思い返せば、とても恥ずかしいことをたくさん言った夜だった。「しあわせ」だとか「かわいい」とか。今まであんなにアニシナ  
を激しく抱いたことはなかったし、今考えれば、あの時の自分はどうかしていた。  
 4ヶ月前のことを思い返し、グウェンダルは赤面して声も出なかった。そんな幼馴染を見て、笑うアニシナ。  
「まぁ、というわけで、あれはあの後洗髪水に混ぜることによって効能を薄くすると言う改良を加えて、あなたのお母様に  
お譲りしたわけです。あなたも欲しいのなら譲りましょうか?」  
「いらんっ!」  
「そうですか、それは残念。―――ところで、案計統にご協力いただきたいのですが。あれは自白剤の効果があったのか、  
精力剤の効果があったのか、わたくしでは判断できませんでした。どちらかの効能があったのは、あなたの様子を見る限り  
明らかです!どちらの効果があったとあなたは考えますか?いえ、あなたがどれほど愚かでも、2択ならば答えられるでしょう。」  
 さあ言え、とばかりにアニシナはグウェンダルを見つめている。グウェンダルは頭を痛めた。それは――あの時言ったことは、  
自分の思いを達するための方便に過ぎないのか、それとも本心から言ったのかと、遠まわしに聞いているようなものだ。  
 グウェンダルは重い口を開いた。  
「・・・どちらの効能もあったんじゃないか?」  
 本心だった。それでも、まともな状態なら死んでも口にしたりしない。どちらの効能もあったのだろうとしか、グウェンダル  
は思えない。アニシナを見ると、少し不機嫌そうに眉を寄せていた。  
「本当ですか?わたくしを誤魔化そうなどというつもりで言ってはいませんね?」  
 やはり遠まわし・・・どころか、直接聞いていたらしい。  
「・・・私を試しているのはお前だろう。」  
「まあ、いいでしょう。どちらの効能も、あったのかもしれませんね!」  
 
 グウェンダルはため息をついた。どうもあの夜のことを根に持っているようだ。それはそうだろう。小柄なアニシナが、自分の  
ような大男の相手を一晩かけてするのは、体力のいる話だ。普段は実験のこと以外、次の日になれば忘れているアニシナが、  
よくも4ヶ月も忘れずにいたものだ。それだけ恨みも深いと見える。  
「そんなに私の言ったことを疑うのなら―――私にその薬を使って、自分が被験者になればいいだろう。」  
 グウェンダルがしまった、と思った瞬間、アニシナはグウェンダルに香水を振りかけていた。甘い匂いが、鼻を突く。にやり  
とアニシナが笑った。  
「やはり、されたがりのあなたらしい発言ですね!では、遠慮なく試させていただきましょう!!」  
 グウェンダルは頭を抱えた。明日は弟と魔王の決闘に立ち会う予定なのに、今夜は一晩かけてアニシナの相手をすること  
になってしまったらしい。ああ、涙が出てくる。  
 役得とは考えないグウェンダルの思考の仕方が、彼の不幸の原因かもしれない。  
「さて、効果が現れるのは相手の体臭と香水の匂いが混じり始める十分後くらいですから・・・そのあたりも含めて、今度は  
ほれ薬として商品化できないかを検討してみましょう!」  
 女子にはばか売れするだろう。犠牲になる男が哀れだった。  
「アニシナ、一つ忘れていないか?」  
「何をわたくしが忘れていると?」  
「この薬は・・・好意を持つものに、より一層大胆になると聞いている。お前と私の感情が一致していなければ、私と同じ効能  
は得られないのではないか?」  
 アニシナは一瞬、きょとんと目を丸くして、次には不敵に笑った。  
「それは、わたくしとあなたの感情が一致していない、と言いたいのですか?」  
「・・・さぁな。私にはわからん。」  
 試されたので、試し返している。アニシナが、自分に好意を持っているのか、と。自分はすでに、好意を持っていると4ヶ月前  
のことで証明してしまった。なら、アニシナも自分のことをどう思っているか、確かめても罰は当たらない―――  
 
