「・・・またいるのか。」  
「ああ、帰ってきたのですか。今は邪魔ですね。そこらで猫とでも遊んでいなさい。」  
 自室なのにこの仕打ち。夜も更けたのに赤い悪魔は元気はつらつだ。元気に怪しい泡をだす試験管を振っている。逆に  
グウェンダルはぐったりとしている。  
「なんです、老人のように疲れた目をして。今日は確か新魔王陛下と上王陛下との晩餐会だったのではないのですか?」  
「ああ。そこで色々あってな。」  
 見た目は愛らしいが、王になる気のない子どもの魔王陛下は、末っ子のヴォルフラムに求婚し、あまつさえ逆上した弟は  
魔王と決闘するなどと言い出した。そのきっかけが自分たちの母だと言うのだから、疲れずにはいられない。  
 話を聞いているのかいないのか、アニシナはそうですかと適当に相槌を打ちながらえぐい緑色をした液体に、先ほどの  
泡噴く液体を混ぜては様子を見ている。しばらくして、じゅっぽっと怪しげな音と少ない煙を吐き出したその液体を、アニシナ  
は満足げに見て、魔道小型保存庫に大切そうにしまった。そしてようやくグウェンダルの顔を見た。  
「まあ、あなたがその新魔王を気に入ろうが気に入るまいが、すべては眞王のご意思。我々がとやかく言ったところで、どう  
にかなるわけでもありません。あなたは自分の仕事をしていればいいのです。・・・おや、香水の匂いが。」  
 意味もないのに、グウェンダルは慌てて弁解した。  
「これは違うぞ。母上が洗髪水に、匂いのする薬を混ぜていたとかで・・・それが移っただけだ!」  
「何を慌てているのです。別に女の移り香くらいであなたの女関係を洗ったりなどしませんよ。ぷらいばしーは大事ですとも。」  
 お前がそれを言うのか。ぷらいばしーのぷの字もないくせに。  
「ところで、その匂いには覚えがありますね・・・。ツェリ様が使っていたのでしたら、アレですか。確か、ツェリ様が美香蘭  
とか名付けたと言う・・・」  
「知っているのか?」  
 意外そうな顔をするグウェンダルに、アニシナは自慢げに笑って見せた。  
「ええ。何を隠そう―――別に隠すこともありませんが―――それを作ったのはわたくしです!」  
「何!?」  
 それは初耳。  
 
「ツェリ様に、薬のことならわたくしが詳しいのではないかと頼まれましてね。まだ当時は魔王陛下でもあられましたから、  
断る理由もなく作りましたとも。媚薬というのは、毒のようなものですからね。当然、わたくしの範疇です。」  
そんな危険なものを・・・とつぶやいて、グウェンダルは次の瞬間はっと気付いた。  
「まて、アニシナ。お前が発明品や開発した毒を、実験することもなく人に渡すわけがないだろう。と言うことは、あの薬の  
実験をしたのか!?」  
「ええ、しましたとも。」  
 さらりと返すアニシナに、顔面蒼白になるグウェンダル。  
「誰を実験台にした!?私は覚えがないが!?」  
「ああ。納期が迫っていたので珍しく自分で試してみました。」  
 それを聞いて、アニシナが自分一人で実験を!?と驚いた。というか、できるなら普段も一人でやって欲しいと思う。  
 しかし、自分の他に被害者が出ていないのなら、もう慌てることはない。てっきり、他の被害者が出ているのを見逃した  
のかと思った。慣れない者に、あの実験は過酷過ぎる。  
「そ、そうか・・・。しかし、どこで実験をしていたんだ?カーベルニコフの研究室か?」  
「いいえ。確かヴォルテール城です。ヴォルテールの地下研究室で調合していましたから。あの薬は、うまくいったか判断  
するのに他人の反応を調査しなければなりませんから、城内を散歩したりもしました。」  
 うっかりしていた!あれは好意を持つものはより大胆に、敵対心を持っているものはより険悪になる、感情増幅剤のような  
もの。そんなものをアニシナが自分の身で実験していたとなると・・・。  
「お前、道で後ろから襲われたりとかしなかったか?メイドたちにトマトとかを投げつけられたりは・・・。」  
 アニシナを嫌いだと思っている人間は少ないが、迷惑だと思っている人間は沢山いるので。しかし、アニシナは首を横に振る。  
「いいえ。むしろ、道を歩いていても人っ子一人近寄ってきませんでした。たまたま出会ったアンブリンは、小さく声を上げた  
後走り去ってしまいましたが。なぜなのでしょうね。」  
・・・どうも恐怖心を増幅させたらしい。  
「・・・まぁ、大事がなかったようで何よりだ。しかし、それならどうやって成功か失敗かを見分けたんだ?」  
 
