い勘だろう。
「・・・私ね、テニス部やめた頃から渋谷君が気になってた、ううんもう好きになってたんだと思う」
「へっ?」
語りだした橋本に俺は間抜けな声を出すことしかできなかった。それを気にせず橋本は話し続ける。
「結構前からいいなーっては思ってたんだけど、はっきり意識したのは私がテニス部やめた頃。
渋谷君が野球部の監督を殴ったって話しを聞いてから。
自分より他人のために動ける人ってホントにいるんだなぁって感心してたらいつの間にか好きになっちゃってた」
俺の暴走をそんな風に・・・でもあれは・・・
「・・・実はそれ、自分のためにやった事かもしれないんだ」
「え?」
不思議がる橋本に俺は言う。
「・・・俺、その頃全然スタメンに選ばれなくて、で心のどこかで諦めようかなんて考えてたと思う。
かっこ良く野球をやめる口実を探してたのかもしれない」
橋本は黙って聞いてくれる。
「で、あのとき監督が酷いことをチームメイトに言って、かっとなって・・・
今でも疑問に思うことがあるんだ。
本当にチームのためだったのかって」
誰かに言った気がする言葉を目の前の少女にも言う
黙って聞いていた橋本が口を開く。
「でも、きっとその人のためにやっちゃったんだって私は思うな」
「なんで?」
「だって渋谷君いざって時になると、考えるより先に動いちゃうタイプでしょ」
「た、確かに・・・」
それのせいで何度苦労したか・・・
それに、と橋本は続ける。
「渋谷君そういう事したらたぶん自己嫌悪で耐えられなくなると思う」
橋本は俺の顔を見て真顔で言う。
目の前のこの女の子は、俺がずっと悩んでたことに何故答えを出せるのだろう。
この娘は何故・・・
「・・・なあ橋本」
「ん?なーに?」
「なんで、橋本には俺自身にも解らない俺のことが解るんだ?」
「そんなの決まってるじゃん」
「なんで?」
「私が、渋谷君のこと好きだからだよ」少し顔を赤くして言う橋本。
優しく、暖かいけどとても重い好きと言う言葉。
その言葉を目の前の少女はいとも簡単に、当たり前のように使ってしまった。
いや、この娘にとって俺に対して当たり前なのだろう。
それほどまでに俺を想ってくれていたのだろう。
俺は、そこまで想ってくれている橋本に信じてもらえないと言う理由に逃げて、隠し事をする自分がとても卑怯に思えた。
だから、俺は、
「なあ、橋本」
「何?」
「一つ、物語を聞いてくれないかな」
「え?別に良いけど?」
「ありがとう・・・昔々、あるところにとっても平凡な高校生がいました」
「変わった切り出しだね」
「まぁね」
俺は物語として、眞魔国の、俺の国の話をしようと思った。
橋本は俺に対する気持ちを、教えてくれた。
なのに俺はとても大事なことを隠している。
それが申し訳なく思ったから。
でも、本当の事言っても流石に信じてもらえないだろう。
だから、物語という形で。
俺はあっちの話をいろいろとした。
トイレから流されたこと、
魔族そして魔王だと言われたこと、
人と魔族が戦争してたこと、
あちらで出会った人々、
名付け親コンラッド
保護者兼教育係、超絶美形ギュンター
手違いから婚約してしまった俺の相棒ヴォルフラム
任務のためなら女装もこなす敏腕スパイヨザック
編み物が趣味で可愛い物大好きグウェンダル
人間の国のお姫様から俺の隠し子になったグレタ
前魔王、セクシークイーン・ツェリ様
マッドサイエンティスト、アニシナさん
etc.etc.・・・
これら全てを物語として語った俺に橋本が言う。
「へ〜渋谷君って、子持ちで婚約者いるのに私とつき合ってたんだ〜。つまり、不倫?」
なっ!
最近そんな名前の女性に見事に失恋しましたがそれは橋本とつき合う前でしたよっ!!
と言うより何故俺の事だという形の発言をっ!
それをそのまま率直に訊くと、橋本は笑いながら、
「え〜?だってあんな風な切り出し方は自分の事だって言ってるようなものだと思うけどな〜」
えっ!でもイセカイですよ!?魔族ですよ!?その上魔王ですよ!?
んな簡単に信じられるものだろうか?
少し信じにくいけどね〜と言っている橋本。
ひょっとして俺、彼女に翻弄されてる?