「わたくしを試すのですか?」  
「何のことだ。」  
「・・・わたくしが、嫌いな男と130年も一緒にいると思いますか?」  
 まして、抱かれるなんて。細いあごを上げて、上から下へとグウェンダルを見下ろすアニシナ。グウェンダルは苦笑した。  
「・・・そうだな。」  
「分かればよろしい。それでは、そろそろ時間ですが・・・まずわたくしの脈と血圧、瞳孔の開き具合を見てみましょうか。」  
 血圧はいつもより少し高め。脈は正常。瞳孔は・・・少し開き気味か。  
「ふむ、薬が効き始めているようですが・・・さしたる変化を感じませんね。」  
「私のときもそうだった。」  
 だからまさか、実験の材料にされているとは思わなかったのだ。ただ少し・・・その夜はそんな気分になったのだと思っていた。  
「では、まず自白剤の効果があるのかどうかですが・・・グウェン、わたくしに何か答えにくい質問をしてごらんなさい。」  
「は?」  
「自白剤の効果を試すには手っ取り早い方法です。何かわたくしに聞いておきたいことなどないのですか?」  
 アニシナに聞いてみたいこと・・・ない。むしろ聞きたくないことばかりだ。大体、アニシナについて特にわからないことなどない。  
生まれたときから一緒にいるようなものだし、隠し事などしようがない。もし隠し事があるとするならば、それは幼馴染の自分にも  
言えないことで、それに触れることはためらわれた。  
 考え込むグウェンダルに、焦れたようにアニシナが急かした。  
「何を考えることがあるというのです!わたくしの何もかもを知っているわけでもないのに。何かないのですか!?」  
・・・これは何か言わないと、ただでは済みそうにない。精一杯考えたグウェンダルはためらいがちに口を開いた。  
 
「あー・・・その、だな。私のことを―――」  
 こちらを伺うアニシナの水色の瞳を見て、言わなきゃよかったかな、と思ったが、もう遅い。  
「私のことを、どう、思っている?」  
 一瞬だけ静寂に包まれた後、アニシナは不機嫌そうな顔をして言った。  
「却下です。」  
「・・・なぜだ。」  
 というか、自白剤の効果があるなら、却下はないだろう。グウェンダルの疲れた瞳を見つめて、アニシナははっきりと言った。  
「わざわざ聞くことですか?それは。その答えをあなたは―――」  
 知っているでしょう?  
 グウェンダルは頭を抱えてため息をついた。だったら何を聞けと。  
「無理だ。お前の返答は予測できる上、お前は私に隠し事などしていないだろう。」  
「当然です!わたくしがなぜ、あなたごときに隠し事などせねばならないのです!」  
「では、私から何を聞くことがある?」  
「あら、そうですね・・・。これでは自白効果の有無が確認できません。」  
 腕を組み、アニシナは考え込んだ。グウェンダルは実験を切り上げるために適当なことを言った。  
「自白剤なら、先程の私の質問には嫌でも答えていただろう。ということは、自白剤の効果はなかったと言えるのではないか?」  
「・・・ふむ、そうですね。では、自白剤の効果はなし、としておきましょう。」  
 メモに例の悪筆でデータを書き込んでいくアニシナ。さぁ、次が本番だ。フォンヴォルテール卿。  
 
「では、次は精力剤としての効果ですが。」  
 きた。グウェンダルはまともにアニシナの顔が見られない。アニシナは、グウェンダルに近寄って、ゆっくりと唇を重ねた。  
「・・・では、寝室に行きましょうか。ここでわたくしに抱かれたいと言うのなら、わたくしは別に構いませんが。」  
 あの夜とは、攻守逆転だ。グウェンダルは今すぐ逃げ出したい気分と、このまま押し倒してしまいたい気分という、究極の  
二択を味わった。選択する権利はないが。  
「・・・寝室だ。」  
「いいでしょう。」  
 アニシナの水色の瞳で見つめられるだけで、グウェンダルの権利は消失する。逆らう意思も、持てない。  
 