 恐怖心を増幅させる薬ではなく媚薬として依頼を受けたのなら、それに見合った効能がでるまでアニシナは薬を作り続けるはず。  
 グウェンダルが不思議そうな顔をしていると、アニシナはにやりと笑った。不吉な笑みだ。  
「もちろん、実験といえば、あなたに決まっているでしょう。」  
「は?」  
「あなたで実験をした、と言っているんです。」  
 グウェンダルにそんな記憶はない。そんな、アニシナに媚薬など―――  
「おや。忘れてしまいましたか?まぁ、4ヶ月ほど前のことですから、あなたの脳みそでは覚えていられないのかもしれませんが。」  
 近づいてくるアニシナには、変わらず笑みが張り付いている。面白くて仕方がないという笑顔だ。グウェンダルは戦慄を覚えた。  
「しかし―――本当に覚えがありませんか?わたくしに、言ったことも?」  
 アニシナに、何か言っただろうか。4ヶ月前。媚薬―――  
「あ。」  
 グウェンダルは思い出した。首から耳まで、真っ赤になる。それを可笑しそうに笑うアニシナ。  
「思い出しましたか?まったく、男というものは自分の都合のいいように記憶を消してしまえるのですね。呆れてため息もでません。」  
 口では辛らつなせりふを言うくせに、心底楽しそうだ。グウェンダルは、とうとう片手で顔を覆ってしまった。  
 まさか、あれが媚薬の実験だったなんて―――  
 
 
 アニシナはグウェンダルの部屋でお茶をすすっていた。ツェツィーリエに媚薬の調合を頼まれたので、一応毒の範疇と  
いうことで作ってみた。魔族にのみ反応する特殊な毒で、相手の感情を高ぶらせる匂いがあるものを香水仕立てにしてみた。  
しかしなるべく早くと言うことだったので、今回は幼馴染をだまくらかして香水を代わりにつけさせるということもできず、直接  
自分に振りかけてみることにしたのだった。  
 しかし、ヴォルテール城を闊歩してみても人っ子一人近寄ってこないとはどういうわけか。これでは媚薬の効果があるか  
わからない。やはりグウェンダルを使うべきだったと、アニシナは少し後悔していた。何とか実験結果を得られないものかと思案  
しながら、グウェンダルの私室のソファに身を沈める。部屋の内装に目が行った。  
・・・また増えましたね。あみぐるみ。  
目に付いたのは魚人姫のあみぐるみ。グウェンダルのシュミとは思えないので、誰かの  
リクエストだろうか。  
「・・・なぜいる。」  
 威厳が備わっていそうな低音で話しかけられた。あくまでも備わっていそうなだけで、見掛け倒しなのをアニシナは知って  
いる。いつの間にか扉が開いていて、長身の幼馴染の姿があった。苦虫を噛み潰したような顔。  
「ああ、グウェンダル。遅かったですね。」  
「ああ、最近シュトッフェルの様子がおかしいのでな・・・。それより、ここ数日行方不明と聞いていたが。」  
「ああ、別に。この城の地下で泊り込みの研究をしていただけですよ。そういえば、カーベルニコフに連絡を入れるのを忘れて  
いましたね。」  
 