と、ぼんやり考えていると、橋本が真面目な、不安そうな顔で俺に言う。
「でも、渋谷君が魔王・・・一つの国で一番偉い人だなんて、驚きだけど不安だな・・・」
「え、何で?俺そんなに頼りな・・・い・・・かもしれないけどさ、今までだって何とかやってきたから多分大丈夫だと思うけど・・・」
しかし、不安な顔のままの橋本が言う。
「ううん、そうじゃないの。さっきの話だと渋谷君結構危ない事もやってるみたいだった。
それは渋谷君だから仕方ないかもしれない」
でも、と橋本は続ける。
「でも、渋谷君優しいからその国の人にずっと居て欲しいって頼まれたら、ほんとにずっと居そうな気がするの。
もう、次行ったら帰ってこないんじゃないかって」
いつの間にか、橋本の目には涙が浮かんでいて俺ははっとなる。
「言い方はおかしいかもしれないけど、私、これ以上渋谷君を理解したくないの」
「え?」
「渋谷君の家族の人たちはずっと渋谷君と暮らしてきたからて渋谷君がどんな道選んでも認めてあげれるんだと思う。
でもね、私は理解して認めてあげる事で、渋谷君に会えなくなるのは、好きな人と離れ離れになるのは嫌なの・・・」
確かにあっちの国、あっちの人たちは、とても大切だ。
だけど・・・
「大丈夫」
「え?」
俺は、俺のことを、本当に大切に思ってくれている少女を安心させるため言った。
「この世界も、あっちの世界も、俺の帰る場所だから」
あちらの世界も、こちらの世界も俺の大切なホームグラウンド。
だから、どちらにいても、絶対もう片方に帰る。
たくさん心配をかけてしまうけど、一番心配をかけないためにも。
「ありがとう」
泣いたまま、それでも笑って言ってくれる。
「あと・・もう一つあるんだけど・・・」
もう一つ?
「こういう事訊くの失礼だと思うけど・・・渋谷君、私の事・・・好き?」
なっ
言葉もない俺に橋本は言う。
「初めはね、少し強引に付き合ってもらって、段々好きになってもらおうって思ってた。
だけど、渋谷君に、婚約者や子供が居るって聞いて、好きになってもらえないんじゃないかって不安なの・・・」
黙ってた俺は本当の気持ちを橋本に言う。
「・・・正直に言うとさ、今まであっちのことばっか頭にあって、橋本のことをあんまり意識して無かったんだ」
また泣きそうになる橋本。
俺は、続ける。
「でも、今日、橋本の事教えてもらって、俺のこと知ってもらって、君の事を守ってあげたいって、そう思えるようになったんだ。
それに、確かにヴォルフラムは婚約者だけど、男だし、どっちかっつーと、親友とか友情とかって言葉が合いそうだしな〜」
俺が笑って言うと、橋本もやっと笑ってくれた。
「・・・ねえ、渋谷君」
橋本は少し恥ずかしそうな顔をでも期待に満ちた目をして訊いてきた。
「キス、してくれる?」
俺は少し驚いたけど、笑って、
「いいよ」
そう、言うことができた。
俺たちは唇を静かに重ねる。
俺達はたっぷりと時間をかけてキスをした。
そして、名残惜しかったけど、どちらからともなく唇を離す。
「ふう・・・良かった。ファーストキスが渋谷君で」
「えっ、橋本初めてだったの!?」
「そういう渋谷君は?」
「は、初めてだったけど・・・」
でしょーと可愛く笑う橋本。
ふと時計をみるともう0時を廻っていた。
「わっ、もうこんな時間だ」
「じゃあ寝よっか渋谷君」
「あ、ああ・・・ところで俺はどこで寝ればいいかな?」
「え?そこだよ」
そう言って一つだけのベッドをを指さす。
「じゃあ橋本は?」
「え?そこだけど」
と言って全く同じ動作で全く同じところを指さす。
「ぅええええ!!!???」
橋本が何を言ったのか俺の頭は処理しきれなかった。
「あ、ゴメン渋谷君。
渋谷君王様だから屋根付いてるのじゃなきゃ駄目だった?」
いやいやいやそう言うことではなくてっ
「そっそうじゃなくてっ!!