 グウェンダルがベッドに腰掛けると、アニシナはグウェンの膝に乗って、再び唇を重ねてきた。唇を舐め、舌を絡ませ、  
口腔を探る濃厚なキス。何度も繰り返していると、それだけでグウェンダルは先程の恐怖が吹っ飛んだ。口付けだけで脳が  
とろけそうになる。目を開いてアニシナを見ると、アニシナも目を開いてこちらを見ていた。急に気恥ずかしくなり、唇を離した。  
「・・・何です、グウェンダル?」  
「いや・・・何でもない。」  
 いまさら恥ずかしいなどと言ったら、また馬鹿にされるのは目に見えている。『一体何年の付き合いになると思っているのです!  
いまさら口付けの時の顔を見られていたなどと、瑣末なことに羞恥を感じるなら、もっとすごいことはどうなるのです!憤死でも  
しますか!?』とか何とか。  
 グウェンダルは余計な考えをかき消すように、アニシナを抱き上げ、ベッドに横たえた。集中すればいい。これは『実験』なのだから。  
 
 アニシナの髪留めを外し、髪を下ろす。同時にアニシナもグウェンダルの髪留めを外した。互いの長い髪が、シーツの海  
で交じり合う。互いに互いの服を脱がしあい、身体に触れる。グウェンダルからは、先程の香水の香りが漂っていた。  
「・・・酔ってしまいそうですね。この匂いは・・・」  
「・・・例の薬か?そうだな・・・あまり好きな香りではないな。」  
「あなたは甘い香りが好きではありませんからね。」  
 アニシナがグウェンダルの首筋に舌を這わせる。グウェンの背筋に、ぞくりとした感覚が這い上がってくる。  
「まぁ、たまにはあなたからこんな匂いがするのも、いいでしょう。たまには、ですが。」  
「・・・お前も、甘い香りは苦手だと思っていた。」  
「ええ。ですが、いつもと同じがいいとは限らないときもありますよ。例えば――」  
 アニシナはグウェンを強い力で引き倒した。そのままアニシナはグウェンダルに馬乗りになる。こぼれる白い乳房がまぶしい。  
「こうやって、あなたを見下ろすのもいいものです。」  
「・・・変わらないではないか。普段と。」  
「おや、それもそうですね。」  
 笑いながら、グウェンダルの胸に舌を這わせてくるアニシナ。グウェンダルは好きなようにさせた。普段なら、アニシナが先に  
疲れてしまうのだ。グウェンダルは大男だし、アニシナは小柄だ。いかにアニシナに体力があるとは言っても、実験以外に  
その体力を使う気はないようで、すぐに飽きてしまうのだった。  
 しかし今夜は、執拗に胸に舌を這わせ、頂を口に含み、十分すぎるほどの愛撫を贈った。下半身が熱くなっていくのを  
グウェンダルは感じていたが、アニシナはそのことにさして興味を持っていないようで、どんどん下へと舌を下ろしていく。  
胸から、腹、脇、そしてへそ。ゆっくりと舐め上げ、グウェンダルの弱い部分に口付ける。  
「・・・っ・・・アニシナ・・・」  
「なんです?グウェンダル。」  
 見上げてきたアニシナは、いつもよりも瞳が潤んで、頬が上気していた。声が、何時になく甘い。これが、美香蘭の効能―――  
 グウェンダルは、たまらなくなってアニシナを再び力ずくで押し倒した。そのまま口付け、首筋や胸にも舌を這わす。  
 
「あっ・・・!グウェン!やめなさいっ・・・実験にならないでしょうっ・・・!?」  
「結果なら、もう出ているだろう」  
 アニシナの白い小柄な身体を抱き寄せて、唇が触れそうなほど近くで囁いた。  
「自白剤の効果はない。精力剤の効果があった。程度は強。これでいいのではないか?」  
「・・・っ・・・」  
 アニシナは何時にもまして荒い息をつきながら、グウェンダルから視線を背けて、苦しそうにつぶやいた。  
「・・・どうやら、自白剤の効果もあるようです・・・。」  
「・・・?どういうことだ。」  
 不思議そうなグウェンダルの言葉に、アニシナは大きく息をついた。ため息でないことは、息の熱さで分かる。  
「・・・わたくし、今自分がとんでもないことを言い出しそうなのを、自制しています。ですが、それもいつまでもつかわかりません。」  
「・・・何を言おうとしているんだ?」  
 グウェンが問うと、アニシナは一瞬苦しそうに眉をひそめたが、次にはグウェンダルと瞳をあわせた。  
「・・・我慢、できないのです・・・」  
 熱い息の中に混じった、小さな声だった。普段のアニシナからすれば、想像もつかない光景だったが、声の震えには自制して  
いたものが漏れたという葛藤が含まれているのだと悟った。  
 それゆえに、グウェンダルには劣情の火種にしかならなかった。目の前の幼馴染が、愛しくてならない。  
「・・・今、楽にしてやる。」  
 グウェンダルはいきなりアニシナの秘所に触れた。身体を震わせるアニシナ。  
「・・・すごいな。洪水だ。」  
 