 研究にかかりきりになるとよくあることだ。グウェンダルもカーベルニコフの人々もわかってはいるのだが、それでも十貴族  
の一員であるアニシナにもしもがあっては事である。行き先だけはいつも告げているのだが、その連絡も今回は怠ってしまった。  
軍籍もあるので、今後注意しなくてはならない。  
「それで、研究はどうした?」  
「まだ試作段階ですね・・・。どうしたものでしょう。」  
 どうすればより良い実験結果が出るか。アニシナは頭をフル稼働させている。  
「・・・アニシナ、お前香水を変えたのか?」  
「ええ・・・。」  
 グウェンダルに話しかけられても上の空である。香水というのは、例の媚薬だ。なかなかいい香りがするのだが、しかし  
朴念仁のグウェンダルが香水が変わったことに気付くとは。  
「よく気付きましたね。あなたにしては珍しいことです。」  
「そうか?・・・今日はどうする。泊まるのか?」  
「ええ、そうしましょう。カーベルニコフには明日連絡を入れましょうか。また何日かこちらで実験をする予定ですし。」  
「・・・部屋は。」  
「結構。研究室に篭って―――」  
 実験方法の練り直し・・・と続くはずだったのだが、アニシナは口をつぐんだ。グウェンダルが、アニシナを後ろから抱き  
寄せたからだ。  
「・・・何事ですか。グウェンダル。」  
 横目で見ると、グウェンダルの低い声が耳元で囁いた。  
「・・・泊まる、というのは―――」  
 私の部屋ではないのか?  
 何だ、とアニシナは思った。しっかり効いているではないか。こんなことなら、やはり最初からグウェンダルを使って実験  
すればよかった。  
 
 そのままアニシナはグウェンダルのひざの上で抱きしめられる。  
 体温は、高めですね。脈・・・鼓動は速め、血圧も上がっていそうですね。  
 グウェンダルの顔に手を伸ばし、じっと瞳を覗き込む。  
 目が少々潤んでいますね。頬も上気していますし、軽い興奮状態といったところですか。  
 足に当たる、硬くて熱い、モノ―――  
 ・・・まぁ、興奮状態にあるのなら、こんなものでしょう。  
 アニシナは冷静にグウェンダルの変化を感じていた。そんなこととは露とも知らないグウェンダルは、青い瞳を揺らがせ  
てアニシナに唇を落とした。驚くほど熱情を孕んだ口付けは互いの息を上げたが、アニシナはそんなデータが欲しいのではない。  
「グウェン。少し離れなさい。今のあなたの状態をメモしなければ・・・!」  
「・・・後ではだめなのか?」  
「だめです!」  
 言い切って、グウェンダルの机の紙を勝手に使って、走り書きをし始めた。アニシナに命令されては、迂闊に動けない  
グウェンダル。薬を使っても、本人の習性が消えたり、理性が欠けたりもしないようだ。これはいいデータである。  
 がりがりと一心不乱に書きなぐるアニシナの後姿を、寂しげに見つめるグウェンダル。そのうち、アニシナに近づいてまたもや  
後ろから腰に抱き付いてきた。  
「グウェン。邪魔ですから、あっちに行ってなさい。」  
 母親にもされたことのないしっしのポーズで追われるグウェンダル。しかし、今夜のグウェンダルは負けなかった。  
「これが邪魔なら、今すぐお前を寝室へ運ぶ。」  
「何ですか、わたくしを脅すつもりですか?」  
 心底うっとうしそうに言われたが、言っただけで結局グウェンダルはそのままにされた。ただ単に、相手をするのが面倒  
だっただけだが。それでもグウェンダルは満足そうにアニシナの腰を引き寄せて、露わなうなじに唇を寄せた。アニシナは  
もう、何も言わない。そんなことに注意を逸らすよりも、研究のデータのほうが大事だった。  
 