今の説明だと、俺と橋本が同じベッドで寝るということになりマスがっ!?」
あまりに興奮して途中声が裏がえってしまった。
「仕方ないじゃんベッド一つしかないし、渋谷君なら優しいから絶対安心だし」
そう言われ、断ることもできずにおろおろしていたら、結局同じベッドで寝ることに・・・
「じゃあお休み渋谷君」
「うん、お休み・・・」
俺は過ちを犯さない為にも、早々に寝ようと思った。
するとすんなり眠気が襲ってきてあっさり眠ることができた。
「渋谷君、起きてる?」
すー、すー
「寝ちゃったの?」
すー、すー
「寝ちゃったんだ・・・」
すー、すー
「・・・渋谷君の馬鹿。いいよ、だったら明日・・・お休み、渋谷君」
すー、すー
翌朝、日曜。
俺はどうやらグッスリ眠ってしまったらしい。
すっきりと起床できた。
しかし何故か下半身がすーすーする。
俺は顔だけ動かしそこを見てみる。
すると、そこには反り立つ俺のモノとそれを見てなにやら驚きに固まっている橋本が・・・
「あの、橋本さん?・・・何をやってるんでしょう?」
「あ・・・お早う渋谷君。
実はね、渋谷君が寝言で何度か私を呼ぶから起きちゃって・・・
で、渋谷君を見てたらなんだかコレがむくむくと・・・
で、楽にしてあげようと思って出してみたら予想以上で・・・」
(男の人のってこんなになるんだ・・・
少し怖いけど、コレも渋谷君がもっと戻ってきたくするためと、浮気させない為。頑張らなくちゃ・・・)
俺は理解のおぼつかない頭で必死に言い訳を考える。
「橋本、コレってセクハ・・・」
「渋谷君は、イヤ?」
「えっとイヤとかそう言う問題じゃ・・・」
「なら良いじゃん、・・・私も、怖いけど渋谷君の為ならやってみたい気もするし・・・」
為ならを強調して言う。
そうか、橋本は昨日・・・
あんな事があったのに言ってくれた橋本に対し、覚悟を決める。
「・・・わかった。お願いします」
任せてっ!そう笑って言ってから急に真顔になる橋本。
何をする気なのだろう・・・ドキドキしてきた。
(とは言ったものの・・どうしよう・・・
確か、アビーの話だと・・・舐めるんだった・・よね・・・)
橋本は、覚悟を決めたみたいな表情になると、俺の予想外のこと・・・確かフェラチオって言ったはず・・・をやってきた。
「ん・・渋谷君・・・気持ちいい?・・んむ・・」
「橋本ぉ」
俺は気持ちよすぎて名前を呼ぶことしかできない。
橋本は、先を舐めたり、脇を舐めたり、裏側を舐めたりと色々と試しているようだった。
その快感で、性欲をコントロールできなくなった俺は、
「橋本ぉっ!」
また彼女の名前を呼ぶ、そして俺は橋本をベッドに巻き込み押し倒してしまった。
しかし、すぐに理性を取り戻した。
「あっ・・・その、ゴメン橋本・・・」
そう言って起きあがろうとする俺の腕を優しく掴み言う。
「渋谷君なら・・・ううん、渋谷君だから、いいよ」
「えっ!?」
「その代わり、初めてだから優しく・・・お願い・・ね・・・」
「・・・」
俺は暫く黙って考る。橋本も微笑みながら黙って俺を見つめる。
覚悟を決める。
「・・・わかった」
俺はそっと体を橋本に重ねると、キスをする。
今度は、舌を絡める深く、甘いキス。
それを何度も繰り返した。
「んっ、渋谷君、」
「何?」
「胸、触ってもいいよ」
「う、うん」
俺はドキドキしながら、服をまくる。
橋本の胸はシンプルなブラジャーだけに覆われる状態になる。
「え、えっと、取る、よ?・・・」
「うん、いいよ」
俺はそっと、橋本の胸を隠す最後の衣類を外す。
白い、小振りだが形のいい胸が露わになる。
「綺麗だ・・・」
俺の口から自然とそんな言葉が洩れていた。
「恥ずかしいな」
頬を染める橋本。
「嫌?」
「そうでも、ないかな」
俺は橋本の胸にそっと手を当てる。
柔らかい。
優しく揉み解していくと段々と甘い声が漏れてきた。
俺が、気持ちいい?と訊くと、