 そこは、一度も触れられていないのに、溢れるほどの蜜が溜まっていた。羞恥に顔を染めるアニシナ。足を開かせて、  
身体を割り入れた。指を秘所に入れると、アニシナはぎゅっと目を瞑る。快楽で自制が効かないことを恐れているのだろう。  
それでも、声が唇から漏れた。  
「ふ・・・っ・・・ん・・・!」  
「声・・・もっと、聞かせてくれ・・・」  
 口付けとともに囁くと、アニシナはためらいながらグウェンダルの胸に顔を寄せた。ぎゅっと身体を抱きしめてくるアニシナ  
の口から、先程よりも甘い声が聞こえてくる。  
「ぁ・・・ぅ・・・んっ、グウェンッ・・・」  
「アニシナ・・・」  
 指を動かすと、甘い声と息は荒くなって、ますますグウェンダルにしがみ付いてくる。愛しくて仕方がない。きついアニシナ  
の中を指一本でゆっくりとかき回していると、アニシナが腰を揺らして求めてくるのがわかった。グウェンダルは笑った。  
「アニシナ・・・?どうして欲しい。言ってみろ。」  
「・・・ぁっ・・・な、なにもっ・・・」  
 瞳は潤んで、今にも泣きそうなほど身体が飢えているというのに、アニシナはとろけそうな甘い声で白を切った。自白剤に  
対してこれほど抵抗力があるとは、さすが毒女。なら、もう少し焦らしてみるのも悪くない。こんなアニシナ、百年に一回だって  
拝めるか分からないのだから。  
 グウェンダルは指を抜き、身体を下へとずらした。アニシナの開いた足の中心をまじまじと見つめる。蜜が溢れてひくつく  
そこをただ眺められて、アニシナは真っ赤になった。  
「グウェンっ・・・何を!?」  
 グウェンダルは無言で、アニシナの秘所へと唇を近づけた。蜜の溢れる部分に口づけて、蜜を舐め上げた。  
「ぁあっ!!」  
 
 アニシナが過剰なほど反応し、身体を震わせた。構わず、そこを執拗なほど何度も舐めあげる。美香蘭より、甘くて濃い  
匂いがする。ぴちゃぴちゃと何度もそこを舐めあげられ、アニシナは先程より高い声で喘いだ。  
「あぁ!!は、ぁっ・・・!グウェンっ・・・も、やめなさいっ・・・!あぁんっ!!」  
 グウェンダルの舌が、アニシナの蜜壷へと侵入した。ほんの浅く挿れただけなのに、アニシナは身体を大きく震わせた。  
どうやら、軽く達してしまったらしい。  
「いつもより感じやすいな・・・媚薬の効果はあるようだな。」  
 アニシナが涙を溜めた水色の瞳で睨みつけてきた。そんなことは、言われなくてもわかっていると言いたげだ。だが、決して  
口は開かなかった。言葉を発しようとした時、意図とは別の言葉を言ってしまいそうになるのを堪えているのだろう。強情だ。  
 グウェンダルは再び蜜壷に舌を挿し入れ、アニシナの中をかき回した。くちゅくちゅと響く卑猥な水音と、アニシナの甘い声を  
聞きながら、グウェンダルは自分もまた限界があることを悟った。今すぐに挿れたい。けれど、こんなに愛らしいアニシナを、  
もっとずっと見ていたい。  
「アニシナ。いい加減、口を開け。」  
 アニシナが、自分を欲しいと言ってくれれば、理性なんて吹っ飛んでしまうのに。早く、自分を欲しがるアニシナの声が  
聞きたかった。  
「アニシナ。」  
 だが、アニシナはただきつく目を瞑って首を横に振るだけだった。焦れたグウェンダルは、強引にアニシナに口付け、唇を  
割って舌を挿し入れた。激しく舌を絡めあい、唾液を交換させる。同時に、胸の頂をきつく摘み、乳房を揉んだ。十分な膨らみ  
と張りを楽しみながら、角度を変えて何度も口付けをする。息もつかせない激しい口付けに、とうとうアニシナの身体から力が抜けた。唇を離し、耳元で囁く。  
「・・・アニシナ、私に、どうして欲しい?」  
 荒い息の中、アニシナは小さな声で訴えた。  
「・・・グウェン、を、わたくしにっ・・・わたくしの中に、挿れてくださいっ・・・!」  
「私で、いいのか?」  
「・・・あなた以外など、必要ありません。」  
 グウェンダルは笑った。美香蘭様様だ。  
 