 グウェンダルの手が上がってきて、アニシナの胸をまさぐろうとする。アニシナはグウェンダルの手を思い切りひねった。  
「・・・痛い。」  
「わたくしにせくはらをするとはいい度胸です。」  
 睨まれて、おとなしく胸からは手を引いた。代わりにアニシナの髪に顔をうずめた。  
「・・・ふむ。これくらいですか。そうだ、グウェン。今の気分はどうですか?気分が悪かったり、変にハイになったりはしていませんか?」  
 変な副作用があってはいけない。グウェンダルはアニシナの頭上で少し考え込んだ気配を見せたが、ぽつりと一言つぶやいた。  
「・・・幸せだ。」  
「は?」  
 グウェンダルは、先ほどより強い力でアニシナを抱きしめた。  
「お前とこうしていられるのは、幸せだ。」  
 正確には、こうしても怒ったり殴ったりしないアニシナと一緒にいられる事が、だが。  
「そういうことを聞いているのではありません!質問の意味も正確に汲み取れませんか、役立たずな頭だこと!気分は悪くない  
ということでいいですね?」  
「ああ。」  
「吐き気や眩暈、幻覚症状などは?」  
「ないな。」  
「ふむ・・・。副作用はなし、と。」  
 どうも先ほどの台詞は、とるに足らぬこと、とアニシナの中で判断されたようだ。別に構わないが。  
 
「ふむ。これなら成功といっても良い出来ですね。」  
「終わったか?」  
「ええ。まだ改良の余地はありそうですが・・・今日はこれくらいでいいでしょう。グウェンダル、ご協力どうもありがとう。」  
 アニシナがそっけなくそういった瞬間、グウェンダルがアニシナの身体を抱き上げた。きつく睨み付けるアニシナ。  
「・・・何のつもりですか!グウェンダル!!」  
「終わったのなら、次は私に付き合ってくれてもいいだろう。」  
「なぜわたくしがあなたに付き合わねばならないのです!第一、最近実験続きで今日は疲れているのです。そんな気分に  
はなれません!」  
 グウェンダルは困った顔をしたが、気がつけばもうアニシナはグウェンダルの私室のベッドに下ろされていた。  
「絶対にだめか?」  
 まるで捨てられた子犬のような目をしてこちらを伺ってくる。もう130も超えたと言うのに、なんて情けのない!!  
 呆れてため息がでたアニシナだったが、同時にあきらめてもいた。自分の薬の効果でこうなっているのだ。何を言っても、  
最終的な要求は変わらないだろう。媚薬とはそういうものだ。  
「仕方がありませんね・・・。」  
 アニシナはベッドに大の字になって勢いよく寝そべった。  
「さぁ!やるなら好きになさい!!わたくしは逃げも隠れもしませんよ!受けてたちましょう!!」  
 フォンカーベルニコフ卿アニシナ。ベッドの中まで漢らしい。  
 
 グウェンダルはやはり苦笑しながらだが、嬉しそうにアニシナに口づけた。そういえば、随分久しぶりだとアニシナは思い  
返した。以前グウェンダルと寝たのはいつだったか・・・もう思い出せない。そんなに前の話でもないような気がするのだが、  
実験以外のことはそれほど覚えていられない性質なのだ。  
 口付けを繰り返すグウェンダルの身体は熱く、その熱もアニシナに伝染したように身体が火照ってきた。馴染んだ口付け  
は心地が良かった。  
 互いに服を脱がしあい、生まれたままの姿になった互いをみつめた。あまりにも体格差があるのように感じるが、アニシナ  
もグウェンダルも、そのことに怯えたりはもうしない。長い時間の中、愛情と友情の狭間で身体を重ねてきた。この先、この  
関係が崩れることはないという確信が二人にはある。身体は熱いのに、心はいつも冷静だった。少なくとも、アニシナはいつも  
そうだった。グウェンダルもいつもはそうなのだろうが、今日は薬のせいもあってか、理性がどれほど残っているのかアニシナ  
でさえわからなかった。  
 アニシナの胸に、グウェンダルが舌を這わせる。強くなめ上げ、先端を咥えては舌で転がし、強く吸い上げる。熱い息を  
吹きかけられると、肌が粟立ち、頂がぴんと張り詰めた。グウェンダルはそれを満足そうに見下ろし、首筋に吸い付いた。  
薬の効果のせいか、普段よりも優しく感じるその愛撫は、グウェンダルらしくなくて厭らしいとアニシナは感じた。それが不快  
で、アニシナは今日はもう、とっとと終わらせることに決定した。  
 グウェンダルの硬く張り詰めた一物に手をかける。グウェンダルがわずかに表情を変えたが、気にも留めずにそれを手の  
中で玩んだ。アニシナの両手に余るほどの大きさのそれは、徐々に形を変えていくことでグウェンダルの興奮を表した。  
ゆっくりと指先で筋をなぞり、握った片手でグウェンダルの形を確かめる。先端を弾くと、グウェンダルがわずかに声を上げた。  
「・・・っ・・・」  
「何です?グウェンダル。普段わたくしに声を出せ、などと言っておいて、自分は我慢するのですか?もっと声を出しなさい。」  
 