渋谷君にやってもらってるからね、とはにかみながら答えてくれる。
俺は今、自分が目の前の少女をとても愛しく思っていることが解り、嬉しかった。
「橋本、」
「何?」
「好きだよ」
「嬉しい」
言葉にするともっと嬉しく、それを受け入れて貰えると更に。
行動の一つ一つが喜びに繋がっていく。
こんな気持ちは初めてで、とても温かかった。
俺は橋本の下半身を覆う衣類をそっと脱がせる。
俺は、女性の本物の秘部を見た。
ソコは、うっすらと湿っていた。
「綺麗だ・・・」
「またぁ〜。恥ずかしいよ」
顔を赤く染めて恥ずかしがる橋本。
「ゴメン。・・触ってみても、いいかな?」
「渋谷君のエッチ」
「うっ」
言葉に詰まってしまう俺。
「冗談。いいよ、こっち触っても。ただし、敏感だから優しく、ね」
俺は、恐々触ってみる。
んっ、とくぐもった声をあげる橋本を見て、本当に敏感なんだなと実感する。
そっと撫でてみる。
喘ぎ声の量が増す。
俺は少しずつスピードを上げていく。
「んっあぁ」
「何だよ、橋本だってそんな声出して・・・」
一応俺が出させているので、白々しいとは思ったけど、さっきの仕返しのつもりで言ってみた。
「はっ、あっ、ひどいよっあっ渋谷君っんはっ」
「えっ、そのゴ、ゴメン」
予想外にストレートな反応に狼狽える俺。
「んっ、でもさっ、はっ、声は渋谷君がっ、出させてるんっ、だしっ」
気がつくと撫でていた指がじっとりとしてきたようだ。
「・・・もう大丈夫そうだから、入れて、いい?」
「私の話は無視ですか・・・」
「・・・ゴメンナサイ・・・」
「まあいいけど。私も我慢の限界だし・・・何度も言うけどホントに怖いから優しくだよ」
「ああ、絶対に優しくするって約束するよ」
「じゃあ・・・」
「うん・・・」
俺はそっと自分のモノを橋本に挿入れていく・・・
「あれっ!?」
「えっ!?」
そこで全く予想外のことが判明する。
「どうして・・・?私、初めて、なのに・・・」
あまりの出来事に泣き出しそうになっているようだ。
「でも、激しい運動とかしてた人に偶にあることらしいし・・・」
慰める俺。
実は、橋本の処女膜は既に無くなっていたのである。
「ほら、それにこれなら、痛くなく出来るし・・・」
「う、うんそうだね・・・よし!じゃあ改めてお願い」
「うん」
泣き顔がいつもの微笑みに戻ってつられて俺も笑ってしまう。
そして、中に入れていたモノを少し抜いて、また深く入れてみた。
ぞくっとするような気持ちよさがあった。
そのときビクッと動いて甘い声を漏らしていたから、橋本もそうなのだろう。
俺はまた段々早さをあげる。
「うっく、あぁ橋本ぉ」
今度は俺まで声がでてしまう。
「ふあぁ、イイよぉ渋谷くぅんあぁっ」
俺たちに理性は残っておらず、ただただ相手を求めていた。
それを何度も何度も繰り返した。
「うぁっ橋本ぉっ、でっ出るっ!!」
「あぁんあぁっ、わっ私もっああっ!
渋谷くぅんっ!!」
「橋本ぉっ!!」
俺たちは互いに呼びあって果てた。
俺たちはだいぶ長い間余韻に浸っていた。
そしてだいぶ時間が過ぎて落ち着いた頃、俺は不安に教われ訊いてみた。
「なぁ橋本、あの、中に出してしまったんだけど・・・大丈夫?」
「うん、大丈夫。ちゃんと危ない日」
「うぇっ!!」
「何、その反応。ひょっとして渋谷君やるだけやって責任はとらない気だったの?」
「いっいやっ!もしもの時はきちんと責任とりますからっ!」
狼狽える俺。
・・・昨日から何度目だろう・・・
そんな様子を見て橋本が笑いながら、
「あははっじょーだんだよ」
「なんだ・・・」
脱力する俺。
「でも、これからそういうことがあったらちゃんと責任とってね」
そう微笑んで言う、とても可愛くて、とても大切な少女に俺は精一杯力強く言う。
「ああ、その時は絶対幸せにするよ」
彼女の為ならどんなことも乗り越えられる。
だって彼女は、俺の大切な、大切な人なのだから・・・