 グウェンダルはすぐに猛り狂った己をアニシナに挿れた。蜜がアニシナの奥まで誘ってくれる。アニシナの中は、すぐに  
グウェンダルでいっぱいになった。  
「ああああああぁっ!!あ、あぁんっ!!グウェンっ!!」  
「は・・・アニシナ・・・気持ちいい・・・」  
 狭くて、熱くて、ぎゅっと締め付けてくる。すぐにも果てそうだった。  
「グウェンっ・・・はやく、動きなさいっ・・・!!」  
「ま、待て。もう少し落ち着いてからっ・・・!」  
 少しでも動けば達してしまいそうなのに、アニシナは腰を振ってグウェンダルを刺激してくる。ぎゅっと絡み付いてくるアニシナ。  
我慢できそうにない。  
「ちょっと・・・ちょっと待てっ・・・うぁっ!!?」  
 突如グウェンダルを襲った射精感に、グウェンダルは堪えられずにアニシナの中で果てた。自分の中で射精されたのを  
感じて、アニシナはグウェンダルを見た。グウェンは先に達してしまったことへの羞恥で真っ赤だ。  
「・・・自分だけ達してしまうとは・・・本当にあなたは情けのない男だこと!」  
 グウェンダル、撃沈。もうしばらくは起ちそうにない。涙目になるグウェンダルだったが、突然強い力に押し倒された。  
アニシナと繋がったまま、アニシナに押し倒されたのだとわかったのは、アニシナが自分の上に座り、こちらを眺めている  
瞳と目が合ってからだった。  
「アニシナ・・・?」  
「わたくしはまだ満足していませんよ。あなたにはまだ、わたくしと付き合ってもらいます。」  
 そういうなり、腰を動かし始めるアニシナ。頬を赤く染めながら、荒い息を吐くアニシナは、とても扇情的だ。絡み付いてくる  
アニシナの肉は、すぐに果てたばかりのグウェンダルを硬くした。自分の中で大きくなるグウェンダルを感じてか、アニシナ  
の声は高くなる。  
「んっ、ああっ・・・!はぁ、あ、あんっ・・・!!」  
「ア・・・アニシナ・・・っ!!」  
 アニシナは自分の弱い部分を上手く腰を使ってグウェンダルと擦り合わせる。アニシナが感じる度に、ぎゅっと肉に締め  
つけられて、グウェンダルは幸福で死にそうだった。しばらく快楽に身を委ねていたグウェンダルだったが、ふと気がついた。  
まだ自分の先端が、アニシナの最奥までたどり着いていない。  
「アニシナ・・・?」  
 