 グウェンダルを握ったまま、アニシナが一方的に口付けると、グウェンダルは快楽に耐えられないとでも言うように、無言で  
眉根を寄せた。眉間に苦しそうな皺がよる。熱い息を吹きかけながら、アニシナは至近距離で囁いた。  
「啼きなさい。・・・そちらのほうがかわいいですよ。」  
 いつだったかグウェンダルに言われたせりふそのままを、アニシナは言った。羞恥にグウェンダルの顔が赤くなったが、  
情けないことにアニシナの手の中では分身が反応している。ふいにそれを強く擦りあげられ、グウェンダルは声を上げた。  
「っあぁ・・・!!」  
「ふふ・・・いい声ですよ。グウェン。かわいらしく見えます。」  
 完全に主導権を握ったことに、アニシナは笑みを浮かべたが、グウェンダルはアニシナの手を自分からはずし、荒い息を  
混じらせながらこう言った。  
「・・・手、だけなのか?」  
 アニシナは眉根をよせた。  
「・・・手だけでは不満ですか。」  
 グウェンダルは無言でアニシナを抱き寄せ、耳元で囁いた。  
「・・・頼む。」  
 アニシナは、仕方がないという顔をして、グウェンダルの下半身に顔を近づけた。起ちあがることで主張しているグウェンダル  
のものを、ためらいもなく口に含んだ。ねっとりとした熱い口内を感じて、グウェンダルの息が上がった。口内で、飴玉を  
転がすようにグウェンダルの雄を玩ぶ。  
「っぁ・・・アニシナっ・・・!」  
 
 根元に手を沿え、丁寧にグウェンダルをしゃぶるアニシナ。長い付き合いなので、どこがどう感じるのか、アニシナは自分の  
身体以上によく知っていた。裏の筋を舐め上げ、先端を口に含み、口内で舌を使ってしごきあげると、グウェンダルはアニシナ  
の頭に手を置き、さらに押し付けるようにしてくる。  
「ふっ・・・ん、ぅく・・・」  
「っああっ・・・アニシナっ・・・くぅっ・・・!!」  
 快楽に身体と声を振るわせるグウェンダル。喉の奥までグウェンダルを導き、むせるのを耐えながら喉を使って奉仕すると、  
グウェンダルは声をさらに高くした。  
「っ・・・アニシナっ・・・もう、無理、だっ・・・!!」  
 アニシナの口から自身を抜き取った瞬間、グウェンダルの欲望が弾けて、アニシナの顔を白濁した液で汚した。  
「くっ・・・う・・・!」  
 精を吐き出す快楽に身を震わせた。我に返ると、そこには己の精で汚れたアニシナの姿があった。不機嫌そうな顔の  
アニシナに、怯えるグウェンダル。  
「あ・・・その、すまん。」  
「いいえ。大丈夫です。たかが男のだし汁ですからね!」  
 そんな言い方はないと思う。  
「その・・・気持ちが、よかった。・・・ありがとう。」  
「そうですか。それでは満足しましたね?ではわたくしは身体を拭いて眠ります!変なことをしたらただでは・・・!?」  
 一方的に行為を終わろうとしていたアニシナだったが、グウェンダルはアニシナの話を最後まで聞かずに、アニシナを押し  
倒した。  
 