「んっ・・・何、ですかっ・・・!あっ、ん・・・!」  
 グウェンダルは腰を使い、アニシナの最奥へと一突きした。高い声で啼くアニシナ。  
「ああああぁんっ!」  
「アニシナ・・・もっとここに欲しいのではないか・・・?」  
 途端に顔を赤くするアニシナ。グウェンダルは笑った。  
「自分でするのが恥ずかしいのか?」  
「違いますっ・・・!あ、あなたのように達してしまうのが嫌なだけですっ・・・!」  
「一人でイくのが怖いのか?」  
 その台詞に、アニシナは目を見開いた。  
「なっ・・・!そんなわけはないでしょう!ただわたくしはこのままっ・・・」  
 激昂しかけたところで、アニシナは我に返った。逡巡したように瞳を伏せたが、次には覚悟を決めたように一言呟いた。  
「このまま・・・もう少しあなたと遊んでいたいと思っただけです・・・。」  
 自白剤を使っても尚、こんな言葉しか出てこないアニシナに、グウェンダルは苦笑した。それでも、グウェンダルは好意的  
に解釈できる。  
「私と、もう少しこうしていたい、ということか?」  
 アニシナは肯定も否定もしなかった。グウェンダルは、何も言わないアニシナの唇に口付けた。何度も口付けを交わし  
ながら、徐々に腰を動かしていく。熱が再び、二人を犯す。  
「ん、あぁ!はぁんっ!!・・・あ、あああっ!」  
 アニシナの甘い喘ぎを聞きながら、グウェンダルは腰を動かす。未だアニシナが上に乗ったままだったが、アニシナも  
自ら腰を動かし、互いに快楽を貪りあった。  
アニシナにきつく絡みつかれる度に、グウェンダルの限界が再び近くなってくる。自分でいっぱいになったアニシナの腰を  
掴み、最奥へ何度も先端を擦りつけた。ぐちゅぐちゅと熱い楔を打ちつけられる度、アニシナは甘く啼いた。  
「ひゃっ・・・あぁんっ!はぁあっ、あんっ!グウェンっ・・・もっと・・・もっと動いてっ・・・!!」  
「は、アニシナっ・・・!」  
 
 アニシナの中がひくついて、グウェンダルに絡みつく。グウェンダルも、もう我慢ができないほどの射精感を感じていた。  
限界が、近い。  
「んぁっ!はぁあっ!あんっ、ひゃああっ!」  
「アニシナ、もう、イくぞ・・・」  
「あっ、だ、めっ・・・まだっ・・・もう少しっ・・・!」  
「もう・・・無理だ・・・っ・・・」  
 アニシナが快楽の涙を零しながら、グウェンに唇を寄せてきた。口づけの合間の、荒い息に隠れるように、囁いた。  
「もっと・・・こうしていたいのです・・・っ・・・」  
 愛おしさに、どうにかなりそうだった。何度も身体を重ねてきたが、こんなに可愛いことを言うアニシナを見たことがない。  
こんなアニシナの願い事なら、何だって聞いてあげたいと思ったが、グウェンダルには快楽に抗う術を持たなかった。  
こんな可愛い幼馴染と一緒に果てるという欲求には、勝てそうもない。  
 グウェンダルは一言、すまん、とだけアニシナに囁いて、アニシナを抱きしめた。座ったグウェンダルの膝に座っているような  
体位で、アニシナはグウェンダルに貫かれた。  
「あんっ!ああぁっ!!グウェンっ・・・!!」  
「アニシナっ・・・!!」  
 アニシナの腰を掴み自分に引き寄せ、一際強くアニシナの中へと己を突き入れると、アニシナの肉がぎゅううっと  
グウェンダルを締めつけた。  
「あん・・・ぁ、あ、あああああああああああああっ!!」  
「っぅ・・・くっ!!」  
その衝撃に堪えられず、グウェンダルはアニシナの最奥に、再び精を放ったのだった。  
 
 ぐったりとしたアニシナの身体を抱きしめながら、グウェンダルは呟いた。  
「朝まで・・・まだ時間があるが・・・。」  
 どうする?朝まで続けるか。とのグウェンダルの問いに、アニシナは快楽のために零れる涙を拭いもせずに、グウェンダル  
を見つめた。  
「明日は、陛下と弟の決闘があるのではないのですか・・・?」  
「ああ・・・そうだな・・・。」  
「陛下の戴冠に当たっては、何かと面倒も多いでしょう。こんなことをしていてもいいのですか?いくらあなたが無能でも、  
一応、国政を任されているのですから、勤めくらいは果たしなさい。」  
 いつもの口調に戻りつつある。けれど、まだ頬は赤く染まっているし、瞳は涙を溜めているし、息も荒くて声も甘い。  
「そうだな。・・・あの小僧が王になろうがなるまいが、厄介ごとが増えるのは間違いないだろう。・・・これからは、忙しくなる。」  
 言っていて、グウェンダルは苦笑した。なんだか、これでは情事のあとの、恋人同士の会話のようだ。次はいつ会えるの?  
なんて、腐った会話のよう。実際二人はいつだって会えるし、アニシナがグウェンダルに遠慮をして会いに来ないわけがない。  
どうせ実験に使われる日々は変わりはしないのに。  
 グウェンダルはアニシナをゆっくりとベッドに横たえて、唇を重ねた。  
「ただ、今のお前は百年に一回、見られるか見られないかだ。・・・多少無理をしてでも、奪っておきたい。」  
 アニシナは眉をひそめた。  
「まったく・・・男は自分のことしか考えないのですね。結局、自分がしたいだけではないですか。」  
「嫌なら言え。」  
「・・・嫌だとは言っていません。」  
 グウェンダルは笑った。そのまま、二人は朝まで激しく相手を求め合った。  
 
 
 
「兄上。目が赤いようですが。」  
 朝になり、ヴォルフラムと遅めの朝食をとっていたときのことだ。ヴォルフラムが疲れた顔をした兄に眉を顰めた。  
「なんでもない。」  
「もしかして、僕があの小僧との勝負に負けるかもしれないと心配なさったんでは・・・?」  
 小僧とは、一応異世界から魔王となるべく連れてこられた双黒の少年のことだ。体格はそう変わらない上、庶民の出だと  
聞く。こちらが不利な条件は何一つない。グウェンダルは表情も変えずに首を振った。  
「そういうわけではないが・・・」  
 グウェンダルも、いくらなんでも負けるわけがないと思っている。あの子どもに何ができるか、と。なので、昼の決闘のこと  
など昨夜はこれっぽちも考えなかった。考える余裕もなかったが。  
「そうですか・・・それでは、お仕事で無理をされたのですか?随分お疲れのようでしたので。」  
 グウェンダルは何も言わなかった。言えるわけもない。  
「ああ、グウェン、ヴォルフ。良い朝ね。おはよう。」  
 朝から艶めく声。見れば彼らの母が、微笑んで部屋に入ってきた。そのまま食卓の席へつく。  
「ヴォルフラム。今日の勝負は無茶しちゃだめよ?そのかわいい顔に傷がついたら、わたくし、泣いてしまうわ。あと、陛下  
に失礼なことをしてはダメよ?」  
 決闘に失礼もなにもないだろう。  
「母上!僕があの小僧に傷をつけられるとおっしゃるのですか!」  
「そうねぇ。陛下は温和な方とお見受けするから、剣で傷をつけられはしないと思うわ。」  
「母上は僕が負けるとおっしゃるのですか!?」  
「それは見てみないとわからないけれど・・・。」  
 曖昧な言葉で微笑んで眺めるのは、かわいい息子の怒った顔。なんて可愛いのかしら、と悦に入る親ばかぶりだ。けれど、  
ツェツィーリエはこうも思っていた。  
 負けて欲しいとは、思っているわねぇ。  
 今度の魔王こそ、この国と子どもたちを救えるほど強い人だと、いいと思っているから。  
 自分の思いは口にせず、ツェツィーリエは長男に目を向けた。さし当たってどうにかなる問題でもない魔王陛下と末っ子の  
決闘より、母には興味のあることがあった。  
 