「グウェン!何だと言うのです!!」  
「お前はまだ、満足していないだろう?」  
 何の前触れもなく秘所に手を伸ばされ、アニシナは身体を硬くした。  
「・・・濡れているぞ。」  
「っ・・・だから何だと言うのです!」  
 少しグウェンの身体を玩んで、興奮しただけだ。決して、グウェンダルに欲情したのではない。グウェンダルは抵抗する  
アニシナに構わず、指を膣内へと挿れた。大きく身体を振るわせるアニシナ。  
「ふ・・・ぅ」  
「いいのか?アニシナ・・・」  
 重低音を耳元で囁かれ、アニシナの肌は粟立った。太い指が、アニシナの中を探るように蠢く。アニシナと同じように、  
グウェンダルも自分の身体のこと以上に、アニシナの身体を良く知っていた。腰から上ってくる快楽に、アニシナは瞳を  
潤ませる。くちゅりと音を鳴らして、中で指を曲げると、快楽にぞくぞくと身体が震えた。  
「はぁ・・・あぁ・・・っグウェ・・・んっ・・・!」  
「・・・かわいいな・・・アニシナ・・・」  
 胸の頂を口に含み甘噛みしてやると、さらにアニシナは声を高くして喘いだ。アニシナが、指をぎゅっと締め付けてくる。  
グウェンダルは堪らなくなって、秘所から指を抜き、再び熱くなった雄をアニシナの蜜壷に擦り付けた。互いがもっとも熱を  
持っている部分を接触させると、熱が何倍にも膨れ上がる気がした。  
「・・・っ・・・何をぐずぐずしているのです・・・!早くなさい!!」  
 涙目になりながらアニシナが怒鳴ると、グウェンダルは可笑しそうに唇を歪めた。  
「何だ・・・?我慢できないのか・・・?」  
 挑発の言葉。アニシナは激昂するかと思いきや、涼しい瞳でこちらを睨んだ。  
「おや、どちらが我慢できないんでしょうね?」  
 そう言ってグウェンダルの一物を、指先で辿る。それだけでグウェンダルは身体を震わせた。我慢できないのは同じだった。  
 
「わかった。・・・入れるぞ。」  
 じゅぷりとグウェンダルの硬くなった分身をアニシナの蜜壷に沈める。アニシナの身体と自分のサイズが合わないので、  
傷つけないようにゆっくりと挿入する。快楽が、じわりと二人を犯していく。  
「ふ、ぁ・・・グウェンっ・・・!!」  
「っく・・・アニシナ、きつい・・・もっと、緩めろっ・・・」  
「あ、あなたの方こそっ・・・ああっ!・・・もっと小さければいいのです!みっともないほど大きくしてっ・・・!!あぁんっ!!」  
 無茶苦茶だ。そんなことできるわけがない。アニシナは、例えベッドの中であろうとアニシナだった。  
 グウェンダルが完全にアニシナの中に納まると、徐々に動きを激しくしていく。アニシナの細い腰を抱きしめ、抜き差しを  
繰り返し、アニシナの最奥に何度も先端を擦りつける。その度、アニシナの豊満な胸が揺れて、グウェンダルの目を愉しませた。  
「ん・・・!!ぁあ!ぐ、グウェンっ・・・!!」  
「アニシナ・・・すごく、いい、ぞ・・・っ」  
 グウェンダルの興奮した声を耳元で聴き、アニシナは満足だと思った。身体よりも心が満たされる。男が普段見せないような  
部分を知るのが、アニシナは何より楽しい。特にグウェンダルには、普段から徹底してフェミニズムを叩き込んである。  
アニシナにも逆らわない。だから、ベッドの中でしか反撃ができない愚かな自分を良く知っている。それでも尚、愚かな自分を  
さらして求めてくるのは、女の保護欲を刺激してくるものでしかない。アニシナは身体の快楽よりも、むしろそちらの快感を  
好んだ。グウェンダルに抱かれるのが嫌ではない理由は、そういう部分もあった。  
 しかし、もちろん身体の快楽も感じている。長い時間をかけて互いに慣れた身体は、相手の愛撫で達するようにできて  
しまっている。グウェンダルに限界が近づいているのを感じた。それに向けて、グウェンダルの動きは一層、激しくなっていく。  
アニシナの小さな身体を抱きしめ、腰を激しく動かした。  
 