「グウェン。アニシナがこの城に来ていたのは知っていて?」  
 グウェンダルの動きが一瞬止まった。その様子に微笑むツェツィーリエ。  
「アニシナに、何か御用でも?」  
 動揺を抑えて、グウェンダルはそう言った。長男の心の機敏を見透かしながら、ツェツィーリエは言葉を選んで会話を続けた。  
「薬のお礼を、まだしていないのよ。どこにいるか知っていて?」  
 グウェンダルの眉がぴくりと上がった。アニシナはグウェンダルの寝室で爆睡中だ。教えると大変まずいことになる。答えに  
詰まる兄に気付かず、ヴォルフラムが口を挟んだ。  
「薬?なんのお話ですか、母上。」  
「うぅーん。ヴォルフにはまだ少し早いかしらぁ。まぁ、使いたいならいつでも貸してあげるけれど」  
「母上!」  
 とんでもないことを言い出す母に待ったをかけるグェンダル。顔色が蒼白だ。その兄の様子を見て、ああ、薬とはアニシナ  
絡みで、昨夜も例によって例のごとく酷い目にあわされたのだ。だから寝不足なのだ。と解釈した。プーの解釈力なんて、  
まだまだこんなもの。  
 ツェツィーリエは心底楽しそうに笑って、長男を見た。  
「じゃあ、グウェンからお礼を言っておいて。これからの自由恋愛旅行にとても役に立ちそうだもの。」  
「・・・伝えておきます。」  
「母上は、本当に旅に出られるのですか?」  
 三男の少しさびしそうな声に、過剰に反応する母。ヴォルフに近寄ってぎゅうっと抱きしめる。  
「そんなに寂しそうな顔をしないでちょうだい。でもね、これはわたくしの長年の夢だったのっ!世界中の素敵な男性と恋に  
落ちるの!!人間も魔族も神族も貴族も庶民も関係なく、素敵な恋愛をするのよ!!ね、ヴォルフも素敵だと思うでしょう?」  
「は・・・はぁ・・・」  
 
 気のない返事をする息子に構わず、なおもマシンガントークを続けるツェリ。  
「ようやくわたくしの夢が叶うの!黙って行かせてちょうだい!ああ、でもね、わたくしもう一つ夢があるのよ?何だと思う?」  
「・・・もう一人子どもが欲しい、とか・・・」  
「あぁん!それも素敵!ヴォルフは弟と妹、どっちがいい?わたくし、今度こそ女の子が欲しいのだけれど・・・それはそれ。  
わたくしね、早く孫の顔がみたいなーって思っているのよ?」  
「孫?」  
「そうっ!ま・ご。」  
 上機嫌にしている母を見つめる息子たち。  
・・・おばあちゃんと呼ばれるこの人を想像できない。  
 そんな息子たちの視線を受け止め、ツェツィーリエはグウェンダルに視線を向けた。  
「年齢的に、グウェンに期待をしているのだけれど・・・」  
「兄上に?」  
「・・・なぜ。」  
 いい加減、眉間の皺が増えてくる。何もかもこの人に知られているような気がして、背中に嫌な汗が流れた。  
「わたくしが旅行から帰ってくるまでにできているといいのだけれど。やっぱり孫も女の子がいいわー。きっと可愛いわよっ!  
グウェンが父親なら安心だしっ!」  
 それは、子どもは小さくて可愛いだろうが、生憎グウェンダルの未来予想図に自分の子どもと家庭というものはない。  
「・・・ご期待には添えかねると思いますが。」  
「どうかしらぁ?あぁ、わたくし楽しみだわー。小さくて可愛い・・・母親似の、水色の瞳に、赤い髪の小柄な-――」  
「母上!!」  
 
 大きな声で遮ったのは、いたたまれなくなったグウェンダル。その先に何かを言おうとして―――なにも言えずに、席を立った。  
「・・・お先に失礼します。」  
「アニシナによろしくねっ!」  
「・・・。」  
 やっぱり、全部知っているんだろう。針の筵に立たされたみたいだ。もういや。  
 部屋を出て行く兄の背中を見ながら、ヴォルフラムは首をかしげた。  
「・・・兄上はどうなさったのでしょう・・・?」  
「そうねぇ。強いて言えば、赤い悪魔の毒にやられちゃったのかしらねぇ。」  
 悪魔!?毒!!?  
 ヴォルフラムは考えた。  
 そんなに、昨夜のアニシナの実験は苛烈を極めたのか、と。  
 
 意外にも、一番先に娘ができたのはヴォルフラムだった。  
 
終わり。  
 
 

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