「あ、あぁ!!んぁ!ああぁんっ!!」  
「アニシナ・・・もうっ・・・!」  
 最奥を突き、アニシナは達すると同時にグウェンダルをぎゅっと締め付けた。  
「っああああああぁんっ!!!」  
「くっ・・・!アニシナぁっ・・・!!」  
グウェンダルは、そのままアニシナの最奥に己の欲望を吐き出した。息を荒げるアニシナ。しかし、グウェンダルはまだ  
終わらせるつもりはないようだった。震えるアニシナの身体をうつぶせに組み敷き、腰を抱いた。  
「ま、待ちなさいっ!グウェンっ、わたくしは疲れました!!」  
「私はまだ大丈夫だ。」  
 顔の見えない状態で、耳の後ろから熱い吐息とともに口説き文句が降ってくる。  
「お前が足らない・・・。もっと、欲しい・・・。」  
 アニシナが逃げられないと覚悟を決めた瞬間に、後ろから異物が挿入される感触がした。強烈な快楽を伴う異物は、  
自分に先程まで這入っていた、身体に馴染んだ幼馴染であることは疑いもない。腰を掴まれ、先程とは違った角度で攻め  
立てられ、アニシナはみっともなく声を出しそうになり、慌てて枕で口を塞いだ。  
「んんっ・・・!!ふ、うぅんっ!!」  
「アニシナ・・・っ!アニシナっ!!」  
 何度も自分の名前を呼んでくる幼馴染の指が、アニシナの唇に割って入ってきた。グウェンダルの指に、舌や歯茎を  
なぞられて、アニシナは理性が溶けていくのを感じた。アニシナの小さな口に、グウェンダルの指は2本も入ればいっぱいに  
なる。上下の口をグウェンダルにかき回されて、アニシナは再び絶頂を迎えようとしていた。  
「んぐっ・・・ふ、ふうぅっ!!ううんっ、ん、ん、んんんんんっ!!」  
「っ・・・アニシナ、後ろからが気持ちいいのか?」  
 
 グウェンダルの興奮した声を聞くと、アニシナは気分を害したのか、グウェンダル自身を思い切り締め付けた。グウェンダルは苦しそうな声を上げる。  
「っく・・・!!や、やめろアニシナっ・・・!!もったいないだろうっ!!」  
 もったいないことがあるものか。明日になればまたいくらでも出来る無駄な体力があるくせに。アニシナはぎゅっとグウェンダルを締め付けて、思い切り腰を動かした。グウェンダルが顔色を変える。  
「っ・・・アニシナっ、やめっ・・・くっ!!」  
「ふ、んっ、んんぅっ!!ふうんっ!んんんんんんんっっ!!」  
 グウェンダルを激しく攻め立て、指をしゃぶると、グウェンダルが急速に限界を迎えようとアニシナに猛ったものを最奥に突き立てた。  
「くっ・・・ううっ!!」  
「ん―――――!!」  
 二人同時に達した後、アニシナは思った。  
 薬が・・・強すぎるようですね。匂いを薄めないと、獣に襲われます・・・。  
 最後まで、実験のことを考えていた。  
 
 

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